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<東京怪談ウェブゲーム あやかし荘>


あやかし荘:宝探し

-始まり-

 部屋の中で恵美と嬉璃はコタツを囲んでほのぼのと茶をすすっていた。
 すると、何か思いだしたように、嬉璃は恵美の側に寄り、耳打ちした。
「実はな、この屋敷にはすごいお宝が眠っておるんぢゃ」
「え、うそ」
 思わず声を上げると、嬉璃の顔をまじまじと凝視した。
「内緒ぢゃぞ。こんなことが知れたら宝探しに人が集まってくる」
 唇に人差し指をあてつつも、ニヤリとほくそ笑む。
 
 そんな2人の会話をこっそり聞いていた者がいた。
「宝物?」
 その人物は少し考え、そして唇だけに笑みを浮かべると、嬉璃と恵美の部屋を一瞥した。
「こうしちゃいられねえな」
 声にならない笑いを浮かべながら部屋を後にした。

-平代真子の場合-

「宝物ってなんだろう? さぞかしすごいものが……」
 興奮気味に呟くと、代真子は庭をくまなく探し出した。
 嬉璃の話しを盗み聞きした他の者達は、それぞれ自分がココだと思う場所を探している。
 だから、他の誰よりも先に見つけなければ『宝物』は手に入らない。
「兎に角、誰よりも早く見つけなくちゃ」
 今だ、興奮が冷めていないのか、上づった声で呟くと、庭の周囲をぐるりと囲む草むらに頭を突っ込んだ。
 そこは影になっている為か、地面は湿っている。
 そっと、手で触りながら、穴を掘った形跡がないか、何か異常はないか、くまなく探すが、これといったものはなかった。
「ふう」
 大きく溜息を吐くと、起き上がり、腰を伸ばした。
「ここじゃないのかな」
 腰を捻りながら辺りを見回した。
 一応、庭は調べた。しかし、『宝物』らしきモノは何も見あたらなかった。
「建物の中かな……」
 そう言うと、そこにそびえ立つあやかし荘を仰ぎ見た。
 古ぼけた旅館のようなそこは、木造で年期が入った建物をしている。そして何よりも広い。
 あかずの間や、使われていない部屋が沢山あるとは聞いているが、それでも1人で探すには広すぎるのだ。
「誰か……」
 手分けをして探そうかと考えるも、もし誰かが先に見つけたら……ささやかな欲望をチラリと覗かせた代真子は、慌てて紡ぎかけた言葉を飲み込んだ。
「やってやろうじゃないの」
 気合いを入れ直すと、代真子はあやかし荘へと足を踏み入れた。

-嬉璃の企み-

 あやかし荘の中へと消えていく代真子を庭の影から見つめていた人影があった。
 『宝物』があると言っていた張本人――嬉璃である。
「キヒヒ。まあた1人ひっかりおって」
 楽しそうに呟くと、ぴょんと飛び跳ねた。
「さてと……」
 何か思い描く最高のプランでもあるのか、含み笑いを浮かべると、代真子の後を追うようにあやかし荘の中へと入っていった。
「本当に大丈夫かしら」
 そんな嬉璃を心配そうに見つめる恵美(いつものように箒を手にしている)は、ふと足下に見慣れない四角い何かを発見した。
「これ……何かしら?」
 不思議そうに屈んでそれを拾うと、持ち主を確認する為に中を開いた。
 定期入れのようで、通学に使っているらしい定期は入っていた。
 そして――。
「お、恵美良い物を拾ったな。でかした」
 どこから湧いてきたのか、恵美の目の前に嬉璃が現れると、恵美の手からそれをかすめ取った。
「あ、でも、これ……」
「なんぢゃ? よい、ワシにまかせろ」
 そう言うと、またあやかし荘の中へと走っていった。
「大丈夫かなぁ」
 箒の柄に顎を乗せながら、心配そうに呟いた。

-宝物はどこですか-

「さて、どこから探すかな」
 腰に手をあて、室内を見回すと、自分の感に任せるように近くにあった部屋を開いた。
 誰も使っていないのか、室内は何も置かれていない。
 代真子はぐるりと見回し、テテテと押入に近付くとガバっと勢いよく開いた。
 
「キキー、チュチュチュチュ」
「うぎゃっ」
 
 押入の中にいた灰色の小動物と代真子が叫んだのが同時だった。
「なっ、なっ、なっ」
 慌てているわきを、灰色の小動物――ネズミがサササと通り抜けていく。
「びっくりしたぁ〜」
 大きく息を吐くと、胸をなで下ろした。
 誰もいないと思った所に『生き物』がいると、心臓には宜しくない。
「ああいうのがここには住んでいるということね」
 どこかへ逃げていったネズミを追うように視線を向けると、肝に銘じるかのように呟いた。
「そうたやすく手に入っては宝物とはいえないし、こういうのもアリかも」
 そんなことを思いながら、代真子は押入の中へ体を突っ込んだ。
 暗い。せまい。カビくさい――
 宝物探し――最低限の必需品は懐中電灯だと改めて思いながら、手探りで押入の中を探す。
 が、それらしき何かは存在しなかった。
 代わりにネズミが持ち込んだチーズなんかを見つけてみる。
「……」
 しばらくそれを見つめてみるが、食べる訳にもいかず、溜息と共に部屋の隅へ放り投げる。
「さ、次いこう」
 そうして、1階の全ての部屋の押入を探すが何も見つからなかった。
「ないか。じゃあ、二階」
 そう元気に呟くと、ドタドタドタと階段を上がり、手前の部屋から探しはじめる。
「絶対、こういう所にこっそりある……はずなのに」
 そういいながら、誰の部屋とも解らないそこの押入を探している姿は、ちょっぴり泥棒に見える。
 いや、不法侵入であることは確かである。
 しかし、ここはあやかし荘だし。何があってもおかしくない所だし、てか、不法侵入は明らかに駄目なことである――が、今回に限っては不法侵入と取られないらしい。
 ま、嬉璃が裏で糸を引いている時点で、ある程度のことは許されるのだが――。
 二階の何部屋目かに入り込んだ代真子は、そこに置いてあった『焼き菓子』に目を奪われた。
「これって私に食べていいよってことかな」
 なんとも都合のいいように解釈すると、ちゃぶ台の上に置いてあるいくつかの『焼き菓子』に手を出した。
「うっまっ」
 バクバクと食べていると、部屋の住人が帰ってきた。
「あ、それおいしいでしょ」
 帰ってきた住人は、見ず知らずの人間が勝手に上がり込み、勝手に菓子を食らいついているにもかかわらず、注意することもなくニコニコと応対している。
「ほいすぃっす」
 口いっぱいに頬張っているせいで、何を言っているのか聞き取れないが、その表情から「美味しい」と言っているのだろうと推測出来た。
「飲み物でも入れましょうか」
 部屋の住人は、よっこらしょと立ち上がると、飲み物の準備をし始めた。
「こういう時は、素直にダージリンが一番だと思うんですよね」
 そういいながら、花柄のカップに紅茶を注ぎ入れた。
 良い香りが、一気に部屋中に広がった。
 部屋の住人が煎れてくれたそれは、香りがよく、味も美味しいのだ。
「ところで、えっと……何かされていたのでは?」
 素朴な疑問を投げかけられ、代真子はハッと気付く。
 のほほんと茶など飲んでいる場合ではないのだ。
「そう、そう、そうだ。そうだった」
 そう言いつつも、目の前にある菓子を一気に頬張り、紅茶で流し込むと、じゃ!と片手を上げ、部屋を飛び出した。
 
 結局2階を探すがどこにもそれらしき物がない。
「ん〜。困ったな」
 途方に暮れる代真子。各部屋を回った。押入に隠してあると思い、隅まで探したのにどこにもなかったのだ。
「ん〜」
 小難しい顔をしながら、何も聞かず歓迎してくれた住人が住む部屋へノックすることなく押し入った。
「?」
 もちろん、住人は首を傾げている。
 そんな住人を無視するかのように、部屋の隅に無造作に置かれている雑誌を手に取った。
 そしてパラパラパラとめくり、殆ど終わりのページを開く。
「えっと……『高いところでいいことがありそう。ラッキーアイテムは縄ばしご』……縄ばしご?」
 代真子は占いのページを参考にしているようだ。どんな雑誌でも、運勢を書き記したページがある。
 彼女は、その雑誌の占いに、自分の運勢を託したのだ。
「高い所か……」
 そう言うと、天井を見上げる。
「そういえば、この館、屋上があるんだよ」
「それだ。ありがと」
 瞳を輝かせると、手に持っていた雑誌を住人に押しつけ部屋を飛び出した。

「……これって去年の雑誌なんだけど」
 そんな住人の呟きは、代真子の耳には届いていなかった。

-だから、宝物って?-

 ラッキアイテムだからなのか、屋上へ行く途中『縄ばしご』が落ちていた。
 床にとぐろをまいたそれをしばらく見つめていた代真子は、恐る恐る手にしてみる。
「縄ばしご? ラッキー」
 いや、ラッキーじゃなくて、そんな所に縄ばしごがあるだなんておかしい。おかしすぎる。疑うべきではないだろうか。
 が、当の代真子は、あの雑誌良く当たるなぁ〜などとご機嫌である。
 当たるもなにも、去年の雑誌なのですけどね。
 屋上に出た。
 良く晴れた空が眩しくて、思わず瞳を細める。
「そういえば、宝物ってどういう物なんだろう」
 根本的な疑問に今頃気付いてみる。
 もう少し早く気付くべきなのだが……。
 宝箱に入っているのだろうか、それとも光り輝いているとか……色々と想像力を働かせながら、屋上を探し歩いた。
 が、何もないのだ。
 それらしき物がなにも存在しない。
「てか、高いところって書いてあったのに」
 それは占いに書いてあったのであって、宝物の在処を示した訳ではない。
「どこにあるのぉ」
 手すりに半身をあずけ、だらんと両手を投げ出す。
 キラリ
 瞳を眩しい光が突き刺した。
「?」
 キラリ
 もう一度光った。
「!」
 屋上すぐ下の屋根の上にゲーム内でよく見かける、宝箱が置いてあるのだ。
「見つけた!」
 そこでふと、飛び降りるには足場が悪く危険なことに気付く。
 が、自分の手にはある物がある。
「なるほど。さすがラッキーアイテム」
 マテ。どう考えても仕組まれているだろ。
 が、代真子は深く追求することなく、縄ばしごを手すりにひっかけ、ひょいひょいと下へ降りた。
「お宝、お宝」
 ホクホク顔で呟くと、宝箱を前に軽く合掌し、それを開けた。
 タララタッタラン
 どこかで聞いたことのある音楽と共に、それは白煙をまき散らしながら開いた。
「いや、待って。あたしはまだ17歳で……」
 そういいながら、両手で頬を押さえている。
 浦島太郎ですか? ここはあきらかに竜宮城ではありません。軽く勘違いしていますが……。
 慌てふためく代真子を余所に、煙は次第に弱まり消える。
 そして、宝箱の中には、一枚の紙切れのような物が入っていた。
「あたしの顔大丈夫かしら……」
 まだ、そんなことを言いながらも、紙切れが気になるらしく、手を伸ばしそれを手にした。
 紙と思われたそれは、写真で、それも自分の家族が映っている。
「え? 何?」
 が、よく見ると、見慣れた写真。ジッと見つめていた代真子はハッとし、ズボンのポケットを探った。
「あれ?」
「これか?」
 第三者の介入に、思わずびくっと身を縮めると、声のした方を恐る恐る見た。
「っ」
 逆光でその人物の顔が見られない。
「だ、誰?」
「仮面タイガーぢゃ」
「……その声は嬉璃さんですね」
 脱力気味に呟く代真子に、『仮面タイガー』と名乗った嬉璃はちっちと指を左右に振った。
「仮面タイガーぢゃ」
「……てか、タイガーじゃなくてライダーじゃないの? それに、『イ』しか合ってないから」
「……タイガーぢゃ」
 明らかにタイガーではないらしい。が、言ってしまったからには引っ込みがつかない。嬉璃はタイガーなのだと押し切った。
 そして、代真子の近くまで来ると「ほれ」と渡した。
「やっぱり、あたしの定期入れ」
 そう言うと、中を開いた。そこにあるはずの写真がない。宝箱から出てきた写真を定期入れに納める。
「これどういうこと。宝物は?」
 突っ込むところはそこですか? なぜ嬉璃が定期入れを持っていたのかとか、そういう所は気にならないのでしょうか。
「ところで、その写真はおぬしにとってなんぢゃ」
 嬉璃はにんまりと笑みを浮かべると、そう問い返した。
「何って……大切な宝物?」
「なんぢゃ、お宝であったか」
「そっか、宝物手にいれたんだ……っておい」
 その瞬間、代真子は嬉璃の悪戯にひっかかったのだと気付いた。
 が、嬉璃はひょいひょいと屋根を伝い、庭に飛び降りた。
「まっ、わ、わわ、うぎゃ」
 追いかけようとして、足を滑らせ、転げ落ちそうになる。
 思わず掴んだそれは、縄ばしごだった。
 改めて自分の宝は『家族』なのだと認識しつつも、宝物への期待が大きかっただけに、ショックを隠しきれない。
 しばらく放心状態の代真子は、縄ばしごにぶら下がったままだった。 

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【4241 / 平・代真子 (たいら・よまこ) / 女性 / 17歳 / 高校生】

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■         ライター通信          ■
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 初めまして。あやかし荘:宝探しへの参加ありがとうございます。
 ライターの時丸仙花です。

 最初に、納期ぎりぎりの納品になったことをお詫びさせてください。
 軽くスランプ気味で、なかなか執筆出来なかったというのが本音です;

 傾向をギャグと指定頂いていたので、コミカルな感じにさせていただいたのですが……ご満足頂けたかどうか……。
 今回は、プレイングの都合で1名のみでのノベルとさせて頂きました。ご了承下さい。

 また、どこかでお会いできることを願いつつこの辺で。