コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談・PCゲームノベル>


神の剣 異聞 Invisible Blade 1 邂逅

 織田義明はなにか違和感を覚えていた。
 平穏の時と、死と隣り合わせの己の宿命。
 今の状態は満足しているわけでもない。
「他の人もそうだろうな」
 と、独り言。
 一人暮らしをしてから数ヶ月。
 先天性神格覚醒者というのは、ある意味呪いである。神秘関係を否定する親に気味悪がられ、見捨てられたのだから。
 このアパートも、天空剣で退魔行をしたときのバイト代とエルハンドの好意により得られたものだ。
 さて、逆の立場の人間と出会えば彼はどう思うだろう?
 神秘の出であり、その能力を嫌って思って逃げた人間と……
「直ぐに起こるかどうかはさておき、惹かれ合うだろうか? 考え方が異なるから敵対するだろうか?」
 義明はそう思った。
 
 
 数日後……

 毎度の事ながら退魔行を任された義明は、戦いの中で一人の少年と出会った。
 戦いが住んだ後……お互いが見る。
 歳はおなじぐらい。
「……」
「……」
「「誰だ?」」
 同時に喋った。
 緊張、相手は非実体の悪霊を何かで斬っている。
「Invisible Blade……?」
 義明が、“彼”の能力〜一部だが〜を見る……。
「見えるのか? あんたこそ…その刀はなんだ?」
 少年が喋る。
 おそらく義明の神格具現剣「水晶」の事だろう。刀身が水晶のように透き通っているためだ。そこから発せられる力は尋常ではない。
 彼が警戒してもおかしくはない……。
  
 この緊張感を打破出来るのは、あなた以外いない。


〈陸誠司〉
 養父に「妖怪物の怪相手に修行してこいと」いわれ退魔修行に向かう陸誠司。
「が、頑張って来ます。お父さん……」
 彼は結構“腰が低い”感じの少年だ。
 しかし、仙人を目指す道士である。
 仙人もまた超越した存在を目指す者。彼の場合は特殊なものだ。
 親を亡くし色々なことで今の養父の元にいる。
 家の事情と言うものか、正直すぎる所があるようだ。良く思ったことをすぐ口に出して、直後後悔するという、おきまりのパターンを持っているそうで、陸一族もしくは、彼の友人に色々言われることも多いらしい。

 夜というのは悪霊が良く出やすい。
「感じる……」
 誠司は路地裏に入る。
 靄がかかった路地裏をとおり、一番霊の力が強い場所にたどり着いた。
 広い空き地になっており、その霊核から恐ろしい程の邪悪な気を発していた。
「うわあ! 急いで倒さないと!」
 と、手の甲に呪符を付けた【応旋】をはめ直し……気合いを込める。
「とりゃぁ!」
 まずは、まとわりつく悪霊の群れを中国武術とその【応旋】で消滅させていく。
 戦っているウチに、誠司は誰かがいることに気が付いた。
 大分前にいたようで、かなり手練れていると“気”で感じる。
 2人とも何か武器を使っているようだが……1人だけ桁違いに違う。
 そう考えていても体は動くのだが、修行不足。
 徐々に核に近づく所、悪霊の不意を喰らって吹き飛ばされた。
「うわっと!」
 巧く受け身をとって、体勢を立て直す。
 核まで後一歩だったのだが、今の相手はかなり厄介だ。
 更に緊張感が走る。
 全ての簡易術式を発動し……
「うりゃあ!」
 そして、悪霊に向かって力一杯【応旋】で殴った。
 悪霊は滅したのは良いが……勢い余って……

 既に悪霊の核を消滅させて、警戒心を持って対峙している2人の間に入ってしまった。

 この状況を確認したときに、誠司は恐ろしくなって、
「!? えっと、その……ご、ごめんなさいぃ!」
 あたふたして、謝ってしまう誠司。
 その慌てぶりをみた2人の少年は、
「「さっきから素手で悪霊を倒していた子じゃないのか?」」
 と、同時に言った。
「え、あ、はい! そ、そうです! 俺 陸誠司っていいます!」
 誠司は慌てながらも自己紹介をする。
 悪霊も居なくなったし、少年2人は“武器”を収めたようだ。
 もう1人のほうは、毒気を抜かれたのか緊張を解いたようである。


〈自己紹介〉
「俺は織田義明。天空剣師範代」
「僕は……衣蒼未刀」
 と、誠司を助け起こして、自己紹介する茶髪の少年織田義明と黒髪の衣蒼未刀。
「あ、あの、あなたたちも退魔行なんですか?」
「ああ、そうだよ。仕事だから。君は?」
「僕もそうだけど……」
 と、未刀は義明を見る。
「強い人を超えた力をあんたが持っているから、少し興味が湧いただけだ」
「俺?」
 義明が自分を指さすと未刀は頷いた。
「あ、義明さんは凄い“仙”の力をもってますね」
 と、誠司も頷く。
「ああ、確かに……強い気迫に感じられるか……水晶を出していたらそうだよなぁ」
 何かブツブツ独り言を言っている義明。
「まさか、未だ力の抑制が出来ないとか? そんなのですか? 水晶って?」
 と、誠司が訊いた。
 その通りだよと、義明は頷く。
「水晶は具現刀のこと。俺の魂を現しているような武器だよ」
「へぇ! すごいですね!」
 感心する誠司。
「それなら、未刀……彼の方が凄い。なにせ“見えない刀”んだから」
「あ……」
 義明が未刀を見て言うと、誠司も未刀を見る。
 未刀は「?」と首を傾げながらも、
「ああ、僕が持っているのは確かに見えない刀だよ。それが?」
 と、答えた。
「世の中凄い人がいるんだぁ」
 誠司は感心しっぱなしだった。

「力についてだけど少し簡単に言おうかな。2人とも気になっているようだし。浄化儀式の後でね」
 と、義明は口にする。
 義明は自分が先天性神格保持者(つまり仙人の中級〜上級系)である事、未刀が退魔(封魔)の剣士であることを簡潔に説明しながら、街に戻ることにした。


〈遭遇〉
「もうこんな時間じゃないか……」
 と、義明が時計を見る。
「うわ! やばいっすよ!」
 誠司も確認して驚く。
 午前2時。
 未成年がコンビニやら繁華街で良く屯する時間帯でもあるが、此処はそう言った場所ではない。
「其れがどうかしたのか?」
 未刀が首を傾げる。
 近場に交番があり、職務質問やらされそうだ。
「あう、どうしよう」
 と、あたふたしているのは誠司だけ。
「武器関係は実際“持ってない”し。業物持ってきたけど、壊れて、儀式用具だけになったからねぇ。まあ……お巡りさんが来たら、お説教だけ聞くことにした方がいいかな」
「そうだな」
「ううう、うっかり何か言いそう」
 義明は冷静に、誠司はガクガク震えている。
 未刀は職務質問や警察関係の問答についてよく分かっていない。夜に動く仕事なのだから、文句を言われる筋合いはないのだと思っている感じだ。

 彼らが通りを歩いている、別の通り。暫くすると交差する場所では。
「また巡回……また夜に巡回なんて……」
 氷雨雪野が悄気てこの地域の巡回をしている。
 彼女は霊感が強烈なほど鋭いため、良くいらぬモノを見たり、憑依されたりと災難に遭っているため怪談やその手の現象が怖い。1人で巡回なんてイヤなことだ。今回はつい最近だろう、お茶のみ友だちになった(らしい)少女が付いてきてくれるので一応“その手の厄介ごと”は大丈夫になるのだが、後ろにいる“何か”が気になって仕方ない。
 幽霊みたいにフワフワ浮いている女性。白拍子で有る故、余計だ。
「どうかされましたか?」
「い、いえ! な、なんでもないです!」
「こら、静かにして……雪野さん怖がっているじゃない」
「何か怯えている様でございましたので、お声をとおもったのですが……」
「だ、だ、大丈夫です!」
 と、少女と雪野と女性の会話。
 幽霊みたいな女性は、首を傾げている。
――あなたが怖いんです、あなたが。と言えない雪野さん。
 
 と、異常もなく巡回する訳だが、十字路を見る雪野は、誠司と未刀を見かけてしまったのだ。
「あ、そこのキミ!!」
 と、雪野は走る。
「わあ! 見付かった!」
 慌てふためく誠司。
「悪いコトしてないから良いじゃないのか?」
 全く動じない未刀。
 死角だったのか、義明は見えてない。
「お巡りさん?」
「あ、はい! どう、どうしよう!」
「逃げても意味無いと思うけどね」
「補導されますよう!」
 等と呑気に会話しているので、すぐにたどり着くお巡りさん。
 見ると女性だ。
「こんな時間に何をしているんですか? お名前は? お家は何処?」
「えっと、その……つまり」
 あたふたする誠司。
 どうしよう? と助け船を出して欲しいと、義明と未刀に目で訴える。
「カラオケに行っていたなんて、嘘は言えないしなぁ。言いたくもない」
 義明がぼやく。
「其処の黒い服のキミも……」
 雪野が未刀に質問するときに、
「何か居る」
 と、未刀が警戒した。
「え?」
「幽霊? いや?……」
 呟くように言っているが、夜なので結構聞こえる。
「でたのー!?」
 雪野は叫んでしまう。
「え? え? 気配はするけど? みえないっす!?」
 誠司も焦って構えるが……

 義明だけ溜息をついた。

「静香さんがいるのか……というと……」
 同時に、雪野と共に歩いていた少女がやってきて、
「待ちなさい、静香! って……よしちゃん」
「茜が居たか……職質より、まあ、自己紹介程度で済みそうだ」
 と、更に溜息をつく義明だった。

 見えない“何か”と義明の幼なじみ長谷茜が居て、義明もいれば話は早いだろう。


〈力あるものは力あるものに惹かれ合う〉
 雪野が務める交番。
「ああ、そう言うことだったのね……」
 事情を訊いて納得しているが、それ以上は訊かないことにしている雪野。
 理由は簡単だ。怖いからである。
 皆はゆっくり、お茶を飲む。
 やはり、仕事のあとの飲み物はうまい。
「未刀や誠司が感じたのは、精霊の静香さん。姿は雪野さんと契約者で俺の幼なじみの長谷茜しか見えてない。気配は感じるけどね」
 と、義明が言った。
「す、凄い体験のような気がする」
 誠司は今日一日を纏めるのに必死のようだ。
「力あるモノは惹かれ合うからだと思うよ?」
 と、長谷茜が言った。
「そうか……惹かれ合うから……あんた達にあったわけか」
 アレから終始無言だった未刀が誠司と義明をみて言った。

「そうっすか? 俺そんなに……力無いっすけど?」
「そう言う意味じゃない。僕は“独り”だったけど、こうして、また“独り”じゃなかったって安心しているんだ」
 誠司の言葉に首を振って答える未刀。
 その言葉に、嬉しさと過去の哀しさを感じる誠司であった。

 その後、3人は交番で婦警と茜、見えない精霊と別れた。
「力を使う人には色々な出生があるんですね……」
 誠司は、感心して言う。
「神秘のではないけど既に覚醒して親に疎まれていた俺。養父に憧れ仙人を目指す誠司に既に自分の道を見つけている茜。そして、神秘を一度は否定したことのあるが、今では其れを誇り持って生きる未刀。でも“力”を放棄出来なかったのは皆同じだ」
 義明が言った。
「縁というやつか? 目指すモノを持って生きているから……」
 未刀は訊く。
「そうですよ。きっとそうです!」
 笑う誠司。
 その言葉に、未刀は笑った。



 既に夜は明けていた。


2話に続く。


■登場人物
【5096 陸・誠司 18 男 学生兼道士】

【NPC 織田・義明 18 男 神聖都学園高等部・天空剣剣士】
【NPC 衣蒼・未刀 17 男 妖怪退治屋(家離反)】
【NPC 長谷・茜 18 女 神聖都学園高等部・巫女(長谷家継承者)】
【NPC 氷雨・雪野 22 女 婦人警官】
【NPC 静香 ? 女 精霊】

■ライター通信
 滝照直樹です。 神の剣異聞 Invisible Blade に参加して下さりありがとうございます。
 2話はお買い物編です。
 ほのぼの傾向が高いので……指定によっては……アレが出せるかも知れません(アレって何?)
 では、今回はこの辺で……

 滝照直樹拝