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<東京怪談ウェブゲーム あやかし荘>


あやかし荘:宝探し

-始まり-

 部屋の中で恵美と嬉璃はコタツを囲んでほのぼのと茶をすすっていた。
 すると、何か思いだしたように、嬉璃は恵美の側に寄り、耳打ちした。
「実はな、この屋敷にはすごいお宝が眠っておるんぢゃ」
「え、うそ」
 思わず声を上げると、嬉璃の顔をまじまじと凝視した。
「内緒ぢゃぞ。こんなことが知れたら宝探しに人が集まってくる」
 唇に人差し指をあてつつも、ニヤリとほくそ笑む。
 
 そんな2人の会話をこっそり聞いていた者がいた。
「宝物?」
 その人物は少し考え、そして唇だけに笑みを浮かべると、嬉璃と恵美の部屋を一瞥した。
「こうしちゃいられねえな」
 声にならない笑いを浮かべながら部屋を後にした。

-崎岡空子の場合-

 廊下の隅で機会を窺っている少女がいた。
 年の頃は、16,7歳。派手な顔立ちをした美人の女の子――崎岡空子だ。
 空子は、物陰から恵美の部屋の様子を窺っていた。
 さっき、嬉璃があやかし荘には『宝物』があると言っていた。
 それを聞いていた空子は、『宝物』はもしかしたら恵美がいる部屋にあるのではないかと思ったのだ。
 他の人は、庭に出たり、他の部屋を探したりしている。
 空子は、皆が探しそうにない――探そうと思わない――所がそうなのではと思っていた。
 そうなると、恵美と嬉璃がいる部屋なんて、探せない――嬉璃の存在が恐ろしくて――場所である。
「絶対あそこにあるわ」
 そう呟くと、身をひそめた。
 一番奥の突き当たり。そこが恵美の部屋になる。
 
「……じゃあ」
 恵美と嬉璃が連れ立って部屋を出た。
 
 やった――密かに微笑むと、空子はさらに身を縮めた。

 2人が空子の目の前を通っていく。
 物の陰に身をひそめている為、2人からは空子の存在は見えない。
 空子は鼓動を高鳴らせながら、息をひそめた。

 ニヤリ――嬉璃がほくそ笑んだが、空子は気付かなかった。

 2人の話し声が次第に遠のいていく。
 そして、玄関を開ける音。
 館内が静かになった。
 空子はキョロキョロと周囲を見回した。
 誰もいないことを確認すると、足音を忍ばせながら恵美の部屋へ近付く。
 鍵はかけられていないようだ。
 周囲を警戒しつつも、そっと扉を開き体を中へ滑り込ませる。

-室内-

 部屋の中央に良く使い込まれたちゃぶ台、壁には質の良い戸棚が置かれている、至ってシンプルな部屋である。
 ふかふかの座布団の中央が少しくぼんでいる。
 少し前まで誰かがそこに座っていたことが伺い知れた。
「とにかく、探そう」
 そう呟くと、空子は部屋の中を虱潰しに探し出した。
 座布団の裏、戸棚の中、押し入れの奥……
 しかし、どこにもそれらしきものが見あたらない。
「……でも、宝物ってどういうモノに入っているのかしら。大きさとか……形とか……」
 やたら滅多と探してはみたものの、自分は『宝物』に関する情報を何一つ持っていないことに気付いた。
 ただ、『宝物』というだけの想像で探しているのでは、一生かかっても見つからないような――そんな気がするのだ。
「だったら、その情報をこの部屋で見つけるしかないわよね」
 空子は挑発的な表情を浮かべると、ぐるりと部屋を見回した。
 ふと、壁にかけられているカレンダに視線を向けた。
「……?」
 なぜか違和感を感じた。
 空子は近づき、それを凝視した。
「……あっ」
 カレンダーは1月のままになっていた。
 今は6月。とはいえ、めくっていないだけだと言われればどうなのだが……。
 ただ、1月のままのカレンダーには、妙な印がついていた。
 1月を表すJANUARYのNとAに赤丸が。
 曜日の所で、SUNのNに黒丸が、MONのOに青丸が、WEDのDにも青丸がついているのだ。
「NANOD?」
 印がついたアルファベットだけ抜き出してみた。
「なんだろ」
 文字を縦にしたり、横にしたり、組み替えたり……。
「あれ? 赤丸で『な』黒丸で『ん』 青丸で……ひっくり返すと『ど』……まさか、納戸?」
 部屋をキョロキョロと見回した。
 ふと、部屋の中には不釣り合いなポスターが貼ってある場所があった。
 ただの壁だと思っていたが、良く見ると奥に続く扉をあった。
 まるで、わざと扉を隠すように貼られたポスター。その周囲に意味無くダンボール箱が重ねられている。
 空子はダンボールを端にどけ、ポスターの画鋲を剥がすと、扉を開けようとした。
 
 カタン

 ポスターの裏に隠れていたのか、何かが落ちた。
「何かしら」
 不思議に思い、それを拾い上げた。
「……鍵?」
 それは古びた鍵だった。
 何を思ったのか、空子はそれを握りしめたまま、奥へと続く扉を開いた。

-宝物って- 

 8畳の和室で、小さなランプと目覚まし時計が隅の方に置かれているだけの部屋だった。
 多分寝室として使っているのだろう。
 ふと見上げた壁に押し入れがある。
「……」
 が、押し入れは納戸とは言わない。
 もう一度ぐるりと見回すと、入口の扉と同じ壁にもう一つ戸がついていた。
 そして、戸口は施錠されている。
「これだわ」
 空子は確信じみた声をあげると、扉の前に立った。
 簡単な南京錠がはめてあり、鍵がかかっている。
 何度か揺すってみたが、外れる気配がない。
「んー」
 どうしようかと思った時だった、自分がこの部屋に入る前に鍵を拾ったことを思い出した。
「まさか……ねえ」
 そう思いながら、鍵を鍵穴に差し込んだ。

 カチャ

 あっけなく開いた。
 納戸の中には、古びた大小様々な箱が押し込められていた。
 表書きなどをみると、どうも骨董価値のあるものらしく、さすがの空子も触れることを躊躇った。
「まさか、この骨董品らしきモノがお宝とか?」
 その価値は十分にあるだろう。
 しかし、本当のお宝はそれではなかった。
「あれ? これって……」
 空子は懐かしそうに目を細めると、そっと手に取った。
 掌にのせられたのは、青や赤などの色が中に入ったビー玉だった。
「こんな所にビー玉がなんで?」
 そう呟きながらも、それを指でつまんでかざしてみた。
 外の光に当たって、淡く輝くそれを見つめていた空子の瞳に、苦笑じみた笑いが浮かんだ。
「彼……どうしているかな」
 空子には、ビー玉を見ると思い出す人がいた。
 初恋の男の子のことだ。引っ越してしまう彼は、自分に無言でビー玉をくれた。
 それがどういう意味を持つのか解らない。
 ただ、彼がビー玉を集めていたことだけは知っていた。とても大事にしていた1つを自分にくれたのだ。
 とても嬉しかったと同時に、彼ともう会えないという悲しさもあった。
 彼からもらったビー玉は今でも大切にしている。そう、空子の宝物なのだ。
「なんだか、バカらしくなっちゃった」
 空子はぽつりと呟いた。
 宝物だと思って飛びつきはしたが、実際宝物がなんなのか解らない。
「それに――」
 ふと瞳を細めると、何かを思い出しながらゆっくりはにかんだ。
「帰ろーっと」
 そう元気に呟くと、扉を閉め、鍵をかけ、部屋を元の状態に戻した。
「よしっと」
 元の状態に戻ったことを確認すると、そっと部屋を出た。

-そういうこと-

「あれ、彼女帰っていくわよ」
 草葉の陰ならぬ、屋根裏の陰から空子の様子を見つめていた恵美は、隣でなぜか茶をすすっている嬉璃の袖を引っ張った。
「知っておる」
 しれっと言うと、ズズズと茶を飲み干す。
「宝物はいいのかしら」
「気付いたんぢゃなかろうか」
「え?」
「自分にはちゃんと宝物があるということにぢゃ」
「……?」
「だから、他人様の宝なんぞどうでもよいということにぢゃ」
 嬉璃の不可解な言動に首を傾げる恵美。
「だけど……こんな所に隠れる必要なんてあったのかしら」
 ぽつりと呟く恵美の顔は、誇りで汚れている。
「たまにはいいではないか」
 と、言った嬉璃の服も、白く誇りがかぶっていた。 


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【4025 /  崎岡・空子 (さきおか・そらし)  / 女性 / 17歳 / 高校生】

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■         ライター通信          ■
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 初めまして。あやかし荘:宝探しへの参加ありがとうございます。
 ライターの時丸仙花です。

 最初に、納期ぎりぎりの納品になったことをお詫びさせてください。
 軽くスランプ気味で、なかなか執筆出来なかったというのが本音です;

 ほのぼのかシリアスというご指定ではありましたが……これがほのぼのなのか?という疑問をもちつつも、なんとか書かせて頂きました。
 今回は、プレイングの都合で1名のみでのノベルとさせて頂きました。ご了承下さい。

 また、どこかでお会いできることを願いつつこの辺で。