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<白銀の姫・PCクエストノベル>


Fairy Tales 〜美しい手〜


【フラグ1:試練】

「妖精の眼<グラムサイト>覚えるんでしょ?」
 白銀の姫ゲームマスターだった黛慎之介は、ニコニコと話しかける。
「俺が連れてってあげるよ。ガレスの元まで」
 どうやら妖精の眼を覚えさせてくれるエルフはどうやらガレスと言うらしい。
 流石ゲームマスター、実際の3Dとなっても迷う事無くガレスが居るらしい街へと案内され、丁寧にも庵の前まで案内してくれた。
「じゃぁがんばってね」
 庵の入り口で慎之介はヒラヒラと手を振って帰って言ってしまった。
 そして、そんな慎之介を見送り、庵の中へと入る。

「…塗り薬、妖精の指輪…力が、欲しいのか?」

 とんがった耳のエルフ―ガレスの問いかけに頷くと、彼は顔を上げ、その金色の瞳で見据える。
「我が試練にクリアして、みせよ」
 ガレスのその一言で、画面がフィードアウトした。


【フラグ2:Ancient Memory】

「どうしたの?琥珀さん、そんな所に立ち尽くして」
「どうしたんだよ、琥珀」
「琥珀、早く行こう」

 自分と同じように狼の耳と尻尾を持った人々。表情は良く分からないのに、自分に向かって誰もが微笑んでいる。
 森に囲まれた小さな村。
 差し出された手に、来栖・琥珀はゆっくりと視線を落とし、その手の主に顔を上げる。
 手をとらない琥珀に首をかしげ、口元だけが笑っている形をしているのが分かる。

 ―――でも、この子は誰?

 この手を取れば誰だかわかる?
 どうして自分がいきなりこんな所に立っているのか理由が分かる?
 どうしてこんなにも懐かしいのか、分かる?

 ゆっくりと琥珀は周りを見回す。
 薄らと雪が残ったままの山が遠くに見える。
 村の家々も山の奥にあるようなロッジ風の建物が多い。
 でも、どれも暖かそうで、暖かくて、淡い光が窓から漏れていた。

「早く行こうよ、琥珀」

 琥珀はまったく知らないのに、知らないと思っているのに、目の前の少年は琥珀を親しい者のように呼ぶ。
 一向に手を取らない琥珀に業を煮やしたのか、少年は琥珀の腕を掴むと走り出した。

 とても暖かい手。

 掴んだ腕から感じる温もりがとても愛しく、懐かしい。
 でもなぜこんな場所に立っているのだろう。
 これもゲームの一環だろうか?

 ゲーム――……

 そう、琥珀は黛・慎之介に連れられ『妖精の眼<グラムサイト>』を習得するために、イベントキャラクターであるガレスの元へと赴いたはずだ。
 それなのに、知りもしない村の中で立っていた。
 もしかしたらこの村で起こる何かを解決しなければいけないのかもしれない。
 それならどうしてこの場所にいる人々は琥珀の名前を知っているのか。
 もしこれが本当にゲームの中のどこかの村に飛ばされたのだったら、琥珀の名前なんて知りもしないはず。

 ここはどこだろう。
 覚えては、いないけれど。
 この村を。
 この人々を。

 この――手を。

 琥珀がたどり着いた家も、村の他の家同様三角のロッジ。
「……ぁ」

 この家は何。

 知らない。

 知らない。

 覚えてない。

 それなのに、目じりがこんなにも熱い。
「お帰り琥珀」
 少年が振り返る。自分と同じ狼の耳と尻尾を嬉しそうに動かして。
 この手を伸ばした先に、懐かしき幸せがある。

『ただいま――――!!』

 笑顔のまま手を差し出した少年に亀裂が入る。
 暖かい微笑の世界を覆いつくしていく、闇。
『っ…!―――……!!』
 琥珀は目の前で倒れた少年に駆け寄り、その体を抱きしめる。
 名前を呼びたいのに、名前が分からない。名前を思い出せない。ただ憤りが琥珀を支配していく。
 さっきまで暖かかった体が、氷のように冷たい。
 闇の中で炎の赤が背中を熱く焦がす。
 振り返れば、笑顔で名前を呼んでくれた人たちが、次々に倒れていく。
 知らない、闇に。
 琥珀は少年の瞳を閉じ、立ち上がる。
『うああぁぁああ!!』
 銀の爪が、鋭く空を斬る。
 家がつぶれていく。
 悲鳴がまるでバックミュージックのように響く。

 ――――悔しいか?

 どこかで声が響く。
 高まる感情にまるでこの声に気づくことなく、琥珀は闇へと斬りかかる。
 闇は大きく、何度攻撃を仕掛けてもまったく手ごたえを感じない。
 まるで霧を殴りつけているみたいに。

 ――――怒るか?その瞳を黄金にして

 誰も居ない。もう誰もいないはずなのに、語りかける声は止まない。
 ただ疑問を投げかけるだけ。
「少し、黙っててください!」
 まるで耳元でささやき続ける様な声に、琥珀は叫ぶ。
 この叫びに、一瞬声が止んだ。

 ――――メビウスの輪には、終わりがない

 声は、くすっと笑ったようだった。

 その嘲笑ともとれる笑い声に、今まで我を忘れるようにして闇に切りかかっていた琥珀は立ち止まる。
 そして、後ろを振り返った。
 本当は守るべきもの、守りたいと思っていたもの、その全てが何もなく、気がつけば黒い時の中。
 振り向けば、蠢く大きな闇。
「…っ!!」
 振り下ろされた何かを琥珀は後ろに跳躍して避ける。
 目の前に闇取ってみれば、獲物はもう自分だけ、ゆっくりと自問をする時など与えてくれそうもない。
 伸びる闇の魔手は止め処なく琥珀に襲い掛かる。
 ある程度の間合いが開くと、お互いが体制を建て直し、その視線をぶつけ合う。
 一触即発に思えたその小競り合いに、琥珀はふっと瞳を閉じた。

 そう―――…

「怒りだけではダメなんですね…」
 ふっと口元に自嘲気味の微笑を称えて、無防備に立ち尽くす。
 そして振り下ろされた魔手を簡単に弾き飛ばした。

 この闇は、私の怒り。

 琥珀はきりっと瞳を細く絞り、闇に向かって飛び上がると、その銀の一閃を振り下ろした。














 光が、弾けた―――――





















【フラグ3:ガレスの紋章】

「帰ってきたか…」
 落ち着いた声音が耳に響く。
 ゆっくりと眼を開くと、ガレスがやれやれといったような表情で自分を見ていた。
「妖精の眼<グラムサイト>は取得できたようだな」
 ガレスは杖ですっと自分の手の甲を差した。
 つられて視線を落としてみれば、手の甲に幾何学模様の紋章が輝いていた。




next 〜吠える獣〜


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■   獲得アイテムとイベントフラグ詳細      ■
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ガレスの紋章獲得
よって『妖精の眼<グラムサイト>』習得


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【3962/来栖・琥珀(くるす・こはく)/女性/21歳/古書店経営者/格闘家】

【整理番号/PC名/性別/年齢/職業/今回のゲーム内職付け】
*ゲーム内職付けとは、扱う武器や能力によって付けられる職です。


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■         ライター通信          ■
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 Fairy Tales 〜美しい手〜にご参加くださりありがとうございます。ライターの紺碧です。今回は完全個別という事でかなり自由度の高いシナリオ加えてプレイングがなければ話が進まないという事もあり、凝ったプレイングありがとうございました。
 琥珀様、毎回のご参加ありがとうございます。今回は2度に分けての受注を行ったためお手数をおかけしました。毎度毎度有言不実行ライターで申し訳ないです。勝手に村人として少年という存在を作ってしまいました。楽しんでいただければ幸いです。もう直ぐこのシリーズも折り返しにさしかかります。
 それではまた、琥珀様に会えることを祈りつつ……