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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


襲来!〜その名は貫く者〜

 中学生、高校生が下校を始める夕暮れ時、神聖都学園付近の一画で銃声が響き渡る。突如現れた謎の男の襲撃。襲われたのは、GaleAndMoon。
「俺は第参使徒、ブリューナク・ホリン。カインの花嫁を渡してもらおう」
 小型ガドリンク砲と、大口径の銃剣を持った青年が銃を突きつけ威圧する。
「イヤだといったら?」
「その時は‥‥無理矢理奪っていくまでだ」
 銃剣の撃鉄を起こすホリン。

「待ちなさい!」
 今にも引き金が引かれようとする瞬間、ホリンの背後より、声が響き渡った。其処には、一人の、神聖都学園の制服を着た女子高校生がいた。
「手荒な事をする人ですね。嫌がる女の人に無理強いしようなんて言語道断です!」
 彼女の名は久良木・アゲハ。暗殺者の家系で、退魔師の修行中である。
「貴様も邪魔をする気か。ならば、排除するまでだ!」

 半身でアゲハに対してガドリンク砲の銃口を向けるホリン。アゲハはホリンの背中から回り込むように店の奥に飛び込む。
「アンタ、態々店の中に入り込んで、一体何する気だよ?」
 カウンターの後ろに隠れている巧が声を掛ける。
「油をお借りしますね?」
 質問には応えず、手馴れた手つきで棚の中にあった揚げ物用油を掴むと、アゲハは頭から被り、百円ライターを手にホリンの前に躍り出る。
「火達磨になる覚悟か、それとも、俺が相手を殺す事に躊躇いを覚えると思っていたのか?そうであれば、甘い!」
 狙いを定め、引き金を引こうとするホリン。とっさに身を屈め、肉薄するアゲハ。ホリンの長い銃身では、懐に入られると狙う事ができない。
「油を被ったのは俺の思考を誤魔化す為の偽装か。‥‥面白い!」
 ガドリンク砲を投げ捨て、空いた左手でアゲハを突き飛ばし、距離を取るホリン。
「過程はどうあれ、目的は達成できたからいいんです!」
 気配を絶ち、軽い身のこなしでホリンの死角に回り込むアゲハ。
「相手の攻撃手段を封じ、且死角を取るか。中々戦い慣れているが、しかし!」
 見えていないはずのアゲハを正確に突きに行くホリン。
「わっととと‥‥」
「死角や不利な状況に措いて尚対策を講じる、これが武術と言う物だ。死角は限られている。よって、其処に潜んでいれば、見えずとも位置は掴めるのだ!」
「わざわざ解説ありがとうございますっ‥‥と!」
 一転、不利に陥るアゲハ。絶対不利である死角に対する正確な攻撃に戸惑い、ペースを乱されるアゲハ。
「とどめだ!」
 アゲハの方に向き直り、大きく刃を引くホリン。だが、その瞬間、響き渡る銃声。金属同士がぶつかり合う音と共に、ホリンの銃剣が揺らいだ。

「部外者にばかり負担を掛けるわけには行かんのでな‥‥‥」
 銃声の方向には、拳銃を構えた源三。目を合わせた刹那、有無を言わせぬその威圧感に気圧され、後ずさるホリン。
「正気か?火花が飛び散れば火達磨になるのはこの女のほうだぞ!」
「問題無い。摩擦熱を低くする為には少ない面積を撃ち抜けば良い。そして、俺にはそれが可能だったまでだ」
「貴様も正しく戦士だったと言う訳か。出来れば、敵ではなく味方として会いたかったがな!」 
源三とホリンの問答が終わり、ホリンの銃口が源三に向けられる。その時、アゲハが動いた。
「今です!」
 再び死角に回り込み、銃剣に手を伸ばすアゲハ。ホリンの隙を突き、奪い取ろうとしたのだ。
「甘い!」
 アゲハが銃剣を掴んだ瞬間、ホリンは銃剣を捻り、アゲハの肩と肘を極める。
「人質を取るのは不本意だが、これも任務の為だ。已むを得まい。さあ、その銃を降ろし、カインの花嫁を渡してもらおうか!」
「だが、その姿勢では此方を撃つ事は出来まい。大人しく降参するべきなのは其方だろう?」
「俺は任務の為に他人を巻き込む事を厭わん。だが、貴様に人質を見捨てる事は出来るのか?」
「む‥‥‥」

「嘘ですね」
 源三が答えあぐねた瞬間、アゲハが口を挟んだ。
「何?」
「本当に他人を犠牲にする事を厭わないなら、始めからガドリンク砲で此処の人たちを皆殺しにしてしまえば良かったじゃないですか。それに、戦っている最中、私を殺すチャンスも沢山あったのに‥‥あなたは、本当は人殺しがイヤなんじゃないんですか?」
「黙れ!」
「否定はしないんですね。若しも殺す事に慣れてるんでしたら、態々宣言する事もありませんから。任務の為、と自分を押し殺しているだけなんでしょう?」
「黙れ!貴様に何が解る!俺にはこの道しか無かった。俺を拾ってくれた第拾参機関の恩に報いる為にはこれしかなかったんだ!」
 ホリンはアゲハを突き飛ばし、銃口を向け、引き金を引いた。目を閉じ、覚悟するアゲハ。そして、銃声が響く。
 だが、何時までたっても、銃弾が体に届いた感覚は無かった。

「はい、そこまで‥‥。無理は体に良くありませんよ?」
 アゲハが目を開けると、其処にはいつの間にか黒ずくめの青年が立っていた。その手には、銃弾が掴まれている。
「な‥‥何者だ!何処から現れた!?」
 動揺するホリンが叫ぶ。そう。今まで黒ずくめの青年は何処にも居なかったのだから。
「貴方も第拾参機関から派遣されてきたなら名を聞いた事位はあるでしょう?夜の王、とね。そして、何処から、と言う質問には‥‥瞬間移動、とでも言っておきましょうか?私は何処にでも現れる事は出来ますから」
「貴様があの‥‥だが、日没までには時間は‥‥」
「ありませんよ。外を御覧なさい、すっかり日は沈んでいます。これ以降の狼藉は見過ごすわけにも行きませんからね」
「あ、あの〜」
 すっかりと取り残されてしまったアゲハがおずおずと手を上げる。
「はい?」
「え〜っと、助けていただいてありがとうございます、でも‥‥」
「それなら良いんですよ。元々、巻き込んでしまったのは此方ですし、詫びるべきは此方のほうです」
「そうじゃなくて、無理はいけないとか‥‥」
「ああ、彼の話ですよ」
 漸くホリンの方に向き直る夜の王。
「貴方の過去について文句を言う気はありませんが、それほど深く義理立てする必要も無さそうですよ?」
「如何言う意味だ!」
「戻ってみれば解ります。くれぐれもお気をつけて、とは言っておきますがね」
「しかし、このままでは‥‥!」
「大人しく帰ったほうが賢明だと思いますよ?これ以降は私も相手になりますから」
「‥‥‥クッ!」
 ガドリンク砲を拾い、背を向けて走り去るホリン。そして、夜の王の姿も消えていた。

 呆気に取られるアゲハだったが、気を取り直して源三に声を掛ける。
「それにしても‥‥凄い有様ですね‥‥後片付け、お手伝いしましょうか?」
「いや、構わん。其れよりも済まんな。妙な事に巻き込んでしまって。‥‥今から茶を淹れよう。せめてもの礼だ」
 結局、アゲハは、お茶とケーキをご馳走になり、ついでに店の片付けを手伝って帰ったのであった。

 
 了



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【3806 /久良木・アゲハ / 女  /16歳 / 高校生】

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■         ライター通信          ■
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 初めまして、九十九陽炎と申します。此度は参加していただき誠にありがとうございます
 今回の話は、「裏向きな性格ではない」と言う点に着目して、説教じみた台詞を喋らせてしまいましたが、
 私のキャラはこんな事言わないんだぁ〜〜、と言うことがありましたら申し訳ございません、
 若し、宜しければ、またご参加いただければ幸いです。