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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


神の剣 異聞 Invisible Blade 4 綾和泉匡乃編

 衣蒼未刀。彼との出会いは私にとって楽しくそして大切な時間だ。今でもハッキリと覚えている。
 出生が異なりや力のあり方、心のあり方ではなく、論理的に説明できないが、私たちは何か似ていた。
 元々、論理的に説明できるほど私は賢くない。が、これだけは自信持って言えるだろう。
 魂の友であり、兄弟だ。
 其れが何かは今でもわからない、柱であり抑止の座に付き、あらゆる危機を斬る刃になった今でも。
 私は未刀と共に過ごしたかけがえのない友人の事を一生忘れることはない。
 抑止の一、光刃の柱になっていようとも。

                               影斬・現世名 織田義明

 これは、織田義明はまだその“名”を持っていたときの手記か誰かに伝えた言葉である。
 短い時間だったか、それとも長い時間だったのか……。
 彼にとって、衣蒼未刀は未来永劫、心の友で、親友であり兄弟であると言ったのだ。

 彼のこの言葉を聞くか読むのは、かなり先の話。   
 あなたは、義明と未刀と共に過ごした一番の思い出を、残していく。
 それが、『何処か』に記されるだろう。
 彼らと友人としてか仲間としてか、それ以上の存在としてかを過ごしてきたのかを。 



〈食事の約束〉
 綾和泉匡乃は織田義明と衣蒼未刀の2人で食事をしようと約束していた。

 場所は義明と未刀が一度は食べてみたい料理(甘味が主?)と酒(日本酒)がある落ち着いた割烹。
「良い酒がおいているなんてよく探しましてね。しかし、未成年がお酒飲んじゃいけませんよ? 義明くん」
「匡乃さんも飲みたそうな顔していますし、良いじゃないですか?」
「其れはそうでしょう。お酒は好きなのですから」
 と、酒の話で盛り上がる。
 未刀は甘味が沢山食べられることに心躍らせている様子だ。
 日時を決めてからお開きのところに、義明と匡乃に電話が入った。
 電話を終えると。
「仕事ですか?」
 義明が訊く。
「教え子がなにか持って来るみたいです。義明君は?」
「いつもの裏側の仕事です」
「無茶はしないで下さいね」
 と、今回の仕事は義明だけに用があるらしいので、彼は帰った。
「無茶なことをしなきゃ良いけど」
 未刀が心配している。
 匡乃は教え子が来るまで起きているみたく、何となくTVをつけた。
『この宗教団体は……』
 なにやらカルトや麻薬についてのニュース、が流れている。
 カルトの方は奇蹟がどうだとか流れているし、よくある情報のようだ。
「まったく、裏で厄介なことをしていそうな組織ですね」
「匡乃、気をつけた方が良いぞ」
「あなたに言われるまでもなくわかっています……」
 匡乃は未刀ににっこり笑った。

 しかし、そうそう巧く事は進むわけでもなく、事は大事になる。


 当日。
「「遅いなぁ」」
 と、未刀と義明が待ち合わせ場所で呟いていた。
 待ってから30分である。
 匡乃が待ち合わせの約束を破るはずはない。遅れると必ず連絡が入る。
 義明は電話を掛けた。
「出ないな……」
 携帯をしまって、町並みを見る義明。
「まさか……」
 未刀は何かに気付いた。
「?」
「ほら、新興宗教とか……なんかそんなウワサあるだろ?」
「……成る程……あの人はよく狙われるからな」
 数秒考え、未刀が
「気をつけろ、って言っていたのに!」
 と、走る。
 しかし、義明に腕を掴まれ、
「そのまま裏もとらずに突っ込んでいってどうなる?」
「……しかし匡乃が!」
「落ちつけ……だからな……しっかり情報を手に入れてから潜り込むのだ」
「……」
「草間さんに頼んで、情報など行動のフォローをして貰おう。俺たちは力があっても所詮17〜18の子供なのだ。敵と接触する前に情報を集めないと」
「むむ……」
 
――――

「と、俺を頼るのは良いが……織田、この手の事件を持ち込まないでくれ……」
 機嫌悪そうな草間が何とか動いてくれた。
「怪奇探偵なのですから良いでしょ?」
「だからその名前で呼ぶな」
 と、義明は草間に裏側の調査を頼む。
 義明は長谷神社を通じて、未刀はあまり使いたくなかった“衣蒼”の名を利用し……(衣蒼の名は政治の裏側などにまだまだ通じるのである。家から離れていても……)、各組織の拠点。見取り図、組織図、カルトの目的などをかき集めたのだった。
「やはり、今ニュースでやっている団体の奇怪な行動、実行犯の拉致監禁が関わってそうだとおもう。目的は奇蹟の実行」
 と義明が推測している。
「それだけ情報が手に入ればいいんじゃないか? 早くしないと匡乃が……」
「薬漬けになると心配しているのか? 其れはまず無い」
「どうしてそんな確信がもてる……?」
「薬漬けにするのは最終手段だよ。3日は大丈夫」
 と、2人はまだ足りない部分を……潜り込み情報、様々な真相を手に入れるために奔走した。


――――

〈とらわれの匡乃〉
 匡乃は、小綺麗な部屋でのんびり茶をすすっていた。
「明日が休みで良かった」
 予備校から帰る途中にボロ車に無理矢理押し込められたのだ。
 普通なら目隠しされるところが、その後の対応は良かった。
「匡乃様……考えてくれませんか? あなたの能力があれば、あらゆるところから金が手に入るのです」
 と、黒い服装の〜何かの宗教的感覚のする〜男が匡乃になにかを依頼している。
「何故そんなことに拘るのですか? 僕は神になるつもりもないですし、腐った金も要らないですよ」
 匡乃は美味しい御茶を飲みながらそんな物騒なことを言った。
「あなたなら知っておりますでしょう? 時代が進む毎に人の心は腐っていく。絶望や焦燥感で自滅する者、消えてしまいたい者。彼らを救うには、実際に奇蹟がなければ行けないのです」
 と、男は言う。
「助けられるのは自分だけですけどね」
 お茶を置いて、言った。
 その言葉に、男は眉をひそめたようだが、気にしなかった。
「乱暴な誘拐の仕方は間違っていますよ。折角友人との食事が守れなかったではないですか?」
 と、別段怒ってもない匡乃は其れを口にする。
「下の者には注意を致しました。申し訳ありません」
 恭しく謝る男。

 此処まで丁寧にされていると、危機感も減ったくれもないのだが、向こうからすれば逸材なのだ。何とか説得で動かそうとしている。
 勧誘みたいなものである。

 匡乃がその間にこの男から聞き出せたのは、絶望した若者達を救うとかいうご大層なものらしい。回りくどく誘導尋問で、暴力団に通じていると言うこともわかった。カルトというものは大体が金儲けのために設立し、信者の殆どは使い捨てである。これもさほど間違いなくその手の組織だ。
 手品でも何でもない真実の奇蹟を見せることで、信者を増やそうとしているのだろう。
「神が降り立ったとか……誇大広告ですね」
 と、匡乃は呟いた。


――

 また1人になった匡乃。窓がないし、通気口が多いので地下なのだろうと推測する。
 監視カメラらしいものは一応ある。
 通気口の一つから、見知った顔が現れた。
「義明君?」
 匡乃は目を丸くする。
「元気で何よりです。ぼうっとする振りを」
 小声ではなく念話で話す義明。
「何やっているのですか? 未刀君は?」
「助けに来た報告ですよ。未刀は後ろ……」
 後ろで何か叫びそうになっている声を聞いたので、一緒にいるようだ。
「そうですか……突入ではなく通気口からと言うのはどういう吹き回しですか?」
「それなりに考えた結果ですよ。大丈夫、此処までのルートやこの建物の死角、そして様々な情報を纏めてきました。取り敢えず、此処から抜けましょう」
「どうやって……」
「5……4……3……2……1」
 義明と未刀が数え始めた。
「?」
 ブレーカーが豪快に落ちる音と共に、世界が真っ暗になった。
「なるほど……忍者に転向ですか?」
 急いで、匡乃は通気口から脱出した。
「一般人程度に技を使いたくないからですよ。突っ込む気にもなりやしない」
 と、義明はそう言った。
――確かに。義明君と未刀君だと、手加減しても重傷になりそうです。それも、まず無いでしょうけど。




〈終わりに〉
 情報を照合すると。
「大スクープですね」
 と、匡乃が笑う。
 数人誘拐された事実の証拠写真やら、薬物使用、ヤミ献金、黒い部分が一杯である。
 匡乃誘拐の事実などは、些細なことになった。
 最も神秘関係の誘拐などは表沙汰にはしたくないが、アトラスに渡すときはその辺も少し入れておく必要がある。
 戦いもなく無事救出された匡乃は……。
「さて、お詫びに何か食べに行きましょうか?」
「危機感全くないな……。心配していたのに」
 呆れかえっている未刀。
「匡乃さんはそう言う人だろう? 未刀」
「心配してくれていたのですか? 嬉しいですね」
 ニコニコ笑う匡乃。
「そ、それは! あ、あた……り……まえじゃないか」
 何か照れくさいのか、どもる未刀君だった。



 その後。
 全ての情報をアトラスの碇編集長に持ち込んで、掲載することになった。
『今世紀の新興宗教の奇蹟!?』
 とか、特集である。
 麻薬やら裏側の情報を完全に暴露した記事である。
 当然、アトラス愛読書としていた上層部の力で警察関係が動くしニュースやワイドショーに特集で騒がれたのだった。

 
 一方、匡乃は、義明と未刀に勉強を教えたり、食事に誘ったりと夏休みを満喫(?)していたのであった。
「これからも狙われるか分からないのに……」
「大丈夫ですよ」
 どこからそんな自身が出るのか? と未刀は首を傾げた。



 匡乃の手帳に今までのことが記されている。
 もちろんこの事件のことも……。

Fin


■登場人物
【1537 綾和泉・匡乃 27 男 予備校講師】

【NPC 織田・義昭 18 男 神聖都学園高校生・天空剣士】
【NPC 衣蒼・未刀 17 男 妖怪退治屋(家離反)】

■ライター通信
 滝照直樹です。
 『神の剣 異聞 Invisible Blade 4』に参加して下さりありがとうございます。
 全話参加ありがとうございます。
 やたらと強い力を持った2人が突入することもせず、忍び込む形で救出する形になりましたが、如何でしたでしょうか? 
 
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