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Baby→A 〜capter 3〜
■オープニング■
「どうしたんですか、兄さん?」
何かを言いたそうな草間に、零がそう尋ねた。
「どうしたもこうしたもいつからここは託児所になったんだ」
しかし、そんな愚痴を聞いているのかいないのか――多分に後者だろう、
「ほーらアイセちゃん捕まえた」
事務所の中を走り回っていたアイセは零に捕まってようやく大人しくなった。
「だから、零。なんで、そいつは毎日ここに居るんだ?」
ずっと気にはなっていたのだが現実を直視するのが嫌で見て見ぬふりをしていたが、とうとう草間はそう尋ねる。
「ほら、マナトさんは学校が始まったそうなので」
だからといって何故ここで預からなくてはいけないのだと声を大にしていいたい。だが、言った所で現実が変わるわけでもないので大人らしくここはぐっと我慢しておくべきなのか……と思ったその時だった。
「ナトー!」
突然アイセが声を上げる。
「な、なんだ? “なと”?」
アイセが突然叫んだ言葉が何をさすのか理解できずに草間は首を傾げる。
だが、次の瞬間、
「こんにちは」
と佐倉マナトが姿を現した。
そこでようやくアイセの言う“ナト”と言うのがマナトを指しているのだと判った。
この託児所状態の苦情を言おうとした草間はマナトが1人でない事に気付きとっさに咽喉元まででかかった言葉を飲み込んだ。
草間の視線に気付き、マナトの後ろに居た少女が頭を下げる。
「学校の友達なんですけど」
「佐倉くんと同じ大学の麻生真美(あそう・まみ)といいます。佐倉君からお話しを聞いて。あの、依頼をお願いしたいんですけど」
真美の依頼の内容は掻い摘んで話すと浮気性な真美の彼氏を懲らしめるという内容だった。
なんでも彼氏の浮気はほとんど病的で毎回毎回結局は泣いて謝るため惚れた弱みもあって最終的には許してしまうのだが、気が付くと懲りずにまた……という状態で、結局はいたちごっこを繰り返しているらしい。
「それって、もうはっきりすっぱりと別れた方がいいんじゃないのか?」
草間は過去の浮気歴を聞いただけでもうお腹がいっぱいでうんざりしたような顔をしている。
「そうなんですけど……。ただ、彼女が浮気相手を問い詰めた時に聞いた彼が、普段彼女と付き合っている時の彼とはまったく別人みたいな性格らしいんですよ。しかも偽名を使ってるらしくて」
マナトも少し困った顔をしている。ここにつれてくるまでに相当長い間拘束されて延々と愚痴を聞かされつづけたらしい。
「偽名って……たかが浮気で大げさだな。それに、謝るってことは全く同じ顔の別人が居るってわけでもなさそうだしなぁ」
それでもとりあえず依頼は依頼だと、草間は人を集めることにした。
■■■■■
「人の甲斐性というのは限りのないものですね。浮気性。ぜひ見て見たいですわね」
優雅にお茶をいただきながら海原みその(うなばら・みその)はややおっとりとした口調でそう言って微笑んだ。
興信所の近くに寄ったついでに母や妹に聞いたアイセを見に訪れて偶然居合わせたみそのは浮気性の彼氏の話を聞いて、何か珍しい生き物の話しを聞いたような反応をする。
シュライン・エマ(しゅらいん・えま)は、
「見ても特別面白いものじゃないと思うけど。私はダメね、女癖の悪い男だけは生理的に受け付けないわ」
と、言うと釘を刺すがごとくちらりと草間に視線を向ける。
「駄目だよねぇ浮気なんて。女の敵だね!」
「お前が言うな、お前が」
前回のナンパ大作戦を忘れたとは言わせないぞと、草間は桐生暁(きりゅう・あき)にすかさず突っ込みを入れたが、
「俺は彼女なんて居ないからいーんだよー♪ ねー、アイセ?」
「ネー」
意味もわからずにアイセは暁の口真似をする。
「世間的に見た浮気男の良し悪しは兎も角、今回の件に関しては訳ありらしいという事か……」
女子供の輪の中には入らずに少し離れて様子を見ていた真名神慶悟(まながみ・けいご)は同じく弾かれている草間にそう問いかけた。
「たかが浮気で偽名まで使うっていう徹底振りがな」
どうも“たかが浮気”ではないのではないかと続けた草間に、
「武彦さん、“たかが”は余計じゃないかしら? 浮気といえば昔はりっぱな姦通罪って犯罪行為なのよ」
同じ女性の立場から見れば男の“浮気”という行為それ自体が許せないというごく一般的女性の立場からシュラインは厳しい一言を放つ。
シュラインに鋭い目を向けられて草間はとんだとばっちりに首を竦め、そもそもの原因である依頼者を連れてきたマナトをねめつけた。
「シャマ、ナトいじめたらめーなのっ」
暁の膝に乗っていたアイセがそう言って突然草間の鼻の辺りをペチンと小さな手のひらで叩いた。
「ぁあ!?」
「だから、“シャマ”ってのが“草間”って意味で“ナト”ってのが“マナト”だろ? だから草間さんにマナトをいじめるなって言ってんじゃないの?」
暁が通訳すると草間は不服そうな顔をして体を反転させて椅子に座り背もたれに顎を乗せて不貞腐れてしまった。
「まぁ、確かに浮気によしも何もないか」
一連の流れを見ていた慶悟は苦笑いを浮かべる。
コホン、と1つ咳払いするとシュラインは、話しを元に戻す。
「ともあれ問題の彼氏、偽名は統一されているの?」
「えーと、それは同じ名前らしいですよ」
散々愚痴を聞かされたらしいマナトがそう答える。
「多重人格だとか統合失調症だという事なら医者にかかる事を勧めるが。別人、というのはあながち遠くはないかもしれないな」
「そうね。多重人格なんかは他の人格の間の記憶はないって言うけど、謝るって言う事は彼も判っているってことでしょうから」
慶悟とシュラインが考察している間にややおっとりとした声が割って入った。
「人などと比べるのは失礼なのですが、人外とは違い、人はひとりを愛する事が美徳なのですよね? という事は彼氏様は人ではないのでしょうか」
みそのは微笑んだままさらっとそんなことを口にする。
「何か相当な浮気者の霊に憑かれている、とかな。偽名も霊の本名なのかもしれないな」
“人外”だの“霊”という言葉に鋭く反応した人物が居た。
「またか……またそのパターンなのか……」
ずっと背を向けたままだった草間がいつのまにか壁に向かってぶつぶつとそう語りかけていた。
■■■■■
「武彦さんったら……」
その姿を見てシュラインは小さく吐息を漏らし、先ほど依頼人から聞いた彼氏に関する情報を手早くパソコンで入力したものを配る。
「真美さんから聞いたのは名前と住所、学校に交際期間、彼女が知る限りの彼の行動範囲や交友関係ね」
「やけに女性のお名前が多いですわね」
彼の交友関係のあたりを見てそう言うみその。
「例の相手も“交友関係”に含まれているということか」
慶悟はそのずらっと並んだ女性の名前に呆れるのを通り越して半ば感心したような口調になっている。
「スゴイよねぇ」
「本当に」
同意して頷くマナトに暁は違うと首を横に振る。
「これだけの人数を全部同時じゃないとは言え相手にする彼のバイタリティもスゴイけど、これだけ浮気されて毎回許してる彼女がスゴイなって」
確かに、両手の指は必要になりそうな彼の浮気相手名簿だが、あくまでそれは真美が把握している分だけであって把握していない人数も数えれば両手どころか更に両足の指も必要になるだろうことは容易に予想がつく。
懲らしめて欲しいとひどく憤慨した真美の様子もこれを見れば納得できると言うものだが、それでもその都度許している彼女の度量も確かに凄い。
「意地になっているのか……またはそれだけ愛情があると言うことなのか」
その本意は真美だけが知るというところだろう。
「あ、届きました」
マナトはそう言って携帯の画面を皆に見せる。
依頼人の真美に連絡して彼氏の写真をメールに添付して携帯電話に送って貰うように頼むとすぐに返事が届いたのだ。
「ふーん。これが浮気男かぁ」
暁はまじまじとその写真の顔を見つめる。
「本当はさぁ、この人の事何も知んないから何とも言えないんだよね。どうしてそんな事するかなんて想像しか出来ないだろ? そゆーの嫌いだから会ってから懲らしめるか考えるってのでいいかな?」
「まぁ、本人を天日に晒して叩けば埃は幾らでも出るだろう。それを見てからでも遅くはないだろう」
と、慶悟は鷹揚に頷いた。
シュラインは立ち上がってハンドバックを肩にかけ、
「じゃあ、私は浮気相手の人たちに会いに行って来るけど」
と言うとそこにいる面々を見渡す。
浮気中ではない彼の様子は真美から聞いた情報で事足りているが、浮気相手と一緒の時の彼について詳しく聞くために判っている限りの浮気相手に詳細を聞き込みに行くつもりであった。
例えば食事や趣味思考、活動時間や行動パターンを比較する為には詳細な情報はあればある程良いだろう。
「わたくしもご一緒します」
とみそのが立ち上がった。
「そうね、女性の方が詳細を聞きやすいかもしれないわね」
頷くシュラインに、
「ちょっと着替えてまいりますので少し待っていただいてよろしいですか?」
と言うみそのにシュラインは、外で待っているわねと先に表に出た。
待つ事数分。
カツン、カツンと階段を下りてくる足音に手帳を見ていたシュラインは視線を上げる。
「お待たせしました」
そう言って微笑むみそのの姿にシュラインは束の間言葉を失う。
「やはり浮気調査に適した衣装と言えば黒のトレンチコートにつばひろ帽にサングラスかと」
「―――みそのさん……ちょっと、暑いと思うわよ今日の天気だと」
全身黒ずくめ、見るからに怪しげな衣装をしたみそのに梅雨の合間五月晴れの日差しが容赦なく突き刺さっていた。
■■■■■
数日後。
シュラインとみそのの聞き込みの結果、真美の彼氏と浮気中の彼の間にいくつもの差異があることがはっきりした。
「彼氏なんだけどね真美さんと一緒のときは右利きなんだけど、浮気相手に聞くと左利きだって言うんです」
「もともと両利きとか?」
みそのの報告にマナトがそう言うと、
「でも、わざわざ浮気と本命相手に利き手まで帰るなんて不自然だよな。名前だけならまだしも」
それとも浮気性の癖に完璧主義者とか?と、暁は納得しかねるようだ。
「そこで名前よ。彼氏の名前は“英明”なんだけど浮気中は“道明”って名乗ってるらしいの――」
そこで一息入れるシュラインに、
「続きがあるんだろう?」
と促した草間は直後に後悔した。
「それが調べてみたら、彼氏の亡くなったお祖父さんがそんな名前らしいわ」
「隔世遺伝って奴かな。孫とそっくりなんて随分若々しい祖父さんなんだな……」
嘯く草間の目はどこか遠くを彷徨っている。
「現実派直視するべきだと思うが?」
あれだけ毎回毎回怪奇魑魅魍魎絡みの依頼に関わっておきながらこの期に及んでまだ現実逃避を図りたいのかと慶悟などは呆れ気味である。
不意に、暁がシュラインに尋ねた。
「あ! ねぇねぇ、浮気相手のタイプってどんな感じだった?」
「年齢も外見も性格も見事にバラバラね……今時の女子高生って感じの子もいれば、社会人の人も居たし。ものすごくストライクゾーンが広い人みたいよ」
やんわりと表現してはいるが、何の事はない要は節操なしと言うことらしい。
「ふぅん。このまえさぁ、ちょっと後つけてみてたんだけど今はどっかでっかい会社の受付に座ってる女の人だったんだよねぇ」
それを聞いて暁は何やら意味ありげな笑みを浮かべている。
「それでさ、ちょっと提案があるんだけど……」
暁の提案にみそのは、
「あら、素敵ですわね」
と手を叩く。
「じゃあ、善は急げと言うことで」
言うが早いか、暁は一旦準備のためにどこかに出掛けていった。
「その祖父とやらを天日に晒して叩くのが1番だろうな」
「彼女が散々言っても聞かなかったんだから、仕方ないわよねぇ。何より懲らしめてくれって言うのが依頼なわけだし……」
そうこういっているうちに、暁が戻ってきた。
「完ッ璧!」
そういって暁はピースサインを向けた。
「大体、受付状なんてやってるオネェサンって自分の容姿に自身あってプライドが高いから二股かけられてるなんて知った日には――――」
「浮気現場を押さえ、ぐうの音も出ないほど問い詰める。いいですねぇ、修羅場の醍醐味です」
みそのの口調はやけに楽しそうだ。
「だからって、何で暁さんが女装してるんですか……」
金髪ロングのウィッグをつけうっすらと化粧をしているだけだと言うのに、見事なまでに美女に変身してしまった暁にマナトはやや脱力する。
「女の子が実際やっちゃうと色々問題があるっしょ。どうよ、俺の美女っぷりは」
女性にしては身長はかなり高い部類に入るだろうが、どこかミステリアスな雰囲気のモデル系の美女という雰囲気を作るのに一役買っているようだ。
「アーキー。だっこー」
気付いていないのか、はたまた大物なのかアイセは何も疑問に思わない様子で、女装している暁に抱っこをせがんだ。
「おい、そんなのに見破られるような変装で大丈夫なのか?」
ぼそりと草間が呟いた頃には、暁だけでなくシュライン、みその、慶悟、マナトにアイセまで出て行った後だった。
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「ねぇ、彼女1人?」
―――かかった。
咽喉元まででかかった言葉を必死で飲み込んで、暁は肯定するように微笑みながらこくりと頷いた。
女装して、“道明”の行動範囲に顔を出し続ける事3日目にしてようやく獲物の捕獲に成功したのだ。
暁の魅了の能力をもってすれば女装しなくとも引っ掛ける事も可能であったが、それでは意味がない。
先日偶然ぶつかったふりをして接触していた時には薄い色のサングラスを掛けて居た素のままの姿だったのだ、どうやらそれが目の前に居る暁だとは気が付いていないようだ。
まぁ、もっとも早々に気付かれるような半端な変装はしてないけどね……と暁は1人ほくそ笑む。
ジントニックのグラスを持つ手が左手、そして腕時計が右手についているのを確認する。
「。名前、教えてよ」
「暁。あなたは?」
心持ち意識して高めの声で暁は答えた。
「俺? 俺はね、道明。アキちゃんってどんな字書くの? 俺はね」
そう言って道明はアキの手をさりげなく取って人差し指でアキの手のひらに字を書いてみせる。
その自然な流れに、暁は感心しつつ上手く誘導して道明とともに店の外に出た。そして、そのまま誘導して近くの公園へと誘い込む。
ちょっと酔っちゃったみたい等といいながら暁は道明を公園のベンチへと促す。
「え、アキちゃん彼氏居ないの? ホントに?」
「道明さんは彼女とか居るんでしょ?」
「いないよ。じゃ、俺アキちゃんの彼氏に立候補しちゃおうかなぁ」
そう言いながらさりげなく暁の肩に手を回そうとした道明の手が捕まれた。
「道明……どういうこと!?」
「げっ」
鬼の様な形相で立っていたのは浮気相手の受付嬢だ。
受付嬢はヒステリックに道明に罵詈雑言の限りを吐いている。そして、最後には、
「アンタなんて最低よ!」
パシッと小気味良い音がして道明の頬を力いっぱい引っ叩いて去っていった。
「っく」
「アキ、ちゃん……?」
暁がショックを受けて泣いているのかと思ったのか、俯く暁の顔を道明が覗きこんできた。
「ざまぁないね、イロオトコ」
大笑いしながら暁はウィッグを取る。
「アキちゃん?」
まだ気付かないのか、それとも気付く事を拒否しているのか。
パンツの上に履いていたスカートを取り、サングラスを掛ける。
「まだ、わかんない?」
暁はそう言って道明の視線を促した。
暁が指差した先にはシュライン、みその、慶悟、マナト、アイセが居る。そして、その5人の背後から真美が現れた。
真美の姿を見て道明の視線が揺らいだ。
「行け」
そういうと慶悟は何体もの式神を放った。
陣笠の小さな式神はそれぞれ呪符を手にしている。
式はそれぞれ符を道明の腕、胸、足とあたり構わず貼り付ける。
あっという間に体中を呪符だらけにされ道明の頭の天辺からつま先までで符が付いていないのは顔のみとなった。
「くそっ、なんだよこれ!」
道明は懸命にもがく。だが、身体の自由が利かない。
たかが紙。されど紙。
普通の人間ならばただの紙にしか過ぎないそれは、慶悟の祝詞により霊体の自由を奪う物となっているのだ。
「何故そんに次々と女性とお付き合いをしようとをするんですか?」
みそのがそう問いかけると、道明は、
「俺が英明の歳には戦争でこんな自由はなかったんだよ! 顔も知らない女と結婚してコイツと同じ歳にそのまま戦争で死んじまったんだ。英明が少しの間だけならって言ったんだ」
と悪びれる様子もない。
それを聞いてようやく英明が真美に弁解もせずにその度にひたすら謝っていた理由に納得がいった。
よもや英明も道明がそんなに女遊びの限りを尽くすとは思わなかったのだろう。
「それでもお孫さんの身体はお孫さんの物でしょう? あなたが次々と別の女性と付き合うたびにお孫さんもお孫さんの恋人の真美さんも苦しんでいるんですよ」
シュラインは雁字搦めにされている道明にそう諭す。
「あんた、乗っ取る相手の事情ももうちょっと考えなきゃ。せめて彼女のいないヤツにすればいいのに」
そういう問題じゃないだろうと、そういう暁をマナトがつついた。
「まぁ、なんにしろ、霊は霊らしく青山でも多摩でも行って同じ霊の女と遊んでいた方がいい」
慶悟はそういうとあまった符を持たせていたアイセを抱き上げ道明の顔の高さまで抱き上げる。
「いたずらしたら、めーなのっ」
小さな手が道明の額にぺちん……と当たる。
「……」
慶悟が視線で真美を促す。
「―――英明?」
そう問いかけると、道明ではなく英明が自らの手を動かしアイセに額に張られた符を剥がした。
「真美……ゴメンな」
バシッ―――
受付嬢よりも数倍すごい音がして、道明が叩かれたのと逆の頬に真っ赤な手のひらの痕が付いていた。
■■■■■
「いや、本当に心広いよなあの子」
そもそも道明を受け入れてしまった英明にを1発殴った真美だったが、結局はまた元の鞘に納まったらしい。
ただし、『“どんな理由があっても”もう2度と浮気はしません』という念書を書かせたとはマナトからの情報である。
「それでも元に戻ってよかったです」
そういうみそのに、
「良かったのかなぁ。多分あれを形にずっと尻にしかれるんだろうなぁ」
とケラケラと笑う暁は、
「つぎ、暁ちゃんのばんなのっ!」
と叱られて首を竦めた。
「ごめんごめんアイセ」
ついこの間までよちよち歩きだったアイセは今や3歳くらいの姿になっている。
「家族から少し聞いておりましたけど、本当に不思議ですね」
と言うみそのに、
「マナトくん自身が解決しないとアイセちゃん育たないんだと思ってたけれど、私達手伝っても大丈夫なのね」
暁と積み木遊びをしているアイセを見ていたシュラインは安堵しているようだ。
「アイセの成長の塩梅はいいが……」
「そうなのよ。浮気だの懲らしめるだのっていう内容がアイセちゃんのこれからにどんな影響が出るのかがね」
慶悟の疑問にシュラインは同意を示した。
どうも、天使の卵と言う割りに今回かかわった事件がかかわった事件だったせいか微妙に性格がこましゃくれてしまったような気がしないでもない。
「まぁ、でも、なんとかこの調子なら保育園に預ける事もできそうだし。良かったわね、マナト君」
「えぇ、これで今までよりは草間さんに迷惑をかける時間も減るんじゃないかと」
マナトもだがそれ以上に草間は心底喜んでいた。なにせ、ようやく託児所状態から開放されるのだと。
だがしかし、草間は知らなかった。
アイセの保育園の入園手続きの書類の園児の名前と保護者の名前の欄に、
『園児 草間アイセ
保護者 草間 武彦 』
と記入されていたと言う事を。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0389 / 真名神・慶悟 / 男 / 20歳 / 陰陽師】
【1388 / 海原・みその / 女 / 13歳 / 深淵の巫女】
【4782 / 桐生・暁 / 男 / 17歳 / 高校生アルバイター、トランスのギター担当】
【NPC 佐倉マナト / 男 / 19歳 / 大学生】
【NPC アイセ / 不明 / 1歳くらい(外見) / 天使の卵】
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、遠野藍子です。前回に引き続きのご参加ありがとうございました。
ずいぶんチビも慣れてきたようです。そんな訳で今回はどどんと(ぇ?)2歳ほど年齢をすすめてみました。
ちなみに、今回のアイセのモデルは姪っ子です。さ行が上手く発音できなかったり、名前の頭文字がなぜか抜けたりするところはそのまんま使ってみました。
小さい子っていうのは突然突拍子もないことを言うので面白いのですが、出来れば休日熟睡しているのを急襲するのだけはやめて欲しいです、マジで……
それではまた、機会がありましたらよろしくお願いいたします。
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