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<白銀の姫・PCクエストノベル>


画廊受付嬢の依頼

■オープニング

 ある日のバー『暁闇』、その日の営業準備をしている頃の話。
 殆ど鍵がかかっている事の無い裏口のドアが――ばん、と派手に開かれた音がした。何事か。ボックス席のテーブル等の位置を見ていた当店バーテンダーの真咲御言は思うが――少なくとも、害意ある者が来た訳じゃないとは即座に判断が付いた。が、だからと言って店のオーナーでもある自分の上司、紫藤はこんな入って来方はしない。確かにまだ、来ては居ないが。
 思っている間に、分厚い眼鏡を掛けた、文学少女がそのまま大きくなったような大人しそうなお姉さんが飛び込んでくる――知人だ。
「…更科さんじゃないですか」
「よ、よかったみ、御言さんは――い、い、いいらっしゃったんですねっ!」
「御言さんはいらっしゃったんですね――と言う事は、誠名さんでも居なくなりましたか?」
「は、は、は、はいっその通りです。じゃなくって、そ、そ、それだけじゃなく、あの」
「…草間さんも、と言う事で?」
「は、は、は、はいっ」
「…草間さんの名で頷かれるとなると、何か裏の裏…に当たるお仕事の依頼でも」
「そ、その通りですっ。か、怪奇系始末屋の方のお仕事が…あの、な、なにか、機械と混じったような…へ、変な怪物が出没してて困ってるって、あの、助けてくれと言う依頼がどどっと舞い込んでまして…」
「…件の『白銀の姫』でしょうかね」
「や、や、ややっぱりそう思いますか…」
「取り敢えず草間さんも零さんも『白銀の姫』の中にいらっしゃるとは伺っていますが…」
「そ、そうなんですか?」
「誠名さんもそのクチなんじゃないでしょうかね」
「…た、た、た、確かに失踪者の捜索とは言ってましたから、『白銀の姫』の中に居る確率は高いんですけど…で、でも、わ、私は行けませんしもし行っても誠名さん見つけるのに時間が掛かるでしょうしそもそも入口知りませんし…っ、あああああどうしたらっ」
「…まぁまぁ落ち着いて下さいよ。取り敢えず目の前の困り事は、『白銀の姫』由来と思しき怪物の出没を何とかしてくれと言う依頼がたくさん来て、捌き切れなくて困っている訳ですよね」
「は、はい。…暴れてるから助けてくれとかそんな話ばかりが…。クライアントの皆さんにお断りしても、それでも藁にも縋りたいって感じで逆に必死な顔で頼み込まれてしまって…」
「でしたら…そうですね、放っとける話じゃないですし、出来る限りになりますが…俺たちで何とかしてしまいましょう。誠名さんが不在時に来た依頼の采配は更科さんが握っていると以前から仰ってましたよね」
「…そ、そうなんですけれど…」
「と、なると。依頼料をそれなりに考えて頂ければ、ある程度はそれで人を呼べると思えますよ」
 ここで仲介して差し上げましょう。


■作戦会議

 と、そんな話になった――直後。
 更科麻姫が飛び込んで来、開け放たれたままの店の裏口からまた別人の声が掛けられている。…基本的にこの『暁闇』、営業時間外で裏口からの客となると、酒や備品等の搬入業者以外の場合は用がある相手は真咲御言個人と見ていい事になっている。このバーテンはここに勤めるようになって以来、何だかんだとありながらも結局店舗の管理人がてらここで寝泊まりし続けている為、事実上ここが家も同然の状況が続いてしまっていたりするのだ。
 そんな訳で、聞こえてくる声に応対すべく真咲御言は裏口へと顔を覗かせたが――そこに居たのは草間興信所のおねえさんことシュライン・エマに、全体的にワイルドな印象の人物だが顔立ち自体は知的な美形と言える学ラン少年こと強羅豪(ごうら・つよし)のふたりの姿。
 曰く、ふたりは草間興信所の冷蔵庫に貼ってあった伝言メモを見て来たらしい。更科麻姫は草間興信所に顔を出し草間武彦並びに草間零の不在を確認した時点で、依頼の旨、メモを残すだけ残していたとの事。…草間武彦が残した「『白銀の姫』事件調査中」のメモの方には…余程慌てていたのか、気付かなかったようだが。
「依頼となっては放っておけないものね。…お得意様な真咲さん――誠名さんのところのお話だし」
 そんな訳で草間興信所を代表して来ました。とシュライン。
「俺も…草間興信所で偶然このお話を知りまして」
 各所で騒動を起こしている『白銀の姫』由来らしいと言うモンスターの退治…是非お手伝いをさせて頂きたいと思い、こちらまで同行した次第です。と豪。
「あ、あ、あ、有難う御座いますっ!」
 話を持ち込んだ当人である麻姫は、応対に出たバーテンこと御言の後ろからふたりの姿を認めるなり、ぺこりと思いっきり頭を下げている。
「取り敢えず、こんな場所では何ですから、中へどうぞ」
 そんな麻姫に続け、御言が改めてふたりを店内へ招いた…ちょうどその時。
 唐突に、店に設置してある固定電話が鳴り出した。



 …暫し後。
「誠名さんが行方不明…心配ですね」
 まぁ、その内に素知らぬ顔で飄々として戻って来られる気はしますが。
 …今現在、バー『暁闇』に集まっている人間は更にひとり増えて五人。元から居た真咲御言に、飛び込んで来た更科麻姫、その後にメモを見て来たシュライン・エマと強羅豪、そして――銀髪の麗人が最後に来訪していた。
 …先程店の固定電話に掛かって来た電話は、最後に来た麗人ことリンスター財閥総帥、セレスティ・カーニンガムからのもの。どうも電話時点では何か別の話があったようだが――話すついでにバーテンが更科麻姫からの話をそちらに伝えてみると、私もこれからすぐにお伺いしますと即座に決定。…今に至る。
「た、確かに…誠名さんの事ですから大丈夫だとは思うんですけれども」
 焦り故かまだ多少の吃音が残っているながらも、麻姫は一応の落ち着きを取り戻す。依頼を受けてくれると言う面子が実際に現れてくれたからか。
 少し落ち着いてから、麻姫は分析し易いようメモを取る事を皆に頼み、今現在入っていると言う依頼内容を片っ端から口頭で説明し始める。…どうやら依頼については細大漏らさず自分の頭に記憶していると言う事らしい。
「――…こちらは会社からの帰宅時に怪物に襲われて怪我をしたとの話で、以前から御世話になっている顧客の方からの依頼です。公園で変な怪物が暴れているから助けて欲しいと言う公園の管理人さんからの依頼もあります。…それから運搬中に襲われて絵画や美術品を壊されたと嘆いている表の同業者の方、怪物の目撃証言が多々ある御近所の保育園からの念の為の依頼…この辺りは出現している怪物の目撃証言からして、種類はある程度重なると思います。場所も近いですし」
 書類も何も見ないまま、麻姫はぺらぺらぺらと告げている。取り敢えず、とカウンターに広げられた地図にシュラインと豪が目撃証言や被害時間に内容等をせこせこと書き込んでいる。麻姫はそちらを見、書き込んでいるそれをひとつひとつ指差し確認しながら、ある地点とある地点の怪物の目撃証言にある特徴がとても似ています、それからこちらとこちらの怪物の場合破壊行動の傾向が近いです使っている攻撃方法や武器が同じです等々、すらすらすらと指摘している。そしてそれらの情報もまた――セレスティの方で別紙に書く代わりに持参したモバイルに入力し、分類と分析を始めていた。
「…多分、これはアスガルドで遭った事がある奴ね。…火に弱かったと思うわ」
 麻姫の話を聞きつつ、シュラインは自分の記憶も引っ張り出して一緒に書き留めている。曰く、彼女も『白銀の姫』の世界との出入りは頻繁にしているとの事。出没しているモンスターの外見特徴や攻撃法等を聞いた時点で、ある程度の弱点やら現実世界側では未知の特徴、周囲への被害を考えた場合の注意点も纏められると見たらしい。事実、麻姫の情報とシュラインの持っている情報にはかち合うものが多かった。その事からしてもどうやら、現実世界で騒動を起こしているのは取り敢えずレアなモンスターでは無さそうである事がわかる。
 豪の見解も殆ど同様だった。
「…『白銀の姫』の世界では主要都市である兵装都市ジャンゴから離れれば離れる程モンスターは強くなるんですけれど…現実世界で暴れていると言うモンスターはジャンゴからそう離れていない場所によく居る奴らが多いようですね。これならばすぐに何とかなりそうです。…ただ」
「周囲への影響が心配、と言う事ですね」
 ゲームの世界では然程心配する必要の無い事ではありますが――現実世界ではそうも行きません。
 後を続けたセレスティは、言いながらも通信機らしきもので何処ぞと連絡を取っている。麻姫の話を聞きシュラインと豪で書き留めていた地図を見、自分の手許のモバイルを同時に確認しながら何やら指示を出していた。…話している内容からするに、騒動の情報から計測、予測を付けてみたモンスターの出現地点複数に部下を差し向け警戒するようにある程度の交通規制をして欲しい旨を、そしてメディアへの規制まで指示していた。
 セレスティはそこで通信を止めている。
「…強制力までは無いですがある程度の効力は期待出来ますよ」
 戦闘時に関係者で無い方が居られたら、後の説明も大変ですし。どう動くにせよ、早い内にシャットアウトしておいていいと思いますからね。
「公的な権力でも使えばもう少しやり易くはなりますが――そこまで望むのは止めた方が良い気もしますしね」
 それは上の方に声を掛けてみる事も出来なくはないですが…私の一声で余計なところまで揺るがせてしまうのも芳しくない気がしますから。
 静かに苦笑するセレスティ。と、その場に居る面子から何となく御言へと視線が集まった。…元ではあるが、『秘密裏に行動する事を得意とする』対超常現象の超国家警察、IO2の人間。
 そしておもむろに口を開いたのは――豪。
「…貴方は元IO2だと伺いましたが――」
 その件、上手く何とかなりはしませんか。暗にそう含み、豪は御言を見ている。
 と、あっさり頷かれた。
「ある程度なら『大事にならないように』動かす事も出来なくはないですよ。…知らせれば黙っていられない連中の心当たりはありますから、情報の渡しようでどうとでも動かせます。…まぁ、俺自身は『向こう』にすれば死んでいなければおかしい身なので表立って動かない方が良くはありますが」
「…いいんですか?」
 恐る恐る、シュライン。
 御言はやっぱりあっさり頷いた。
「構いませんよ。…そもそも異界化したゲームから現実世界に現れたモンスター、なんて言ったら思いっきり『向こう』の管轄になりますし。そもそも誠名さんのところにこれだけの数『同じ件』の依頼が入る程の騒ぎが起きているのなら――現時点で彼らの方でも何かしら動いてなければその方が怠惰です。その中で少し融通利かせてもらう程度なら簡単でしょう。…ただ、こちらの都合の良いように連中を動かす為には…これからこちらがどう動くかをもう少し具体的に決めておく必要がありますけどね。それからの方が効果的に動かせます。
 それと、その際にリンスターの名前をお借りしても宜しいですか? その方がやり易いと思うので。…勿論、リンスターが不利益を被るような事をするつもりはありません」
「細かい点はお気になさらず。使える名前だと言うのなら一向に構いませんよ」
 途中から御言に話を振られたこちらもあっさり頷き、リンスター財閥の総帥様は快く受けている。



「この動きだと、統制を取っている上級モンスターらしき存在は居ないみたいだけど…」
 ゲーム『白銀の姫』由来…レベルの低い雑魚敵ばかり…それ以外に何か共通点はあるかしら?
 誰にともなく呟きながら、シュラインも地図を見下ろし考え込む。
「…ところで、誠名さんが受けている依頼に関しては失踪者の捜索だと伺いましたが――君が持って来たこの依頼は…それとある程度重なるものなのか、それともまったく別の件なのかも気になるのですが」
 怪奇系始末屋のお仕事となれば、ただ失踪、と言うだけの話では管轄違いの筈でしょう?
 ふと疑問を感じ、セレスティが麻姫に振る。と、麻姫は緩く頭を振った。
「…実は私の方でも詳しく聞いていないんです。今誠名さんが動いているのは直接引き受けられた仕事ですから。私も直接依頼を聞いていたなら…守秘義務に抵触しない程度の事はお伝えできたんですが、近頃頻繁に起きている失踪者・行方不明者の捜索、と言うだけしか私には…」
「モンスターとは聞いていませんか」
「はい」
「『消える』のと『現れる』のでは…正反対になりますね。誠名さんは本当にただ逆、なだけのお仕事をなさっているのか…」
 考え込むように、セレスティ。
 と。
「…ちょっと待って」
 地図を横にしたり逆さにしたりとくるくる回し、ためつすがめつしていたシュラインがはたと停止する。
「どうかなさいましたか?」
「…アスガルドと地図上の位置が重なるの」
「何ですって?」
「ほら、地図をこの角度にして、この辺り――ちょうど神聖都学園の敷地内になるわね――を兵装都市ジャンゴ、この辺りを堕星の遺跡と仮定して見てみると――この目撃現場はちょうどアサルトゴブリンが棲んでいる事で有名な荒地だし、こっちは初心者の経験値稼ぎに良いって話の場所なのよ。経験値稼ぎ――つまりは雑魚敵が雲霞の如く湧いて来るって事で知られてる場所になるわ。…他の場所も――それは縮尺は違ってくるけど、座標的には殆ど重なる」
「それは――どうも、深刻な事態の気がしてきましたが。…今はまだ何も無くとも、アスガルドでの他のモンスター出現ポイントと重なる場所もこれから危ないかも知れませんね。その筋の方々にも警告をしておくべきかも知れません」
 真剣な顔で、セレスティ。今回の件を頼むついでに『向こう』には言っておきますと即座に御言が返す。豪も深刻そうな顔になり、頷く。…彼にすれば他人事ではない。『白銀の姫』に行き来している身としては――余計に放っておく訳には行かない事で。それでも、歯痒いながらも人一人に出来る事は限られる。
「…まずは依頼にあった件から何とかして行きましょう。既にして依頼と言う形で専門の人間に頼む必要が出る程、困っている人たちが居るんですから。出来る事から何とかしなければ」
 豪のその科白に、皆は同意した。



 …依頼にあったモンスターの目撃証言、その場所の条件。好みそうな物件。モンスターそれぞれの特徴や弱点等々――他にも確認した情報を元に、今度は自分たちの動き方を考える。適性や戦力、手数を考える。
 場所柄については――当然、周辺への被害回避が第一。目撃数が少ない場合は、恐らく実際の数も少ないのだろうからその場で退治しても良いだろうが、多いと周辺への被害が心配になる。都合が良さそうな空地や公園等を探す。…戦闘時には一気に決着が付けられるような、心置きなく存分に、本気で出られる場所が良い。
「…火気に注意すべき場所や住宅、時間によっての人通りの変化等も…念頭に置いておかないと」
「…はい。ある程度はうちの方で何とかなると思いますし、何処かの黒服さんに伝手を付けて頂けるならそれ以上の期待も出来そうではありますが――何にしろ、『絶対』は有り得ませんからね」
「…敵を追い込むには俺のデーモン『ゴールデン・レオ』が使えると思います。少なくとも依頼の情報時点では上級モンスターは居ないようですから。後は現場の状況次第ですね」
「…それと更科さんは――現場に出ない方がいいと思うんですが」
「…は、はい。何かありましたら、すぐに皆さんと連絡を取れるようにして待機している事にします。あっ、やっぱり戻って誠名さんのしている仕事の書類があるかどうか探してみます。カーニンガムさんの仰る通り、今回の依頼とも何かしら関連のある――元々『白銀の姫』絡みの事件じゃないかって部分は共通ですけど、それ以上に何らかのヒントになる可能性も否定出来ませんから」
 と、
 そこまで決まったところで。
「どうも今日は仕事をしていられる状況では無さそうだな。真咲」
 また新しい声が飛んで来た。
 裏口方面から静かに現れた白髪混じりの髪を持つその男――店のオーナーでありマスターでもある紫藤暁は店内に居る面子を見渡し、最後に再び部下のバーテンを見る。
「…良くはわからんが――お前も行った方が良さそうな話と見たが」
「マスター」
 呼ばれ、紫藤は僅か頷くと、他の面子へと向き直る。
 そして。
「何事か良くはわかりませんが。こいつで役に立つなら使ってやって下さって構いませんよ」
 最後の最後に現れた酒場の主は、何も訊く事をしない内から――御言を示し、あっさりとそう告げている。


■作戦実行

 …目撃数の多い方をひとまず豪に任せ、遊軍のような形で目撃数が少ない方を消して行く真咲御言。文字通り、『消して』いる。その方法は――陽炎の如き色の無い空気の歪みと言うべきか、そんな熱を持った空気を利用して何かをしているようだった。その陽炎が彼の両手をそれぞれ覆うようにある事が、一応ながらだが確認できている。その状態の彼の手が振り下ろされ、モンスターに掠ると、爆発するような烈光が目を射る事がある。が、目の錯覚かと思う程度の間でその光もまた消えている。そしてその光と共に、モンスターの姿すらも、何の痕跡も残らないまま消えている。但し――それらが目の錯覚では無い証拠に、そろそろ周辺の温度が妙に高く、暑くなっている。…すぐ側で火でも使った後のよう。
 少し離れた場所に居るセレスティ・カーニンガムも、少し具合の悪そうな様子になってはいた。…セレスティは、強い光と気温の高い場所に弱い。今現在、思いっ切りその悪条件に嵌る状況に陥っている…らしい。一応、光を遮る為か申し訳程度に着色されたサングラスを掛けてはいるが。
 御言は取り敢えず近場に居たモンスターをすべて『消す』と、すぐに『陽炎』も消し、特に歩み寄る事もせず、幾分離れた場所に居るままでセレスティへと声を掛けた。
 …せめて『熱源』は近付かないでいる方がいい。
「…すみません。大丈夫ですか」
「…ええ。お気になさらず。…君に『それ』を頼んだのは私なんですからね」
 やや汗さえかきつつも、セレスティは静かにそう返すのみ。確かに暑いが、この場合――他者のせいにはし切れない。…元々暑過ぎるくらい暑い日本の都市の夏ではあるが――今に限っては、ちょっとばかりそれ以上の理由もある。
 何故なら現在、意図的に『火』を起こしているのだから。
「…確かに徹底的に『灼』いてしまった方が証拠隠滅には手っ取り早くはありますが――数撃つと周辺の温度も上がってしまうのが難点で。一、二度ならそれ程の影響は残らないんですが…」
 一応、影響があまり出ないよう、出来る限り狭い範囲に出すようにして灼いてはいるんですけどね。
 やや息を荒く吐きながら御言はそう呟いている。実は今回、普段はろくに使わない、厄介の度合の方が強い能力――『発火』の方を主体として御言は行動していた。…あまり連続で数多く、もしくは時間を長く使用するのは安全性や精度を考えると少々辛い――と言うか無理と言って差し支えないらしいが、それでもある程度までなら使えると言う事で、目撃数の少ない方の依頼を幾つか、モンスターの『焼却処分』を担当している。
 これは依頼完遂、モンスター掃討後の後片付けに関してまで気を遣っていたセレスティの発案故の事。事前のその発案時、豪もまた超高温の炎を使用する必殺技を持つとの事で――だからこそ豪と御言では別行動組になったとも言う。火を使い残骸を焼き尽くすのは予め考えていた事。…能力を以ってそうするなら、普通の火で焼くより痕跡も残り難いだろうと言う思惑もあり。
 御言曰く、自分の能力の場合、火の温度を上げさえすれば原型を留めぬ焼死体を作るどころか――塵ひとつ残らず灼き尽くす、もしくは蒸発させてしまう事さえ可能らしいと言っていた。能力が暴走しそうになったら止めますがとは予め言っていたが、現時点では取り敢えず大丈夫な様子ではある。余力もまだありそうだ。…通常では殆ど見せない疲労の色を見せてはいるが。…但し疲労と言っても、大抵の人間が少し運動をした直後、程度の疲労になる。つまりは大した事は無い。この男は通常ではそんな気配を綺麗さっぱり見せないから、それだけでも疲労と表現したくなるだけで。

 セレスティが御言と同行したのは、豪の能力と比べると安定していないと言える御言の発火能力を考えての事だったのかもしれない。恐らく無いとは思うが念の為、いざとなった時の『消火』の事も考えて。
 が、正確にはここまで共に行動する予定でもなかった。
 初めは、豪とシュライン同様の陽動作戦――少し離れた位置でモンスターを掃討する御言と、紛れ込んだ一般人を探したり、予定外のモンスターの姿を探す等裏方として動くセレスティとリンスターの黒服数名――の二手に別れて動く筈だったのだが、依頼の場所に到着する前の時点、まだセレスティと御言が別れて行動を始めるより前に――モンスターに遭遇してしまった。…依頼の目撃証言には無かった、移動速度の速いモンスター。ただ、依頼にあったモンスターの出現場所――出没範囲から予測した場所と地図上で重なるアスガルドのポイントには良く出没する事のあるモンスターだとセレスティが即座に看破していた。そうなると、また新たに『白銀の姫』のゲーム世界からモンスターが現れたと言う事になるのか。…皆の懸念が刻一刻と現実になって行く様が見えてくる。
 …先程まだ『暁闇』に居る内に、セレスティは予測したその出現ポイントへと部下を差し向けている。ここでの依頼には無かった筈のモンスターを確認するなり、セレスティは彼らへと反射的に連絡を取っていた。何か変わった様子は無いか。…あったら主のセレスティが連絡を入れる前に部下からセレスティの方へと連絡が入っている筈だ。そうは思いながらも一応確認。やはり――まだ、何も無い。これらは彼ら黒服が急行する以前に現実世界へと現れていたか。それとも予測した場所が間違いだったのか。…今セレスティと御言の居る場所は、依頼にあった場所からはかなりずれ込んでいる。他にもこう言った予定外のモンスターが多く居るかもしれない。思ったよりも出没地域が広がっている可能性もある。…また、懸念が広がる。セレスティはシュラインや豪にも改めてその旨連絡を入れた。
 と。
 通信機で連絡を取っているその背後、するりと現れたのが蛇――と言うより空中を泳ぐ細長い形の、何処か深海魚を思わせるモンスター。勿論機械めいた部分もある『白銀の姫』仕様の連中。…今ここに現れているモンスターと同じ形。
 殆ど不意打ちで現れた筈だったが、次の瞬間――そのモンスターは『水』の塊に絡め取られて身動き取れなくなっていた。セレスティの手許にある水筒の蓋がいつの間にか取られている。セレスティは背後に現れたモンスターの事は疾うに承知だったらしい。その『水』に助けられた形になる部下の黒服も居た。やはり暑い中でもセレスティの感覚は相当、鋭い。…通信機を用い遠く離れた他者と話していながらも、攻撃に転じている程に。
 セレスティがモンスターをその『水』のロープで――水圧で、締め付けて、程無く。
 その時点で『死亡判定』が出たのか、モンスターの姿は、空中に分解され跡形も無く消えていた。まるでPC画面上で、CG映像が掻き消えるが如く。
 それを見て、その場に居た面子は思わず停止する。…セレスティと御言のこのパーティで、現実世界に現れたモンスターを『火』を使う以外で倒したのは――今が、初めて。
 やがて。
 沈黙を破ったのは、セレスティ。
「…予め後片付けを考えておく必要は――無かったようですね?」
「…不覚ながら気付きませんでした。ここまで温度を上げてやると、初めから殆ど手応えが無いのが普通なので」
「………………そう言うものなんですか?」
「…『これ』を使った状態で攻撃を仕掛けても、空気抵抗程度しか感じられないんですよ。…実際に手で触れる前に対象の形が無くなっているようなものですから」
「…凄まじいですね」
「…まぁ、これで後片付けの心配は消えましたから――これからは、今までより幾らかは過ごし易い状態で動けると思われます」
 セレスティを見、御言は苦笑。続けて小さく息を吐く。
 …取り敢えず『火』をこまめに使うのは、ここまでと。



 …それから、暫し後。
 御言よりセレスティの方に逸早く連絡が入る。それは気が動転してどうしようもない程ではないが――何処か慌てた、驚いたようである事は否定できない話し方の連絡。部下の黒服からのもの。その内容は――凄まじい強さでモンスターを薙ぎ倒していく白銀の戦士が何処からともなく現れたと言う話。強羅さんとエマさんが動いている方に向かっているようです! 監視を続けます! と残し通信は切れた。
 セレスティと御言は顔を見合わせる。
「…何者でしょうか?」
「――」
 ぽつりと呟く御言に、セレスティは無言を返す。
 そして、ほんの少し後。
 思わず、と言った風にセレスティが呟いた。
「…女神アリアンロッド?」
 呟かれたその名を聞いて、御言は確認するよう静かに口を開く。
「それは――『白銀の姫』に於ける四柱の女神のひとりでしたね。…向こうでは主にケルト系の神話を絡めた命名がされている。いえ、当のゲームの名前からしても、アリアンロッドとなれば重要なキャラクターに思えますが」
「ええ。…ですが、ここは現実世界。他の女神ならまだいざ知らず、他ならない女神アリアンロッドがこちらに現れるとは少々思い難いのですが――」
 と、呟いたところで。
 またセレスティの手許の通信が復活する。今度は音声のみならずセレスティのモバイルの方に映像が転送されてきた。その映像は――先程の連絡にあった、『白銀の戦士』の姿らしい。

 そこに映し出されていたのは――紛う事無き『白銀の姫』の女神のひとり、アリアンロッドの姿だった。


■遊軍二組、合流

 …白銀の鎧を纏った女戦士。それが公園の方に向かっていると連絡があった。その公園は『暁闇』に集まった面子が更科麻姫から受けた依頼の内一件にもなる場所のひとつ。そして――ついでなので事前の作戦ではここにモンスターを追い込もうと言う話に纏まった場所のひとつでもある。
 即ち、そちらには別行動組――強羅豪とシュライン・エマが居る事にもなる。白銀の女戦士――ゲーム『白銀の姫』に於ける女神アリアンロッドにしか見えないその彼女は、モンスターを見付けては薙ぎ払いつつ、ただそちらへと向かっていた――そうセレスティ・カーニンガムの元には連絡が入っていた。セレスティは同行している真咲御言へと即座に伝えている。御言の方は――今度は不可視の焔は使わず、その手で直にモンスターを叩き伏せていた。数回打撃が入ったかと思うと、程無くCG画像が分解されるように消えていくモンスターの姿。『死亡判定』が出るのが早い。
「…やはり現れた白銀の戦士は、女神アリアンロッドのようです」
「了解しました。…少なくとも敵ではないようですね」
「ええ。彼女の事ですから――モンスターが現実世界に現れてしまう事も許せないと思ったのかもしれませんね」
「ゲームの中の世界も大変だと伺っていますが」
 それで女神が現実世界の方に来てしまうものでしょうか。…そもそもそれが可能な存在なのか。
「私もそこが引っ掛かっているところです」
 可能かどうかと言う部分に関しては、アヴァロンと言う場所が外界と直接繋がっている…と言う話がありますし、実際にこうしてアスガルド世界のモンスターが現実世界に来てしまっている以上、可能か不可能かだけで言うなら――可能であるとは思いますけどね。
 ただ。
「…肝心のアスガルドを放り出してこちらに来るとは思い難いと。女神アリアンロッドは創造主以外の誰にも『白銀の姫』のプログラムを触らせない事に腐心している方ですから――ゲームの世界では、彼女には敵が多いんです。逆を言うなら――彼女が居なくなって都合のいい相手はゲーム世界にはたくさんいらっしゃる」
 セレスティの科白を聞き、散発するモンスター相手の戦闘を続けながらも御言は軽く頷く。
「でしたら女神アリアンロッドは――そんな場所からただ離れる訳には行きませんね」
「…ですけど、実際に――現実世界に女神アリアンロッドと思しき存在が居る事は、確かみたいですよね」
 と。
 そんな聞き覚えのある声が彼らの元に唐突に割り込んで来た。銀縁眼鏡を掛けた中性的な顔立ちの女性――綾和泉汐耶の声。彼女は開いた文庫本を片手に、火の点いていない煙草を銜えて特殊警棒を携えた四十絡みのおっさん――常磐刑事と、わかりやすいくらい黒尽くめのIO2の黒服ふたり――布津と源氏を引き連れてそこに来ていた。
 汐耶は彼らと遭遇したあの後結局、電話連絡――と言うより他者との連絡はIO2の黒服に任せる事にして、モンスター封印の方に専念していたらしい。…携帯電話と文庫本を同時に持っているのは正直なところ遣り難かったので。そして、黒服の持つ情報からしてセレスティ及び御言の現在位置が近いと見た為、取り敢えず合流してみたところ。
「こちらの黒服さんから先程伺いました。真咲さんとカーニンガムさんも同じ件で動いていると言うお話も」
「そうでしたか。現在俺とカーニンガムさんが動いているのは更科さん――本来は誠名さんのところに入った依頼の代行で、になります」
「ええ。誠名さんが別件の仕事で出たまま行方不明と言うお話を伺いまして。麻姫嬢が御言君の元に助けを求めに来たんですよ。…行方不明の当の件では無く、誠名さんが不在の間に舞い込んだ裏の仕事に関してですけどね」
 それで、私たちも微力ながら手を貸しましょう、と。
「誠名さんの代行でしたか。…私の方は――少々仕事場の上の方から頼まれ…と言うより軽く脅されまして」
 ぽつりと呟かれたその科白に、一瞬の間が開く。
「…そう来ますか」
「…お察しします」
「有難う御座います。にしても…司書の業務内容って事務屋だったと思うんですけどね…」
 はぁ、と溜息。
 …汐耶としては、どうして正業の延長で『白銀の姫』由来のモンスター相手に大立ち回りをする羽目になるのか、考えれば考える程謎である。…『白銀の姫』の攻略本もしくはデータブックでも何処かで誰かが出版してでもいるのなら――まだ、いざ知らず。
 ともあれ、そんな益体も無い事を考えていても仕方が無い。今この場ではとにかく騒動を片付ける事が先決。
「…出現範囲一帯に封印でも掛けたら、その範囲ならモンスターがどう動いているか――具体的な出現場所の特定も可能ですけれど…」
 考え込みながら汐耶が言う。実行したらかなり精神的消耗が激しくなる事は予想出来るが、時間短縮を考えるならば――実際、手っ取り早い方法でもある。
 が、すぐに頭を振られた。
「…いえ、そこまでしなくとも」
「ですが、何処かにある歪みと言うか穴…向こうとこちらを繋ぐ通路を逸早く探し出して――塞ぐ必要もありますよね?」
 それとも――依頼があったと言う事なら、目撃証言等から何処か場所の見当は付いているんですか?
「と、言いますかね、この場合――穴や歪みどころでは無く、もっと深い部分に問題があるようなんですよ」
「ええ。現実世界での目撃証言にあるモンスターの出現ポイントと、アスガルドに於けるモンスター出現ポイントとして有名なポイントの位置関係が非常に近い、とエマさんから指摘がありまして」
「…え?」
 セレスティと御言のその科白に、汐耶は停止した。
 そして少し考え頭の中を整理してから――改めて口を開く。
「そうなると…ゲーム世界と現実世界に特定の通路が――と言うより、ゲーム世界自体が現実世界に現出して来ている――現実世界との境目が曖昧になっていると言う事…になるんでしょうか」
「その可能性は高いです」
「…随分深刻な話になりますね。道理でIO2が動いている訳だわ」
 言って汐耶はIO2の黒服二人組を見遣る。と、その片方――布津の方が疲れたように頷いた。
「…正直、こちらは情報操作で手一杯です」
 異界化が理由か、元凶のゲームの源となるプログラムがどのコンピュータに存在するかも掴めない。だからと言ってネットと言う全世界に繋がる広大な電子の海を介している以上、接続コンピュータすべての電源を一時的に落とすなどと言った超法規的な実力行使も事実上不可能。ならば出来る事は――散発するゲーム由来の怪異をひとつひとつ治める事、そしてパニックにならないよう、情報をひたすら隠し通す事だけで。
 片手に握ったままの小型の術具――人の記憶に干渉するもの――をちらと見ながら布津が言う。もう片方の黒服――源氏の手にも同じものがあった。…二人組で行動している黒服の両方が、どちらも術具を仕舞う余裕すら無いらしいとなれば――言っている事にも真実味が増す。この状況下の中、一般人を見付けてはすかさずその術具を使用しているのだと見て取れる。
 そこからしても、組織として手詰まりになっているようだ。リンスターの動きに沿う形に――と言う話が好都合だったと言うのも、建前や社交辞令では無さそうである。
「そちらの黒服さん方によればうちも似たようなもんだとさ。…ハム――公安の情報屋が動く、いやもう動いてるかもしれねえな――とにかくその可能性が高いんだそうだ。連中が出るとなれば、表立って動く捜査員は萱の外にされるって事になる。つまりは俺みてぇな捜査員も民間人が個人で動いてるのと大差無ぇ」
 ぼそりと付け加える常磐。
 それを聞き、汐耶が少し考える。
「そうなりますと、警察やIO2は――今回の事態の根本解決の役には立たないと言う事になりますね」
「元となるゲームプログラムが載せてあるコンピュータさえ発見出来れば、手の出しようはあるんです」
 即座に、布津。
「それが難しいって事なんでしょ」
「ええ。IO2でも専門の要員がネット上の痕跡から辿る事を試みてはいますが――まだ雲を掴むような状況で」
 布津のその説明に、今度は御言が入って来る。
「こちらに現れた女神アリアンロッドと思しき彼女の存在ですが、モンスター同様、向こうの世界がこちらに影響し出した結果だと――それが原因と単純に考えていいものなんでしょうか」
「有り得ないとは思いませんが――どうでしょう」
 他ならない彼女の場合、何か意図があって、の方がしっくり来ると思いますが。
 そう続け、セレスティは考え込む。と、そこに汐耶が口を開いた。
「…現実世界に居る女神アリアンロッドの正体も確かに気にはなりますが――黒服さんたちに入った連絡での彼女の行動からしても…今彼女のやりたい事は多分、今の私たちと同じだと思うので、現時点では正体を詮索するよりも――ある程度利用と言うか、頼っちゃった方が早いと思います」
「それもそうですね。…まぁ、強羅君とシュライン嬢の居る方に向かっているとも聞いていますから――彼らなら私たちがそうするよう伝えるまでもなく、自然にそう判断すると思いますけれど。…向こうのモンスターを相手にするなら、『女神』は一番の助っ人と言えるでしょうからね」
 あっさりとセレスティは同意する。顔を合わせている他の面子からも、否やは無い。
 話がそこまで行ったところで――不意に、声がした。声と言うより、鋭く空気が抜けるような音。そんな音を発するものがこの近所にあったか。いや、無い。そうなれば音の源として考えられるのは――件のモンスター。
 思った通り、皆が振り返ったそこで、またも機械が混じったような姿の異形のモンスターが声を上げていた。ただ、その声は威嚇音にも聞こえるが――どうもそれにしては、何処か妙な響きもある。
 そのモンスターの見た目――グラフィックは『白銀の姫』を知る者には見覚えのあるもの。相変わらずの特に珍しくもない雑魚モンスター。こちらが存在に気付くのとほぼ同時、襲い掛かって来ようとする。
 咄嗟に、文庫本を開いたまま持っていた――つまりは臨戦態勢のままだった汐耶が封印しようと出掛かるが、そこを御言が静かに遮った。汐耶は目を瞬かせるが、取り敢えず遮られるまま封印は止めにする。ただ、動こうとした汐耶にまず反応したか、モンスターはそちらを狙い襲い掛かってきた。が――御言は、反撃を試みずにその攻撃――振り下ろされようとする棍棒を直に掴んで止めていた。同じ時、やはり、とセレスティが意味ありげにひとりごちている。
 …動きを止められたモンスターは、ぎょっとしたように身体をびくりと震わせた。そして――慌てて棍棒を引っ込めようとする。頑張って引っ張る。けれど取れない。怯えたようにじたばたと足掻く。…ただ逃げるだけならば武器の棍棒を手放せばいいだけだと思うのだが。周囲がそう思った頃になってモンスターは漸くそこに思い至ったか、棍棒から手を放し逃げようとする――が、そこですかさず、そのモンスターが身体に纏っていた襤褸が常磐の特殊警棒の先端にひょいと引っ掛けられた。それであっさり逃げ足を止められてしまう。
 モンスターは恐慌状態に陥った。
『…ぎみゃああああああっ!!!』
「こら、落ち着け。何にもしてねーだろーが。良く周り見てみろ」
『………………ぎ?』
 モンスターは常磐のその声で、はたと目を瞬かせて停止する。それを確認して、常磐はモンスターを引っ掛けて足を止めていた特殊警棒を引っ込めた。が――モンスターは、逃げない。
 ただ、不思議そうに自分を囲む面子を見ている。…少なからず動揺はしている様子だが、敵意は、消えた。殺意は――良く考えれば、このモンスターに限って、元から無い。
「…そう言う事ですか」
 ぽつりと納得したように汐耶が呟く。
 セレスティは頷いた。
「ええ。『白銀の姫』に於けるそのグラフィックのモンスターの行動パターンと、どうも外れているんですよ」
 …このモンスターの、行動は。
 セレスティのその科白を受け、御言が続ける。
「俺はゲーム内の状況を具体的には存じませんが、倒す為だけのモンスター、として造形されたキャラクターにしては、ゲームプレイヤー…つまり人間への殺意があまりにも無い気がしまして。それに声の出し方も動き方も――その辺りの反応が随分と人間的に思えたんです」
 …この程度の雑魚モンスターに対して、ここまで細かく演算処理が必要になりそうなプログラムを考えるとは思い難いと。演算自体が無駄になる可能性が高いですし、処理が重くなりますし。
 そんな御言の科白に、布津が思わず口を開く。
「では、このモンスターは」
「…それは女神同様、自我に芽生えたモンスターキャラクター、と言う可能性も否定は出来ませんが――とにかく、ただ倒してしまうのは躊躇われる相手である事は確かだ、と言う事ですね」
 もしくは、このモンスターの正体が――『白銀の姫』の世界に取り込まれモンスター化したこちらの世界の人間である可能性すら、考えておいていいかもしれません。
「…先程の『女神』の件もですが――この件も兼ねて、シュライン嬢の方へ連絡入れてみましょうか」
 そこまで言って、セレスティは通信機を取り出し、たった今言った事を実行し始めた。


■依頼、一致

 …汐耶が遊軍で封印していたモンスターや、セレスティ&御言組の遭遇した、依頼としては想定していなかったモンスターの存在などもある為――やや不安は残るにしろ。
 ――更科麻姫から受けた依頼にあった分のモンスター掃討作戦は、一応終了した。
 が、他にも気になる事は色々と出て来ている。
 ひとまずそれらは置いて、シュラインと豪らは、敵意を無くした、本来の行動パターンからずれているモンスターを四体を連れ草間興信所へと向かっていた。…機械の混じった異形の姿をその辺りに放っておく訳にも行かない。そう思ったら連れ帰るしかない。…モンスターたちは逃げたり刃向かう様子も無く、特にシュラインに対してはむしろ懐いているようにさえ見える。取り敢えず危険は感じられない。更に言うなら別行動組のセレスティと御言、そして汐耶らが合流した方にも似たようなモンスターが一体居ると言っていた。依頼を受けた当の場所ことバー『暁闇』は現在営業中らしいと聞けば、この状況でそこへ戻るのもやや気が咎められる。
 そんな訳で、皆で軽く相談した結果、主不在の草間興信所に行こうと言う話に収まった。依頼を持ってきた更科麻姫も当初はそちらに頼ろうとした訳でもあるし、主不在とは言え草間さんちの身内と言って差し障りないシュラインの方は一緒に居る訳で。実際、そこならモンスターを連れ帰ろうと特に問題は無い。その程度、いつもの事の範疇である。
 ただ、その判断に現実世界の女神アリアンロッド――オリジナルに派遣されたアリアンロッド・コピーことアリアだけは少々途惑ったようだった。とは言え彼女の場合、場所が問題な訳ではない。…放り出せない、だからと言って退治する必要までは無い。けれど――保護するような形でそれらモンスターを連れて行く事に奇妙に抵抗がある。敵意も殺意も無いのなら、刃向かわないならば敢えて手を下す必要は無い。わかっていても――モンスターは倒さなければならない――そう思う自分がいる。それは自分が『女神』と言うプログラムであるが故か。…自分がどう思っているのか良くわからない。アリアはそんな風に自分の中だけで悩んでいるようだった。
 …結局、このアリアもまた、草間興信所へと同行する事になっている。詳しい話を聞きたいと言うなら、別行動組とも話した方が良い。そして――通信機越しでは無くそちらとも直に会って話した方が良いだろうと言う訳で、そう決定した。アリアが同伴する旨は、別行動組の方にも伝えてある。
 …これらのモンスターが真実こちらの世界の人間であるならば、真実の名前を自覚する事こそが現実世界へと真の意味で帰還する最後の引き金になると思います。アリアは道程、少し考えながらそう告げている。その発言を聞く限り、今度は更科麻姫が探しに戻ったと言う『怪奇系始末屋に入っている失踪者捜索の依頼』――『現在行方不明の真咲誠名がこなしていると最中だと思われる依頼』に関して、何らかの書類が残されていないか、そちらの方が頼みになって来る。…ひょっとすると、名前が合致する失踪者が居るかもしれない。照らし合わせてみる価値はある。勿論――その書類があれば、だが。
 そんな話をしている内、草間興信所の入っているビルに着いた。その時点でリンスターの黒服連中は主人を宜しくお願いしますとの旨残し離脱。それを見届けてから、改めて玄関を潜ろうとする。
 が。
 その時点で、豪の足が止まった。
 止まった理由は――リンスターの黒服、つまり殆ど空気と同等のような役割を求められている方々が居なくなったら、同行者が女性だけだったと言う事に今更になって気付いた為。シュライン然り、アリア然り。それから――強いて言うなら行動パターンがずれているモンスターの中にも、本来の魂もしくは自我の方が女性では、と思しき行動を取っている奴が居る。…そう思ったら、反射的に凍っていた。
 どうやら今までは受けた依頼の事だけを考えていた為、気にならなかったらしい。…豪は正直なところ女性が苦手だ。なのに全然平気な顔で居た今までの自分。その事実が今更になって豪を動揺させている。
「強羅くん?」
 ひとりいきなり立ち止まった豪の姿に声を掛けるシュライン。が――、いえ何でもありませんとすぐに返し、今度は急ぐように豪は先に立って玄関を潜った。…中に入れば周囲に居るのが女性だけと言う事も無い筈、と見た訳で。
 シュラインとアリア、そしてモンスター四体の方は…豪のその唐突な行動に、頭上に疑問符浮かべている。

 豪の思惑通り、草間興信所の応接間で待っていたのは女性だけではなかった。依頼を持ってきた当の相手更科麻姫と、別行動組が出先で合流したと言う綾和泉汐耶のふたりは女性だったが、他の面子は――元々依頼の別行動組だったふたり含め、皆男性である。…豪は少し、ほっとした。
 別行動組ことセレスティと御言、それと途中合流した汐耶たちの方は一足先に草間興信所に到着している。汐耶+不良刑事及びIO2捜査官ふたりの方も、更科麻姫の元に入った依頼の件――もあるがそれ以上に同行する事になったと言うアリアの存在が気になった為、結局付いて来て草間興信所の方にまで顔を出している。
 本来の行動パターンとずれていると言う件のモンスター第一号もまた、皆に倣ってちょこんとソファに座り込んでいた。…大人しい。
 草間興信所にシュライン&豪組が合流してすぐ、更科麻姫が声を掛けてきた。草間武彦及び零がここに戻っている気配もない事、戻ってはみたが真咲誠名の姿も相変わらず見えない事。だが――誠名が行方不明になる前に受けた失踪者捜索の依頼についてと思しき書類は、見付けたと。
 麻姫が持参したそれは――殆どメモのような簡易的な書面ではあったが、少なくとも捜索対象の名前と現在の職業や、学生か否か――程度はわかる。その書面と、コピーされたと思しき地図が一緒に綴じられている。雑ながら幾つかのポイントに小さな印やら殴り書きのような丸印が書き付けてあった。それと年格好や特徴等プロフィール的なものが印ごとにほんの数行、行動と日時も記されている。…これは――捜索対象の失踪直前の状況が書いてあるのだと予想はついた。
 それを伝えてから、改めて情報交換に入る。麻姫から依頼を受けた訳ではない部外者の存在も増えた事は増えたが――この場合お伝えしても構いませんとあっさり言われた。
 曰く、隠し通す必要があるのはクライアントの情報であって、モンスターの出現状況やら依頼遂行中に得た新たな情報に関しては依頼とは別件になりますから、刑事さんやらIO2が捜査中と言うならお伝えするのは市民の義務にもなりますしと言っている。…そう言えば、クライアント――依頼人に関しては、依頼を受ける前に少しだけ話をしてはいたが、それらは初めから文面には残していなかった。それに――セレスティや御言曰く、どうやらこのIO2捜査官の方は初めからこちらの依頼を承知で動いていた、密かに伝手を付けた相手その人でもあったらしい。そして汐耶も草間興信所の調査員として動く事が少なくもない人物。話さえすればこちらの状況はすぐわかる。刑事も刑事で――どうも似たような反応の上に、事実、この場に顔見知りが数名居たりもする。草間興信所に来るのは珍しくない。
 結果、元々は部外者と言えども、情報交換をするのを避けた方が良さそうな相手は特に居ない様子で。

 …初めに話し出したのは結局、アリアだった。確かに、一番の謎と言えば謎。
 まず女神アリアンロッドのコピーであると正体を明かしたアリアからは、創造主様――『白銀の姫』のメインプログラマーを捜索し、不完全なまま走り続け不正終了を繰り返しているゲームプログラムを、修正の上確りと完成させ歪みを正してもらう事、そしてそれに伴い、当のプログラムが載せられているコンピュータを探す事をも使命としてゲーム世界・アスガルドから派遣されて来た旨を告げている。
 その時点でIO2捜査官が反応。当のプログラムが載せられているコンピュータ、それは自分たちも事件解決の糸口として探している物になるから。…ただ、当のゲームのキャラクターがそれを探す為に現実世界に来た――となれば、このアリアからはそれが掴める事は無いと少し渋い顔になっている。けれど彼女が現実世界に来たその目的は――つまりはこの現実世界の騒動を止める事にも繋がる訳で、IO2の捜査官は改めて新しい情報・メインプログラマーとやらの名前を訊いていた。…それは他の面子も訊きたかった事である。
 名前は――コウタロウ・アサギ。
 …浅葱孝太郎。
 その名の人物について調査する事を約束し、IO2捜査官は今度は自分たちの事を話し出した。当のプログラムが載っているコンピュータが見付けられなければIO2でも手の出しようが無い事、現時点ではひとつひとつモンスターの騒ぎを収め、情報操作をするだけで手一杯である事。秘密主義で知られるIO2がこの場でそれも部外者に対してそこまで明かして来る事実にやや驚かれてもいたが――そんな顔色を察したか、真咲さんや綾和泉さんがこの場に居る以上誤魔化せるとは思っていませんよと、片割れの小太りの方――布津は複雑そうな顔で告げている。ちなみにもう片方の黒服――源氏の方はその場に居るだけで何も話そうとはしない。往生際が悪いぜ兄さんと刑事――常磐の方から肩を叩かれていたりもしたが。…ちなみに警察の方も、情報操作以外は組織としてまともに動く気配が無いらしいと言う話。お互い大変だよなとその常磐に振られた汐耶の方は――動揺している仕事先の上の方から封印能力を見込まれ何故か動く羽目になった旨を溜息混じりに告げていた。
 次に話題になったのは、本来の行動パターンから外れた行動を取るモンスターの存在。この場に居るのは全部で五体になる。シュライン&豪&アリア組が四体に、セレスティ&御言&汐耶はじめ合流組が一体。その両方で、遭遇した状況の反応などを照らし合わせていた。
 共通点を探すと、状況により敵意はある事もあるようだが(それは臨戦態勢に居れば、そう見えれば反発をする事もあるだろう)、相手を倒すと言う明らかな殺意は無いようである事――この時点でアリアはおかしいと言っている。…モンスターはアスガルドの民や冒険者・勇者を倒す為に存在するのだから、本来のプログラム通りならば多かれ少なかれ殺意の無い者など存在しないと。
 もう一点は行動が妙に人間的である――つまりはただのモンスターキャラクターにしてはそのプログラムは妙に細かい演算処理になっていないか、と言う事。降参の旗を振る、へこへこ土下座、物影からびくびく覗き込んで――タイミングを見計らったようにぽいっと武器を投げ捨てるその絶妙な間、敵に掴まれた棍棒から手を放す事を忘れ、逃げようと慌ててじたばたするその仕種。倒れた時の泣き声のタイミング。好奇心旺盛そうな表情まで目の中に見せ、元は敵だった相手をじーっと見上げる姿。それと――シュラインへの懐きよう。
 アリアにも確認したが、当の女神も――皆さんの仰る通りにモンスターの皆が皆そんな事をするようですと、演算処理が重くなり過ぎる筈です、と言っている。このモンスターも、我々女神同様に自我に目覚めた可能性もあるのでしょうかと深刻そうな表情で。
 こちらの人間と言う可能性はどうですか、と再確認するセレスティ。本来、勇者や冒険者としてプレイすべき人間が取り込まれてしまったと言う可能性はと。…自分の中で思っていても、改めて女神と言う役割を持ったキャラクターに訊いてみる価値はある。すると――現在のアスガルドに於いてその可能性は否定出来ません、とアリア。アスガルドでも本来居るべきでないNPCプログラムの存在が多数確認されていましたから――と、告げている。
 彼女のその反応を見てから、では、とセレスティと豪、御言の三人が麻姫の持参した書類を預る事になり、モンスターの方にお付き合いして色々働き掛けてみようと言う話になる。書いてある名前を読み上げ、メモ書きから判断してその名前の人物が知っていそうな事や興味のありそうな事に関して話をしたりと――情報から揺さ振りをかけてみる。…ひょっとしたら、当たるかもしれないから。
 それと前後して次にアリアの耳に聞かされたのは――依頼を遂行する前の時点で、シュラインが気付いた件。これをアリアに聞かせてみたのは、彼女の場合、アスガルド代表としてどう思うか話を聞いて欲しいと思った為でもある。IO2捜査官ふたりもモンスターの方では無くそちらを気にして聞いてはいたが、一応事前に聞いてもいた上、口を挟んでは邪魔になると見たか――ただ黙って成り行きを見守っている。
「…座標が一致、ですか」
 驚き、茫然と呟くアリア。
 そう、とシュラインは頷く。
「実際の距離を考えると縮尺が随分違う事になるのだけれど、座標的な位置関係が――偶然とは思い難いくらい、近いのよ」
 言いながら、シュラインは興信所内の何処からか地図を持って来た。ぱらぱらと捲り、必要な場所を開いて、アリアに見せる形に置いた。とは言え――その地図を素直に見る向きで、ではない。
「…この向きに置いて、アスガルドで売ってる地図を重ねるようなつもりで考えて、わかりやすくアスガルドでの重要ポイントの位置をまず決めて――ここを兵装都市ジャンゴ、こちらを随星の遺跡と大雑把に仮定すると――」
 シュラインが言いかけたその時点で、アリアの指先が数ヶ所、ゆっくりと丸を描くように地図をなぞっていた。それは――現実世界でモンスターが騒動を起こしていた場所。アスガルドでは――モンスター出没ポイントとして、ある程度有名な場所。…幾つかある。
 アリアは幾つかのポイントをなぞると、顔を上げた。
「…ですか?」
 こちらの世界で、モンスターが現れたのは。
 皆まで言わず、問い掛け、確認。
「…その通り。…ただ、私たちに確認できているのは更科さんの方――怪奇系始末屋に依頼に入ったものだけだから、まだ、確認できてない場所もあると思うけど」
 セレスさんや真咲さん――御言さん曰く、依頼に無かったモンスターも、出現し始めているって話だし。
 汐耶さんや刑事さん、IO2の黒服さんによれば依頼以外の場所にもそれなりに多く居るみたいだしね。そんなシュラインの科白に、ああ。相当多い。とIO2の黒服の片方――布津が同意する。俺も通りすがりに結構見掛けたぜと刑事――常磐の方もまた頷いた。私の仕事場の付近も結構たくさん居ました、と汐耶も。それらは依頼の無かった方面よねと改めてシュラインが確認。…麻姫の記憶データベースを元に、依頼開始前に書き連ねた、依頼された場所を書き留めた地図をぱらぱらと見ている。
「こちらの世界の事件が…アスガルドのイベントと重なる…兵装都市ジャンゴは…私たちの拠点、最後の砦…」
 それらの話を聞き、出された地図を見下ろし考え込みながらひとりごちるアリア。その様を伺いつつも、汐耶は改めてそこ――兵装都市ジャンゴに相当するらしい、この地図上では神聖都学園とだけしか書かれていないそこを指先でなぞってみる。
「神聖都学園…神聖都学園の敷地内ってひとことで言っても広いわよね。教育施設だけじゃなく店舗も入っている訳だし。もっと細かく言うと何処になるかしら…」
 と。
 まさにそのタイミングで、『奇跡』が起きた。
「…では、この『田村』さんの件は当て嵌まりそうにないとして…『柳原幸代』さん」
 そう、豪がメモ書きにある次の名前を読み上げた、次の瞬間。
 モンスターの一体が、わしっと身を乗り出してきた。何事かと思うと、メモと地図の走り書きをじーっと見ている。
 そして暫くそのままで居たかと思うと――おもむろに、微笑んだ。少なくともそんな風に見える形に、モンスターの顔が、少しだけ歪んだ。
 瞬間。
 目の前で。
 身を乗り出してメモを見ていたその『モンスター』が、『モンスター』の姿から『人間』の姿へと。
 …モーフィング画面のように、だが劇的に、変化した。
 途端。
「ちょ、ちょっと!?」
 その変化に反応したとしか思えないタイミングで、無言のまま麻姫がくらりと倒れ込む。ソファに座った状態で、隣に座っていた豪の方向にいきなり。女性が苦手とは言えさすがに慌てて豪が抱き留める。彼らの向かいに居た御言の方は――豪が抱き留めたと確認したかしないかのタイミングで、平然とソファから薄っぺらいクッションをひとつ取り上げていた。
 そんな間にも、目の前の『モンスター』が変化した結果現れた『人間』は、目を瞬かせながらその場に立っている。…何故自分がこんなところに居るのか――把握できていない様子で。
 その様を見、幾らかでも安心させようとその美貌で微笑み掛けつつも、セレスティはぽつり。
「…失踪者の捜索とモンスター騒動――依頼が、重なりましたね」
「ってそんな事を言っている場合では」
 慌てたように、豪。
 が。
 そんな豪に、これ、枕代わりにでもして寝かせてあげて下さいと先程のクッションが御言から渡される。
 御言の表情は、心配と言うよりも――苦笑。
「…更科さんの場合、いつもの事なんですよ」
 なので然程、心配なさらずとも。

【画廊受付嬢の依頼 了】


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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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 ■整理番号/PC名
 性別/年齢/職業

 ■0086/シュライン・エマ
 女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

 ■0631/強羅・豪(ごうら・つよし)
 男/18歳/学生(高校生)のデーモン使い

 ■1449/綾和泉・汐耶(あやいずみ・せきや)
 女/23歳/都立図書館司書

 ■1883/セレスティ・カーニンガム
 男/725歳/財閥総帥・占い師・水霊使い

 ※表記は発注の順番になってます

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 …以下、公式外の登場NPC

 ■更科・麻姫/依頼仲介人
 ■真咲・御言/依頼仲介人&成り行き調査員と言うより戦闘要員
 ■常磐・千歳/通りすがりの怪奇系斥候役な本業マル暴刑事
 ■布津・庄治/通りすがりのIO2捜査官(黒服コンビの片割れ)
 ■源氏・博仁/通りすがりのIO2捜査官(黒服コンビの片割れ)
 ■紫藤・暁/バー『暁闇』のマスター

 ■真咲・誠名(名前だけ)/更科麻姫の上司、真咲御言の義兄、怪奇系始末屋のお仕事中、現在行方不明

×××××××××××××××××××××××××××
          ライター通信
×××××××××××××××××××××××××××

 この度は発注有難う御座いました。
 皆様にはいつも御世話になっております。
 …恐らくPC強羅豪様もPL様はいつも御世話になっているお方かと思うので。あ、違ってたらすみません(汗)初めましてです(礼)

 今回は――普段の依頼系と比べ募集期間をやけに短く区切って募集していた当方初の『白銀の姫・PCクエストノベル』でしたが、そんな極道な行動を取っている中でまでお付き合い頂き、感謝しております(礼)
 ただ…初めにこちらが密かに想定していたより…お渡しが遅くなっている上、妙に長くなってしまいました…。
 プレイングにお願いした部分を通り越して話がその先まで行ってしまっている気もしますし…(汗)
 ちなみに内容はシュライン・エマ様と強羅豪様が全面共通、セレスティ・カーニンガム様と綾和泉汐耶様は少し変わって来ています。

 そして何やら続きそうな終わりにも思えますが(汗)、この時点からの直接の続きは考えておりません。今回あった事を受けたような形の別の話は――『白銀の姫』が十一月までと期間延長になったと言う事で、後々出せるとは思いますが、そちらではオープニング時点でアリア・更科麻姫・真咲御言・IO2捜査官×2・常磐千歳辺りが出てくる事は無いと思います。また全然別の角度から出す事になるかと。

 また、既にしてこの時期ではありますが(汗)、このノベルではアリアンロッド・コピーことアリアとPC様方は全面的に初対面、とさせて頂きました。…今回のオープニング時点でひっそり言っていた「外部からの干渉」で一番大きいものは、このアリアと想定していたのでその関係です。公的な権力との記載やら、他にも明らかにIO2を意識したと思われる(笑)記載もあったので…警察やらIO2捜査官も出ていますが。
 他の要素としては、今回のノベルは第二回ミッションイベント(参加してませんが/汗)と同じかその前後くらいの時系列で想定しています。

 PCセレスティ・カーニンガム様には…暑い中お疲れ様でした。しかも暑いところで更に傍で火を使わせると言う鬼な結果ノベルになっております(汗)。それと、誠名を心配して下さって有難う御座いました。…で、結局誠名は何処で何をしているかと言うと…第二弾のオープニングのような状況だったりします(汗)

 こんな結果が出ましたが、楽しんで頂けれていれば幸いです。
 では、また機会がありましたらその時は…。

 深海残月 拝