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<白銀の姫・PCクエストノベル>


Fairy Tales 〜美しい手〜


【フラグ1:試練】

「妖精の眼<グラムサイト>覚えるんでしょ?」
 白銀の姫ゲームマスターだった黛慎之介は、ニコニコと話しかける。
「俺が連れてってあげるよ。ガレスの元まで」
 どうやら妖精の眼を覚えさせてくれるエルフはどうやらガレスと言うらしい。
 流石ゲームマスター、実際の3Dとなっても迷う事無くガレスが居るらしい街へと案内され、丁寧にも庵の前まで案内してくれた。
「じゃぁがんばってね」
 庵の入り口で慎之介はヒラヒラと手を振って帰って言ってしまった。
 そして、そんな慎之介を見送り、庵の中へと入る。

「…塗り薬、妖精の指輪…力が、欲しいのか?」

 とんがった耳のエルフ―ガレスの問いかけに頷くと、彼は顔を上げ、その金色の瞳で見据える。
「我が試練にクリアして、みせよ」
 ガレスのその一言で、画面がフィードアウトした。


【フラグ2:Flaying Fish】

 突然の暗闇にセレスティ・カーニンガムは瞳をゆっくりと開ける。
 元々からそこまで視力が良いわけでもなく、強い光を感じることのできないセレスティに、闇に対する恐れというものはなかった。
「試練とは…どんなものでしょう」
 ただ暗闇の中、立たされている自分。
 だんだんと暗さに瞳が慣れてくると、服装がまだアスガルドのままな事に、まだゲームの中だという事を実感する。
 不意のフィードアウトによって現実世界まで戻されてしまったか?とも一瞬頭をよぎったが、そんな事ができるのは一応この世界では女神たちだけ……
 失礼だが1イベントの登場人物であるあのエルフであるガレスにそんな能力がある訳がない。
 それにしても違和感が強い。
 下手に動く事は危険かもしれない。
 本能のような物が微かに警告を発する。
 だが、セレスティは一歩足を踏み出した。
 どこまで行こうとも闇が晴れることはない。
 どこまでもどこまで黒く、深く、果てしなく、闇は広がっているだけ。
 この闇を晴らすことができれば試練の終了?
 はたしてそんな簡単な事があるだろうか。
 しかし、どうやったらこの闇が晴らせるのかどうかヒントも何もない今の状態では、そこそこに難しい事かもしれない。
 この試練を受けるために慎之介に連れられやってきた他の面々も、もしかしたらこの闇のどこかに居るかもしれない。
 探すべきか、一人解決策を探るべきか。
 この『妖精の眼<グラムサイト>』を与えてくれるらしいイベントキャラクターガレスは、試練にクリアしろとは言ったが、どんな試験かまでは示してくれなかった。
 通常で考えれば、解決方法のヒントを提示しない事は、プレイヤーキャラクターに対してかなり優しくないイベントである。
 それゆえに難易度が高い物なのかもしれない。
 セレスティはどこまでこの闇の中を歩いたかも分からなかったが、瞳の奥に微かに薄らと光る輪郭を見つける。
 手を伸ばせばそれは一つの扉だった。
 いつもなら、こんな所に扉がある事事態を訝しく思うのだが、セレスティはそれをしなければならないと使命感に似たような感覚で扉に手をかけた。
 ギィ…と音を立て、扉が開かれていったその瞬間、

(…?)

 今まで真っ暗だと思っていた空間が一気に光に包まれる。首を傾げつつ辺りを見回せば、自分はいつものように車椅子の上で座っていた。
 あの世界での出来事は夢?
 アスガルドに降り立った際に持っていた十字架の錫杖もなく、幾何学模様が袖口に入った服装でもなく、いつものような紺系のスーツに身を包んだ自分。
 歩く地面の感触も、はっきりと景色をこの瞳で捕らえる事ができない世界。
 夢ならば、自分が常に歩いて移動していた事も納得がいく。
 まばらな足音。
 音の高低。
 屋敷の中で使用人たちがせわしなく動きまわっているのが分かる。
 床を擦る音。
 一時減る足音。
 軽やかに、そして何の隔たりもなく動くその両足で、自由に歩き回り立ち止まる。
 もともとは人魚である自分とはまったく違う、歩くために存在し、進化していった人の健脚。
 どうしてあの世界では自分は歩けるのだろう。
 やはり心のどこかで自由に歩き回りたいと思っていたからだろうか。
 あの世界の住民として認められる事は、超常現象に慣れている事、そして―――『何か』強い思いを持っている事。
 草間興信所や他所にて数々の超常現象に居合わせていたため、この世界でも他の皆の様に服装が変わってしまったのだと思っていた。

 だが―――…
 もし、気付かずに強く思っていたのだとしたら……

――自由に歩きまわれる事が、羨ましいか?

 聞き知れぬ声が頭の中に響く。
 すっと瞳を細め、顔を引き締めると声の主を探る。
 ここはガレスが作り出した試練の世界。だとしたら、この声の主はガレスなのかもしれないと、一気に顔の力を抜いた。
「いいえ」
 元々が違う物なのだから、同じようになれるなんてあり得ない事。
 手に入らないと分かっている物を欲しがるほど、身勝手な人間ではないつもりだ。

――それは、諦めか?それとも、強がりか?

 そっとセレスティは瞳を伏せ、にっこりと微笑む。
「キミには関係のない事だと思いますが?」
 そう、誰にも関係のない事だ。
 これは自分の問題であって、他人に何かしら言われる筋合いはない。

――そうやって全てを否定するのもいいだろう

 全てを否定しているつもりなどまるでない。
 無理なものは無理だと言っているだけ。
 その中に否定する要素も、否定しなければいけない何かなんてない。

――望んで、いたのだ。確かに

 声は何を告げているのか分からず、まるで自問自答しているかのような口調でただセレスティに囁やき続ける。
(望んでいた……)

――そう望んでいたのだ

 この声は自分の声音とはまったく違うと思っていたのに、もしかしたら自分の思いが言葉として聞こえているのかもしれない。

―――「自由に歩いてみたいと」

 自分の口から出た言葉と、頭の中で響く声が重なる。
 そう、だれもが聖人君子であり続けることなど無理なのだ。
 人には妬みの心も、羨ましいと思う心もある。
「そうですね」
 それは、例外なく自分の中にも確かに存在している感情。
 普段は気が付かないふりをしているだけで、本当はずっと感じていた心。
 本当は自由に歩き、走り回りたいと思っていた。
 こんな自分もいたのだとセレスティはゆっくりと瞳を伏せ、穏やかな微笑を浮かべる。
 そしてセレスティはゆっくりと車椅子から立ち上がった。
 その瞬間、服装が紺のスーツから袖口に幾何学模様が入った神官のような服装に戻り、その手の中に十字架の錫杖の重みが戻ってきた。それとともに現実世界の自分の屋敷がすぅっと消えていく。
 景色はまたも、闇。
 セレスティはすっと顔を上げ、決意を込めた強い瞳で闇を見据える。

――認めることも、強さだ

 声は、セレスティが導き出した答えに満足したように、その口調に微笑みを感じさせ、ささやく。
















 光が、舞い降りた―――――






















【フラグ3:ガレスの紋章】

「帰ってきたか…」
 落ち着いた声音が耳に響く。
 ゆっくりと眼を開くと、ガレスがやれやれといったような表情で自分を見ていた。
「妖精の眼<グラムサイト>は取得できたようだな」
 ガレスは杖ですっと自分の手の甲を差した。
 つられて視線を落としてみれば、手の甲に幾何学模様の紋章が輝いていた。




next 〜吠える獣〜


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■   獲得アイテムとイベントフラグ詳細      ■
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ガレスの紋章獲得
よって『妖精の眼<グラムサイト>』習得


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1883/セレスティ・カーニンガム/男性/725歳/財閥総帥・占い師・水霊使い/魔法使い】

【整理番号/PC名/性別/年齢/職業/今回のゲーム内職付け】
*ゲーム内職付けとは、扱う武器や能力によって付けられる職です。


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■         ライター通信          ■
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 Fairy Tales 〜美しい手〜にご参加くださりありがとうございます。ライターの紺碧です。今回は完全個別という事でかなり自由度の高いシナリオ加えてプレイングがなければ話が進まないという事もあり、凝ったプレイングありがとうございました。
 セレスティ様、毎回のご参加ありがとうございます。自分の中に普段は気が付かないふりをしている感情を認める事は大変な事だと僕も思います。元々からマイナスの世界でのスタートになりましたので多少卑屈になっていたらすいません。Fairy Talesシリーズももう直ぐ折り返しを迎えます。有言不実行ライターですが、よろしくお願いします。
 それではまた、セレスティ様に出会える事を祈りつつ……