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雨が止まない
しと、しと、しと、しと、しと。
――今日も雨が降っている。
図書室の濡れた窓を眺めながら、優花は溜息をついた。
これで一週間連続だ。梅雨の時期でもないというのに、どうしたんだろう。
校庭でひとり、退屈そうに跳ねているあの女の子も気になる。
窓からだから詳しくは見えないが、傘もささずにいるのは奇異なことのように思えた。
「……雨ふらしじゃない?」
ドア付近から、二人の話し声が聞こえた。
「えーないよー」
(そうそう)
優花も心の中で相槌を打った。
そんなモノは実在しない。
「絶対雨ふらしだって。だってこの町以外は晴れてるし、怪しいよ!」
「まさかー」
二人はやや熱っぽく話しながら、図書室を出て行った。
(何言ってるの――)
馬鹿馬鹿しい話だと思いながら、本の整頓をする。
雨ふらしだなんて――。
視線が床の隅に落ちた。
そこにあったのは、一冊の絵本だった。頁がめくれている。
(先週来たときは気が付かなかったけど――)
あのときは、地震のせいで棚から落ちた本も何冊かあった筈だ。それだけで済んでよかったと思いながらも、作業が面倒になったのでよく覚えている。
拾い忘れたのだろうか。
めくってある頁を見て、優花は顔色を変えた。
全くの白紙。他のページを見ても、何も書かれていなかった。
「どうして?」
表紙に目をやって初めて、優花はその意味を理解した。
『あめふらし』――それが本のタイトルだったから。
「……いるのかもしれない」
――カタン。
ふいに後ろから音が聞こえて、優花は振り返った。
――自分の代わりに調べてくれる人がいるような気がしたから。
――これは、その日限りの物語です。
雨がふって、ふって、ふって。
いつか晴れる日がくる。
その“いつか”限りの物語です――
(出版社の名前の横に鉛筆で書かれた、小さな文字たちから)
……雨の日堂出版
――――……。
――あっ……。
静かな図書室内では、自分の立てた音がやけに響いた気がして――月夢優名は心の中で声を出した。
「ゆ〜なちゃん?」
図書委員である優花は優名のことを知っていて、不思議そうに声をかけた。
「ごめんね、本を置きに行こうとしたんだけど」
手には三冊の本がある。刺繍の本を選びに机の上へ持ってきたものの、頁をめくってみれば優名の興味とは少し違う内容だったので、戻しに行くところだった。
元あった場所に本を並べて、ふっと呟く。
「あめふらし、ね」
この学校の名物とも言える(カスミ先生は否定しているけれど)現象に、優名は大して興味がなかった。この手のことが好きな人はたくさんいるし、特に自分がどうこうしようとは思わない。
でも――。
「気になりますね」
図書室の雰囲気に合わせたような静かな声がして、優名は隣を見た。
金色の瞳が穏やかに微笑んで――マリオン・バーガンディは言った。
「あめふらしが本当に本の中から出てきたのなら、面白いのです」
柔らかそうな髪の毛に、若干雨の優しい匂いが香っている。先ほど図書室に入り、辺りを回って本を眺めていたところだったのだろう。
事実、彼は今来たばかりだった。
マリオンにとって本に囲まれた空間というのは好ましいものだったし、同時にある種の発見や驚きをくれる所でもある。
――折角来たのですから、調べてみるのです。
マリオンは優花に声をかけた。
「本を見せてもらえますか?」
「雨の日って、嫌だなぁ」
退屈そうな霧杜ひびきの声に、一緒にいたクラスメートが頷いた。
通学は面倒だし、気分も暗くなる。おまけにそんな日が一週間も続いているのだ。空を見上げる度に、晴れないかなと願ってしまう。
「おまけにあたし、傘がなくなってるし……朝持ってきた筈なのにな……」
「盗まれちゃったの?」
「うん……」
溜息混じりに言う相手に、ひびきは笑顔で言った。
「それなら大丈夫だよ。見ててっ」
持っていた帽子を被り、ニッコリと笑う。
そうしてから帽子を取り、クラスメート――お客さんに見せる。
「何もないよね?」
「うんっ」
相手は瞳を大きくして、ひびきと帽子とを眺めている。
ポンッ
帽子をクルクルと真上に飛ばしてすぐ、ひびきもジャンプして一回転回る。床におりてから片手で帽子を受け止めて――鮮やかな動きだった。
「わあ!」
クラスメートが声を上げたのは、ひびきの身のこなしに対してでもあったけれど、何よりその帽子の中には水色の折りたたみ傘が入っていたからだった。
「すっごーい!」
「えへっ、ありがとっ」
マジックには慣れているが、褒め言葉にはなかなか慣れなくてその都度照れた笑いを浮かべてしまう。ひびきにとって、見ている側が喜んでくれることが一番なのだ。
それじゃあ、一緒に帰ろうか――というとき。
「絶対あめふらしだってー」
「もう、図書室でさんざん聞いたって!」
帰りがけの二人の女子が、歩きながら話し合っている。
――あめふらし? 図書室?
それが雨の原因なのだろうか。
何だかよくわからないけど、図書室に行ってから考えようっと。
「ごめん、先に帰っててねっ」
ひびきは階段を駆け上がって、図書室のドアを開けた。
興味に溢れた小さな溜息を、マリオンが零した。
――真っ白な本。
なのに、表紙のタイトルだけは書かれている。まるで分厚い日記帳のようだ。
「変わった本だねー」
「ここの主人公はお出かけ中なのですね」
「あたしたちを待ってるのかな?」
頁をめくっても、めくっても、空白ばかり。
ただ、最後の頁……出版社と著者名の隣には妙な書き込みがされていた。
「何でしょう、これは――」
マリオンが呟くのと同時に、ガラガラとドアの開く低い音がして――亜矢坂9すばるが姿を現した。
彼女の目は最初から『あめふらし』に注がれていた。
「やはり、ただの本ではないようだ」
ズカズカと本の傍まで近づいてくる――けれど、辿りつくまでに数度棚にぶつかるか床の窪みに躓いた。
「だ、大丈夫? ……体調が悪いの?」
「いや、万全だ」
優名の問いかけにすばるは顔色一つ変えずに返答した。
すばるは今、対象物以外の景色が見えなくなる代わりに本の分析を行っている。転ぶことを考慮するよりも歩きながら装置を軌道させた方が素早く判断できる――それは非常に合理的な考えと言えた。
「何かわかる?」
すばると本とを交互に眺めて、ひびきが訊いた。
この本を見たときから、他の本との違和感――霊力のようなものを感じていたのだ。
「すばるが調べたところでは、」
表情のない眼がせわしくなく動いている。塵一つ逃がさず、それらは情報として受け入れられ、本との関連性がないことが証明された瞬間に消去されていく。
「これは何だ」
すばるが拾いあげたのは、鈍色のビィ玉だった。これは取っておいた方が良いと判断して、ポケットに仕舞っておく。
「……今の状況は、本が正しく役目を果たしている結果のようだ。つまり、元からこの本の物語は外で繰り広げられるべきものだったと言える」
「んー。“飛び出す絵本”みたいなのは、よくあるけど……」
「きっかけは、多分あの地震だろうけど――」
優名は出版社部分に視線を落とす。
――雨の日堂出版。
作者名は書かれていない。
「優花ちゃん、この本ってどこから来たの?」
「さ、さぁ……。でも、こんなよくわからない本なら、きっと卒業生か生徒の寄贈本だと思う。私はいなかったけど、確か地震のあった前日に、寄贈本が結構な数になったからって本の入れ替えをしたから……そのときじゃないかな」
「じゃあ、やっぱり終わらせるには“あめふらし”さんを捜さないと駄目かな」
「一旦校庭に出ましょう。おそらく外にいるのが、あめふらしなのです」
「――優花ちゃんは来ないの?」
図書室を出るとき、優名は訪ねてみた。
「最初に本に気がついたのは貴方なんだから、来た方がいいと思うな」
「そうかもしれないけど、私には係りの仕事があるから……」
優花は迷ったような表情をしてから、
「仕事が終わったら、そっちへ行くかもしれないけど……。今は本を預かってるね。それより……ねぇ亜矢坂9さんに訊きたいんだけど」
「何だ?」
「どうして来てすぐに、この本のことに気付いたの? 何かこの本に重大な用があるとか?」
すばるは数秒、黒い眼で優花を見据えてから、静かに答えた。
曰く、
「偶然ここを通りかかり、偶然本に気付いたのだ。簡潔にまとめるなら、ただの通りすがりだ」
非常に判りやすい答えである。疑わし過ぎて、いっそ清々しいくらいだ。
――今日も、雨。
昨日も雨だった。
一昨日も雨だったし、その前も雨が降っていた。
――不思議なのよねぇ。
シュライン・エマは傘ごしに空を仰いだ。傘の上には無数の雨粒がたまって、今にも地面に零れてしまいそうな水溜りが出来ている。
四日前から仕事でここを訪れているけれど、一日も晴れの日はなかった。
シュラインが興味を引かれたきっかけは、自宅で翻訳の仕事をこなしているときだった。rainyのrの文字を見た瞬間に「そういえば、あの町は雨続きだったわね」と思い出し――何気なく日々を遡って、町の天気を調べてみた。
そうして気がついたのだ。地震以来、この町だけ雨続きだということに。
花壇には薔薇が咲き始めている。雨も手伝って、あの柔らかな匂いが校庭全体を包んでいた。
――その中で一人飛び跳ねている女の子がいる。
びしょ濡れになっていることを気にするでもなく――跳ねる度に、泥が足については雨で洗い落とされている。だからその子の身体は泥で汚れることはなかった。雫は次から次へと現れて、少女を濡らし、清めていく。
「ひとりで遊んでいるの?」
声をかけると、灰色の瞳をした少女がシュラインを見上げて、ゆっくりと頷いた。
「でも風邪引いちゃうわよ。傘の中に入る?」
「……」
静かに首を横に振る。
「そう、雨が好きなのね」
静かに傘を閉じて、シュラインも雨に身体を濡らしてみる。
……ポト・ポト・ポツ・ポチャリ。
「濡れますよー」
ひびきの声に、シュラインが微笑む。
「ちょっとだけね。案外良い気持ちなのよ」
「あれは間違いなくあめふらしだ。よって、調査を始める」
すばるが両の掌をあめふらしへと向けるのを、マリオンが怪訝な顔つきで見た。
「何をするのです?」
「先ほどの分析結果を更に詳しく調べるのだ。この本の物語の進み方が、我々の動き方次第で全て変化することなのか、それとも我々がこの本のプログラム通りに動かされるのか、あるいはその中間にあるのか――今から冷線メーサー砲を放つ。あめふらしが凍って、タイトルが『ゆきふらし』にでもなれば、我々次第で物語がいくらでも変化することが実証されるだろう」
マリオンはスッと手を伸ばし、すばるの腕を握った。
「それはしない方が良いと思うのです」
ひびきも同意見だ。
「いきなり凍らせちゃうなんて、可哀想だよ!」
「これでも気をつかっている方だ。一番合理的方法を選ぶなら、今すぐ対象を粉砕させることも出来る」
「絶対だめ!」
優名とひびきが同時に止めた。
「必ずするとは言っていない」
仕方がない――すばるは溜息をついた。正確には、心の中で溜息をついただけで表情は変えなかった。
多数決には勝てないというか――タイトルを変える等の大きな変更は難しい、といったところか。
「私にはまだ話が飲み込めないんだけど、この子はあめふらしなのね?」
「みたいなのです」
「成る程ね。雨が好きなのも納得だわ。じゃあ、一週間ずっと雨続きなのも、この子に関係しているのね。……ずっとひとりで、寂しかった?」
あめふらしは小さく頷いた。何か言いた気でもある。
「……」
「しゃべれないの?」
ひびきの問いに、あめふらしは弱く頷く。
「初めから音声が組み込まれていないのだ」
「意思の疎通がし辛いのですね。何か――あ、そうだ。あの本は図書室にある筈ですね、あれを見れば良いのかもです」
「あたしが取ってきます。みなさんひとまず校舎に入ってください」
優名はそう言って、図書室へと向かう。
外に出てみれば、花の香りと、雨の音と、水を含んだ匂いがして――お気に入りの虹色の傘を開いたときから優名の気持ちは少し弾んでいて、さっきより動作も明るくなっていた。
「どの教室へ連れていけばいいのかしら?」
首を傾げるシュラインに、ひびきが答えた。
「使ってない教室があるから、そこがいいかな。案内するね」
本の中の人物と遊べるなんて、大きなマジックを見せられているみたいだ。雨の日を憂鬱に感じていたこと等忘れて、ひびきの声は元気だった。
ゆきふらしは、いいました。
「みんなと おはなしがしたいな」
――本当に丁度良いところに出くわしました。
優名が部屋から持ってきたティーカップに、持参した紅茶を注ぎながら――マリオンはニッコリと微笑んだ。
あたたかな湯気が鼻腔をくすぐる。人数分注ぐと、今度は五人の前にお菓子を差し出した。
「クッキーを持って来ていたのですが、いかがですか?」
それを見たひびきが眼を輝かした。「きれーい」
小麦色のクッキーの表面には、紫色の花びらが一枚入り込んでいる。
「アリアケスミレが入っているのです。ちゃんと花びらごと食べられるので、大丈夫ですよ。今の時期だけのお菓子なのです」
「美味しいわ」
シュラインは自分でも味わいながら、あめふらしに視線を向ける。
「……」
優名は本を眺めて言った。
「おいしい――って」
「持ってきたかいがあるのです」
マリオンは首を少し傾けて、柔らかな髪を揺らした。「飲み物もいかがですか。身体があたたまるのです」
ポチャ、ピチャ、ポト。
すばるは天井を見上げ、それからゆっくりと教室全体を観察した。
この部屋だけが雨漏りをしている。
ひびきは自分のマジックで出した小さな箱や教室の端にあったバケツ、それから窓際に転がっていた花瓶を雨の落ちる場所に置いてみた。
……バケツには低い雨音、花瓶は可愛らしく微かな雨音。
「教室全体が雨に包まれている感じね」
シュラインの言葉をも飲み込むように、優名はゆったりと紅茶を飲んだ。
窓からも、僅かだが雨音が聞こえる――今開いている頁には先ほどシュラインが口にした言葉が載せられている。“――と、シュラインさんが言いました。ゆうなさんは、ゆったりとこうちゃをのんでいます”なんて文章を見ていると、口元に笑みが零れて来る。
ひびきは面白げにあめふらしを見つめている。
教室に入る前にタオルを出してあげたけれど、それはとうに濡れてしまって、絞れば水が零れるほどになっていた。常に身体を濡らす程度に水が出ているらしい。ふき取ったところから溢れてくる、というように。
数分観察してから、おもむろにひびきは小さな花瓶を出した。群青色の、不透明な瓶だ。
ひっくり返してみせる。勿論、何も入っていない。
軽く弾みをつけて、空中で回転させながら投げる。
ポンッ
素早く受け取って、左手の掌の上でひっくり返す――零れた水が、掌に小さな水溜りを作った。
「どうやったの?」
感心したように訊くシュラインに、ひびきは笑顔のみで答えた。ナイショ、ということだ。
優名とマリオンは楽しそうに眺めている。あめふらしは眼を丸くして花瓶を見つめている。
「今のに仕掛けはあったのか?」
「それって最高の褒め言葉だね」
疑わしそうなすばるの問いにも、ひびきは笑顔以外語らなかった。
あめふらしはその花瓶に興味を抱いたようで、ひびきから借りて覗き込んだりひっくり返したりしている。けれどそこから水が流れてくることはないので、しきりと首を傾げる。
数度ひびきはあめふらしの前で同じことをやってみせたが、その度にあめふらしは驚くのだった。
「いいですか?」
マリオンは会話の途中であめふらしの頭を撫でてみた。ひんやりとした水の感触を楽しんでから、今優名が持っている本を覗く。するとそこには案の定“マリオンくんは、あめふらしのあたまをなでて、ニッコリわらいました”と文章が書き加えられている――これでは私が子供みたいなのです、とマリオンは苦笑したけれど。
物語は一旦詳細に書かれてから、話が進むにつれてだんだんと端折られて、前のページが短く修正されていくようだ。
夕方の色がだんだんと深みを帯びて来た頃、教室に優花が入ってきた。作業が終わったらしい。
優名はあめふらしを抱き上げると優花の傍まで連れて来て言った。
「せっかくだもの、撫でてあげて」
「……うん」
優花の指があめふらしの頭を優しく撫でる。
「……」
「『ありがとう』ですって」
頁をめくったシュラインが伝えてくれた。
「何々……私たちにお礼をしたいって言っているみたいよ」
あめふらしはシュラインから本を受け取ると、ポンポンとはたいた。
「……」
もう一度はたく。
「……?」
「もしかして、これを探しているのか?」
すばるが鈍色のビィ玉をポケットから出した。
それを眼にしたあめふらしは飛び跳ねて喜んだ。それだ、と言わんばかりに。
ビィ玉に息を吹きかける。
淀んでいた色が払われて、虹色に変わった。
「どうするのです?」
マリオンの声にあめふらしは微笑んでみせて――がらりと窓を開け、ビィ玉を空に放った。
校庭の木々たちが一斉に声をあげる。
風が吹いたのだ。
一瞬で雨が消えて、ここの教室から空を繋ぐ虹が現れた。
もう帰るのかと訊くと、あめふらしは静かに頷いて――雨粒が水溜りに溶け込んで行くように――物語の最終ページに身体を沈ませた。
その瞬間を逃がさないように、マリオンがデジカメのシャッターを切る。
あめふらしがいなくなると、教室の虹も消えるのだった。
あめふらしが嬉しそうに虹のかかった空へ帰っていくのを、五人が見上げている絵――シュラインはゆっくりと眺めてから本を閉じた。
出版社名が記してある隣には、鉛筆で「その日限りの物語」と書いてある。一日経てばリセットされて、頁をめくったときから新たなあめふらしの話が始まるのだろう。
「これは私が図書室に戻しておきますね。あ、でも……書庫に入れた方がいいのかな」
「そうねぇ……。あとは封印しておくとか――きっと以前にも封印されていたことはあるだろうし。安易に頁をめくられても困るものね。けど、ずっと仕舞っておくのも可哀想ね」
「うーん……」
悩む優花に、ひびきが明るく言う。
「たまに開いてあげればいいんじゃないかな。今日、ここであめふらしさんに会ったのも何かの縁だしね。みんなでお話を楽しむのも良いと思うよ」
「そうだね。考えてみる」
優花が立ち去ると、優名もティーカップを片付け始めた。これから寮へ戻ったらのんびりとお風呂に入って、あたたかいココアを飲んで――。
マリオンも残ったクッキーを仕舞ってから、そっと先ほどの写真を表示させてみた。そこには本の絵とはまた違う瞬間――窓に伸びた虹と、本に入り込もうとしているあめふらしが写っている。
無駄に時間を要したのではないかと思いつつ、すばるは本のことを少し気にかけていた。更に構造を覗いてみたいという好奇心にすぎず、すぐ忘れてしまう感情ではあるが――。
窓の外では段々と暗闇が近づいて来ている。星の綺麗な夜になりそうだった。
終。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号/ PC名 /性別/ 年齢 / 職業】
2803/月夢・優名(つきゆめ・ゆうな)/女性/17歳/神聖都学園高等部2年生
0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
3022/霧杜・ひびき(きりもり・−)/女性/17歳/高校生
4164/マリオン・バーガンディ/男性/275歳/元キュレーター・研究者・研究所所長
2748/亜矢坂9・すばる(あやさかないん・−)/1歳/日本国文武火学省特務機関特命生徒
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■ ライター通信 ■
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初めまして、もしくはお久しぶりです。
本当に久々の依頼となりました。ご参加下さったみなさまに大感謝です。
特に大きな動きのある話ではありませんが、少しでも楽しんでいただける箇所がありましたら幸いに思います。
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