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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ワタシのシゴト

「暇」
 草間興信所の古ぼけたソファにふんぞり返って、クミノはポツリとつぶやいた。彼女のそのセリフについては、草間も零もあえて無視を

決め込む。
「ちょっと草間、聞いてる?」
 なおも無視。わざとらしくタバコに火をつけ、肺の奥まで煙を吸い込んだ彼の態度に、少女の唇が尖った。
「なんなのよその態度。せっかく来てあげたのに、失礼じゃないの?」
「誰も、来てくれなんて頼んでいないだろう」
「暇なの。何かシゴトないの?」
「お前に頼むような仕事はない」
 クミノの可愛らしい顔が、ますます不満に歪んだ。
 ちょっと普通じゃない能力と、ちょっと普通じゃない人生を歩んできた彼女だけれど、それでもやっぱり、そういった仕草には年相応の

愛らしさを感じさせられる。もっとも、それが相手を油断させるための演技・・・ということもあるのだが、少なくとも草間たちの前では

そんなことはないだろう。
 不意に、電話が鳴った。誰よりも早くそれを取ったのは・・・クミノ。
「はい、草間興信所です」
 唖然とする二人を尻目に、営業用のハキハキとした声で応対する。
「はい、裏山に・・・女の人が・・・ええ、被害は・・・はい」
 どうやら、またもや(草間個人としては)歓迎したくない類の仕事の電話らしい。逆にクミノの顔は、話を聞くごとに明るくなっていく


「クミノさん、1人でやる〜とか言いそうな雰囲気ですね?」
 零が、ちょっと困ったように囁いた。
「それ以前に、俺に断りもなく仕事を請ける気だぞ・・・」
「わかりました、それではこの私にお任せください」
「ほら」
 ガチャンと受話器を置いたかと思うと、得意げな表情で彼女が振り向く。そしてその口を開くと同時に、
「却下だ」
 言ってやった。
「まだ何も言ってないわ」
「言わなくてもわかる。一人で事件に乗り込んでいって解決する気でいるんだろう。却下だ、却下」
「迷惑をかけているわけじゃないでしょう?楽して儲けさせてあげようとしているのに、何が問題なのよ」
「子供が首突っ込もうとしていることが大問題だ」
「子供じゃないわ。きけんなことだって何度も乗り越えてきたし、草間より能力はあるもの」
 見上げる少女の目には微かに怒りさえ見える。こちらを見下ろす草間の表情が、まるで見下しているようにも見えた。今まで、大の大人

と対等以上に戦ってきたクミノにとって、その扱いは屈辱以外の何者でもない。
 草間はそんな彼女から目を逸らし、煙を深く吸い込んで、そして吐き出した。
「クミノ。お前の職業は、なんだ?」
「私は・・・」
 言いかけて、言葉に詰まる。今の自分は・・・自分の仕事は、ナンなのだろう?強制的に傭兵(という名の殺し屋)をやらされていた時

もそして今も、「私は殺し屋なんかじゃない」という気持ちはあるが、じゃあナンなんだと問われると答えられない。
 学生というには登校していない。ネットカフェオーナーといっても経営しているとはとても言えない。店は全て任せッきりだし、学校にも

行かずにこんな所に来ている。
「私は・・・」
 職業は、なんだろう。
「私、は・・・」
 私は、なんなのだろう。
 黙りこみ、悩みの無限ループに入りかけた彼女の頭に、大きな手が乗せられた。フワリと、その手の平から煙草の匂いが広がる。
「お前は、学生だろ?いや・・・『学生であるべき』だろ?」
「・・・・・・・」
「なんのために、お前の仲間たちが力を尽くしてくれたと思ってんだ。お前は危険なことに首を突っ込まずに平和に、幸せに学生をやらな

きゃならん義務があるんだ。今までの分。な」
「・・・・・・」
 唇をかみ、うつむくクミノ。泣いているのだろうか・・・。草間からも零からも、彼女の表情は見えない。
 突然、彼女は乱暴にその手を払いドアへと向かった。
「クミノ」
「用事思い出したから、帰る。依頼は草間がやって」
 つまり、今回は首を突っ込まないということか。二人が安堵して頬を緩めると「言っとくけど」と彼女の言葉が突き刺さった。
「言っとくけど、あなたの言葉を聞き入れたわけじゃないから。私は、私のやりたいように・・・。私の力を活かせる生き方をするつもり

だから」
 じゃあね、とクミノは出て行く。クールを装っていたけど、声が少し震えていた。彼女の小さな背中を見送りながら、二人はそっと微笑

み合った。





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【1166/ササキビ・クミノ/女/13歳/学生】

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、初めまして叶遥です。
この度はご依頼ありがとうございました。
とくにプレイングに内容の指定がございませんでしたので、自由に書かせていただきました。
イメージを・・・壊しちゃってないか非常に心配ですが・・・(汗)
少しでも楽しんでいただければ幸いです!


最後に、依頼していただいて、本当に本当にありがとうございました!

叶 遥