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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


静寂の始まり―死人編―

静寂の始まりは一つの終わり。
小さな館には全ての終わりと始まりが詰まっている。
その館には4人の人が住み着いている。
静寂を司るその館で。

「む…なんか獣臭い…」
「あ、カイルも気になったか?俺も結構気になってたんだが…」
「やっぱりか。しかし、この臭い…何処かで嗅いだ事ないか?」
カイルと呼ばれる青年がそう言うと、言われた方の青年も少し首を傾げる。
「確かにどっかで嗅いだな、これ?」
「シオンも鼻がいいんだ、それくらいは分かるだろ?…で、何の臭いだと思う?」
「……さぁ、なぁ。俺にはちっと思い出せねぇわ…」
悔しそうにそうぼやきながらも、シオンがどっかりと椅子に座る。
それとほぼ同時にゆっくりと部屋の扉が開いた。
「どうか、したんですか?」
「あぁ、マイか。いやな…この臭い、どっかで嗅いだ事ないか?」
「臭い?あぁ…さっきからするこの獣の臭いですか?」
「そう、それ。俺とカイルでさっきから悩んでるんだが」
「…これって…獣というよりは魔の腐臭ですね。どうやら…何匹かのアンデッドが抜け出してきたみたいですね」
「この屋敷の墓場からかよ?」
カイルが尋ねると、マイは小さく頷いた。盲目の彼女は、嗅覚が優れている。聴覚も敏感だ。
そんな彼女も、この腐臭には少し耐えれない様子だ。

「速くこの静寂の館より死者を葬り去ってください。でないと私の嗅覚がおかしくなりそうです。ただでさえ目が見えないというのに…」
「だとさ、カイルさん?」
「誰かに頼んでしまうか。俺達だと逆にやり過ぎるしねぇ、シオンさん?」
「誰でもいいから速くあれなんとかしてよっ!アタシの部屋にまで来てるんだけど!?」
ドアを勢いよく開けて入ってくる少女。名はイズミというらしい。
イズミはカイルとシオンを睨みつけると早く頼んでくるようにと合図を促す。
仕方なくカイルとシオンは街中で死人退治をしてくれる人間を探す事となった…。


カイルとシオンは街へとやってきていた。シオンが「俺に心当たりがある」とか言うので従ってきたものの…。
「…つまらんな」
「街は大抵こんなもんだろ?」
「しかしこれではつまらなさすぎる。何か騒げるようなだな…」
「まぁ、ぼやきなさんな。もうすぐ呼んだ奴がここに来るはず…」
「いたいた!シオン〜!」
そう。シオンが呼んだ人物というのはシオンとは顔馴染みとなっている海原みあおだった。
これにはカイルも絶句する。
「おい、シオン」
「どうした、カイル?」
「…貴公、そっちの気…あったのか?」
「はっ!?」
シオンが小学生と顔見知りだなんて幾ら親しい彼でも知らされてはいなかった。
前回の訪問だって、シオンはマイには伝えたが、彼には伝えていなかったのだ。
あらぬ噂として考えられても仕方のない事態。それでもみあおはほへ?っとした顔。
「いいか、シオン?俺は貴公にこんな犯罪に走れとは一言も…」
「違うわ、阿呆!…っと、それよりだ。みあお、屋敷の死人のアレなんだが…」
「いいよ、引き受ける!でも、みあおのお願いもちゃんと聞いてくれるよね?」
「それについては主に既に話してある。とりあえず屋敷へ戻るか」
「…マイもよく勘違いしなかったよな…」
「お前と主を一緒にすんない!」

屋敷に戻った三人は、みあおをマイに紹介する事にした。
何せ、初めて屋敷内に入る人間。そして協力してくれると言うのだから丁寧に扱わないと。
「こんにちはー!」
「あら、元気な声ねー…って、シオン、カイル?あたしは誘拐して来いと言ったわけじゃあ…」
「だあぁぁ!お前もか、イズミ!?」
「俺を巻き込むな!?」
カイルとシオンがそれぞれの言葉を口にする。
賑やかな居間。しかしそんな中でも臭いは続いている。
「うわっ、臭い…」
「でしょうねー。あたし達ですら臭いって思うし」
「それよりイズミ、主は?」
「もうすぐ来るっていってたわよ?」
「じゃ、その間にカステラでも食べよ〜♪」
みあおが元気にそう言う。しかしこの臭いの中で…というのも変なものだ。
とりあえずマイが来ない事には詳しい話は出来ないらしい。
結局ティータイムにする事にした。

「はい、どーぞ」
イズミがみあおの目の前にコトリと小さなティーカップを置き、紅茶を注ぐ。
真紅の色、いい香りなのだろうが死臭の方が強い為感じとれない。
「そう言えば、どうしてみんなこの屋敷に住んでるの?」
「俺達はあまり社会に馴染めないっていうか…」
「簡単に言えば、社会不適格者ってとこ?」
「どっちかと言うと、落ちぶれ者だろう?」
三人が口々に言うが、小学生のみあおには当然完全に分かるという事はない。
「要するに、私達は人間達とは相成れない…つまり、生きては行けない存在なのですよ」
声が響く。扉がギィと鈍い音をさせながら開くと、そこには黒のワンピースを着た少女が立っていた。
どうやらこの館の主らしい。
「ようこそいらっしゃいました。海原みあお卿…私が、この屋敷を管理する『静寂の君』、マイ・ランフォードでございます」
「主様!言ってくれればあたしが手を引いてあげたのに!」
「イズミ、私は子供ではないのですよ?」
苦笑を浮かべながら、椅子に座る。すると、シオンがマイの前にもカステラを差し出す。
「さて、ごゆるりとしたご様子ですし、そろそろ本題に入りましょうか。貴女に頼みたいのは、この屋敷の裏にある墓地に群れている死者を何とかして貰う事です」
「でも、それって先住者でしょ?退治とかって傲慢じゃないの?」
「みあや卿がそう言うのも無理はありません。ですが、私達とて好きでここに屋敷を建てたわけではないのですよ」
マイがそう言うと、みあやは首を傾げる。
自分達が望まず家が建てれるのか…?何だか疑問ばかりだ。
「この屋敷はね、代々ランフォード家が継いでいるんだけど…」
「継ぐと同時にそれまでの屋敷は自動的に消え、相応しい場所に屋敷が現れる原理でな」
「で、マイの場合ここだったってワケで、これも不可抗力。だからといって退治していいって訳じゃないんだろうが…」
「しかし死者をこのままにしておいては、街に降り騒ぎになってしまう可能性も捨てきれません。一般人に被害が出ないよう、ここで食い止めなくてはならないのですよ」
マイの言葉に、みあおも少し複雑な感情を抱いていたが、街に降りてしまう可能性も考えるとやはり退治しなくてはならないのだろう。

墓地。
凄く薄暗い。もう玄関前よりも。
そしてその死臭もえげつない。流石のカイルも少し鼻を抑えている。
「それでは、お願い致します。私は屋敷の中でお待ちする事に致しましょう」
「あたしも主様についてるわね。みあお、勝手なお願いだけどお願いね?カイル、シオン!しっかり守ってやんのよ?」
イズミがマイを連れて屋敷に戻ると、カイルは大きく溜息をつく。
「しかし、何がどうなってこうなったんだ…?」
「まぁ、異変があったのは確かなんだろうなー」
「大丈夫!どんな事があってもみあおがいれば全て上手く行くんだから♪」
「…ま、みあおがそう言ってるんだ。中に入ろうぜ?」
「ったく…どうしてこうも俺が…」
ぶつくさ言いながらもカイルが墓地に一歩踏み込む。
その瞬間だ。
ウオォォォォォォォ……。
死人達の雄叫びがあがる。どうやら生あるものの臭いを感知したのだろう。
死者の群れは一斉にカイルに向かって歩み始める。
「…おい。凄い団体さんなんだけど?」
「カイルは食い止めてくれ。俺とみあおは出来る限りの原因を探そう」
「あ、じゃあハーピーになった方がいいかな?」
そういうと、みあおの身体はみるみるうちに変化し、その姿はハーピーと言える姿に変化する。
それを見てシオンとカイルは小さく頷くと、カイルは懐から銃を取り出し、シオンはみあおと共に奥へと走り抜けて行く。
カイルの銃弾がみあお達の背を追う死者に放たれる。
「貴公等の相手は俺なのだがね?」

「しっかしここ、広いねー…」
「大丈夫か?」
「うん、平気平気!でも、この数はちょーっと疲れそう…」
先程からなぜかみあおだけを狙って死者が動いている。
不思議な生だからであろうか。それとも無関係にいってるからだろうか。
「とりあえず、もうすぐ祭壇のはずなんだがー…っと」
「祭壇?」
「そう。ここには女神『セラフィン』を祭っていたようなんだが…」
「あれ?シオンはそういうの信仰してないの?」
「俺?あぁ、俺達は…ま、信仰したくないっていうか、毛嫌いしてるからな」
そう言うと、シオンは辺りを見回す。するとそこに小さな祠みたいなのが見えた。
どうやらあそこが祭壇らしい。
「みあお、ここは俺が食い止める。お前はあの祠にいって何かあるか調べて見てくれないか?」
「あ、うんっ!」
元気よく返事すると、みあおは小鳥の姿になり祠へと向かう。
みあおが小鳥になった瞬間、全てのターゲットはシオンとカイルに切り替えられた。

祠に入ると、そこはまるで神聖な場所かのような雰囲気があった。
この屋敷にはあまりにもかけ離れた場所である事は確かのようだ。
「うわぁ…ランプもないのに、明るいー…!」
わくわくする。
探検したい。
しかし今はそんな事をしている場合ではなく。
奥に進むと、そこには一つの銅像が安置されていた。首のない銅像。
その銅像の服からは、女神の像と考えられる。

「ありゃ…首がないよー…。これはこれで銅像さんが可哀想…ってわわっ!?」
何かに躓いてベシーン!と転ぶ。足元をよく見ると、女神の首らしき石。
綺麗な装飾が施されていたようなのだが、錆付いて今は見る影もない。
「もーっ!こんな所にほっといたら危ないじゃないー!よし、みあおが直しちゃうんだから!」
一生懸命に石の頭を持ち上げ、銅像の方へと運ぶ。
流石に重い。小学生の力じゃ無理だろう。
「おい、何やってんだ?」
「シオン!この石の頭、あの銅像につけてー!」
「これを?何で?」
「こんなとこに置いてたら躓いて危険だから!」
「…躓いたのか?」
シオンの冷静な問いに、みあおは少し恥ずかしそうに小さく頷く。
その様子を見て、クスクスと笑いながらシオンは言われた通りに銅像を直した。
すると、ガコンッという音と同時に今まで聞こえていた死者の雄叫びが急に静かになった。

二人が外に出て見ると、そこには死者達の山が。
そしてその上にはカイルが座っている。
「…お前、またやった?」
「大勢相手にするとどうも職業病が…」
「やれやれ…どうしてそうも破壊したがるかね…」
「ん…?シオン、臭い消えたよ!」
「お?」
みあおの言葉に二人もふと気付いて匂いを嗅ぐ。
確かに死臭は完全に消えている。屋敷に戻り、息を吸ってみても死者の匂いはしない。
「あの銅像が壊れたから死者が復活したのか…?」
「何にせよよかったねっ♪」
「お疲れ様です、三人とも。どうやら死者達は元あるべき場所に還ったようですね」
「あ、マイ!あのね、あのねっ!」
「分かっていますよ、みあお卿。この屋敷の探検…でございましたよね?」
「いいのか、主?」
「構いませんよ。私達はこの小さな子に助けられたのですから、お礼だけは致しませんとね?ですが…二階の右…『闇夜のフロア』には足を踏み入れないようにしてくださいね?大事な物が安置されております故…」
「はーいっ!シオン、カイル!一緒にいこ〜♪」
みあおがそう言うと、シオンは小さく溜息をつきながらも薄く笑い、ハイハイと素直についていく事に。
しかし、カイルだけは何か納得いかないような表情だ。
「何で俺が子供とこの屋敷の探検を…」
「では、言い換えましょうか。カイル、シオンが過ちを犯さないように見張りを…」
「主様までそういう事言うッ!?」

その後暫くは静寂の館からは、子供の歓喜の声が響いたり。
シオンのツッコミ声が大きく響いたりと賑やかなものだったという……。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【1415】/海原・みあお/女/13歳/小学生

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■         ライター通信          ■
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今回もソロで書かせて頂きました、神無月鎌です。
少し長くなってしまいましたが、キャラをちゃんと動かせているか不安が…(汗
何にせよ、これも凄く楽しんで書かせて頂きました♪

また出したりすると思います。
その時、また機会があれば宜しくお願い致します(深礼

共にいい物語が紡げますよう…。