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<東京怪談・PCゲームノベル>


Strangers in New York -a moment-


01 Aki's Destination

「ニューヨークだぁ?」
 成田空港発ジョン・F・ケネディ国際空港行きの往復チケットを押しつけられた火村義一は、非常に迷惑そうな一瞥を制服姿の高校生に送った。
 院生という職業柄、英語で論文を読むことには慣れている。アメリカは犯罪研究のメッカであることだし、普段だったらありがたくチケットを頂戴してさっさと荷物をまとめるところだった。が。
「おまえと? 俺で?」
 自分の顔と、高校生の少年の顔とを交互に指差す。
「そ。拒否権ないんで、そこんとこよろしくー」
 火村にニューヨーク行きを躊躇わせる原因は、目の前の桐生焼という高校生だ。金色に染めた髪を無造作に遊ばせて、制服は適当に着崩している。悪戯っぽく細められた瞳は、カラーコンタクトか天然かいまいち判断し難い赤味がかかった色。くるくる動く瞳は奥に潜む知性を伺わせるが、観察力のない人間なら一見して高校生という名詞の上に『今時の』とか『軽い』とかいう接頭語をつけるであろう、どこにでもいる少年だ。
 少なくとも、そろそろ三十歳を迎える院生の火村が、旅行の仲間にする相手ではない。
「ニューヨークで何をするんだよ」
 火村は、映画でしか見たことのない街並みを頭の中に思い描き、そこから連想した単語を並べ立ててみた。ブロードウェイ。ダウンタウン。地下鉄。ミュージアム。オペラ。バー。バーで酒。連日連夜酒宴。酒酒酒。――この校則をぶち破っているに違いない高校生と俺が共有できる趣味なぞ、酒くらいのものではないのか?
「行くからには観光っしょ、一通りランドマークは制覇しとかないと!」
「観光ねぇ……」
 火をつけたまま存在を忘れていた煙草の灰が落ちた。
 思えば、ちょっとした気まぐれで知り合いが入り浸っている店に立ち寄ったのがいけなかったのだ。しかし、ひょんなことで知り合った高校生がたまたま来店していて、そこに折り良くニューヨーク行きタダ券の話が舞い込んでくるなんて誰が想像できただろう。
 俺なんかとつるんで何が楽しいんだかなぁ、こいつ。
 首を捻らずにはおれない火村である。知り合ったのもやはりEscher――東京場末のジャズバー――だった。制服姿の高校生の出入りが黙認されているあたり、何ともはや……いい加減な経営者だ。世間話をしているうちになぜか桐生焼になつかれてしまった。という構図だった。
「まぁ、いいけどな」
 焼の尻尾を振り出さんばかりの熱意に押されて、ついそう答えてしまう火村だった。
「やりっ! じゃあ決まり、明日の飛行機でいいっすよね!」
「明日!?」
「あ、京一郎にも連絡しよー!」
「おい……」
 焼は制服のポケットから携帯電話を取り出すと、火村も顔馴染みの高校生に電話をかけ、ニューヨーク行きの旨をべらべらと喋り出した。
「つまり……俺は保護者ってわけか?」
 火村はげっそりと溜息をついた。


02 Street Performers

 東京の夏は暑い。
 ニューヨークの都会の暑さもそれと同じ類いのものだ。
「おい、暑いぞ」
 火村はビル街のど真ん中で、ぎらつく太陽を見上げた。
「都会の夏って感じ。東京よかマシじゃない?」
 桐生焼も同じように、片手でひさしを作ってビルに切り取られた空を振り仰いだ。
「東京の暑さに慣れている身としてはどうってことないな」
 半ば無理やり同行させられた神崎京一郎は、涼しい顔で焼に同意する。
 神崎京一郎は、焼より一つ上の学年(学校は違うが、焼の通う神聖都学園とそう離れていない)だ。年若い高校生二人がこの程度の暑さでへばるわけがない。
 JFK国際空港に降り立ってすぐ、タクシーでマンハッタンのど真ん中に位置するホテルまで運ばれ、そうして今ようやくアメリカの地に足をつけていることを実感しているわけだが――
「老体には厳しいぞ」火村は覇気のない声でそうぼやく他なかった。「時差ボケが……。おまえら、二人で遊んでこいよ。俺はホテルで寝る」
「何老人みたいなこと言ってんですかー、火村サン!」
「何とでも言ってくれ。日が落ちたら俺も出かけるから、ホテルに寄るなりフロントに電話を入れるなりしてくれ……」
「吸血鬼じゃないんだから」
 かくいう自分が吸血鬼の血を引いていたりするのだが、と焼は思う。現代に生きる吸血鬼はタフなのだ。糖分があれば問題なし!
 火村は二人を置いてふらふらと屋内へ戻っていった。残された高校生二名は、さて、と顔を見合わせた。
「じゃあ、遊ぶかっ!」
「そうだな」
 ――そんなわけでまず二人が向かったのは、いきなり喫茶店、であった。
 ブロードウェイやらタイムズスクウェアやらエンパイアステートビルといった観光スポットが凝縮された、ニューヨーカー、観光客問わず多くの人間が集まるミッドタウン。
 都会特有の蒸すような暑さと照りつける陽光にも関わらず、道行く人々は平気で肌を剥き出しにして歩いている。暑さなんてものにもしないタフさ。身体の底に溜まったエネルギーに火をつけるような、そんな空気が満ち満ちているのだ。一つの巨大なアミューズメントパークのようだ。
 で、ニューヨーカー並みに遊び倒す気なら、まず栄養補給は欠かせまい! というのが焼の主張だった。
「栄養補給は栄養補給だが……。どうせなら昼飯を……」
「京一郎は甘いモノ嫌い?」
「別に嫌いじゃないが」そう言うわりにはあまり食が進まないようで、もそもそとブラウニーを頬張っている。「しかし、俺の英語力じゃせいぜいファーストフードかと思ってたんだが。おまえ英語ペラペラなんだな、助かった」
 夜は真っ当なレストランで真っ当なモノ食おうな、と付け足す。
「俺勉強家サンだから」焼は得意げに言った。勉強家というのが真実かどうかはともかくとして。「別に喋れなくてもいいじゃん、その場のノリっつーか?」
「その場のノリでストリートダンスとかやるわけね……」
「どうだった、俺様の雄姿?」
「どうだったというか、おまえのその身体能力は何かの冗談か?」
「俺の中に眠る血が騒ぐんだよ!」
「アフリカの? ラテンアメリカでもいいが」
「まぁそんな感じ?」
 吸血鬼の血だなんて、もちろん言わない。
 手頃な喫茶店を探してぶらぶら歩いている途中に、二人は歩道の一部を占拠している黒人のストリートダンサーに遭遇した。それこそ何かの冗談かと言いたくなるような身体能力を発揮しまくって跳ねたり回ったりしている連中を見て、思わず飛び入りしたくなってしまったのである。
 小柄とは言わないまでも、細身の(多分、現地の人間からすれば幾分華奢な部類に入る)焼が、いきなりストリートダンサー達に混じって踊り始めたものだから、京一郎はじめ見物人はぽかんと口を開けてしまった。
 対等に渡り合うどころか、一段ぶっ飛んだくらいの運動神経でぴょんぴょん跳ね回る焼。すっかり意気投合してよりいっそうパフォーマンスの激しさを増すアフリカンアメリカン達。ノリの良いアメリカ人。そんなわけで人垣は膨れ上がり、ちょっとした騒ぎが巻き起こってしまったのだった。
「結構稼げるんだなー。働き口が見つからなかったら、今度からストリートダンスやろうかな」
 焼はポケットに無造作に突っ込んでおいた紙幣とコインの山をテーブルの上に築き上げる。しわくちゃの紙幣の山を数えてみたら、なんだかんだと20ドルは超えていた。
「自給20ドル。割りが良いよな! 俺って金持ちー」
「ただでさえハードアルバイターだろ、桐生は。おまえは一体、いくつバイトをやってるんだ?」
「えーと、喫茶店のウェイターだろ、ライブハウスのバーテンダーだろ、たまにボーイもやってるし……」
 焼は指折り働き口を数える。
「それだけバイトしておきながら、減りがやたらと早いのは……」
 京一郎はテーブルの上の甘味に無言で視線を送った。
 ――働いた分だけエネルギーを消費するからである。糖分で。
「おし、エネルギー補給完了! 次はどこ行く?」
 ショートケーキを間食して、すっかりご機嫌な焼だ。日中の分は多分これでオッケイ。足りなきゃ道端でプレッツェルかピーナッツでも食うから問題なし。
「どこでもいいが、観光スポットならエンパイアステートビルとか、自由の女神とかか?」
「エンパイアステートビルなら夜景だろー? 俺はダウンタウンを歩いてみたいな」
「それじゃ地下鉄に乗るか」
 喫茶店を後にした二人は、タイムズスクウェアからN線に乗って、イースト・ビレッジとグリニッチ・ビレッジ界隈へ向かった。
 地下鉄のプラットホーム構内もこれまた不快な暑さに支配されていた。風通しが悪いので仕方がない。額に汗の粒を浮かべてじっと次の電車が来るのを待っている。
 ここでもタフなストリートなんとかの連中が幅を利かせる。この場合はストリートミュージシャン。プラスチック製のバケツをひっくり返してドラム代わりにし、激しいアフリカのビートを奏でるのもいれば、アルトサックス一つで都会人の孤独を謳っているのもいる。見たこともないような楽器で民族音楽を奏でるアジア人やら何やらもいて、地下鉄構内に溢れる音楽一つを取ってもまさに人種の坩堝だ――で、バンドでギターを弾いている焼の血がここでも騒いだというわけだった。
 ヒスパニックのおっちゃんに、ちょっとギター弾かせてよ、と親しく声をかけて、デタラメなスペイン語でそれっぽい歌を浪々と歌い上げた焼は、新たにストリート仲間とチップの山を獲得したのであった。


03 Taste of Downtown

 ミッドタウンから離れ、一歩マンハッタンの南の区域に足を踏み入れると、まったく性格の異なった街並みが広がる。
 高層ビルが立ち並ぶミッドタウンは多分にオフィス街の雰囲気を漂わせており、ビルの谷間を数歩も歩けばスーツ姿のビジネスマンにぶつかるといった様相を呈しているが、イースト・ビレッジやグリニッチ・ビレッジ一体はより人々の生活がごっちゃになっており、なんとも焼の嗜好に合っていた。
 ミュージシャンやアーティストを育ててきた街でもあり、クラブやジャズバーなどもあちこちに見受けられる。
「うおー、なんかこの、洒落てるんだか汚いんだかわからない建物が最高!」
「好きそうだな、いかにも。アンダーグラウンドっぽいっつーか」
 日が落ちたら、また違った種類の熱狂が渦巻くのだろう。緯度が大分北のニューヨークは昼が長く、しばらくは太陽が照りつける中を歩かなければならない。日差しから目を保護するために目の色素が薄い白人はサングラスをかけており、焼は、今更ながら眩しくて目がおかしくなっていることに気づいた。
 だからだろうか。一瞬何か妙なものを見た。焼は足を止めてぱちくりと目を瞬く。
「どうしたんだ、桐生?」
 数歩先で足を止めた京一郎は、怪訝そうな顔で焼を振り返る。
「いや、別に……」
 何でもない、と言おうとして京一郎に目を戻した。幻ではなかった。
「おい?」
「あの人、父さんに……」
 焼は一人ごちて、ふらふらと明後日の方向へ歩き出す。
「おい、待てってば。どうしたんだよ」
「父さんに似てる――」
 あっち、と焼が指差した方向に京一郎は目をやったが、もちろん彼に焼の父親(に似た人物)を見分けることができるはずはなかった。
 焼がぼんやりと道路っぱたに棒立ちしていたせいだろう。イエローキャブの運転手にクラクションを見舞われ、焼ははっと我に返った。京一郎に腕を引かれて二、三歩下がった。
「暑さにやられたか?」
「かもね」焼はなんとなく上の空だ。ふと、母親の知り合いがニューヨークにいることを思い出した。「そういえば、母さんの知り合いがニューヨークにいたんだっけ。会ってみたいな……」
「会ってみたいなって、住所知ってんのか?」
 焼は首を振る。そもそもニューヨークの地理なんて良く知らない。仮に住所を示されたところですぐに辿り着けるかどうかは怪しかった。
「もう忘れちゃってるんだけどさ」
 唐突に発した台詞に、京一郎は不審そうな顔をした。
 普段のノリがノリだけに、稀に口数が少なくなると具合でも悪いのかと変に勘違いされてしまう。
「何を?」
「ううん、べっつにー」
 軽いノリで言って、焼はステップを踏むように歩き始めた。首から下げたロケットペンダントが、焼の動きに合わせてぴょこぴょこ揺れていた。


04 A Moment

 まだ日は高く日没は程遠いように思われたが、なんだかんだで午後六時を回ってしまった。いい加減に腹も減ってきたので、ホテルで休んでいるはずの火村を呼び出すことになった。
 ホテルのフロントを通じて部屋に繋がせると、まだ時差ボケが抜け切っていないらしい火村の寝惚けた声が応じた。
『おう……今どこにいるんだ?』
 寝癖ぼさぼさの火村の姿を想像して、焼はちょっと愉快になった。
「イースト・ビレッジの、えーと、バワリー通り?」焼はストリート名が表示された標識を見て言う。「CBGBっていうライブハウスがあるんですよ。こっちまで出てこられるー?」
『ライブハウスだぁ? まさかライブを見ようってんじゃないだろうな』
「That's right! パンク発祥の地だよ、火村さん。どうっすかー」
『パンク? 老体を労わってくれ。今晩は大人しく飲もうや』
「えー、でも俺がチェックしてたバンドが出ててー」
『日中さんざん遊んできたんだろ? この先体力持たんぞ、とにかく飯と酒!』
 どうする? と京一郎に意見を仰いでみたところ、彼も相当へたっている様子だったので、火村の言うプランを実行することになった。しかし何かしらライブは見たいということで、グリニッチ・ビレッジに移動して、名門ジャズクラブで夕食と酒を楽しむことになった。
 火村と店の前で合流した。ピアノトリオのライブ開始までまだいくらか余裕があったので、三人はめいめいアルコールやらディナーやらをオーダーした。程よく暗い店内で(もちろん違法の)カクテルを舐めながら、焼は日中に見た幻のことを火村に話す。
「おまえ自身が思ってるより、深刻なんじゃないのか?」
 自分の両親のことを多少なりとも知っている火村は、一笑に付すでもなく真面目に答えた。京一郎は人のプライベートには立ち入らないといった風で、一人前菜を突付いたりプログラムを眺めたりしている。
「そうなんですかねぇ。別に俺は、どってことないんだけどなー」
 どうってことはないと言いながら、無意識のうちに両親の写真が入ったロケットペンダントをいじっていた。
「年上に懐きやすいのも、案外……」
 火村はつぶやくように言った。後半はざわめきにかき消されてしまい、焼はえ? と訊き返す。
「何でもない。気にするな」
「何でもなくないですよー。気になるー」
 焼はうだうだ言いながら、火村の首に抱き着いた。
「酔っ払うのはもう少し後にしておけ」
 無理やり火村に引き剥がされてむくれる焼。そうこうしているうちに焼のオーダーが到着したので、しばらくは食べるほうに熱中することにした。
 間もなくしてピアノトリオがステージに上がってきて、演奏を始めた。三人の席はステージの真ん前だったので、会話は自然と中断されてしまった。
 肌にびしびし伝わってくる音の振動を実感しながら、焼はふと不思議な気分になる。眠そうな火村をちらりと一瞥し、そういえば日本は朝なんだな、と思い出したのだった。
 ピアノの音が見えない波動となって焼の鼓膜を揺らすこの一瞬一瞬の間、日本では日常が回り始めている。通勤列車ががたんごとんと枕木を叩く音、会社へ急ぐサラリーマンの足音、今は夏休みだけれど、いつもだったら多分一限目の教師がチョークで黒板に書きつける音。そのどれかが、ピアノ線の振動するリズムと一致しているかもしれない。
 モダンジャズのすべてを理解したわけではなかったが、ニューヨーカーの音楽とその息遣いを肌で感じ取って、焼は十分に満足した。少し酔っ払っていたのだろうか、視界がぐらついてよろめいてしまったところを、火村が脇から支えてくれた。
「そんなに飲んでたか? おまえ」
「日中の暑さにやられた、かなー」
「だから、暑い、って言っただろう。若者でもほどほどにしておけよ」
「酔っ払ってるせいかなー」
「は?」
「らしくもないこと色々考えちゃった」
 焼の足取りがあまりにもふらふらとしているので、京一郎が気を利かせてタクシーを拾いにいった。むにゃむにゃ言っている焼を道端に座らせた火村は、
「何を考えてたって?」と焼に問う。
「全部、一瞬なんだなーって……。普通に生活してて、自分が呼吸してることなんか、意識しないじゃないですか。心臓が鼓動を打ってるってことだって……」
「そうだな」
 呂律は回っていなかったが、意外に意識ははっきりしている、と焼は思った。しかしこんならしくもない話をしてしまうあたり、自制心はなくなっているのかもしれない。
「音楽と一緒で、人間の命なんて一瞬なんだなー、とかさ……。そんなこと意識もしないで、どんどん命をすり減らしていくんだ……。音楽って、自分が生きている一瞬を確かめるみたいな行為だ……」
「おまえもまだ若いんだから、そう色々と考えずに惰性で生きても良いんじゃないのか?」
「そうかもしれないっすね」
 その一言で少し気が楽になった。
 瞬きをするような刹那に、突然命を奪われた両親のことがずっと頭に引っかかっていた。何か、一瞬でも無駄にしてはいけないような強迫観念に捉われるようなことが、たまにあった。
「生き急ぐなよ」
 火村は言った。
「生き急ぐ?」
「あんまり気に病むな、って言ってるんだ。外野の俺が言うのも、無責任だけどな」
 焼はにっこり笑った。「ありがと、火村さん」


 黄色いタクシーが二人の前で停車する。京一郎と、三人で乗り合わせてホテルへ帰った。
 遊びすぎてくたくたになった身体をベッドに投げ出すと、すぐに眠気が襲ってきた。焼ほどのはしゃぎっぷりではなかった京一郎はまだ多少体力が余っていると見え、火村と酒のつづきをやっている。焼も混ざりたかったが、睡魔はいかんともしがたかった。
「もう寝てるわ」苦笑混じりの火村の声を、まどろみの中で聞いた。「神崎も適当に寝ろよ。明日になりゃ回復するぜ、桐生の奴。付き合わされるだろうから覚悟しておけよ」
「そういう火村さんが付き合ったらどうですか。なんかあいつ、火村さんに特別なついてるみたいだし……」
「そうだな……。明日は連れ回されてやるか」
 よっしゃ、と焼は思った。明日は嫌っていうほど火村さんを連れ回して、それから……
 あれこれと観光プランを練っているうちに、焼は眠りに落ちてしまった。
 その夜、何か懐かしい夢を見た気がしたが、誰が登場したかは良く覚えていなかった。ニューヨークのダウンタウンが舞台だったことだけは確かである。


Fin.




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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■桐生 焼
 整理番号:4782 性別:男 年齢:17歳 職業:高校生アルバイター、トランスのギター担当

【NPC】

■火村 義一
 性別:男 年齢:29歳 職業:大学院生

■神崎 京一郎
 性別:男 年齢:18歳 職業:高校生

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■         ライター通信          ■
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 はじめまして、雨宮です。
 この度はニューヨーク旅行シナリオにご参加下さいましてありがとうございました! マシントラブルが重なりに重なってこんな時期のお届けになってしまいましたことをお詫び申し上げます……。
 少しでもニューヨークの雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。焼君は、ニューヨークのノリにぴったりのタイプだなーと密かに思っております。きっと世界中のどこへ行っても、持ち前のノリの良さと才能でたくさん友達を作ってしまうんでしょうねぇ。一見した明るさとは相反する過去がとても魅力的で、楽しく執筆させていただきました。
 NPCのご指定をいただけて嬉しかったです。また何かの機会にご一緒できたら良いですね。
 それでは、今回はどうもありがとうございました!