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<東京怪談・PCゲームノベル>


お化けは女子高生がお好き?!

夜、夢を見ると・・・昔、おばあちゃんがいっていたことを思い出す。

いいかい、アザミ―――。不思議な力は誰にでもある。
アザミはちょっぴりそれが強いだけなんじゃよ・・・。
だから怖がることは無いて。バアバがアザミにお呪いをしてやるからなぁ。
アザミ、アザミや―――
使うてはならんぞ。この力を、使てはならんぞ―――

そして私は、その力が何なのかわからぬまま目覚めるのだ。
いつも見る夢。懐かしい夢。そして、怖い夢。
私のような普通の女の子に、いったいどんな力があるというのだろう。
まるで夢のような話だ。こんな風に普通の学園生活を送る私が―――


「おはよう!」
私立神聖都学園の朝は、元気な挨拶から始まる。
御厨アザミも例外なく、友人と屈託の無い笑顔で挨拶を交わしていた。
「おはよう、アザミ」
校門脇で立ち止まったチェリーナは、さわやかに挨拶を返してくる。アザミが駆け寄ると、チェリーナも歩みをそろえて教室へと向かいだした。
チェリーナ・ライスフェルドはオランダ系のアメリカ人だが、日本に長く滞在しているために日本語は達者だ。快活な印象のショートヘアは、いつ見ても美しく金色に輝いている。
いつごろだっただろうか―――アザミとチェリーナが友達となったのは。トラブルメイカーだがめげないアザミに、快活でまっすぐなチェリーナ。互いに似たもの同士として惹かれあったのは当然かもしれない。
いつものように、二人は昨日のテレビの話で盛り上がった。歌番組がどうだとか、ドラマはどんな展開だったとか。
そしt今日もいつもと変わりない生活が始まる―――はずだった。
それが破られたのは、チェリーナがポロリとこぼしたこの言葉。
「ねえアザミ、肝試しに行かない?」
「えっ?」
その言葉を聴いた瞬間、アザミの脳裏に祖母の言葉が響き渡った。

―――使うてはならんぞ。この力を、使てはならんぞ―――

「ね、いいでしょ?」
「うーん・・・いいよ」
チェリーナの興味津々の表情にアザミはにっこりと笑顔を返した。何か心に引っかかるが、それがなんなのかまでは思い出せない。祖母の言葉が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
チェリーナは「そらきた」という風に手をたたいて満面の笑顔で話し出す。
「やった!こないだね、雑誌で見たんだ。学校の裏山に古いトンネルがあるじゃない?あそこって出るらしいのよ〜。探偵を目指す私としては、見逃せないって思ってさ」
ニコニコと楽しそうに話すチェリーナに、アザミはへえ、と返事を返す。そんな話は始めて聞いた気もしたが―――面白そうだ。
「じゃあ今日の放課後、絶対だからね!」
そういって、自分のクラスへと向かっていくチェリーナの背中に、アザミは手を振って見送った。
―――なんか気になることがあった気がしたけど・・・まあいいか。
先ほどの不安などどこへやら。友達との楽しい放課後に向けて、アザミはさっさと自分のクラスへと向かっていくのだった。


「よーし!行くわよッ!」
チェリーナは気合を込めると、学校の裏山を見上げた。裏山は不気味なほどに静かにたたずんでいる。
「ねえ、それどっからもってきたの・・・?」
「ん?えへへ、ちょ〜っと用心にね!」
アザミが微妙な顔で指差す先には、ナップサックが置かれていた。どうもチェリーナのものらしいが、どこから持ってきたのかわからない十字架やら蝋燭やらお札やらが覗いている。これも彼女の言う探偵七つ道具というものなのだろうか。
「まあ、出るわけないんだけど・・・噂になってるってことは何かあると思うのよね。私は足が速いから何かあっても逃げられるけど、アザミってば地震では地割れに落ち、津波にはさらわれ、火事では逃げ遅れるようなタイプだもんね」
「ははは・・・うん、だよね」
冗談めかして言うチェリーナの言葉に、アザミは乾いた笑いを返す。実際、そうなりそうなくらいにアザミは間が悪いのだ。
「だ・か・ら!もしもの時用ってこと!もー、アザミったらそんなにへこまなくてもいいのに」
ちょっぴり落ち込んでしまったアザミに、チェリーナは明るく肩をたたく。そうだよね、とアザミも気分を持ち直したのか、笑顔を見せた。
ナップサックを手にして、二人は裏山を見やる。
「よーし、噂の正体、見つけてやるんだからね!」
その声は、人気のなくなったグラウンドにこだました。


「ね、チェリーナ・・・なんかやばくない?」
「そう?大丈夫だって!」
「いやいやいや!どう見てもやばいから!!」
そんな会話がなされているのは、裏山のトンネルの前だ。
やばい、と連呼するアザミの言葉どおり何やら不穏な空気が漂っている。
しかし、チェリーナはそんなことを気にも留めない様子でずかずかとトンネルの奥へと入っていく。
「ここで待っててもいいんだよ、アザミ。何が出るかわかんないけどね〜・・・フフフ」
「ま、待ってよ!」
チェリーナの脅かしに、アザミは逃げるようにして後を追う。
人気のなくなったトンネルの入り口には、ふわり、と一陣の風が舞った。

トンネルの奥へと入っていった二人は、手に下懐中電灯だけを頼りに歩みを進めていく。
もはや使われなくなったというだけでは説明しがたい暗闇が二人を覆っていた。

ピチョ・・・ン・・・

「ひゃッ!」
「水だよ、アザミってば・・・」
「でも、こ、怖くない?」
「大丈夫!いざって時は抱えて逃げてあげるからさ」
そんな会話を交わしながら、二人は奥へ奥へと進んでいく。
何分くらい歩いただろうか。目の前には、土くれに埋まったトンネルの壁があった。どうやら、行き止まりのようである。
「な〜んだ。ここで終わりかあ・・・。何かあると思ったんだけどな」
「よかったー。何にもなくて。ね、チェリーナ、早く帰ろうよ」
残念がるチェリーナとは対照的に、安堵の色を見せるアザミ。だがチェリーナは納得いかないのか、懐中電灯の光を頼りに周囲を探り始める。アザミは「早くー」とチェリーナをせきたてていた。
「だって・・・ここまで来て何もないってのも・・・ン?」
チェリーナはふと土くれの中に光るものを見つけて近づく。どうやらそれは、白く光っているようだ。引き寄せられるようにそれに目をやった瞬間―――
「キャアッ!」
チェリーナの口から悲鳴が漏れた。
そこにあったのは、水ぬれた白骨死体だったのである。チェリーナは「どうしたの?」と聞いてくるアザミに駆け寄る。
「アザミ!警察!警察を呼ばないと―――」
「どうして?何かあったの?」
のんきなアザミに、チェリーナは息を呑んで説明する。
「そこにね、あるのよ!骨が!」
「ええーっ!」
「早く行こう!これはきっと事件だわ!」
アザミの手を引き、チェリーナは駆け出す。いまだに事情をよく飲み込めていないアザミは必死にチェリーナについて走っている。
そのとき、ヒュン、と何かがチェリーナとアザミの間を通り抜けた。瞬間、チェリーナは見えない何かにからめとられる。
「チェリーナ!」
アザミの声に、チェリーナは必死に何かから逃げようとするが、うまく逃げられずにもがくばかりになってしまう。再び風を斬る音が聞こえたかと思うと、見えない何かはアザミに向かってその触手を伸ばしているようだ。
直感でそれを感じ取ったチェリーナは、近づこうとするアザミを制すように叫んだ。
「アザミ!逃げて!早く!」
「でも・・・チェリーナが・・・!」
「大丈夫だから・・・!早く!」
「でも!」
「大丈夫!私はスボーツ万能のチェリーナ・ライスフェルドなんだから・・・こんなやつ!グッ・・・」
心配させないようにと強がってみたが、見えない何かは邪魔をするなというようにチェリーナを締め上げる。
「やめてぇ!」
アザミは叫びながら、チェリーナの元へと駆け寄った。

―――チェリーナとであったのはいつだっただろう。
そう、あれは新学期。新しいクラスで早速へまを起こしたときだ。
しょんぼりしていた私に、チェリーナはこういった。
「失敗なんて、すぐに挽回できるよ。持っているもの、持っていないもの、全部合わせて自分なんだよ。私は今の自分が好きだし、今のアザミも好きになれそうな気がする。だから―――」
そういって励ましてくれたことが、どんなにアザミを心強くしただろう。
私はチェリーナからもらってばっかりだから、その続きの言葉がいえない。でも、こんなときくらい私は―――

「アザミ!」
チェリーナの叫び声がトンネルに響いたとき、声がした。同時に、パキン・・・と何かが割れるような音がした。それは耳に届かないが頭に響き渡る不思議な音だ。
トンネル内に静寂が訪れた後、驚くような突風が吹き荒れた。
「キャア!」
あまりの風の強さに、チェリーナは目を閉じてしまう。同時に、体を絡めとっていた見えない力が徐々に弱まっていくのを感じていた。
―――一体どうして・・・?!
突風の中、必死に目を開けたチェリーナの前には、アザミの中に吸い込まれていく不思議な物が見えた。黒いような、透明なような、やわらかそうな、硬そうな・・・
ヒュルンッとそのすべてが飲み込まれたと同時に、チェリーナの体は自由になった。目の前では、スローモーションのようにアザミが倒れていく。
「アザミ!!」
チェリーナの声はトンネルに再び響き渡った。

「あれ・・・?私・・・」
「目が覚めた?」
アザミを見下ろして笑っているのはチェリーナだった。
どうやら、ここは学校の保健室らしい。
「・・・ごめん、チェリーナ。また助けてもらったんでしょ?」
「ううん。今回は―――助けてもらっちゃった。アザミに」
「本当?」
「うん。でも、その話はまた後で。今は眠った方がいいよ、アザミ」
「うん・・・」
ボーっとしているのか、二言三言言葉を交わすと、再びアザミは深い眠りについた。
遠くでサイレンの音が聞こえている。きっとこの事件は解決するだろう。
目の前で起こったこと、アザミの不思議な力―――すべてすぐに受け入れられるわけではなかったが、チェリーナはアザミの寝顔を見て微笑んだ。
「ふぁ・・・」
―――眠たくなっちゃった。
大きなあくびをして、チェリーナはアザミのベッドに突っ伏した。起きたらきっと、警察やなにやらの騒ぎに駆り出されるのだろう。
ならば今だけ、友と二人で休息を―――

眠りに落ちながら、チェリーナは懐かしい響きの言葉に、耳を傾ける。
もう駄目だと思ったあのとき聞こえた声。
それはアザミの声だったのだろう。
―――一緒に頑張ろう!
そのやさしい響きに包まれて、チェリーナは深く深く眠りに落ちていった。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【2903/チェリーナ・ライスフェルド/女性/17歳/高校生】
【NPC2990/御厨・アザミ(みくりや・あざみ)/女性/17歳/束縛者】

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、花鳥風月です。今回は魔物との戦いではなく、友情に焦点を当ててみましたが、いかがでしょうか?魔物と対決する能力を持たない、という点から多少プレイングに変更を付け加えさせていただきました。
チェリーナさんの快活さは描いていてとても楽しいものでした。
また機会があれば、この二人の友情物語を描いてみたいと思います。チェリーナさんのこれからの活躍を期待しております。
では、これにて。