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雷光寺
昨日までの雨もやんで、今日はむっとするような暑さだった。真っ青な空には早くも入道雲が浮かび、夏の到来を思わせる。そして、夏といえば、そう、怪奇。妖しの類いにも季節感というものがあるのか、不思議な現象はなぜか夏によく起こる。
海原みあおはいつものように、わくわくと胸を弾ませながらインターネットカフェの扉の前に立った。自動ドアが開くのにかかる、その時間さえも待ちきれない。うずうずと2回足踏みしたところで、やっとガラスのドアが軽いモーター音をたてて開き、中から涼しい風が吹いて来て、みあおの銀髪を揺らす。
「しーずーく!」
店内をきょろきょろと見渡し、目当ての友人の姿を見つけたみあおは、他の客に迷惑にならないくらいの声で呼びかけた。
「あ、みあおちゃん」
それに応えて顔をあげた雫は、にっこりと微笑んだ。が、その表情はどことなく浮かない。こういう時には、何か深刻味のある書き込みがあった時だ。
「何かあったの?」
みあおの方は笑みを崩さずに、雫の前のモニタを覗き込んだ。
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◆助けて!
うちの周りの怪奇スポットで、鬼が出るって有名な有名な雷光寺で、友達と5人で百物語したの。2周したところで、いつの間にか1人増えてて、「お前ら全員食うてやるぞ」って。
びっくりして慌てて逃げてきたんだけど、次の日、そのうちの1人が転んで怪我して。それから次々みんな怪我するの。
2人目は階段踏み外してねんざ。3人目は、バイクで転んで骨折。そして4人目は昨日、ひき逃げに遭って、まだ意識が戻らない。
怪我がだんだんひどくなっていってるの! 次はあたし……?? このままじゃ、あたしはどうなるの?
お願い、助けて、助けて!
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整っていない文章からして、この書き込み主はよっぽど怯えて切羽詰まっているのだろう。雫が気にかけているのもこの記事に違いない。
「鬼かぁ……。なんかおもしろそう、みあお、行くよっ」
と、持って行くお菓子のリストを考えながらみあおが愉しげに言うのとほぼ同時に。
「よっしゃ、鬼でも何でもどんと来いってか」
すぐ近くのモニタの前で威勢の良い声が上がった。見れば、神聖都学園高等部の制服に身を包んだ少年が、モニタの前で、どん、と自分の胸を拳で叩いたところだった。一瞬、周りの視線が彼に集まったが、それに気付く風もない。
「あ、いつの間にかレスがついてる」
画面をリロードしていた雫が、小さく声を上げる。
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◆Re:助けて!
俺があんたを警護するぜ。鬼を叩く方法も心得てるから安心して任せてくれ。とりあえず、このメアドに連絡くれ。必ず何とかしてみせるからさ
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「これってひょっとして……」
みあおは書き込みと、先ほどの高校生を見比べた。あまりに雰囲気がぴったりだ。
「ねえねえお兄さん、この書き込みした人?」
そうと思えばすぐ動く。みあおは、少年の隣まで歩いて行って声をかけた。
「ん?」
振り向いた少年は、みあおを見てきょとんとした顔をした。突然話しかけられて戸惑ったのか、それともみあおの日本人離れした外見に驚いたのか。けれど、短い茶髪の見るからに活発そうなこの少年には、どこか人好きのする雰囲気があった。
「みあおもね、この子と会っていろいろ話聞きたいな」
相手の表情から先ほどの問いの答えを肯定ととって、みあおはにっこり微笑んだ。
「けど……」
「大丈夫。みあおもね、心得てるから」
相手が自分の身を心配しているのだと悟って、みあおはさらに微笑む。
「……そうか。じゃあ一緒に鬼退治といくかな。そうそう、俺は早津田恒(はやつだこう)。えっと……」
「……海原みあおだよ。よろしくね」
「鬼退治」という言葉に幾ばくかのひっかかりを覚えたが、この件を何とかしたいのはみあおも同じだ。みあおは無邪気な笑顔を作って恒に応えた。
「さて、とりあえず返信を待たなきゃな。……すぐに来るとは限らないんだろけど」
恒が再びモニタに目を落とし、キーボードを叩き始める。
「あ」
少し手持ち無沙汰になったみあおが、ふと雫の方を振り向くと、そこには新たな客人の姿があった。このインターネットカフェにそぐわないような、金髪の美青年には、見覚えがある。
「モーリス」
その名を思い出して呟けば、ちょうど彼も、こちらを差した雫の指先を追って、顔を向けたところだった。
「これはみあお嬢。おひさしぶりですね。で、こちらは?」
みあおの側まで近づいて、モーリスは人当たりの好さそうな笑みを浮かべた。傍らでちょうどみあおに声をかけようとしていた恒に気付いたらしく、軽く小首を傾げる。
「早津田恒っす。どうぞよろしく」
「恒くんですね。モーリス・ラジアルです。お見知りおきを」
「……で、メール返って来てた?」
2人が互いに自己紹介を終えるのを待って、みあおは恒に尋ねた。
「ああ、返って来てたぜ。即だ。……ただ、怖くて動きたくないから家に来てくれとよ」
「匿名の相手に住所を教える方が怖いと思うんですけどね……」
モニタを覗き込んでモーリスが少し皮肉めいた呟きを漏らした。
「歩いても行ける距離ではありますが、ここから少しありますね。私が車を出しましょう。お二人もご一緒にいかがですか?」
その提案に、みあおも恒も、一も二もなく乗ることにした。
車中の話題は自然、事件のことになる。
「掲示板の記事にあった増えた人物がどのようにして彼女たちと逃げて来たのか気になりますね。実体を持って外に追いかけてきたのか、それとも人の目に見えないように各自順番についてきて、事故を引き起こしているのか……」
運転席のモーリスの言葉に、恒が唸るように相づちをうった。
「あの書き込みからするに、鬼は負の力を取り込んで強くなっていってる気がするな」
そんなんじゃ永遠に救われねぇってのにな、とどこか無念ささえ込めて付け足す。
「でも……、怪我だけ、なんだよね。『全員食べる』とか言っといて。何か事情があるのかな……」
みあおには、それがずっと胸に引っかかっていた。単純に鬼に力が足りないだけかもしれないのだけれど。それでも、この鬼に、ただ人間に危害を与えるだけの存在であってほしくない、という思いがあるせいだろうか。最後には鬼さんも含めてみんな幸せになれればいいな、そう思う。
「……それもそうですね」
運転席のモーリスが少し考え込むような口調になった。隣の恒はきょとんとした顔をしている。
「でも、とりあえずはこのカキコした人に会わないとね。というより、この人が鬼ってこともあったりしてね」
みあおは、話を切り上げるようににっこりと笑った。
書き込み主の家は、都心を外れた住宅地にあった。そこそこの築年数を思わせる外観は、周囲の民家にもしっくり馴染んでいた。この地域ではごくごく普通の家なのだろう。あえて気になるところはといえば、家全体が息を詰めているかのような静けさと緊張感を感じさせることくらいだろうか。
恒が門柱についていた呼び鈴を押す。が、返事はない。しばしの後にもう一度押す。が、やはり家は静まり返ったままだ。
「おい、まさか……」
恒の顔に、焦りの色が浮かぶ。その言わんとすることは、みあおにもすぐに知れた。傍らのモーリスも秀麗な眉をわずかに寄せる。
そして、最初の呼び鈴からたっぷり5分は経っただろうか。ほんのかすかな音を立てて、玄関が驚くくらいゆっくりと開く。ぎりぎり人が通れるくらいに開いた隙間からは、こわばった顔をした少女が顔を覗かせていた。
「……ゴーストネットの人?」
「ああ、そうだ。あんたのことをしっかり警護するぜ。ワラだと思ってすがってくれぃ!」
恒が自信満々に自分の胸を叩く。
「ワラだと、一緒に溺れちゃうよ……」
思わずぼそりと小声でつっこみを入れたみあおだったが、どうやら恒には聞こえなかったようだ。
それでも少女には頼もしく映ったのか、その顔にわずかながら笑みが浮かんだ。
「雷光寺の噂は先輩に聞いたの。誰もいない、ぼろぼろのお寺なんだけど、『鬼さんお入んなさい』って言って百物語を99までやったら、最後に鬼が出てくるって」
ベッドの上に膝を抱えて座り、少女はぽつりぽつりと話し始めた。
通された少女の部屋は、雑然としていた。ベッドの脇に無造作に捨て置かれたスナック菓子の袋や、カップ麺の容器がその印象をさらに強くする。
けれどよく見ると、壁や天井にアイドルのポスターが張られていたり、はやりの文具や化粧小物が並んでいたりするあたり、元々はいかにも「自分の好きなものを集めました」というような、賑やかで女の子らしいものだったのだろう。
そして、ベッドの枕元には立ち上がりっぱなしのパソコンが置かれて、無機的な光を放っていた。
今は両親が旅行中だとかで一人きりの彼女は、ベッドから出ることさえ恐ろしくて、呼び鈴にもなかなか応えられなかったのだと詫びた。
「それで、ガッコの友達と肝試しに行こうってなったの。99までやらなきゃ大丈夫って言ってたのに……。どうして!」
細い声でそう言って、少女は自らの身体をかき抱いた。
「いつの間にか1人増えてたって掲示板にはあったけど、ということは鬼の姿、見たんだよね?」
みあおが言うと少女は亀のように首をすくめ、左右に振った。
「姿は見てない。……ろうそくが1つ増えてたの。怖くてそっちは見なかったけど、大きな影みたいなのがちらっと見えて、それでもう『きゃーっ』ってなって逃げて来たから」
「そっか」
みあおは頷きながら、ちらりと恒とモーリスに目を遣った。
気合い十分で周囲を伺うような顔をしていた恒は、しばらくの後にその顔にわずかに焦りを滲ませていたが、今はそれは困惑へと変わってしまっていた。思ったことがすぐに顔に出るたちなのだろう、非常にわかりやすい。一方のモーリスはあごに手をあて、何やら考え込むような顔をしている。
「さっき、学校の友達と……とおっしゃっていましたが、ということは皆さん中学生ですね?」
おもむろに、モーリスが口を開いた。言われて見れば、机の上に置かれていた――もっとも、それは漫画の後ろに追いやられていたが――教科書類は中学生用のものだった。
「……」
なぜそんなことを聞かれるのかわからないといった風情で、少女はきょとんとした顔をしつつも、こくりと頷く。
「行こうよ、雷光寺」
みあおはにっこりと笑って短く言い出した。少女は、びくりと身を震わせ、信じられないといった面持ちでみあおを見る。
「だって、結局は対決しないと仕方ないでしょ?」
笑みを崩さずにみあおは続けた。おそらく、今回の事故は鬼とは無関係だ。恒の様子からして、何か邪悪なものが彼女を付け狙っているような気配はないのだろうし、モーリスの先ほどの問いは、バイクで怪我をしたという子が無免許だったのを確かめるため。ひき逃げに遭ったというのを除けば、あとは本人の不注意による、ありがちな怪我だ。
むしろ問題なのは、そうだと思い込み、怯えることによって、実際に事故を呼んでしまうこと。それを避けるためにはやはり雷光寺に再び行って確かめることが必要だろう。それに、「1人増えた」のは確かなのだ。鬼にも会えるかもしれない。
「そんな……」
「大丈夫です。私たちが必ず守ります」
絶望的ともいえる顔をした少女に、モーリスが穏やかに、それでも有無を言わせぬ口調で言葉を継ぎ、少女の周りに光る檻を出現させた。
「実際に行く時には見えないようにしますが、この檻の中にいれば、鬼は絶対に手出しできません。それに、鬼本体は恒くんが叩いてくれますよ」
そして、恒にちらりと視線を送る。
「おう、任してくれ!」
2人の言葉に、顔をこわばらせながらも少女はようやく頷いた。
少女に案内されて3人が雷光寺に着いた時には、既に日は大きく西に傾いていた。噂の雷光寺は、小さなお堂があるだけの、こぢんまりしたものだった。それも半分崩れ落ちそうで、傾いた看板に書かれた文字は、そうと知っていなければ「雷光寺」と読めたかどうかも疑わしいくらいにすり切れ、汚れている。お堂の周りこそ、踏み固められて地面が露出しているが、少し脇になると、そこは人の腰ほどまである丈の草がのび放題になっていた。
「いかにも『出そう』なお寺だねぇ」
お堂への階段に足をかけ、みあおが思わず弾んだ声で口にすれば、少女はびくりと身を震わせた。
「……誰かいますね」
モーリスの言葉の通り、夕闇迫った薄暗いお堂の中には、2つの人影が見えた。そして、人ならぬ気配も。
『お前らみんな喰ろうてやるぞ』
地の底から響いてくるかのようなその声と共に、お堂の奥の壁にゆらりと影が動いた。
「出たなっ。鬼かっ」
少女が悲鳴を上げてうずくまる側を、恒が勢い良く駆け抜けた。そのままお堂へと飛び込むと、影に向かって拳を振るう。
「ふぎゃっ」
靴でもぶつけられた猫のような悲鳴があがり、お堂の中はある種間抜けな沈黙に支配された。
「あーっ。可愛いっ!」
恒の後を追ってお堂の中に駆け込み、みあおは思わず歓喜の声をあげていた。
「……痛いきゃ! いきなり何するきゃ!」
お堂の抜けかけた床に転がったそれは、キンキン声で文句を言いながら、ゆっくりと起き上がる。
「雷さんだぁ」
それは、みあおと同じくらいの年格好に見える少年だった。が、モスグリーンのもしゃもしゃの髪の合間には小さな角が一本。いわゆる虎皮のパンツに、背中には小さいながらも雷太鼓を背負っている。
「ね、こっちおいでよ」
みあおは、地面にへたりこんでモーリスに支えられている少女を振り返った。
先にお堂の中にいたのは、みあおの知り合いでもある銀髪の少年、尾神七重(おがみななえ)と櫻紫桜(さくらしおう)と名乗る高校生だった。2人もまた、ゴーストネットOFFの書き込みを読んで、調査のためにこの寺を訪れたらしい。そこで、この雷小僧と遭遇したのだとか。
恒にいきなり殴られたのがよっぽど気に食わなかったらしく、当の雷小僧――名前は雷来(ライキ)というらしい――はすっかりふてくされてそっぽを向いてしまっていたが、にこにこ顔のみあおと目が合うと、照れたような顔をして再び顔を背けた。
恒は困惑顔で頭をかき、書き込み主の少女は、異様なものを見るような眼差しを雷来に向けていた。その顔を見たみあおの胸を、ふ、とすきま風のような冷たい感覚が一瞬よぎる。
七重と紫桜によると、雷来は300年程前、うっかり空から落ちて来たらしく、雷光寺はそんな雷来のために、当時の村人が建ててくれたのだという。
当初はよく子どもたちが遊びに来ていたのだが、いつしかその足も遠のいた。そして、寺が程よく荒れた頃には、若者たちが百物語に興じるようになったのだという。いつしか、最後の1話を雷来が担当するのが人間との暗黙の了解となっていた。
そして、ついさっきも雷来に乞われて百物語をしていたのだという。
「じゃ、2周目の終わりってのは?」
みあおの問いに、雷来はちらりと視線を戻し、膨れっ面のままで口を開いた。
「最近の人間は99までやらないきゃ。たまーに来たらいっつも2周で終わるっきゃ」
確かに、怪談のネタなど2つもあれば良い方だろう、一般人にとっては。
「『喰ってやる』というのは、言ってみれば彼の持ちネタだそうです。さっきもそうですが、決して悪意はなかったはずですよ」
「でもっ! 次の日からみんな怪我して……」
七重の言葉に、少女はうわずった声をあげた。
「ひき逃げに遭った友達には気の毒なことに不幸な事故だったと思うけど……。あとはみんなちょっとした不注意で起きた怪我じゃないかな? 怖い怖いと思っていると、つい注意がおろそかになって、本当に怪我してしまう。後ろめたいことがあるなら、なおさらね。ここでしてたのは百物語だけ?」
紫桜が静かに言うと、少女は小さく息を呑む。
「済んだことを今ここで責めるつもりはないけど、これから先、同じことを繰り返すのはやめた方がいいと思うけどね」
「……」
紫桜の諭すような言葉に、少女は唇を噛んで俯いた。
「あー、久しぶりに入れたと思ったら、とんだ災難きゃ。おいらが人間に怪我さしてるなんていいがかりもいいとこっきゃ」
横目でじっとりと恒を見ながら、雷来はぷんすか怒っている。
「わりぃ、わりぃ、この2人が襲われてるように見えたもんだから、つい……。俺が悪かった。すみませんでした、許して下さい」
困惑顔で頭をかいた後で、恒は勢い良く頭を下げた。その清々しいまでの潔さに、雷来も責め手を失ったらしく、ぶつぶつ言いながらもそっぽを向く。
「でも、雷来さんは遊びのつもりでも、彼女たちが怖がってしまったのも事実です。やっぱり相手を選ぶなりしないと」
その傍らから、七重がしっかりと釘を刺す。
「……おいらだって遊びたいきゃ。めったに人が来ないのに、そんなのつまんないきゃ」
雷小僧はふたたびぷうっとふくれて、口をへの字に曲げた。
「ね、お友達になろうよ」
そんな雷来にみあおはにっこりと声をかけた。雷来は、驚いたような顔をしてみあおの顔を見る。
「みあお、また遊びにくるよ。だから、もう寂しくないよ、ね?」
さらに微笑みかけるみあおに、雷小僧はこっくりと頷いた。
「じゃ、みんなで記念写真ね!」
みあおはデジカメを取り出すと、少し離れたところでモーリスの横に呆然とたたずんでいる少女を手招いた。他の面々も、何となくみあおの言うままに固まる。
「はーい、タイマーかけたよ」
全員が入るようにデジカメをセットし、みあおは列に加わった。数秒後、シャッターと共に、この人騒がせな事件の幕も下りた。
「ほら、これがその時の写真。よく撮れてるでしょ?」
「わぁ、本当だ」
みあおがプリントアウトした写真を見せると、雫も感嘆の声を上げた。
「これで一件落着、か……。鬼のせいなんかじゃなかったんだね。ひき逃げに遭ったっていう子は可哀想だったけど、早くよくなるといいね」
いつものように内容を伏せながら解決した旨を掲示板に書き込み、雫が言う。
「うん」
みあおも、それに頷いた。
「みあおちゃん……。嬉しそうだね」
「そう?」
とりあえず、誰も傷つかなかったし、新しい友達もできた。自然と顔もほころんでいたのだろう。みあおは小首を傾げて雫に応えると、横からモニタの画面を覗き込んだ。
「ね、雫、次の噂は? 何か面白そうなのきてないの?」
「えーっとね……」
夏はまだまだこれからが本番だ。怪奇現象もきっと、まだまだこれから。
<了>
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【5432/早津田・恒/男性/18歳/高校生】
【1415/海原・みあお/女性/13歳/小学生】
【2557/尾神・七重/男性/14歳/中学生】
【2318/モーリス・ラジアル/男性/527歳/ガードナー・医師・調和者】
【5453/櫻・紫桜/男性/15歳/高校生】
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■ ライター通信 ■
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こんにちは。ライターの沙月亜衣と申します。
この度は、『雷光寺』へのご参加、まことにありがとうございました。
そして、こんな軟派なオチで申し訳ないです……(汗)。OPで「バイクで事故」を「自転車で転んで○針縫う」くらいにしておけばよかった、とか雫に疑念の一言を言わせておけばよかったと密かに反省しております。
とはいえ、事件(?)の方は皆様のおかげで無事解決とあいなりました。ありがとうございます。
このお騒がせ小鬼、もしかしたらまたどこかで騒動を起こすやもしれません。またお会いすることがありましたら、よろしくお願い致します。
海原みあおさま
こんにちは。再度のご発注、ありがとうございました。またお会いできたこと、非常に嬉しく思います。
みあおさんの推理、とても面白かったです。書き込み主が鬼、という線、ひそかにいつかのネタに頂きたいかも……と思ってしまいました。
鬼も含めて幸せに、というプレイングのおかげで、雷来にもお友達ができました。ありがとうございます。
ご意見等ありましたら、遠慮なくお申し付け下さい。できるだけ真摯に受け止め、次回からの参考にさせて頂きたいと思います。
それでは、またどこかでお会いできることを祈りつつ、失礼致します。本当にありがとうございました。
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