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<東京怪談・PCゲームノベル>


霊駆巨兵ファントムギアトルーパー

■巨兵のいる学園――crossover
「ねぇ彼女でしょ? 最近寮に入った娘」
「ササキビさんの事? 知ってる? 彼女の部屋の隣や向いの部屋って誰も入っていないんだって」
「えぇっ? 何か気味悪いよそれ」
 ササキビ・クミノが全寮制の麗刻学園に転入して数日が経過していた。彼女が寮の廊下を歩く度に囁かれる声も、今なら当たり前に聞き流せる。
 ――慣れるって怖いことね。
 彼女は今日も一人、学園への一本道を歩いて登校する。
 本来なら決して進んで全寮制の学園になど入学したりしない。
 目的があってこの学園で生活をしているのだ。
 それは――――

 ――数日前・草間興信所
 習慣とは慣れと同じで厄介なことだ。
 クミノは何となく馴染みの宅を訪ねた。
 ドアは開いている。中を覗くと知った顔ぶれが数名集まっていた。
「書き置き?」
 思わず彼女は素っ頓狂な声をあげた。
 内容は暫らく調査の為に留守にするというものだった。一応、滞在場所は記してある。
 ――麗刻学園。
 彼女はネットカフェモナスを所持しているだけあって、パソコンの扱いは手馴れたものだ。学園なら直ぐに見つかると踏んでいた。
 しかし、麗刻学園はなかなか引っ掛からない。彼が赴くだけあってか、地図にすら表示されていなかったのである。
 数日徹夜でアンダーグラウンドなネットを渡り歩き、ようやく手掛かりを掴み、裏の世界を通じて入学を果たすに至ったのだ。
 勿論、入学時は自分の特異な能力の片鱗は説明した。普通なら、そんな非常識な事を告げる中学生の入学は有り得ないものだが、学園側は承諾し、現在の寮生活の待遇を与えられている訳だ。


「何か分かったの?」
「‥‥いや。‥‥なあクミノ、そろそろ戻ったらどうだ? 手を借りたい時は、こちらから連絡するさ」
 二人は偶に生徒と教師として、分からない問題を訊ね、答える振りをしながら会話を交わす。
「いいの、好きでやってることだから‥‥人が来たわ‥‥あ、分かりました先生」
 抑揚のない声で芝居を打つ。突然ながら応えねばなるまい。
「そうか、なら大丈夫だな。それじゃ先生もう行くからな」
「あっ」
 立ち上がると、武彦は生徒に軽い挨拶をしながら歩いてゆく。これでも自然な雰囲気を演出したつもりだが、どこか不自然だ。
 ルックスも悪くない大人の男と生徒の輪から外れる年頃の少女。
 ――また、寮内での噂話のネタにされるかもしれないわね。
 僅かに苦笑した時だ。周囲が突然ざわめき出す。
「なに? ‥‥!?」
 彼女の瞳に映ったのは、長い銀髪を揺らして校庭の長椅子に近づく少女の姿だった。それだけなら周囲が静かに騒いだりはしない。年齢は自分と近いであろう注目の的は、西洋人形の纏うような漆黒のドレスに身を包んでいるのだ。
「どうかしまして?」
「いえ‥‥その‥‥学校ですよね、ここ‥‥」
 どうやら先に腰掛けている少年と会話しているようだった。
 クミノは気付かれないように無駄なく動き、木陰に身を忍ばせる。訳あって彼女の動作は、一流の訓練を受けた軍人と引けを取らないハイレベルさを持っていた。
 ――もしかすると何か手掛かりが掴めるかも‥‥
 只ならぬ雰囲気を醸し出す少女の出現に、クミノの勘が働いた。

 少女は、ふわりと隣に回り込み、少年のパソコンを覗き込んで口を開く。
「尾神様は何をなさっていたのです? 皆さんとお遊びになりませんの?」
「尾神、様? 尾神で構いませんよ。僕、身体が弱いから‥‥皆のようには遊べないんです。それに、パソコンなら少しは得意ですし、気になることもありましたから」
「この事故が気になりますの?」
「ええ、あれは自然災害なんかじゃありません」
 少年は少女に説明して話した後、色々な話をしていた。彼女は微笑みながら聞き、訊ね、少年は答える。
 ――わたし、なにやってるのかしら?
 普通の会話を聞いている内に、クミノは自分の行動に苦笑した。
「あら? どうなさいました? 尾神くん? 尾神くん?」
「は、はい」
「もし、この学園に同じことが起きたら、どうなさいます?」
「えっ?」
 ――その時だ。
 校舎の窓ガラスが次々に乾いた音を響かせた。降り注ぐ破片に生徒達が悲鳴をあげて逃げ惑う。忽ち校内外問わず、パニックに陥る中、クミノは冷静に状況把握に努めた。
 ――調べは着いているのよ‥‥妖怪小豆洗い!
「えっ? まさか、あなたが‥‥」
 呆然と立ち尽した少年は、警戒するように銀髪の少女へと向き直ると、彼女は首を横に振りながら、ゆっくりと後ずさっていた。
 刹那、二人を分け隔てる如く地面が割れる。
 ――なに?
 足元から振動が響き渡ると共に、ゆっくりと下から大きな塊がセリ上がって来たのだ。
「幽霊からのプレゼントですわ」
 少女の声と共に姿を現わしたのは、所謂、体育座りをした形状の人型をした鋼鉄の巨人だった。今は4m位の高さだろうか? これが立ち上がれば倍近くになる事は容易に
想像できる。そんな人型ロボットがもう一体確認できた。クミノの直ぐ傍だ。
 ――ロボット? プレゼント!?
「ぼ、僕に乗れって言うのですか? 僕ではお役に立てません!」
「あら? 歩いていたら的になりますわよ? 走ることもできないのじゃなくて?」
 少女は楽しそうに微笑みながら、長い髪を舞い躍らせ、走り出した。駆けながら彼女は振り向き、立ち尽す少年を瞳に捉える。そして――――
 西洋人形の如き少女は、前を向く前に青い瞳をこちらに向けた。
 口に浮かぶは微笑み。
 ――まさか、気付かれていたの?
 クミノは戦慄を覚えながらも少女の後を追おうと駆け出した時だ。
「‥‥消えた?」
 何の痕跡も残さず、少女は姿を消したのである。立ち尽くすクミノの周囲で地面が揺れ、次々と鋼鉄の巨人が姿を現わしては立ち上がっていた。状況と少女の微笑みから導き出される答え。
「‥‥私にも乗れっていうのかしら」
 不敵な笑みを僅かに浮かべると、少女は一体の巨人へと駆け出した。小柄で背も低いクミノに頭部は確認できないものの、自ずと経験から背部へと周り込む。
 漫画やアニメで頭部や胸部にハッチがあるが、開いているようには見えない。この緊急時に「乗れ」と言うならわざわざハッチを探させる訳は無い。否、試すつもりなら考えられなくないが、見つからない時に探せばいい。
「これね」
 予想通り、背中からタラップが降りていた。クミノは素早く中へと躊躇うことなく潜り込む。
 少女の瞳に映し出されたのは、複数の座席のある機械の部屋だった。例えるなら、ゲームセンターの横並びになった対戦筐体が似ているだろうか? 二本のスティックが突き出しており、その周りには複数の赤や青色のスイッチやレバーが覗えた。足元にはレースゲームで目にするアクセルとブレーキに酷似したものが見える。
『もしもし、もしもし聞えますか?』
 突然スピーカーから女性の声が飛び出す。
『これから空間を障壁で固定しますわ。私達も移動範囲が制限されますが、敵も逃げられませんのよ。その間に退治いたしましょう』
「先に乗った人からの通信ね」
 クミノは一通り計器類などを見渡す。
『そろそろ席に着きまして?』
 さっき聞いたばかりの声にピクリとクミノは反応した。
「あなたはさっきの‥‥」
『落ち着きなさって☆ これは霊駆巨兵と呼んでいる人型ロボットですの。またの名をファントムギアトルーパー。FGTでもファンギアでもよろしくてよ♪』
「ファントムギアトルーパー‥‥」
 視界に映る光景では、数体の霊駆巨兵が動き回り、何かと戦いを繰り広げている。
『この機体は貴方の<力>を原動力として動きますの。スティックを両手で掴んで、足をペダルに乗せて下さいな』
「‥‥言われるまでもないわ」
 クミノはスティックを握り、上目遣いでモニターを睨む。
「立つのよ、ファントムギアトルーパー」
 スティックが青白く発光し、激しい振動と共に視界が上昇する。
『まあ、上手ですわよ☆ この機体は貴方の力をフィードバックさせ、念じる事によって巨兵サイズで能力を具現化させられますの』
「具現化‥‥?」
『今、貴方が戦っているのは妖機怪と呼んでいる敵ですの。敵は何らかの妖怪のシルエットと攻撃を特徴としていますわ』
「そうね‥‥敵は、不可視で波音を出すもの‥‥小豆洗いに酷似する音を発し、複数の腕による弾丸投射をする‥‥そんな蜘蛛とも蛸ともつかぬ姿でしょうね。でも」
 クミノの駆る巨兵の上腕装甲が展開し、蛇の如く青白いエネルギーがのたうつと、10本の指に銃口が出現した。クミノの<武器・兵器に当る現存する物全てを召喚し使用出来る>能力が具現化したのだ。
「単純なペイント弾で勝負ついてしまうかもしれないわ」
 腰を回転させると、全方位に指から弾丸を撃ち捲る。
『チョット、誰? 味方に弾を撃つなんて』
 同じ機体にも命中したりしたが、赤く染まるだけだ。彼女は不可視の敵の姿を露にする為に、ペイント弾を具現化させたのである。
「感謝されても文句を言われることはないわ」

『見えたわ!』
 クミノの放ったペイント弾により、妖機怪のシルエットが浮かび上がっていた。巨大な蜘蛛を模った機械。手に持つのはザルのような物体。そして、片方の手はザルを掻き回し、中からマメのようなモノを取り出しては放り投げていたのだ。
『行っけーッ!』
 月見里千里の駆る巨兵がシールドを構えながら肉迫する。
 ――接近戦ね。
 クミノの判断は的を得ていた。巨兵は距離を詰めると、巨大な金色に輝くハンマーを手に具現化させ、上段から勢い良く振り下ろす。
 鈍い打撃音が響き渡り、蜘蛛の頭部は胸部に押し込められながら潰れた刹那、光の粒子を失散させながら消滅するに至った。
 クミノの機体に向けて親指を突き出すが、パイロットが笑みを浮かべている事までは見えはしない。
「全て片付いたようね」
『ご苦労様☆ 格納庫に移動いたしますので、指示に従って下さいます?』
 相変わらず緊張感のない少女の声が耳に流れて来た――――

●霊駆巨兵の意図と謎の少女
 通信により8名の男女が集まっていた。尾神七重、榊船亜真知、天薙撫子、シュライン・エマ、シオン・レ・ハイ、藍原和馬、月見里千里、ササキビ・クミノだ。生徒もいれば教師もいる。
「お疲れ様でしたわ☆」
 校内の地下である格納庫と呼ばれる場所に現れたのは、あの銀髪の少女だった。選ばれた7名のパイロットが沈黙する中、ズイッと一歩踏み出して口を開いたのはシュラインだ。
「あんたには聞きたい事が山ほどあるのよ、いいかしら?」
「無理もありませんわ。答えられる範囲でよろしければ☆」
 シュラインは確実に怒りを表情に浮かばせていた。なのに少女は相変わらず微笑みを絶やさない。外国語講師である中性的な容姿の女は、軽く溜息を吐いて両手を腰に当てると訊ね始める。
「あのロボは何なの? それに敵の妖怪型ロボも何? 敵とあんた達の背景は? さあ、答えなさい!」
 正に教師の風格だ。彼女の切れ長の視線に見据えられながらも、「そうですわねぇ」と頬に手を当て、少女はゆっくりと口を開く。
「理解できるように順を追って説明いたしますわ。敵は妖怪の魂をコアとして作り出された機械生物ですの。私達は妖機怪と呼んでますわ。妖機怪は恐らく能力者に因って作られているものと推測されますの。目的は分かりませんが町で騒動を起こす存在を見逃す訳にはいきませんわ。そこで妖機怪を退治する為に、霊駆巨兵を誕生させましたの。敵が何者かは現在分かっておりませんが、市街の被害を最低限に抑える為に、この学園を建て、パイロット選定に使わせて頂いてますの☆ きっと起動実験を続けている内に何らかの影響を与えてしまい、敵にキャッチされてしまったようですわね‥‥」
「待ってくれ!」
 慌てて口を出したのは体育教師の和馬だ。
「すると、この学園の生徒達は戦う為に意図して集められたのか?」
「だって、常人には見えませんのよ? どんな事件が起きても、この社会は自然災害や何らかの事故として扱いますでしょう?」
 ――確かに能力には能力で対処しなければならない。
 実は見えない敵が町で騒動を起こしているなどと伝えても、簡単に理解しては貰えないだろう。まして、特殊な能力を具現化する方法など知られた日には、どんな災いが降り掛かるか分からない。
 しかし、その為に――――
「その為に生徒を危険に晒すのは賛成できませんね」
 次に意見したのは家庭科教師のシオンだ。続けて亜真知が軽い調子で発言する。
「あら、学園はわたくし達で守ればよろしいのですわ☆ ね、撫子姉様?」
「確かに、わたくし達に力があり、それを扱えるのでしたら、町の被害を抑えて誘い出し、退治する方が安全かもしれませんね」
「「でしょう♪」」
 亜真知と銀髪の少女は意気を合わせて撫子に微笑む。どうやら性格的に相性が良いのかもしれない。
「まあ、どっちでもいいけど」
 落ち着いた声を響かせたのは、一番後方で腕を組んでいるクミノだ。
「いいの? 私達、生徒なんだけど?」
「え? あたしは別に‥‥まだ、どうしたらいいか分からないしさぁ」
 生徒という立場なら、千里も同じだ。しかし、自分達が戦う為に意図して集められたなどと生徒達に知らせるつもりは現状ない。彼女は短髪を掻く仕草でおどけると、笑って誤魔化す事に決めた。
「ふーん、そう‥‥尾神さんは? 何も言うことないの?」
「僕は‥‥よく分かりません。僕より上手く扱える人がいるかもしれないし‥‥まだ、乗り続けると決めた訳でもありませんから」
 俯き加減に少年は呟いた。すると重い空気を掻き消そうとしてか、銀髪の少女はパンッ☆ と両手は合わせて口を開く。
「生徒達も分かってくれますわ☆ 明日には全校朝礼でお話するつもりですもの♪」
「って、あんた何者なの!?」
「申し遅れましたわ。私はこの麗刻学園の理事を務めている鎮芽・グリーペルと申しますの☆」
 少女はニッコリと笑みを浮かべて見せた。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/担当】
【2557/尾神七重/男性/14歳/中学生】
【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/外国語講師】
【0165/月見里・千里/女性/16歳/女子高校生】
【3356/シオン・レ・ハイ/男性/42歳/家庭科教師】
【1533/藍原・和馬/男性/920歳/体育教師】
【0328/天薙・撫子/女性/18歳/国語・古典補助教諭】
【1593/榊船・亜真知/女性/999歳/女子高校生】
【1166/ササキビ・クミノ/女性/13歳/中学生】

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■         ライター通信          ■
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 この度は御参加ありがとうございました☆
 はじめまして♪ 切磋巧実です。
 今回は学園に訪れた理由等、立ち位置の確認と、クールで冷静な部分を演出させて頂きました。なんか、覗き見して巻き込まれた感じですが、情報収集って事で(汗)。
 数多くの物語に参加されておられるPC様を演出させて頂くのは、なかなか緊張ものでしたが、いかがでしたでしょうか?
 霊駆巨兵は数名が同時に搭乗する事ができます。つまり、自分の具現能力だけで戦いたい場合は、搭乗が一機単体搭乗となり、共同しても良い場合は、連携(一機複数搭乗)となります。どちらでも良いとの事でしたので、性格や状況を考慮して一機単体搭乗とさせて頂きました。
 また参加して頂ける際は、必殺技の名前なんかも考えて頂けると楽しいかなと思います。クミノさん的には合わないかな?
 今回はエピソードごとに5本+α分あります。お時間があれば他のPCの活躍も読んで頂けると嬉しいかも。
 楽しんで頂ければ幸いです。よかったら感想お聞かせ下さいね。
 それでは、また出会える事を祈って☆