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<白銀の姫・PCクエストノベル>


画廊受付嬢の依頼

■オープニング

 ある日のバー『暁闇』、その日の営業準備をしている頃の話。
 殆ど鍵がかかっている事の無い裏口のドアが――ばん、と派手に開かれた音がした。何事か。ボックス席のテーブル等の位置を見ていた当店バーテンダーの真咲御言は思うが――少なくとも、害意ある者が来た訳じゃないとは即座に判断が付いた。が、だからと言って店のオーナーでもある自分の上司、紫藤はこんな入って来方はしない。確かにまだ、来ては居ないが。
 思っている間に、分厚い眼鏡を掛けた、文学少女がそのまま大きくなったような大人しそうなお姉さんが飛び込んでくる――知人だ。
「…更科さんじゃないですか」
「よ、よかったみ、御言さんは――い、い、いいらっしゃったんですねっ!」
「御言さんはいらっしゃったんですね――と言う事は、誠名さんでも居なくなりましたか?」
「は、は、は、はいっその通りです。じゃなくって、そ、そ、それだけじゃなく、あの」
「…草間さんも、と言う事で?」
「は、は、は、はいっ」
「…草間さんの名で頷かれるとなると、何か裏の裏…に当たるお仕事の依頼でも」
「そ、その通りですっ。か、怪奇系始末屋の方のお仕事が…あの、な、なにか、機械と混じったような…へ、変な怪物が出没してて困ってるって、あの、助けてくれと言う依頼がどどっと舞い込んでまして…」
「…件の『白銀の姫』でしょうかね」
「や、や、ややっぱりそう思いますか…」
「取り敢えず草間さんも零さんも『白銀の姫』の中にいらっしゃるとは伺っていますが…」
「そ、そうなんですか?」
「誠名さんもそのクチなんじゃないでしょうかね」
「…た、た、た、確かに失踪者の捜索とは言ってましたから、『白銀の姫』の中に居る確率は高いんですけど…で、でも、わ、私は行けませんしもし行っても誠名さん見つけるのに時間が掛かるでしょうしそもそも入口知りませんし…っ、あああああどうしたらっ」
「…まぁまぁ落ち着いて下さいよ。取り敢えず目の前の困り事は、『白銀の姫』由来と思しき怪物の出没を何とかしてくれと言う依頼がたくさん来て、捌き切れなくて困っている訳ですよね」
「は、はい。…暴れてるから助けてくれとかそんな話ばかりが…。クライアントの皆さんにお断りしても、それでも藁にも縋りたいって感じで逆に必死な顔で頼み込まれてしまって…」
「でしたら…そうですね、放っとける話じゃないですし、出来る限りになりますが…俺たちで何とかしてしまいましょう。誠名さんが不在時に来た依頼の采配は更科さんが握っていると以前から仰ってましたよね」
「…そ、そうなんですけれど…」
「と、なると。依頼料をそれなりに考えて頂ければ、ある程度はそれで人を呼べると思えますよ」
 ここで仲介して差し上げましょう。


■作戦会議

 と、そんな話になった――直後。
 更科麻姫が飛び込んで来、開け放たれたままの店の裏口からまた別人の声が掛けられている。…基本的にこの『暁闇』、営業時間外で裏口からの客となると、酒や備品等の搬入業者以外の場合は用がある相手は真咲御言個人と見ていい事になっている。このバーテンはここに勤めるようになって以来、何だかんだとありながらも結局店舗の管理人がてらここで寝泊まりし続けている為、事実上ここが家も同然の状況が続いてしまっていたりするのだ。
 そんな訳で、聞こえてくる声に応対すべく真咲御言は裏口へと顔を覗かせたが――そこに居たのは草間興信所のおねえさんことシュライン・エマに、全体的にワイルドな印象の人物だが顔立ち自体は知的な美形と言える学ラン少年こと強羅豪(ごうら・つよし)のふたりの姿。
 曰く、ふたりは草間興信所の冷蔵庫に貼ってあった伝言メモを見て来たらしい。更科麻姫は草間興信所に顔を出し草間武彦並びに草間零の不在を確認した時点で、依頼の旨、メモを残すだけ残していたとの事。…草間武彦が残した「『白銀の姫』事件調査中」のメモの方には…余程慌てていたのか、気付かなかったようだが。
「依頼となっては放っておけないものね。…お得意様な真咲さん――誠名さんのところのお話だし」
 そんな訳で草間興信所を代表して来ました。とシュライン。
「俺も…草間興信所で偶然このお話を知りまして」
 各所で騒動を起こしている『白銀の姫』由来らしいと言うモンスターの退治…是非お手伝いをさせて頂きたいと思い、こちらまで同行した次第です。と豪。
「あ、あ、あ、有難う御座いますっ!」
 話を持ち込んだ当人である麻姫は、応対に出たバーテンこと御言の後ろからふたりの姿を認めるなり、ぺこりと思いっきり頭を下げている。
「取り敢えず、こんな場所では何ですから、中へどうぞ」
 そんな麻姫に続け、御言が改めてふたりを店内へ招いた…ちょうどその時。
 唐突に、店に設置してある固定電話が鳴り出した。



 …暫し後。
「誠名さんが行方不明…心配ですね」
 まぁ、その内に素知らぬ顔で飄々として戻って来られる気はしますが。
 …今現在、バー『暁闇』に集まっている人間は更にひとり増えて五人。元から居た真咲御言に、飛び込んで来た更科麻姫、その後にメモを見て来たシュライン・エマと強羅豪、そして――銀髪の麗人が最後に来訪していた。
 …先程店の固定電話に掛かって来た電話は、最後に来た麗人ことリンスター財閥総帥、セレスティ・カーニンガムからのもの。どうも電話時点では何か別の話があったようだが――話すついでにバーテンが更科麻姫からの話をそちらに伝えてみると、私もこれからすぐにお伺いしますと即座に決定。…今に至る。
「た、確かに…誠名さんの事ですから大丈夫だとは思うんですけれども」
 焦り故かまだ多少の吃音が残っているながらも、麻姫は一応の落ち着きを取り戻す。依頼を受けてくれると言う面子が実際に現れてくれたからか。
 少し落ち着いてから、麻姫は分析し易いようメモを取る事を皆に頼み、今現在入っていると言う依頼内容を片っ端から口頭で説明し始める。…どうやら依頼については細大漏らさず自分の頭に記憶していると言う事らしい。
「――…こちらは会社からの帰宅時に怪物に襲われて怪我をしたとの話で、以前から御世話になっている顧客の方からの依頼です。公園で変な怪物が暴れているから助けて欲しいと言う公園の管理人さんからの依頼もあります。…それから運搬中に襲われて絵画や美術品を壊されたと嘆いている表の同業者の方、怪物の目撃証言が多々ある御近所の保育園からの念の為の依頼…この辺りは出現している怪物の目撃証言からして、種類はある程度重なると思います。場所も近いですし」
 書類も何も見ないまま、麻姫はぺらぺらぺらと告げている。取り敢えず、とカウンターに広げられた地図にシュラインと豪が目撃証言や被害時間に内容等をせこせこと書き込んでいる。麻姫はそちらを見、書き込んでいるそれをひとつひとつ指差し確認しながら、ある地点とある地点の怪物の目撃証言にある特徴がとても似ています、それからこちらとこちらの怪物の場合破壊行動の傾向が近いです使っている攻撃方法や武器が同じです等々、すらすらすらと指摘している。そしてそれらの情報もまた――セレスティの方で別紙に書く代わりに持参したモバイルに入力し、分類と分析を始めていた。
「…多分、これはアスガルドで遭った事がある奴ね。…火に弱かったと思うわ」
 麻姫の話を聞きつつ、シュラインは自分の記憶も引っ張り出して一緒に書き留めている。曰く、彼女も『白銀の姫』の世界との出入りは頻繁にしているとの事。出没しているモンスターの外見特徴や攻撃法等を聞いた時点で、ある程度の弱点やら現実世界側では未知の特徴、周囲への被害を考えた場合の注意点も纏められると見たらしい。事実、麻姫の情報とシュラインの持っている情報にはかち合うものが多かった。その事からしてもどうやら、現実世界で騒動を起こしているのは取り敢えずレアなモンスターでは無さそうである事がわかる。
 豪の見解も殆ど同様だった。
「…『白銀の姫』の世界では主要都市である兵装都市ジャンゴから離れれば離れる程モンスターは強くなるんですけれど…現実世界で暴れていると言うモンスターはジャンゴからそう離れていない場所によく居る奴らが多いようですね。これならばすぐに何とかなりそうです。…ただ」
「周囲への影響が心配、と言う事ですね」
 ゲームの世界では然程心配する必要の無い事ではありますが――現実世界ではそうも行きません。
 後を続けたセレスティは、言いながらも通信機らしきもので何処ぞと連絡を取っている。麻姫の話を聞きシュラインと豪で書き留めていた地図を見、自分の手許のモバイルを同時に確認しながら何やら指示を出していた。…話している内容からするに、騒動の情報から計測、予測を付けてみたモンスターの出現地点複数に部下を差し向け警戒するようにある程度の交通規制をして欲しい旨を、そしてメディアへの規制まで指示していた。
 セレスティはそこで通信を止めている。
「…強制力までは無いですがある程度の効力は期待出来ますよ」
 戦闘時に関係者で無い方が居られたら、後の説明も大変ですし。どう動くにせよ、早い内にシャットアウトしておいていいと思いますからね。
「公的な権力でも使えばもう少しやり易くはなりますが――そこまで望むのは止めた方が良い気もしますしね」
 それは上の方に声を掛けてみる事も出来なくはないですが…私の一声で余計なところまで揺るがせてしまうのも芳しくない気がしますから。
 静かに苦笑するセレスティ。と、その場に居る面子から何となく御言へと視線が集まった。…元ではあるが、『秘密裏に行動する事を得意とする』対超常現象の超国家警察、IO2の人間。
 そしておもむろに口を開いたのは――豪。
「…貴方は元IO2だと伺いましたが――」
 その件、上手く何とかなりはしませんか。暗にそう含み、豪は御言を見ている。
 と、あっさり頷かれた。
「ある程度なら『大事にならないように』動かす事も出来なくはないですよ。…知らせれば黙っていられない連中の心当たりはありますから、情報の渡しようでどうとでも動かせます。…まぁ、俺自身は『向こう』にすれば死んでいなければおかしい身なので表立って動かない方が良くはありますが」
「…いいんですか?」
 恐る恐る、シュライン。
 御言はやっぱりあっさり頷いた。
「構いませんよ。…そもそも異界化したゲームから現実世界に現れたモンスター、なんて言ったら思いっきり『向こう』の管轄になりますし。そもそも誠名さんのところにこれだけの数『同じ件』の依頼が入る程の騒ぎが起きているのなら――現時点で彼らの方でも何かしら動いてなければその方が怠惰です。その中で少し融通利かせてもらう程度なら簡単でしょう。…ただ、こちらの都合の良いように連中を動かす為には…これからこちらがどう動くかをもう少し具体的に決めておく必要がありますけどね。それからの方が効果的に動かせます。
 それと、その際にリンスターの名前をお借りしても宜しいですか? その方がやり易いと思うので。…勿論、リンスターが不利益を被るような事をするつもりはありません」
「細かい点はお気になさらず。使える名前だと言うのなら一向に構いませんよ」
 途中から御言に話を振られたこちらもあっさり頷き、リンスター財閥の総帥様は快く受けている。



「この動きだと、統制を取っている上級モンスターらしき存在は居ないみたいだけど…」
 ゲーム『白銀の姫』由来…レベルの低い雑魚敵ばかり…それ以外に何か共通点はあるかしら?
 誰にともなく呟きながら、シュラインも地図を見下ろし考え込む。
「…ところで、誠名さんが受けている依頼に関しては失踪者の捜索だと伺いましたが――君が持って来たこの依頼は…それとある程度重なるものなのか、それともまったく別の件なのかも気になるのですが」
 怪奇系始末屋のお仕事となれば、ただ失踪、と言うだけの話では管轄違いの筈でしょう?
 ふと疑問を感じ、セレスティが麻姫に振る。と、麻姫は緩く頭を振った。
「…実は私の方でも詳しく聞いていないんです。今誠名さんが動いているのは直接引き受けられた仕事ですから。私も直接依頼を聞いていたなら…守秘義務に抵触しない程度の事はお伝えできたんですが、近頃頻繁に起きている失踪者・行方不明者の捜索、と言うだけしか私には…」
「モンスターとは聞いていませんか」
「はい」
「『消える』のと『現れる』のでは…正反対になりますね。誠名さんは本当にただ逆、なだけのお仕事をなさっているのか…」
 考え込むように、セレスティ。
 と。
「…ちょっと待って」
 地図を横にしたり逆さにしたりとくるくる回し、ためつすがめつしていたシュラインがはたと停止する。
「どうかなさいましたか?」
「…アスガルドと地図上の位置が重なるの」
「何ですって?」
「ほら、地図をこの角度にして、この辺り――ちょうど神聖都学園の敷地内になるわね――を兵装都市ジャンゴ、この辺りを堕星の遺跡と仮定して見てみると――この目撃現場はちょうどアサルトゴブリンが棲んでいる事で有名な荒地だし、こっちは初心者の経験値稼ぎに良いって話の場所なのよ。経験値稼ぎ――つまりは雑魚敵が雲霞の如く湧いて来るって事で知られてる場所になるわ。…他の場所も――それは縮尺は違ってくるけど、座標的には殆ど重なる」
「それは――どうも、深刻な事態の気がしてきましたが。…今はまだ何も無くとも、アスガルドでの他のモンスター出現ポイントと重なる場所もこれから危ないかも知れませんね。その筋の方々にも警告をしておくべきかも知れません」
 真剣な顔で、セレスティ。今回の件を頼むついでに『向こう』には言っておきますと即座に御言が返す。豪も深刻そうな顔になり、頷く。…彼にすれば他人事ではない。『白銀の姫』に行き来している身としては――余計に放っておく訳には行かない事で。それでも、歯痒いながらも人一人に出来る事は限られる。
「…まずは依頼にあった件から何とかして行きましょう。既にして依頼と言う形で専門の人間に頼む必要が出る程、困っている人たちが居るんですから。出来る事から何とかしなければ」
 豪のその科白に、皆は同意した。



 …依頼にあったモンスターの目撃証言、その場所の条件。好みそうな物件。モンスターそれぞれの特徴や弱点等々――他にも確認した情報を元に、今度は自分たちの動き方を考える。適性や戦力、手数を考える。
 場所柄については――当然、周辺への被害回避が第一。目撃数が少ない場合は、恐らく実際の数も少ないのだろうからその場で退治しても良いだろうが、多いと周辺への被害が心配になる。都合が良さそうな空地や公園等を探す。…戦闘時には一気に決着が付けられるような、心置きなく存分に、本気で出られる場所が良い。
「…火気に注意すべき場所や住宅、時間によっての人通りの変化等も…念頭に置いておかないと」
「…はい。ある程度はうちの方で何とかなると思いますし、何処かの黒服さんに伝手を付けて頂けるならそれ以上の期待も出来そうではありますが――何にしろ、『絶対』は有り得ませんからね」
「…敵を追い込むには俺のデーモン『ゴールデン・レオ』が使えると思います。少なくとも依頼の情報時点では上級モンスターは居ないようですから。後は現場の状況次第ですね」
「…それと更科さんは――現場に出ない方がいいと思うんですが」
「…は、はい。何かありましたら、すぐに皆さんと連絡を取れるようにして待機している事にします。あっ、やっぱり戻って誠名さんのしている仕事の書類があるかどうか探してみます。カーニンガムさんの仰る通り、今回の依頼とも何かしら関連のある――元々『白銀の姫』絡みの事件じゃないかって部分は共通ですけど、それ以上に何らかのヒントになる可能性も否定出来ませんから」
 と、
 そこまで決まったところで。
「どうも今日は仕事をしていられる状況では無さそうだな。真咲」
 また新しい声が飛んで来た。
 裏口方面から静かに現れた白髪混じりの髪を持つその男――店のオーナーでありマスターでもある紫藤暁は店内に居る面子を見渡し、最後に再び部下のバーテンを見る。
「…良くはわからんが――お前も行った方が良さそうな話と見たが」
「マスター」
 呼ばれ、紫藤は僅か頷くと、他の面子へと向き直る。
 そして。
「何事か良くはわかりませんが。こいつで役に立つなら使ってやって下さって構いませんよ」
 最後の最後に現れた酒場の主は、何も訊く事をしない内から――御言を示し、あっさりとそう告げている。


■作戦実行

 …金の鬣を持つ獅子頭――と言っても獅子舞等に使用されるデフォルメされた張りぼてでは無く本物の獅子の如き頭。それを頭部に持った、仏道の神将像の鎧を身に着けている巨漢。人間の如く直立二足歩行の威容が、アスファルトに舗装された道に仁王立ちしていた。
 強羅豪が生まれながらに使役しているデーモン『ゴールデン・レオ』である。
 その『ゴールデン・レオ』と共に――だが少し離れた位置に立っているのは何処か並の学生とは違った印象の学ラン少年、『ゴールデン・レオ』の主の豪だった。
 とあるアパート。機械が混じったような異形の怪物がところどころに貼り付き、破壊活動を実行中。建物の中には人気は感じられない――と言うより、異形の怪物の姿に怯えて身動き取れないと言うのが本当のところなのかも知れない。実際に、ここの件で依頼をして来たのは当のアパートの住人、悲鳴混じりに電話で直接だった――と言う話。…今現在も中に何人か居るみたい、とシュラインから先程連絡があった。
 豪と『ゴールデン・レオ』はそのアパートの前に立ち、アパートを見上げている。と、モンスターが少なからず、その視線に気付いた。が、怯える気配はまったくない。それどころか威嚇までして来た。それで豪と『ゴールデン・レオ』に漸く気付いたような輩までいる。
 彼我の実力差を測るような高等技術は持ち合わせていない。ただ破壊する事が存在意義、人間と見れば反射的に敵意――殺意を持つようプログラミングされている――。
 当然、豪と『ゴールデン・レオ』を睨んで来るモンスターの目には、間違っても好意は無く。
 一拍置いて、それらの個体が――豪と『ゴールデン・レオ』目掛けて飛び掛かって来た。
 が。
 そのタイミングで、『ゴールデン・レオ』が彼らへ向けて凄まじい雄叫びを上げた。…『獅子の咆哮』。害のある魔法や霊能力を解除、敵意あるものに恐怖心を与え、雑魚なら判定無しにその場から逃走させる『ゴールデン・レオ』の能力のひとつ。
 それを受け、怯み、逃げ出した――そう確認したところで、『ゴールデン・レオ』は彼らをこちらで用意した場所に追い立てる為、走り出す。豪は改めて、先程のアパートからはモンスターの姿がすべて引き剥がされ、こちらに連れて来られた事を確認。更にシュラインの方からも、改めて『音』の面から確認をしてもらった。
 …『ゴールデン・レオ』はモンスターたちを追う。アパートに居た連中はすべて連れて来られた事を確認の後、少し遅れて豪も追う。その間に『ゴールデン・レオ』の『獅子の目』も使いモンスターの能力を改めて分析、確認――依頼としての情報及び『白銀の姫』を知る皆で出し合った前情報と大差無し。群れで現れる事の多いモンスター。器用さは高いが、素早さ、防御力、共に極少。戦闘時には人間のように道具を使用する為、武装によってはやや強敵になる事もあるが、個体としての攻撃力は大して高くない。特別な弱点は無いが、弱点を突く事を考えなくとも簡単に倒す事は可能。イレギュラーの要素は無さそうだ。
 一体一体は簡単と出た。だが――数が多いのが厄介と言えば厄介と言える。やはりここは一ヶ所に集めて倒した方がいいだろう。
 豪は再び『ゴールデン・レオ』を吼えさせる。『ゴールデン・レオ』が放つ『獅子の咆哮』を受け、妙に甲高い悲鳴が聞こえてくる。モンスターたちの悲鳴。アスガルドでもモンスターの戦闘逃走時によく聞くそれらを受けつつ、パニックを起こして別の方向へ逃げだしそうになっているモンスターを目敏く見付ける。本気で追い掛けるまでも無くすぐに捕まった。そのモンスターは大層な剣を持っている。捕まったと自覚したらその切っ先が豪に向けられる――と、確認した直後、お止めなさい! と叫びつつ豪はその剣を持っている手を打ち、叩き落としていた。直後、殆ど反射的に流れるような動作で、首の付け根――モンスターのその部位は首と言うべきか否かはっきりしないがとにかくその辺り――に強烈な蹴打を入れている。
 追い込むまでも無くその時点で『死亡判定』が出たのか、その一体のモンスターは――空気の中、分解されるように消えている。PCの画面上でCG映像が掻き消えるが如く。
 その事実には驚いた。
 異界化したゲームから現れたとは言え、これはやはり、ゲームの――プログラムとしてだけの存在なのか。
 まだ、細かい事はわからない。



 …豪と『ゴールデン・レオ』のその、後ろになるか。
 少し離れた場所で、シュライン・エマはセレスティの部下であるリンスターの黒服三名と共に行動を取っていた。さすがにシュラインは豪と『ゴールデン・レオ』のように前線には出て戦えはしない。と言うより、ここはふたり…と言うかひとりと一体と言うべきか――とにかく彼らに任せておいた方がむしろ邪魔にならないだろうと思っている。
 戦闘はあまり考えられない彼女が現場に出て来ているのは、この依頼によるモンスターの掃討に巻き込まれる者を出さない為。…そんな訳で取り敢えずは豪らが追い立てた後のアパート各部屋の住人を改めて確認。予め音を聞き分け、人の有無を豪に知らせてはいたのだが――嵐が去ったら中の人のケアも必要。在宅だったそれらの人には声を掛け、安心させ――救急車を呼ぶ必要がある程の怪我人は幸運にも出ずに済んだようだが、やはりショックを受けている住人を、安心させる為に宥めている。…自宅では避難勧告でも出ていない限りはそうそう動く事もないだろう。これは仕方無かったか。家屋の破壊の度合は――ベランダや樋、ガラスの修繕は必要そうだが、倒壊する程では無さそうだ。
 それに、このアパートのみならず、交通規制がしてあるとは言え、近道としての使用や好奇心等で誰かが紛れ込んでいるとも限らない。学校等の施設が近ければ、余計にその心配は増える。…シュラインらは住人をある程度落ち着かせたそこで、再び皆と連絡を取っている。豪に頼まれ、ひとまずモンスターの居場所を改めて確認。現状、このアパート周辺には、豪が追い立てて行ってから後、新たに来ても居ない――来たような音はしない。他の場所からこちらに来る予定も、無し。…アパートの住人らには暫く外に出ないようにして下さいと言い置き、シュラインらはアパートから外に出た。
 そこでシュラインは改めて耳を澄ます。『音』を探る。結局、彼女にとって一番精度の高い探知方法はこれになるから。他には周囲にモンスターは。一般人の姿は。リンスターの黒服と共に探しながら、シュラインは事前の計画通りに動いている――まだ、動けている。


■意外な客人

 …結果、かなりの数になってしまったモンスターを追い立てつつ、強羅豪と彼の使役するデーモン『ゴールデン・レオ』は公園へと辿り着く。その公園は更科麻姫の預った依頼の内一件があった場所とも重なる場所であり――ついでなので事前の作戦ではここにモンスターを追い込もうと言う話に纏まった場所のひとつでもある。セレスティ・カーニンガム及び真咲御言の行った口利きが役立ったか、作戦通り周辺の人気は消えている。シュライン・エマの耳でもそれは確認出来ていると連絡があった。少し遅れて彼女もこちらに来る――邪魔にならないだろう場所を考えて近くの様子を見ながら隠れていると言う話になっている。
 アパートを襲撃していた連中の掃討は、先程別の場所で完遂していた。今はまた別の依頼にあった場所から、モンスターを追い立て公園へと来たところ。モンスターたちは『ゴールデン・レオ』の能力、『獅子の咆哮』により公園に追い立てられた後も、そこにわざと追い込まれた事など気付く事も無く自分の意志で逃げ込んだものと思っているようだった。
 雪崩れが起きるように公園を転げ、逃げ惑っているモンスター。ちょっとしたパニック状態に陥っている。公園に元々居たらしいまた別のモンスターとかち合って、小競り合いが起きているようにさえ見えた。…本来仲間なのであろうそんな連中に対してさえ襲い掛かるとは――恐怖心故か、モンスターに真っ当な理性は無くなっているのかもしれない。…元々、真っ当な理性と言うものがモンスターにプログラミングされているのかも謎ではあるが。モンスター同士がかち合う事など想定していない可能性もある。目の前に現れた者はすべて敵と判断する――と言う事もあるか。見る限り、自我らしきものの芽生えも見出せない。即ち、説得等の平和的解決は出来そうに無い。
 豪は『ゴールデン・レオ』の力と自身の格闘の力の両方を用いる事を考えた上で、モンスターたちの姿を見遣る。
「悪の力を持って正義を行います。…覚悟して下さい」
 それは相手がまともに聞いているとは思えないが――礼儀として宣言するだけ宣言し、豪と『ゴールデン・レオ』はモンスターの群れに向かっていく。

 …同じ時。

 一応ながら公園に辿り着いていたシュラインが、弾かれたようにとある方向を見た。…他に連絡を入れる余裕も無かった。続いて――他の者、中で戦っている豪の耳にも聴こえて来たのは――鋭く風を切るような音。それも複数。源がわからない。そんな音が聴こえ、近付いてきたかと思ったら――次の瞬間には、公園内で混乱していたモンスターの群れのそこここが根こそぎ切り裂かれ、切り裂かれた連中は例の如く映像が分解されるように消えていた。
 風を切る音が唸りを上げて、後から現れた『とある人物』の元へと戻っていく。鋭い棘の付いた鋼の色の輪と、眩い光で出来たそれよりは小さな輪――戦輪が風を切る音の正体だった。
「…このモンスターたちは私に任せて、貴方たちは早くお逃げ下さい」
 凛とした声で告げる、その音の源、戦輪を飛ばした者――白銀の甲冑を纏った若い女性の姿。…それは、『白銀の姫』の世界では知らぬ者が無い姿であり、その名前もまた、知らぬ者は無い――。
「…女神アリアンロッド!?」
 白銀のその姿を認め、驚いて声を上げる豪。
「…貴方は御存知なのですね。…ですがそれは正しくもあるのですが――間違ってもいるのです」
 静かに頷きながら、豪に女神アリアンロッドと呼ばれた彼女は右手に戦輪を、左手に槍を構え持ち、モンスターたちと戦う為に駆け出そうとする。が――モンスターたちから目を離さぬまま、その姿を豪が――咄嗟に動かしていた『ゴールデン・レオ』が遮った。…その獅子頭の神将が豪の扱う『力』である事には、彼女の方も気付いている。
「何を」
「…貴方ひとりに任せて黙って見ている訳には行かない、ここは俺たちの街です。俺たちが守らなければ」
「彼らを止めるのは女神である私の責務です。…『白銀の姫』に住まうモンスターが現実世界に現れ――あまつさえ人々に害を為す事など決して許されません。ゲームの世界で人々に害を為すのはモンスター本来の役目。ですが現実世界で同じ事を為すなどと、本来の役目から完全に逸脱しています。モンスターの現実世界への現出など本来ならばあってはならない事。ですから――ここで貴方のお手を煩わせる訳には」
「…貴方のお気持ちは良くわかりました。ですが――そう言うお話であるならば、余計に黙ってはいられません。俺も助太刀します。知らずに巻き込まれた訳ではなく元々、こちらが好きでやっている事ですから貴方が遠慮する事は何もありません。それに責務と言うなら俺も今、これらのモンスターを倒す依頼を受けてここに居るんですから――少なくともその部分は貴方と立場は変わらない」
 自分の姿を見もしないまま迷い無くそう告げる豪を、白銀の戦士は真っ直ぐな瞳で見ている。
 そして。
「…ならば共に戦いましょう」
 心を決めたように、白銀の戦士は豪に向けてそう告げた。
 …モンスターが躍り掛かって来るのと、ほぼ、同時。



 デーモン『ゴールデン・レオ』が女神アリアンロッドを遮る形に居たところから、躍り掛かるモンスターに対し反撃を開始したのと、女神アリアンロッドから放たれた『光の戦輪』が乱舞したのがその直後の話。両方はほぼ同時。…豪の宣言よりも、そちらの行動の方がむしろ戦闘の嚆矢になっていた。
 勿論『ゴールデン・レオ』だけではなく豪当人も戦っている。元々公園に居たモンスターの数もまた多い。そしてそちらのモンスターはまた別の種類。分析を『ゴールデン・レオ』の『獅子の目』に任す。分析結果は自分の記憶と照らし合わせても変わりない。熱や火に弱い相手。…だが。
 そのモンスターと先程追い込んできたモンスターは、戦闘を行ってもいる。
 豪はそれを、まだ近場に居た、追い込んできた方の数体のモンスターを極天流空手の技で薙ぎ倒しながらも確認していた。勿論、『ゴールデン・レオ』の方の操作も忘れない。そちらも自分同様、殆ど極天流空手の技を使わせていた。時々動きが重なってしまう事もある。…自分ひとりの頭で、二人分の身体を動かしている状況なのだからある程度は仕方が無いか。
 …そうこうしている内、豪はいつの間にか白銀の女神の側に居た。自然とお互いに背後を警戒し、女神アリアンロッドと豪は背中合わせになるような形になる。側に寄ったそのタイミングで、豪はすかさず彼女に訊いた。
「…アスガルドでもモンスター同士で戦う事は有り得ますか?」
「はい。…モンスター同士で戦う事は有り得ます。走っている事が認識出来たプログラム――つまりゲーム内で『生きて動いている』と確認出来たキャラクターに対して、それ以上の判別をする事無くただ自動的に反応するようになっているモンスタープログラムは存在します。向こうの彼らはそれに当て嵌まりますね」
「でしたら、あれもイレギュラーの行動を取っている訳ではないんですね」
 頷き、再び豪はモンスターへと向かっていく。
 …強羅豪にデーモン『ゴールデン・レオ』、そして女神アリアンロッドと思しき彼女。三人と言うべきか二人と一体、もしくは一人と二体と言うべきか――とにかく彼らがモンスターを屠って行く様は――例え相手が雑魚とは言えど、凄まじいのひとことに過ぎた。



 …突然現れた、凄まじい音を立て戦闘を行っていたと思しき存在が女神アリアンロッドであった事にはシュラインも素直に驚いた。姿が見えたのと、彼女の姿を初めに確認したリンスターの黒服から連絡が入ったのが殆ど同時だったのだから――あまり連絡の意味も無かったか。それ程早い移動だったのだと言えそうだ。
 シュラインは彼女と豪が共闘する様をやや遠巻きに見ながらも、彼女のその姿が現実世界にある事に俄かに驚きを感じている。それは当然、創造主以外にゲーム世界の行く末を触らせる事を許さず、その為に世界を変えようとする女神たちすべてを敵に回し日夜戦っているあの厳格な白銀の女神が――何より大切な筈のゲーム世界・アスガルドを放り出して現実世界に居る事になるからだ。
 目の前のその事実から、シュラインは『暁闇』に居た時点で気付いた地図上の一致の件――アスガルド自体がこちらの世界に侵出して来ているのではと言う疑惑を再び頭の表層に持って来る。…モンスターのみならず女神まで。現実世界でモンスターが騒動を起こしている位置と、アスガルドでのモンスター出現ポイントとして有名な場所の座標が重なる。だからこそ、女神である彼女もまたここに来ている――来てしまっていると言う事になるのか。アヴァロンが外界への出入り口になるのではと言う話は前々からあった。いや、アスガルドでそんな話があると言うより、底の知れない冒険者・黒崎潤の口から聞いていた――と言うべきか。ならば――アヴァロンを介し、アスガルドの現実世界への侵食が始っていると言う事になるのかもしれない。
 そこまで思ったところで、シュラインの元に連絡が入る。
 相手は、セレスティ。
 用件は白銀の女神がそちらに向かったけれど様子はどうか伺う件と、綾和泉汐耶と刑事ひとりとIO2捜査官ふたりがセレスティらに合流したと言う件。それと――アスガルドのモンスター本来の行動パターンから外れるモンスターの存在、つまりは自我が芽生えたもしくは元が現実世界の人間なのではと思えるモンスターの存在を示唆して来た。
 シュラインは公園の中を――共闘している豪らを見る。何故かモンスター同士で戦っている姿も見受けられる。が――そちらについては特にイレギュラーでは無い、と豪と女神アリアンロッドの会話で言っているのがシュラインの耳には聴こえた。ならば他に――何か、行動パターンから外れる動きをしているモンスターの存在は。
 豪と白銀の女神との共闘により見る見る内に減って行くモンスターの中から、シュラインは当て嵌まりそうなモンスターを探している。もし居たなら――簡単に倒してしまうのは躊躇われると言うのも確か。実際にセレスティ側の方でも一体――と言うか一人と言うべきか、そんなモンスターを同行させていると言っていた。
 白銀の女神と離れた豪は先程までと同様のモンスターを倒しながら、流れるように連続打突の必殺技を使用し始めた。超高温の炎を纏った拳の『スーパーノヴァ』。確かに、あの一帯にいるのは火に弱いモンスター。別の種類も居るがそちらは特に弱点の無い、けれどわざわざ弱点を突く必要が無い程度の防御力しか無いモンスター。わざわざ攻撃手段を変えずとも諸共にしてしまって構わない。ノヴァノヴァノヴァっ――! と豪の気合の入った声も聴こえてくる。白銀の女神の方も、『光の戦輪』のみならず持っている槍――『ロンギヌスの槍』の方をも振り被り、モンスターたちを次々と薙ぎ払っていた。
 が。
 …殺意丸出しで向かってくる連中はその時点で粗方片付いたのだが――内、妙なモンスターが三体残っていた。
 一体は豪の前、超高温の拳が達するところ――達するより少し離れた位置。頭を抱えて縮こまっている上に、襤褸で無理矢理作った旗――何となく白旗のつもりに見える――を力無く掲げる姿。
 もう一体は女神アリアンロッドの後ろ、逃げ損ねたのか、そこでべたりとこけた様子の一体。…気のせいか、鳴いて――ではなく、泣いているように見える。
 最後の一体はデーモン『ゴールデン・レオ』の前。土下座してへこへこ頭を下げている。
 いや、それだけではなく。
 …シュライン&リンスターの黒服ら非戦闘員の近くにももう一体居た。全然戦う様子の無い、けれど公園の中で戦っている人間の味方らしいシュラインたちの姿を物影から恐る恐る覗き込んではびくっと頭を引っ込めている。そして引っ込んだかと思ったら――今度は武器だけを放り捨てて来た。
 …どれもこれも、降参している風である。
 皆、思わず動きを止めていた。
 豪の方は再びデーモン『ゴールデン・レオ』の『獅子の目』をそれらの降参風なモンスターに対しひっそり使用してみる。
 結果――先程出た分析結果と何も変わらず。…それ以上は特に何も出ない。
「…このモンスターは」
「行動パターンが、プログラム通りではありません。ですが…?」
 思わずと言った様子で声を上げた豪に続けるよう、女神アリアンロッドが訝しげに呟く。

 そんな中。
 シュラインは先程自分の方に武器を投げ捨てたモンスターが隠れた、物影の方へと静かに行ってみた。同行しているリンスターの黒服さん方には、一緒に来ないで待っていてくれるように頼んでから。
 そして――物影を、そっと覗き込んでみる。音からして、まだ居る。
 と。
 やはり、ぶるぶる震えている機械の混じった異形の姿があった。シュラインが暫くそのままで黙って見ていると、モンスターは顔を手で覆っていたが、指の隙間からシュラインの姿を確認していた。
 少し考えてからシュラインは少し屈み、にこっと笑ってそのモンスターに手を伸ばしてみる。
 特に無理には近付かないし呼ばない。
 モンスターの方から、近付いて来るのを待った。

 …そして結局シュラインは、その武器を捨て怯えていたモンスターの手を引いて、公園の方へと出て来る事になる。



「…ではこれらのモンスターが、カーニンガムさんたちが仰っていたと言う?」
 静かな声で豪が確認。
 シュラインは頷いた。
「ええ。…にしてもこんな素直なモンスターって、ありなのかしら?」
 と、何やら手を引き自分が連れて来たモンスターといつの間にやら仲良くなりつつ――ついでにそれを見た他の降参風だったモンスターたちとも仲良くなりつつ、シュラインは女神アリアンロッドの方へと振ってみる。…ここだけ見ると女神ネヴァン辺りが喜びそうな展開だ。
 が――アリアンロッドの方は、深刻そうな表情で考え込んでいた。
 そしてシュラインの問いに対して、緩く頭を振る。
「モンスターが人に懐くなどと…『白銀の姫』に於いては有り得ない事です。これもまたイレギュラー…こんなにもイレギュラーが増えている…早く、一刻も早く創造主様を見付けなければ――」
 焦っているようにそう口走る。
「創造主様、ですか。…それは、『白銀の姫』のゲームを創った現実世界の人間と?」
「はい。創造主様はこちらの人間、『白銀の姫』を編まれた偉大なるプログラマーです。…申し遅れました。私は女神アリアンロッドをコピーしたプログラム、アリアンロッド・コピー。…いえ、蓮様にはアリアと名乗るようにと言われていました」
「蓮様、ってひょっとしてアンティークショップ・レンの?」
「…はい。アンティークショップ・レンの碧摩蓮様です。こちらの世界では、私はそちらで御世話になっております。
 …私は『白銀の姫』の創造主様を捜し出し、『白銀の姫』を完成させて頂く為にアリアンロッド・オリジナルから外界――現実世界へと派遣されて来た者なのです」
 もし何か――現在こちらで起きている事を詳しく御存知なのでしたら、どうか私にも教えて頂けませんか。
 ――モンスターの起こす騒動…外界に派遣された私に本来与えられた役目とは多少異なっていますが――それでもこれは、『白銀の姫』の女神の名に於いて、治めなければならない事になるのですから。


■依頼、一致

 …汐耶が遊軍で封印していたモンスターや、セレスティ&御言組の遭遇した、依頼としては想定していなかったモンスターの存在などもある為――やや不安は残るにしろ。
 ――更科麻姫から受けた依頼にあった分のモンスター掃討作戦は、一応終了した。
 が、他にも気になる事は色々と出て来ている。
 ひとまずそれらは置いて、シュラインと豪らは、敵意を無くした、本来の行動パターンからずれているモンスターを四体を連れ草間興信所へと向かっていた。…機械の混じった異形の姿をその辺りに放っておく訳にも行かない。そう思ったら連れ帰るしかない。…モンスターたちは逃げたり刃向かう様子も無く、特にシュラインに対してはむしろ懐いているようにさえ見える。取り敢えず危険は感じられない。更に言うなら別行動組のセレスティと御言、そして汐耶らが合流した方にも似たようなモンスターが一体居ると言っていた。依頼を受けた当の場所ことバー『暁闇』は現在営業中らしいと聞けば、この状況でそこへ戻るのもやや気が咎められる。
 そんな訳で、皆で軽く相談した結果、主不在の草間興信所に行こうと言う話に収まった。依頼を持ってきた更科麻姫も当初はそちらに頼ろうとした訳でもあるし、主不在とは言え草間さんちの身内と言って差し障りないシュラインの方は一緒に居る訳で。実際、そこならモンスターを連れ帰ろうと特に問題は無い。その程度、いつもの事の範疇である。
 ただ、その判断に現実世界の女神アリアンロッド――オリジナルに派遣されたアリアンロッド・コピーことアリアだけは少々途惑ったようだった。とは言え彼女の場合、場所が問題な訳ではない。…放り出せない、だからと言って退治する必要までは無い。けれど――保護するような形でそれらモンスターを連れて行く事に奇妙に抵抗がある。敵意も殺意も無いのなら、刃向かわないならば敢えて手を下す必要は無い。わかっていても――モンスターは倒さなければならない――そう思う自分がいる。それは自分が『女神』と言うプログラムであるが故か。…自分がどう思っているのか良くわからない。アリアはそんな風に自分の中だけで悩んでいるようだった。
 …結局、このアリアもまた、草間興信所へと同行する事になっている。詳しい話を聞きたいと言うなら、別行動組とも話した方が良い。そして――通信機越しでは無くそちらとも直に会って話した方が良いだろうと言う訳で、そう決定した。アリアが同伴する旨は、別行動組の方にも伝えてある。
 …これらのモンスターが真実こちらの世界の人間であるならば、真実の名前を自覚する事こそが現実世界へと真の意味で帰還する最後の引き金になると思います。アリアは道程、少し考えながらそう告げている。その発言を聞く限り、今度は更科麻姫が探しに戻ったと言う『怪奇系始末屋に入っている失踪者捜索の依頼』――『現在行方不明の真咲誠名がこなしていると最中だと思われる依頼』に関して、何らかの書類が残されていないか、そちらの方が頼みになって来る。…ひょっとすると、名前が合致する失踪者が居るかもしれない。照らし合わせてみる価値はある。勿論――その書類があれば、だが。
 そんな話をしている内、草間興信所の入っているビルに着いた。その時点でリンスターの黒服連中は主人を宜しくお願いしますとの旨残し離脱。それを見届けてから、改めて玄関を潜ろうとする。
 が。
 その時点で、豪の足が止まった。
 止まった理由は――リンスターの黒服、つまり殆ど空気と同等のような役割を求められている方々が居なくなったら、同行者が女性だけだったと言う事に今更になって気付いた為。シュライン然り、アリア然り。それから――強いて言うなら行動パターンがずれているモンスターの中にも、本来の魂もしくは自我の方が女性では、と思しき行動を取っている奴が居る。…そう思ったら、反射的に凍っていた。
 どうやら今までは受けた依頼の事だけを考えていた為、気にならなかったらしい。…豪は正直なところ女性が苦手だ。なのに全然平気な顔で居た今までの自分。その事実が今更になって豪を動揺させている。
「強羅くん?」
 ひとりいきなり立ち止まった豪の姿に声を掛けるシュライン。が――、いえ何でもありませんとすぐに返し、今度は急ぐように豪は先に立って玄関を潜った。…中に入れば周囲に居るのが女性だけと言う事も無い筈、と見た訳で。
 シュラインとアリア、そしてモンスター四体の方は…豪のその唐突な行動に、頭上に疑問符浮かべている。

 豪の思惑通り、草間興信所の応接間で待っていたのは女性だけではなかった。依頼を持ってきた当の相手更科麻姫と、別行動組が出先で合流したと言う綾和泉汐耶のふたりは女性だったが、他の面子は――元々依頼の別行動組だったふたり含め、皆男性である。…豪は少し、ほっとした。
 別行動組ことセレスティと御言、それと途中合流した汐耶たちの方は一足先に草間興信所に到着している。汐耶+不良刑事及びIO2捜査官ふたりの方も、更科麻姫の元に入った依頼の件――もあるがそれ以上に同行する事になったと言うアリアの存在が気になった為、結局付いて来て草間興信所の方にまで顔を出している。
 本来の行動パターンとずれていると言う件のモンスター第一号もまた、皆に倣ってちょこんとソファに座り込んでいた。…大人しい。
 草間興信所にシュライン&豪組が合流してすぐ、更科麻姫が声を掛けてきた。草間武彦及び零がここに戻っている気配もない事、戻ってはみたが真咲誠名の姿も相変わらず見えない事。だが――誠名が行方不明になる前に受けた失踪者捜索の依頼についてと思しき書類は、見付けたと。
 麻姫が持参したそれは――殆どメモのような簡易的な書面ではあったが、少なくとも捜索対象の名前と現在の職業や、学生か否か――程度はわかる。その書面と、コピーされたと思しき地図が一緒に綴じられている。雑ながら幾つかのポイントに小さな印やら殴り書きのような丸印が書き付けてあった。それと年格好や特徴等プロフィール的なものが印ごとにほんの数行、行動と日時も記されている。…これは――捜索対象の失踪直前の状況が書いてあるのだと予想はついた。
 それを伝えてから、改めて情報交換に入る。麻姫から依頼を受けた訳ではない部外者の存在も増えた事は増えたが――この場合お伝えしても構いませんとあっさり言われた。
 曰く、隠し通す必要があるのはクライアントの情報であって、モンスターの出現状況やら依頼遂行中に得た新たな情報に関しては依頼とは別件になりますから、刑事さんやらIO2が捜査中と言うならお伝えするのは市民の義務にもなりますしと言っている。…そう言えば、クライアント――依頼人に関しては、依頼を受ける前に少しだけ話をしてはいたが、それらは初めから文面には残していなかった。それに――セレスティや御言曰く、どうやらこのIO2捜査官の方は初めからこちらの依頼を承知で動いていた、密かに伝手を付けた相手その人でもあったらしい。そして汐耶も草間興信所の調査員として動く事が少なくもない人物。話さえすればこちらの状況はすぐわかる。刑事も刑事で――どうも似たような反応の上に、事実、この場に顔見知りが数名居たりもする。草間興信所に来るのは珍しくない。
 結果、元々は部外者と言えども、情報交換をするのを避けた方が良さそうな相手は特に居ない様子で。

 …初めに話し出したのは結局、アリアだった。確かに、一番の謎と言えば謎。
 まず女神アリアンロッドのコピーであると正体を明かしたアリアからは、創造主様――『白銀の姫』のメインプログラマーを捜索し、不完全なまま走り続け不正終了を繰り返しているゲームプログラムを、修正の上確りと完成させ歪みを正してもらう事、そしてそれに伴い、当のプログラムが載せられているコンピュータを探す事をも使命としてゲーム世界・アスガルドから派遣されて来た旨を告げている。
 その時点でIO2捜査官が反応。当のプログラムが載せられているコンピュータ、それは自分たちも事件解決の糸口として探している物になるから。…ただ、当のゲームのキャラクターがそれを探す為に現実世界に来た――となれば、このアリアからはそれが掴める事は無いと少し渋い顔になっている。けれど彼女が現実世界に来たその目的は――つまりはこの現実世界の騒動を止める事にも繋がる訳で、IO2の捜査官は改めて新しい情報・メインプログラマーとやらの名前を訊いていた。…それは他の面子も訊きたかった事である。
 名前は――コウタロウ・アサギ。
 …浅葱孝太郎。
 その名の人物について調査する事を約束し、IO2捜査官は今度は自分たちの事を話し出した。当のプログラムが載っているコンピュータが見付けられなければIO2でも手の出しようが無い事、現時点ではひとつひとつモンスターの騒ぎを収め、情報操作をするだけで手一杯である事。秘密主義で知られるIO2がこの場でそれも部外者に対してそこまで明かして来る事実にやや驚かれてもいたが――そんな顔色を察したか、真咲さんや綾和泉さんがこの場に居る以上誤魔化せるとは思っていませんよと、片割れの小太りの方――布津は複雑そうな顔で告げている。ちなみにもう片方の黒服――源氏の方はその場に居るだけで何も話そうとはしない。往生際が悪いぜ兄さんと刑事――常磐の方から肩を叩かれていたりもしたが。…ちなみに警察の方も、情報操作以外は組織としてまともに動く気配が無いらしいと言う話。お互い大変だよなとその常磐に振られた汐耶の方は――動揺している仕事先の上の方から封印能力を見込まれ何故か動く羽目になった旨を溜息混じりに告げていた。
 次に話題になったのは、本来の行動パターンから外れた行動を取るモンスターの存在。この場に居るのは全部で五体になる。シュライン&豪&アリア組が四体に、セレスティ&御言&汐耶はじめ合流組が一体。その両方で、遭遇した状況の反応などを照らし合わせていた。
 共通点を探すと、状況により敵意はある事もあるようだが(それは臨戦態勢に居れば、そう見えれば反発をする事もあるだろう)、相手を倒すと言う明らかな殺意は無いようである事――この時点でアリアはおかしいと言っている。…モンスターはアスガルドの民や冒険者・勇者を倒す為に存在するのだから、本来のプログラム通りならば多かれ少なかれ殺意の無い者など存在しないと。
 もう一点は行動が妙に人間的である――つまりはただのモンスターキャラクターにしてはそのプログラムは妙に細かい演算処理になっていないか、と言う事。降参の旗を振る、へこへこ土下座、物影からびくびく覗き込んで――タイミングを見計らったようにぽいっと武器を投げ捨てるその絶妙な間、敵に掴まれた棍棒から手を放す事を忘れ、逃げようと慌ててじたばたするその仕種。倒れた時の泣き声のタイミング。好奇心旺盛そうな表情まで目の中に見せ、元は敵だった相手をじーっと見上げる姿。それと――シュラインへの懐きよう。
 アリアにも確認したが、当の女神も――皆さんの仰る通りにモンスターの皆が皆そんな事をするようですと、演算処理が重くなり過ぎる筈です、と言っている。このモンスターも、我々女神同様に自我に目覚めた可能性もあるのでしょうかと深刻そうな表情で。
 こちらの人間と言う可能性はどうですか、と再確認するセレスティ。本来、勇者や冒険者としてプレイすべき人間が取り込まれてしまったと言う可能性はと。…自分の中で思っていても、改めて女神と言う役割を持ったキャラクターに訊いてみる価値はある。すると――現在のアスガルドに於いてその可能性は否定出来ません、とアリア。アスガルドでも本来居るべきでないNPCプログラムの存在が多数確認されていましたから――と、告げている。
 彼女のその反応を見てから、では、とセレスティと豪、御言の三人が麻姫の持参した書類を預る事になり、モンスターの方にお付き合いして色々働き掛けてみようと言う話になる。書いてある名前を読み上げ、メモ書きから判断してその名前の人物が知っていそうな事や興味のありそうな事に関して話をしたりと――情報から揺さ振りをかけてみる。…ひょっとしたら、当たるかもしれないから。
 それと前後して次にアリアの耳に聞かされたのは――依頼を遂行する前の時点で、シュラインが気付いた件。これをアリアに聞かせてみたのは、彼女の場合、アスガルド代表としてどう思うか話を聞いて欲しいと思った為でもある。IO2捜査官ふたりもモンスターの方では無くそちらを気にして聞いてはいたが、一応事前に聞いてもいた上、口を挟んでは邪魔になると見たか――ただ黙って成り行きを見守っている。
「…座標が一致、ですか」
 驚き、茫然と呟くアリア。
 そう、とシュラインは頷く。
「実際の距離を考えると縮尺が随分違う事になるのだけれど、座標的な位置関係が――偶然とは思い難いくらい、近いのよ」
 言いながら、シュラインは興信所内の何処からか地図を持って来た。ぱらぱらと捲り、必要な場所を開いて、アリアに見せる形に置いた。とは言え――その地図を素直に見る向きで、ではない。
「…この向きに置いて、アスガルドで売ってる地図を重ねるようなつもりで考えて、わかりやすくアスガルドでの重要ポイントの位置をまず決めて――ここを兵装都市ジャンゴ、こちらを随星の遺跡と大雑把に仮定すると――」
 シュラインが言いかけたその時点で、アリアの指先が数ヶ所、ゆっくりと丸を描くように地図をなぞっていた。それは――現実世界でモンスターが騒動を起こしていた場所。アスガルドでは――モンスター出没ポイントとして、ある程度有名な場所。…幾つかある。
 アリアは幾つかのポイントをなぞると、顔を上げた。
「…ですか?」
 こちらの世界で、モンスターが現れたのは。
 皆まで言わず、問い掛け、確認。
「…その通り。…ただ、私たちに確認できているのは更科さんの方――怪奇系始末屋に依頼に入ったものだけだから、まだ、確認できてない場所もあると思うけど」
 セレスさんや真咲さん――御言さん曰く、依頼に無かったモンスターも、出現し始めているって話だし。
 汐耶さんや刑事さん、IO2の黒服さんによれば依頼以外の場所にもそれなりに多く居るみたいだしね。そんなシュラインの科白に、ああ。相当多い。とIO2の黒服の片方――布津が同意する。俺も通りすがりに結構見掛けたぜと刑事――常磐の方もまた頷いた。私の仕事場の付近も結構たくさん居ました、と汐耶も。それらは依頼の無かった方面よねと改めてシュラインが確認。…麻姫の記憶データベースを元に、依頼開始前に書き連ねた、依頼された場所を書き留めた地図をぱらぱらと見ている。
「こちらの世界の事件が…アスガルドのイベントと重なる…兵装都市ジャンゴは…私たちの拠点、最後の砦…」
 それらの話を聞き、出された地図を見下ろし考え込みながらひとりごちるアリア。その様を伺いつつも、汐耶は改めてそこ――兵装都市ジャンゴに相当するらしい、この地図上では神聖都学園とだけしか書かれていないそこを指先でなぞってみる。
「神聖都学園…神聖都学園の敷地内ってひとことで言っても広いわよね。教育施設だけじゃなく店舗も入っている訳だし。もっと細かく言うと何処になるかしら…」
 と。
 まさにそのタイミングで、『奇跡』が起きた。
「…では、この『田村』さんの件は当て嵌まりそうにないとして…『柳原幸代』さん」
 そう、豪がメモ書きにある次の名前を読み上げた、次の瞬間。
 モンスターの一体が、わしっと身を乗り出してきた。何事かと思うと、メモと地図の走り書きをじーっと見ている。
 そして暫くそのままで居たかと思うと――おもむろに、微笑んだ。少なくともそんな風に見える形に、モンスターの顔が、少しだけ歪んだ。
 瞬間。
 目の前で。
 身を乗り出してメモを見ていたその『モンスター』が、『モンスター』の姿から『人間』の姿へと。
 …モーフィング画面のように、だが劇的に、変化した。
 途端。
「ちょ、ちょっと!?」
 その変化に反応したとしか思えないタイミングで、無言のまま麻姫がくらりと倒れ込む。ソファに座った状態で、隣に座っていた豪の方向にいきなり。女性が苦手とは言えさすがに慌てて豪が抱き留める。彼らの向かいに居た御言の方は――豪が抱き留めたと確認したかしないかのタイミングで、平然とソファから薄っぺらいクッションをひとつ取り上げていた。
 そんな間にも、目の前の『モンスター』が変化した結果現れた『人間』は、目を瞬かせながらその場に立っている。…何故自分がこんなところに居るのか――把握できていない様子で。
 その様を見、幾らかでも安心させようとその美貌で微笑み掛けつつも、セレスティはぽつり。
「…失踪者の捜索とモンスター騒動――依頼が、重なりましたね」
「ってそんな事を言っている場合では」
 慌てたように、豪。
 が。
 そんな豪に、これ、枕代わりにでもして寝かせてあげて下さいと先程のクッションが御言から渡される。
 御言の表情は、心配と言うよりも――苦笑。
「…更科さんの場合、いつもの事なんですよ」
 なので然程、心配なさらずとも。

【画廊受付嬢の依頼 了】


×××××××××××××××××××××××××××
    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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 ■整理番号/PC名
 性別/年齢/職業

 ■0086/シュライン・エマ
 女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

 ■0631/強羅・豪(ごうら・つよし)
 男/18歳/学生(高校生)のデーモン使い

 ■1449/綾和泉・汐耶(あやいずみ・せきや)
 女/23歳/都立図書館司書

 ■1883/セレスティ・カーニンガム
 男/725歳/財閥総帥・占い師・水霊使い

 ※表記は発注の順番になってます

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 …以下、公式外の登場NPC

 ■更科・麻姫/依頼仲介人
 ■真咲・御言/依頼仲介人&成り行き調査員と言うより戦闘要員
 ■常磐・千歳/通りすがりの怪奇系斥候役な本業マル暴刑事
 ■布津・庄治/通りすがりのIO2捜査官(黒服コンビの片割れ)
 ■源氏・博仁/通りすがりのIO2捜査官(黒服コンビの片割れ)
 ■紫藤・暁/バー『暁闇』のマスター

 ■真咲・誠名(名前だけ)/更科麻姫の上司、真咲御言の義兄、怪奇系始末屋のお仕事中、現在行方不明

×××××××××××××××××××××××××××
          ライター通信
×××××××××××××××××××××××××××

 この度は発注有難う御座いました。
 皆様にはいつも御世話になっております。
 …恐らくPC強羅豪様もPL様はいつも御世話になっているお方かと思うので。あ、違ってたらすみません(汗)初めましてです(礼)

 今回は――普段の依頼系と比べ募集期間をやけに短く区切って募集していた当方初の『白銀の姫・PCクエストノベル』でしたが、そんな極道な行動を取っている中でまでお付き合い頂き、感謝しております(礼)
 ただ…初めにこちらが密かに想定していたより…お渡しが遅くなっている上、妙に長くなってしまいました…。
 プレイングにお願いした部分を通り越して話がその先まで行ってしまっている気もしますし…(汗)
 ちなみに内容はシュライン・エマ様と強羅豪様が全面共通、セレスティ・カーニンガム様と綾和泉汐耶様は少し変わって来ています。

 そして何やら続きそうな終わりにも思えますが(汗)、この時点からの直接の続きは考えておりません。今回あった事を受けたような形の別の話は――『白銀の姫』が十一月までと期間延長になったと言う事で、後々出せるとは思いますが、そちらではオープニング時点でアリア・更科麻姫・真咲御言・IO2捜査官×2・常磐千歳辺りが出てくる事は無いと思います。また全然別の角度から出す事になるかと。

 また、既にしてこの時期ではありますが(汗)、このノベルではアリアンロッド・コピーことアリアとPC様方は全面的に初対面、とさせて頂きました。…今回のオープニング時点でひっそり言っていた「外部からの干渉」で一番大きいものは、このアリアと想定していたのでその関係です。公的な権力との記載やら、他にも明らかにIO2を意識したと思われる(笑)記載もあったので…警察やらIO2捜査官も出ていますが。
 他の要素としては、今回のノベルは第二回ミッションイベント(参加してませんが/汗)と同じかその前後くらいの時系列で想定しています。

 PCシュライン・エマ様には…いつもぎっしりプレイングを詰めて頂いている事に毎度恐縮で御座います…内、アスガルドでの地図上の位置比較の件はピンポイントで当たりでした。それと何故か後半でモンスターに懐かれております…。退治の依頼だった気がするんですが…何故かこうなってます(…)

 こんな結果が出ましたが、楽しんで頂けれていれば幸いです。
 では、また機会がありましたらその時は…。

 深海残月 拝