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<東京怪談・PCゲームノベル>


Track 16 featuring シュライン・エマ

 コトコトと音がする。それは目の前の、火が入っている鍋の音。台所で夕食の用意。今日の昼間、新鮮な里芋を頂いたのでそれで煮っ転がしなど作ってみている。折角人様から頂いた物、美味しく作って美味しく頂かなければ罰が当たると言うもので。それは今はこの草間興信所には私しか居ない。…武彦さんはその内に帰って来るとは思うけれど、零ちゃんの方は遊びに行っていて、今は留守になる。常連の皆に折角に誘ってもらえたところなのだから、たまには行っておいで、と快く送り出した。
 …零ちゃんの場合は、普段から喜怒哀楽は表情や態度に表れ難いのだけれど、今回の場合は少なくとも嬉しそうには見えたのでそこに関しては安心できた。よかったと素直に思う。ただ、そちらの――零ちゃんの外出の方は、武彦さんとは違い元々の予定からして少し帰宅が遅くなると言う話でもあって。出来ればご飯に間に合うように帰ってきてね、とは言ってあるが、果たしてどうなるか。
 出来れば、できたてを食べさせてあげたいかな、と思っているのだけれど。…まぁ、元々私と武彦さんに零ちゃんの分だけでは無く、それよりも少し多めに考えて作ってはあるので足りなくなると言う心配だけは元々、あまり無い。煮物は一度にたくさん作った方が美味しく出来る。そもそもこの興信所にはお客さんが――但し依頼人と言う意味のお客さんとは限らないが――よく来る。今日残ったとしても、恐らくは悪くなるまで置くような事にもならないだろう。…いや、そちらを考えると後々足りなくなる可能性の方が高いか。
 時折鍋の中の加減を見つつ、里芋の煮っ転がしだけでは無く夕食用に他にも色々と用意。時間の掛かる物、すぐ出来る物。余裕があれば片付けておく物まで考える。
 と。
 そこまではいつも通り――だったのだが。

 応接間の方で、控え目な別の音がした。
 自分が立てている音でも、鍋の音でもない音が。
 …そう聴こえたのは、気のせいじゃない。今ここに居るのは私だけ。いつも来る皆の内、誰かが来た訳――でもないと思う。心当たりのある音じゃない。
 当然、零ちゃんでもない。
 改めて時計の針をちらと確認。時間として一番高い可能性は武彦さん。けれど武彦さんが帰って来たと言う訳でもない。…武彦さんの立てる音ならもう耳にタコが出来るくらい何度も聴いて記憶している。と言うより、意識するまでも無く自然にわかるものに含まれる。今のこれは、『音』が全然違う。
 それでも、間違いなく『人』の音。そのくらいの区別なら、私なら特に耳を澄まさずともすぐに判別が付く。
 足音や仕種に伴う音、服の衣擦れ、呼吸音、心音。それら全部、僅かたりとも覚えがない相手。
 それどころか。
 その心音は、何処か、荒く躍っている。緊張している。それもただ慣れない場所であるから、それだけの緊張ではなくて。もっと――違う。…今日この場に初めて来ただけのただの興信所のお客さんでも、ない。ああ、お客さんならまずブザーを鳴らすかもしくは無断で入ってきたとしても声くらい掛けて然るべきか。もしくは、そうでなくとも取り敢えず客人用らしいソファに座る音、辺りがまず初めに聞こえそうな気がする。…今の場合は何かを物色するような音が先に来ている。
 荒く躍るその心音が表す感情は一応ながら察せられる。…勿論、音には個人差があるからそれそのものとは言い切れないけれど、近い音なら聴いた事が無い訳でもない。こう見えても色々と修羅場は潜っている。所長――と言うより常連さんもしくは依頼人さんの性質からして、この興信所では通常では滅多に味わえないだろう様々な事が起きるのだから。報酬云々さて置いて、自分の力だけではどうしようもないような危険な話に巻き込まれる事も少なくない。…だからこの草間興信所、いつまで経ってもお金は貯まらないのかもしれない。普段は口煩く言ってはいても、最後の最後には報酬を気にしないから。
 今聴こえる音の主として思い至るのは――取り敢えず、空き巣狙いかはたまた強盗か。…いや、興信所だからこその侵入者と言う事もあるか。何か隠し通したい秘密でもここの書類に紛れているか。恨まれている可能性も無いとは言えない。怪奇系を抜きにした興信所本来の仕事としては…基本的に浮気調査だの何だのと地味で根気の要るような事ばかりしてはいるけれど、それだけであったって逆恨みされる可能性は皆無じゃない。更には所長のどうしようもない趣味もあるから、それなりに危険な裏世界への伝手もある事はある。危険な事はなるべく止めて欲しいけれど、それは動かしようのない事実でもある訳で。
 ひとつだけマシなのは、この『音』の主が草間興信所に於いて著しく危険な仕事が転がり込んでくる主たる理由――人外や能力者ではないようだ、と言う事くらいか。いや、だからと言って私ひとりの力だけでは相手が一般人だとしても、その気で来られたらどうこうするのは難しい可能性も高いと言えるのだけれど。
 それでも――この場所を、放り出しては逃げられないわよね。
 今居るのは、私だけだし。
 武彦さんもじきに帰ってくる筈だし。
 …それまでくらいなら、何とか出来る…かな。
 心を決めると、息を殺す。台所を見渡して、偶然すぐ届く場所に置いてあった調味料の小瓶をひとつ手に取ってから自分の音を極力消した。台所内の廊下側、応接間から見れば死角になる場所に背を張り付かせ、耳を澄ます。…自分の音を消そうと努力するのは自分の気配を殺す事にも繋がるような気がする。…そう思うからこそ、お前がそうする時は本当に気配が殺せているんじゃないかと武彦さんに言われた事もある。実際他者から見てどうかはともあれ、とにかくそれを実行。ただ、間の悪い事に料理をしていた最中だ。奥に人が居る事は侵入者も初めから気付いているかもしれない。けれどせめて、こちらが侵入者の存在には気付いていない、そう思わせないと――動けない。
 応接間の方から聴こえる音がほんの少し変わった。物色する音が近付いてくる。少しずつ、狭い廊下を歩いているか。が、こちらに気付いたような音ではない。少し安堵する。…いや、安堵しているような場合ではないのだが。
 自分の位置にやや近付いて来た足音の間隔、呼吸音や心音の位置の高さから相手の体格を割り出してみる。…背は高い。大柄。喉を滑る呼気の音程。男の可能性が高いかもしれない。手許の調味料の小瓶を改めて見る。…『これ』では少し難しいか。
 そうなると『人の耳では聴こえない声』を使った方がいいかもしれない。…でもそれだと――効力を考えると、正直加減が難しい。具体的にそんな音を聴いた事も実際声で作った事も無いから、想像で実行するしかなくなる。弱過ぎれば多少の頭痛や吐き気はもよおしても結局のところ殆ど意味が無いだろうし、強過ぎれば本気で鼓膜を破って三半規管を壊し――下手すればその奥まで揺さ振り、対象を殺してしまい兼ねない。そこまでするのは――さすがに最後の最後、の手段で良い気がする。
 どうするべきか。
 考える間にも、近付いてくる侵入者――壁一枚隔てたすぐ後ろに、居る。閉めもしていない戸口はすぐ側。警戒している心音と呼吸音。こちらを窺っているのか。私がすぐ傍にいるのに気付いた様子は無い。…ここまで奥に来れば料理中である事は疾うにバレている筈。誰か家人が居て然るべきとは思っているだろう。だが、そこで――台所の中まで入ってくるか、来ないか。それで目的がある程度絞られる。このままそこに留まり、様子を確かめるだけ確かめて息を殺したまま引き返すならば、この侵入者は極力家人と遭遇したくない空き巣の類なのだろうとはわかる。もし入ってくるのならば――何らかの形での『人間』目当てか。…他ならない草間興信所である以上、金目当ての強盗と言う間抜けな事は――無いと思うけれど、昨今では人殺して奪った金が数千円やら数万円だけって事も起き兼ねない御時世でもあるからその可能性も捨て切れないか。幾ら貧乏でも閑古鳥が鳴いていても安普請でも何でも、ここは都会の街中で事務所を開いている――開く事が出来ている場所になる。
 動いた。廊下を戻ろうとしている。思い切って戸口から廊下を覗いた。見えたのは背。
 咄嗟に。
『何をしている』
 …出来たのは、調味料の小瓶の角を侵入者の背中にぐいと突き付けての、武彦さんの声真似。息を呑み動きを止める侵入者。電気工か何かの作業着らしき服を着た男。
『…振り返るな』
 侵入者の顔がゆっくり後ろに向こうとしたそこで、ぴしゃりと言い付ける。…見られたら最後だ。それは私は背丈はあるが――女である事は一目瞭然。ついでに手許を見られてしまえば突き付けている物がただの調味料の小瓶だともすぐバレる。
『もう一度訊く。何をしている』
「…」
 侵入者は何も言わない。心音が跳ね上がっている。呼吸音が緊張で荒くなる。そんなパニック状態の中でも、こちらの様子を窺っている――動きに伴う筈の他の音は、震えもせずに落ち着き払っているから。
 侵入者は何も言わない、動かない。弁解もしない。
 仕方無い。
『…そのまま、進め』
 背中に突き付けた角に少し力をこめる。侵入者はそれに促されるように歩き出した。短く狭い廊下を抜け、廊下よりは幾らか広くなる応接間へと、戻る。
「…どうする気だ」
 緊張で喉が貼り付き、喘ぐような声がそこまで来て漸く私に投げられる。…取り敢えず現時点では疑われている様子は無い。ナイフか何か、刃物を背中に突き付け主導権を握っている『男』が居ると思われている。
 ふと、侵入者の心音がどきんと高鳴った。何か失敗したか、内心で焦り、周辺の状況を確認。私の手許。侵入者の視界になるところ――所長のデスクの後ろになる、雨戸を閉めてある、黒い窓。
 室内の様子が、映っている――見えてしまう。
 致命的なその事実に気付いた途端、鈍い衝撃と痛みが来た。突き飛ばされたと気付いたのは壁にぶつかってから。調味料の小瓶も転がっている。立場を逆転させた侵入者の手に、いつの間にか刃を飛び出させたスイッチナイフが握られていた。…そんな物も持ってたのね。もっと早く確かめておけばよかった。
「このアマ…虚仮にしやがって」
 声の調子が、酷く興奮している。…刺激の仕方によっては、本当に刺す。
 どう対するか。
 侵入者は怒りに満ちた声を上げている。
「どんな手品使ったか…知らねぇが」
 今の、『男の声』。
「…手品じゃないわよ」
「…てめぇ」
「…刺す気?」
「…こうなっちまったら…仕方ねぇからな…」
「目的の物、まだ見つかってないんじゃないかしら」
「…だったら何だってんだ…」
「それこそが必要なんじゃない訳? 私なんかにかかずらってるよりも」
「見られたからには放り出しては行けねぇんだよ…」
 ぎりぎりの状況――かもしれない。
 相手の心音が高く、早く打っている。そのまま一定の状態が続いている。…ただ、確り覚悟を決めている音では無いのが救いか。まだ何とか――出来るか。
 思いながらさっき考えるだけ考えていた事を実行。自信は無い。それでも私に出来る奥の手。人の耳に聞こえない低い音を――低周波を。
 声と同じ要領で作り出し、空気を震わせる。
 途端。
 侵入者が不意にくらりとよろめいた。不思議そうな顔をしたまま、空いている手で頭を押さえる。
 私はそれを確認してから、侵入者の顔を見る。と、すぐに見返された。そして――向こうも察した。
 今、私が何かをしたと。
「…何…しやがった…」
「さあ? …天罰じゃないかしら」
 堂々ととぼけて見せる。
 そんな私の言葉に答えたのは、何処か怯えた色の混じった、目の色。
 私はその間に、極力平静に見えるようにゆっくりと、努力しながら立ち上がろうとする。何とか、足に力は入るよう。立てそうだ。
 侵入者は、立ち上がろうとする私に、襲い掛かっては来ない。
「…」
 それどころか、侵入者はそんな私の言葉に、停止する。ただ、最後の頼りとでも言いたげに、男の手に握られたスイッチナイフの切っ先はこちらに向いたまま。
 これでは、動けない。
 ただ、向こうもそれ以上動けないようであるのは――不幸中の幸いと言えるかもしれないけれど。
 侵入者の男は、すぐ側――応接間で来客用に使っているソファを見、促してくる。
「座れ」
「あんたも」
 間、髪入れず返す。
 睨まれる。
 が、言葉以外で挑戦はせず、言われた通り私はソファに座る。と、侵入者の男も、それを認めてからテーブルを挟んだ向かい側のソファに座った。ただ、スイッチナイフの切っ先は伸ばしてこちらに向けている。今度は微かに震えている。私の『声』で――とは言っても向こうは『それ』の正体が声だとは気付いていないが――とにかく私が何かした結果、自分の身に原因不明の頭痛や不調が起きているらしい事が、気味悪いのだろう。
「…また妙な真似したらぶっ殺すぞ」
「…これ以上何かするなら私もタダじゃおかない」
 少なくとも、頭痛じゃ済まさないから。
 …殆どハッタリ。それでも――嘘は言っていない。やろうと思えば、出来る事はまだある。奥の手として『声』のバリエーションはまだある。ただ、私は今起きているような突発的事態に対して、これ程肝が座っている女だったか――と言う事にこそ、少々首を傾げたいだけで。今ここで話している女は本当にシュライン・エマなのか。そんな当たり前である筈の事から既に不思議に思えて来ている、何だか他人事な自分がいる。
「先にこっちに突っ掛かって来たのはてめぇだぜ」
「あんたみたいなのが来るのに居合わせた以上、草間興信所の所員としては好き勝手やらせる訳にはいかないだけよ――」
 言った、そこで。
 私はドアの――安普請の壁の向こう、表から聴こえる、耳慣れた『音』に安堵を覚えた。
 やっと。
 思いながらも、同じ調子で続ける。
「――今この場で私をどうにか出来たとしても、この草間興信所に手を出して、ただで済むと思わない方がいいわ。ここの所員は結構怖いのよ。…私を含めてね」
 言いたい事としてそれだけ、言っておく。
 そして私は。
 ――次に来るだろう鼓膜への衝撃を、少々覚悟した。
 直後。
 備え付けてある来客用のブザーが唐突に鳴り響く。空襲警報かと疑いたくなるような破壊的な音。あまり聴きたくはないが自分くらいこの音に慣れていて、承知もしていればそれなりに我慢は出来る。が、初めてもしくはほんの数回聴いただけならば――それもこんなタイミングで聴いたならば絶対に驚くだろう音。予想通りにぎょっとする侵入者。そして――ぎょっとして、びくりと肩が跳ね上がった侵入者のすぐ後ろ。
「…動くな」
 低い声の警告。私にとっては聴き慣れた声の主。侵入者にとっては先程狭い廊下で聞いたのと同じ声。ブザーの音に乗じて、殆ど無音のまま開けられたドアとその向こうから飛び出して来ていた武彦さんがそこに居た。背後から飛び掛かるような形になり、侵入者の持っていたスイッチナイフをまず指から離させ、床に叩き落としている。…あまりちゃんと確認は出来なかった。けれど私が見ている間に確かに、武彦さんは私の向かいのソファに座っていたその侵入者と取っ組み合って、結果、侵入者を床に叩き伏せていた。その侵入者はどうやら意識も飛んでいる。
 …殆ど一方的に終わったと思う。武彦さんの目に何処か嫌そうな色があるのもいつもの色付きグラス越しに見えた。このひとは実はこんな風に直接人を傷付ける事を嫌う。…調査員の皆がした方が効率がいい上に威力も期待出来る為必要が無いから、荒事になった時でも殆どの場合で見せる事は無いけれど、実は案外腕っ節も強いのだ。その上にハードボイルド指向だとか常々公言していたり銃に興味があったりと趣味の方は少々荒っぽい気もするが、彼のその手は本質的には人を傷付ける事を嫌っている心底優しい人なのだと思う。ともあれ、武彦さんが帰って来てから侵入者を無力化させるまで、殆ど時間は経っていない。
 深い溜息と同時に緊張が解けた。帰って来てくれた武彦さんの姿に安堵している自分。彼の手により床に伸びている侵入者の姿、侵入者の手から離され床に転がっている――今武彦さんが拾い上げている――スイッチナイフを確認し…漸く、自分が危ない橋を渡った実感が湧いて来た。もう大丈夫なのに、ううん、大丈夫だからこそか――今頃になって少し、震えが来ている。
 …武彦さんが少し怒ったような顔でこちらを見ているのも道理かも。
「こら」
 拾ったスイッチナイフの刃を仕舞い、武彦さんはテーブルの上に無造作に投げ出す。
「…こんな物を持っている相手とひとりで遣り合おうとするか?」
「…何とかなるかと思ったの」
 時間稼ぎくらいなら。
「勿論、素直に包丁とかアイスピック持ち出しても良かったけど、それでもし間違って本当に相手を刺しちゃったりしたら後味が悪いから、止めてこれにした訳なのよ」
 私の『声』と、調味料の小瓶を使って。
「…それ以前にな、ここから逃げるなりトイレに篭城するなり手はあるだろうが」
「だって…武彦さんならすぐ帰ってくるってわかってたし」
 …ただでさえまともにお金になる仕事が少ないんだから、もし何か依頼に関係する書類が目当てだったなら手を出させる訳にも行かないでしょ? 逃げたり篭城したりしてたら…幾ら警察呼んだとしたって警察が来る前に目的果たして逃げちゃう可能性はあるし。それにコンロの火も点けっぱなしだったし。
 続けて言いながら何となく応接間の時計の針に目が行く。武彦さんから、お前の身の安全の方が余程大切だろうが、とも即座に返されたが…その時、台所からいい匂いもして来ている事に気が付いた。…そろそろちょうど煮えた頃だ。反射的に思い、おもむろにソファから立つ。…取り敢えず自分の腰は抜けていなかったらしい。
 武彦さんが私の身を案じて怒っている事は嬉しいし、同時に自分のした無茶が申し訳無くもあるのだけれど…『それ』と『これ』とはちょっと別の話になる。
「…シュライン?」
 訝しげに私を呼ぶ武彦さん。それはそうかもしれない。…何たって、たった今侵入者とどたばたやった直後になる。しかも床とお友達になって伸びてはいるがまだ侵入者はその場に居る事も確かで。警察にもまだ通報していない。そんな時に平然とこんな事を気にするのはちょっとアレかなとは思うけれど――折角私の身も武彦さんの身も興信所自体も無事に済んだのだから、ついでに鍋の中身も無事に済ませたい。
「…里芋の煮っ転がし。そろそろ出来上がったみたいだから火消して来なきゃ」
「…」
「武彦さん?」
「…お前には負けるよ」
 数瞬の沈黙の後、苦笑混じりのそんな声。
 言われて、自然に笑みが零れたのは――気のせいだったかしら?

【了】


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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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 ■整理番号/PC名
 性別/年齢/職業

■PC
 ■0086/シュライン・エマ
 女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

■NPC
 □草間・武彦/草間興信所所長。最後まで不在と頼りにならず(…)
 □草間・零/名前のみ登場。設定は通常と同じで。

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          ライター通信
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 このシナリオとも言えないようなシナリオにも(…)いつも発注有難う御座います(礼)
 漸くのお渡しになります(相変わらず時間掛かり気味で…/汗)

 固ゆで、了解致しました。…何だか嬉しかったです(ぐ、と握り拳/笑)
 ただ、導入部分で長閑にご飯作ってたり…落ちも同じくご飯で付いてたりと…やけに日常路線で突っ走る内容に首を傾げられたかも知れませんが(汗)。…て言うか私の固ゆでの基準て何処か変なのかもしれないと時々悩んでいたりいなかったりしております…(どっち)
 取り敢えず、私の基準だとこれは一応固ゆでの範疇になります。
 …派手なドンパチややくざ屋さんの類の登場は無いですが…そう言った方面で行った方が宜しかったでしょうか…?(汗)

 如何だったでしょうか?
 少なくとも対価分は楽しんで頂ければ幸いで御座います。
 では、また機会がありましたらその時は…。

 ※この「Extra Track」内での人間関係や設定、出来事の類は、当方の他依頼系では引き摺らないでやって下さい。どうぞ宜しくお願いします。
 それと、タイトル内にある数字は、こちらで「Extra Track」に発注頂いた順番で振っているだけの通し番号のようなものですので特にお気になさらず。16とあるからと言って続きものではありません。それぞれ単品は単品です。

 深海残月 拝