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<東京怪談・PCゲームノベル>


具現化協奏ファントムギアトルーパー――testee2

 ――燦燦と輝き照り付ける陽光。
 雲一つ見当たらない澄みきった青空。小波の音と共に揺れる紺碧の水面。ジリジリと熱を帯びた気温と焼ける砂浜――――
 歓声を響かせながら幾つもの足跡を残して砂浜を駆けて行くのは少年少女達だ。はしゃぐ声が、時折流れて来る心地良い潮風に運ばれて行く。
 ここは貸し切り状態の楽園そのものだった‥‥。

■testee2:臨海学校の中で
 ――櫻紫桜はビニールシートに腰を降ろし、読書を嗜んでいた。
 文武両道をモットーにしている彼は書物を手放さない。長めの黒い短髪を潮風に揺らし、文庫本に鋭い茶色の瞳を走らせていた。
 ふと耳にパシャパシャと水面を弾く音が飛び込む。集中していなかった訳ではないが、紫桜は端整な風貌の中に精悍さを漂わす顔をあげた。
 瞳に映ったのは一生懸命泳ぎ捲る少女の姿だ。波に逆らうかのように、何度も何度も横に往復を繰り返している。さらがら競泳選手のハードトレーニングの勢いだ。
「あれは確か、同じクラスの‥‥」
 ――女子生徒のメイドだ。
 何とも言えない表現だが、選手さながらに泳ぐ青い髪の少女は、普段メイド服に身を包むファルファである。彼女は満足したのかゆっくりと浅瀬へと歩いて来た。陽光に肌を伝う雫がキラキラと輝き、しっとりと髪を濡らした娘は、あどけない風貌に妖艶な色香を漂わせる。
「‥‥楽しいですか?」
 そのまま陸へとあがったファルファに、紫桜は何気なく声を掛けた。少女は無表情のまま赤い瞳を少年へと流す。
「‥‥はい、とても楽しんでおります」
 ――いや、とてもそうには見えない。
「そ、そうですか、それは良かった」
「‥‥あなたは、マスターと同じクラスの‥‥櫻紫桜でございますね?」
 ――いきなり呼び捨てですか‥‥。
「えぇ、確かに俺はファルナさんと同じクラスの生徒ですよ。名前を覚えてくれていたとは意外ですね」
「‥‥いえ、マスターと同級生の方を認識するのは役目の一つですから」
「そうですか‥‥。それより、どうして一人で?」
 苦笑しながらも会話を繋げた。
「‥‥アチラは男の方が煩かったので、静かな場所で楽しんでおりました」
「なるほど、本当に楽しんでいたのですね」
 男子生徒の気持ちも分からなくはない。ファルファは容姿も良ければスタイルも抜群だ。更に彼女の幼さの残る風貌は、どこか無防備な雰囲気を与える。
「‥‥何を見ておられます?」
「いや、失礼。何でもありません」
「‥‥櫻は泳がないのでございますか?」
「さっきまで泳いでいました。今は休んで読書していたのです。もう暫らくしたら海中稽古の予定ですけどね」
「‥‥海中、稽古?」
 口調は半信半疑なものだが、相変わらず少女は無表情だ。
「古武術の型の稽古です。水の抵抗が効果的な鍛錬になるのですよ」
 紫桜は柔道・合気道・古武術の使い手である。彼ほどになると稽古も必要ない訳だが、日々の鍛錬が己を磨くと信じ、怠った事がない。
「‥‥そうでございますか。‥‥!!」
 刹那、突然一帯に少女の悲鳴が響き渡った。
「‥‥マスター。櫻、それでは失礼いたします」
 悲鳴の元へとファルファは駆け出した――――。

●男子高等部の青春
「おい櫻、どこ行くんだよ?」
 夕食を済ませ、部屋で読書を嗜んだ後、すっくと立ち上がった紫桜に、同室の生徒が訊ねた。少年は上着に袖を通しながら顔を向ける。
「ちょっと、稽古をして来ます」
「はぁ? 肝試しまで戻って来るのか?」
「‥‥肝試し、ですか? 参加予定はありませんが」
 素っ頓狂な声をあげる生徒に、紫桜は惚けた表情で返した。尚も少年は再確認させる。
「なに言ってんだよ。俺達は高校生だぜ? 今夜の肝試しは女子と一緒なんだぜ? 夜の海岸だぜ? あばんちゅーるだぜ?」
 紫桜は端整な風貌に笑みを浮かべる。
「俺はいいですから、皆で楽しんで下さい。それじゃ、くれぐれも先生達に見つからないよう祈ってますよ」

■習慣が呼び起こした運命
 ――真夜中の海岸
 少年は一人、月明かりに照らされながら躍動していた。
 硬い動作の中で気合と共に突きを繰り出し、半歩踏み込むと蹴りを放った。紫桜のバックに映る荒れ狂う大波が迫力を増しているようだ。
 彼はいたって普通の高校生である。頭の回転は早いものの、物静かで飛び抜けて話題にあがる事は少ない。ただ、幼い頃より柔道・合気道・古武術を学んでおり、今もこうして鍛錬に汗を流している事実も、あまり知られていないだけである。
「もし?」
 紫桜が気合と共に肘打ちを叩き込んだ時だ。
 切ないような女の声が背後から聞えたのである。波の音に交じり、ポタリポタリと雫が零れる音も聞えた。彼は振り返らず鋭い視線で背後を警戒する。
「どなたですか? こんな夜中に」
「少しの間だけ子供を抱いていてくれませんか? 海水で服が濡れてしまい、絞りたいのです」
 哀願するような声だった。並の男なら容易く振り向いてしまうかもしれない。
 ――どうしますか‥‥。
 紫桜は迷った。騒動は水の滴る美人が中心なら、動けなくさせて津波で攫ったとも考えられる。ならば振り向かないのが得策だ。しかし、このまま立ち去っても意味はない。
 ――ドサッ!
 砂浜に何かが落ちた音がした。再び女の声が響く。
「あぁ‥‥寒い‥‥このままでは身体が凍えてしま‥‥」
 ――今のは彼女が膝を付いた音ですか?
 これだけ頼んでも振り向かない彼に諦めたのだろうか。声は途絶えたまま静寂が闇に包まれた。いやな汗が頬を伝う。
 ――いなくなったのですか? 諦めた?
 釈然としない気持ちがした。自分には霊を見る力があるというのに、このまま警戒した為に、救う事も訳を聞く事も出来なかったのだ。
「でも‥‥俺には、それ以上の事は出来ないのです。許して下さい」
 少年が詫びながら肩越しに背後を振り向く。視界に映ったのは、目と鼻の先にある女の白い顔だ。目元まで伸びた黒髪はしっとりと濡れており、絶え間なく雫を滴らせ、憂いを帯びた冷たい瞳が交差した。白い衣服はタップリと水分を含み乱れており、白い肢体を透けさせて妖艶だ。美女は切なさに甘い色を含んだ声で口を開く。
「聞えているではございませんか。さぁ、前を向いて子供を抱いて下さいまし。叶えてくれるなら、私にできる事を何でも致しましょう」
 紫桜は催眠術にでも掛かったように、ゆっくりと踵を返した。美女は嬉しそうに厚手の布に覆われた塊を差し出す。その笑顔は優しさの中に色っぽさを漂わせた。これで断われる男はいないだろう。少年はゆっくりと首を横に振る。
「‥‥すみません。俺には見えているのです」
 ――あなたの背後に浮かぶ正体が。
 紫桜には見えていたのだ。美女は幻であり、本体が女の風貌を模った頭部のメカニカルな大蛇である事を。
 刹那、妖機怪濡れ女は体内から塊を放った。恐らく幻が男に赤ん坊を抱かせるタイミングで放たれるものだろう。塊は変容し、人間の赤ん坊のような形体となり、小さな手を広げて飛び込んで来る。
 少年は素早く動き、紙一重で躱して近付いてゆく。
「大きい!」
 妖機怪濡れ女に向けて走った紫桜は動きを止めた。顔だけで4mはあり、トグロを巻いているが体長は300mはあるだろうか。
「‥‥いくら『気』で戦ったとしても、これでは‥‥なにッ!?」
 刹那、耳に飛び込んだのは大きな波飛沫の音だ。少年は咄嗟に身体を向けると、巨大な水牛を模った機械の獣が映った。赤い双眼が紫桜を射抜く。
「‥‥身体が、動かない!? そういう事、ですか」
 ――牛鬼には、凶眼という能力がある。
 じっと見つめられた人間は死ぬとか、影を飲まれ黒焦げになったという話が伝わっているのだ。これを『影を飲まれる』と言ったそうである。
 様々な説の中で、凶眼が相手の影を縛り、身動きを止めるとしたら――――。
 金縛り状態と化した紫桜に、妖機怪牛鬼の大きな口が迫る!!
 突如、射出音と共に牛鬼の背中に黒煙があがった。
「‥‥! 動ける、あれは?」
 少年の瞳に映ったのは、鋭角のフォルムに包まれた鋼鉄の巨人だ。尚も5本の指からマズルフラッシュを迸らせながら、紫桜の傍に着地した。砂飛沫が一気に噴き上がり、彼は腕を顔に寄せ、砂が目に入るのを遮る。
『もたもたしないで、乗るの? 乗らないの?』
 巨人から聞えたのは女の声だ。淡々としており、落ち着きがあると感じた。
「‥‥乗せて下さい! 俺には敵が見えます!」
 返事の代わりに巨人の背中からタラップのようなものが降りて来る。
『急いで‥‥振り落とされても責任もたないわ』
「振りおと‥‥? うあッ!」
 前触れもなく巨人が動き出し、紫桜は強かに背中をタラップに打ち付けた。左右上下に身体が振られ、彼は必死に手摺にしがみ付く。
「乱暴ですね。振り落とされないようにって、こう言う事ですか」
 それでも少年はタイミングを合わせてタラップを登った。何度も落ちそうになりながら‥‥。
「ハァハァ‥‥こ、これは‥‥」
 そこは複数の座席のある機械の部屋だった。例えるなら、ゲームセンターの横並びになった対戦筐体が似ているだろうか? 二本のスティックが突き出しており、その周りには複数の赤や青色のスイッチやレバーが覗えた。足元にはレースゲームで目にするアクセルとブレーキに酷似したものが見える。
 そして、シートの一つに、リボンを髪に結った女が座っていた。小柄な身体を左右に揺らし、細い腕がスティックを操っている。
「適当に座ってて! それから、邪魔しないで」
「‥‥はい。!? (女の子?)」
 隣の席に辿り着いた紫桜が顔を覗き込むと、懸命に手足を動かしているのが、未だ幼さの残る少女と知り、驚愕に瞳を見開いた。風貌で年齢が分かる訳ではないが、13才くらいだろうか。
「‥‥気が散るわ。こっち見ないで」
「申し訳、ありません」
 ――気迫に押されている? 俺が?
 この少女にどんな生き様があったか知らないが、紫桜は気付いた事を訊ねる事にした。
「‥‥あの、差し出がましいようですが‥‥」
「‥‥なに?」
「狙いがズレています。もしかすると‥‥」
 少女はレーダーを見ながら攻撃していた。なぜ視界に映る敵を確認しないで攻撃するのか? 導き出される答えは――――
「見えないのですか?」
 僅かに少女の眉が動いた。マズイ、助けて貰ったのに失礼だ。
「あ、気にしないで下さい。俺の力は役に立たないだろうとパイロットに立候補しなかったのですから‥‥あなたには、きっとパイロットに相応しい力があるのでしょう」
 紫桜は顔色を曇らせ苦笑する。しかし、少女に彼の顔を見る余裕は無いようだ。否、見るつもりがないのか。
「なら黙ってて! もう一体は‥‥くっ!」
 鈍い振動がコックピットを襲った。恐らく妖機怪の攻撃を受けたのだろう。少女は別のレーダーに顔を向けた。どうやら探知系が違うようだ。長期戦だが、パイロットに選出された娘なら勝てるだろう。しかし、今ならもっと早く終わらせる事が紫桜には出来る。
「9時の方向です! そこです!」
 僅かに訝しげな表情を浮かべたものの、少女はサポートに応じて操縦した。度々コックピットを揺らした敵の攻撃も、命中しないようになっている。少年は瞳を研ぎ澄まして口を開く。
「俺の力で刀を出現させる事が出来ます! 俺が持てば木刀並の切れ味でしかありませんが、他人が持つと鉄だろうが霊だろうが蒟蒻だろうが切り裂く事が出来ます。‥‥使ってみませんか?」
「‥‥皮肉な力ね。つまり、あなたが具現化させて操縦しても効果は木刀なみ‥‥って事ね」
「‥‥仰る、通りです」
「何でも切れるのね?‥‥いいわ。なら、使ってあげる」
「分かりました。巧く使って下さいよ!」
 紫桜は操縦桿を握り、右腕に集中した。スティックが青白く放電すると共に、巨兵の手に日本刀を模った剣が出現する。少年は意識を刀の制御に集中し、操縦を少女に委ねた。刹那、彼女が驚愕に瞳を見開く。
「何をしたの?」
「‥‥言いましたよ。巧く使って下さいと」
 整った精悍な顔を向け、紫桜が不敵な笑みを浮かべ、続ける。
「俺は『鞘』なんです。この刀は周囲の気を糧に切れ味を増す、言って見れば、自動辻切り機なのです。あ、ご心配なく、気を糧にすると言っても、影響は多分ありませんから」
「多分って!? くッ!」
 少女は歯を食い縛って操縦する。それは正に釣りで大物が釣れたような雰囲気と酷似していた。両手を使いたいが、生憎左手は旋回に必要だ。
「そのまま真っ直ぐです! 刀を横に構えて! 今です!」
 横薙ぎに刀身を振るうと、妖機怪濡れ女の口から尻尾まで閃光が疾った。まるでバターでも切ったように、何の抵抗もなく妖機怪は真っ二つにされたのだ。背後で断末魔を響かせ、光の粒子と化して失散する中、巨兵はそのまま駆け、牛鬼へと切先を向ける。
「奴はかなり大きいです」
「当てたマーカー弾の範囲で分かるわ!」
「あれは相手を金縛りにしますから、横から上段斬りにしましょう」
 紫桜の提案に、少女は僅かに微笑んだ。
「あなたが受けていた攻撃ね」
「‥‥見破れなかったのは認めます。俺の鍛錬不足ですよ。右に旋回して下さい」
 少年の瞳には、巨兵を捉えようと動き回る牛鬼のシルエットが浮かんでいる。時折、大きな口から火炎を放射し、水面が燃えた。
「‥‥あなた名前は?」
「? こんな時に何を‥‥」
「‥‥呼び難いの」
「櫻です。櫻紫桜‥‥あなたは?」
「私は‥‥ササキビ・クミノ。櫻さん、次は?」
「ササキビさん、さっきと同じように横薙ぎに!」
 少年の瞳に捉えたのは牛鬼の大きな足だ。倒すなら動きを止めるが安全。視界に巨大な機械の柱が迫り、紫桜の指示で振るわれた切先の残像が、光の粒子を舞い散らせた。成功だ。機体を旋回させると、大きく体勢を崩した妖機怪が捉えられた。
「このまま跳んで上段斬りです!」
 巨兵が跳び、そのまま太刀を構えて落下する中、閃光と共に牛鬼の胴体が二つに裂けた。ゆっくりと割れてゆく巨体は幾つモノ光の粒子と化し、同じように失散する。後から小さな飛沫をあがり、数名の男が浮かんでいた。
「やりましたね! ササキビさん」
「‥‥そうね。櫻さん、これからも乗るの?」
 紫桜は言葉を返せなかった‥‥。未だ迷っているのかもしれない。

●格納庫にて
「皆様、お疲れ様でしたわ☆」
 胸元で手を組み、鎮芽は満面の笑みと共に霊駆巨兵ファントムギアトルーパーのパイロット達を迎えた。皆、後部ハッチを開くと次々と咳き込んだり、顔を顰めたり、リアクションは様々だ。何故なら機体は砂浜や浅瀬で戦いを繰り広げた為、砂と潮に塗れていたのである。
「まあ☆ 大変でしたわね。後でFGTも洗ってあげなきゃですわ」
 あまり大変そうに聞えない。
「それは兎も角として、まあ☆ 沢山集まってくれましたのね♪」
 瞳を輝かせてパイロット達に視線を流す。ずらりと並ぶ人数は11名の生徒に教師だ。
「では、折角ですから自己紹介でもしませんこと?」
 両手を合わせ小首を傾げての笑顔に、小麦色の肌が健康的な青年が苦笑してみせる。
「まあ、共に事態を収めた仲間だからな。俺からいくぜ? 藍原和馬だ。知ってる奴もいるだろうが、麗刻学園の体育教師を務めている。ま、ヨロシク頼むわ」
 次に口を開いたのは、切れ長の瞳が落ち着いた雰囲気を醸し出す中性的な女だ。
「シュライン・エマよ。外国語講師を務めているわ。ヨロシクね」
「では、教師ですので、わたくしが」
 丁寧で何処か、おっとりとした口調の和服姿の淑女がお辞儀する。眼鏡の奥に浮かぶ瞳は優しげだ。
「古典補助教諭の天薙撫子と申します。皆様、宜しく」
「えーと、撫子お姉様とエマ先生に藍原先生‥‥これで先生方は終わりね☆ わたくしから始めます♪」
 長い黒髪の美少女が手をあげる。
「高等部の榊船亜真知ですわ☆ 皆様、頑張りましょうね♪」
「次はあたしでいいかな?」
 茶髪のショートヘアを掻きながら、背の高い少女が微笑む。
「あたしは高等部の月見里千里だよ。誕生日は8月12日。身長166cm、体重50kg。3サイズは秘密ね☆ ゲームが好きで、コスプレが趣味。あのパイロットスーツはあたしがデザインしたんだ♪」
 気に入ってくれた? と訊ねるものの、数名は苦笑いだ。千里は、「ま、いいか☆」と笑うと次へバトンを回す。流石に年頃の女には抵抗があるかもしれない。
「レディファーストよね。クミノちゃん、どーぞ」
「私は、別に‥‥」
 流れるような優麗な黒髪に、赤いリボンをあしらった小柄な少女が溜息を吐く。
「‥‥ササキビ・クミノ。中等部よ‥‥よろしく」
「‥‥えっと、それじゃ僕かな」
 簡単な挨拶に終わりなのかと戸惑いながら、灰色に近い銀髪のショートヘアの少年が口を開く。
「尾神七重です。あ、中等部です。よろしくお願いします」
 これで前回の妖機怪小豆荒いの時から参戦したメンバーの紹介が終わった。
「次、誰から? あたしから始めよっか?」
 丸眼鏡を掛けた少女が元気な声を響かせた。彼女が顔を左右に向ける度に、長い三つ編みの後ろ髪がブンブンと揺れる。
「お先によろしくてよ」
「私はマスターの後で構いません」
「レディファーストで来たなら、俺は一番後で構いません」
 三人の少年少女が先を譲った。
「そう? こほんっ☆ 銀の螺旋に勇気を込めて、回れ正義のスパイラル! ドリルガールらせん、ご期待通りに只今見参! ドリルガールこと銀野らせんよ☆ ヨロシクね♪」
 大きなドリルを召喚し胸に抱くと、らせんはウインクして微笑んで見せた。‥‥なるほど、確かにドリルガールだ。
「では、わたくしですね〜」
 ニッコリと微笑んだのは、金髪の少女だ。ほがらかな雰囲気を漂わせ、何処かノホホンとした印象を与える。
「ファルナ・新宮と申します〜☆ キャッチフレーズは、いつも笑顔でマイペースにです〜♪ 宜しくお願いしますね」
「私は護衛メイド・ファルファと申します。マスターであるファルナ様に仕えております。皆様、お見知り置きを」
 青い髪のシャギーヘアの少女が丁寧にお辞儀する。確かにメイド服を纏った彼女は、護衛は兎も角、紛れも無くメイドだ。
 最後に残った、整った風貌に精悍さを漂わす少年が、組んでいた腕を下ろして背筋を張る。
「俺は櫻紫桜です。偶然、ササキビさんに乗せてもらっただけの、普通の高等部生徒です」
「‥‥普通? 紫桜さん、妖機怪が見えてたでしょ?」
 クミノが冷たい視線を流してポツリと洩らす。すると話に割って入ったのは、和馬だ。
「妖機怪が見えるのかよ! 俺と同じ能力じゃん。謙遜するんじゃねーぞ? 少年は、自己主張も大事な勉強だからよ」
「勉強、ですか。覚えておきます」
 総数11名の挨拶が終わると、鎮芽が締め括る。
「頼もしい方々ですわ☆ もっともっと増えると部隊編成が出来て楽しそうですわよね? 次もお願い致しますわ♪」
 結局、新たな情報は見つからなかったが、戦いは始まったばかりである。妖機怪とは? 作られる目的とは何なのか?
 ――不明な点は多々ありますが、戦い続ける事で真相に近付けると信じています――――。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/担当】
【5453/櫻紫桜/男性/15歳/高等部学生】
【0165/月見里千里/女性/16歳/高等部学生】
【1533/藍原和馬/男性/920歳/体育教師】
【1166/ササキビ・クミノ/女性/13歳/中等部学生】
【2557/尾神七重/男性/14歳/中等部学生】
【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/外国語講師】
【0158/ファルナ・新宮/女性/16歳/高等部学生】
【0328/天薙撫子/女性/18歳/国語・古典補助教諭】
【1593/榊船亜真知/女性/999歳/高等部学生】
【2885/護衛メイド・ファルファ/女性/4歳/完全自立型メイドゴーレム】
【2066/銀野らせん/女性/16歳/高等部学生】

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■         ライター通信          ■
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 この度は御参加ありがとうございました☆
 はじめまして♪ 切磋巧実です。
 数多くの物語に参加されておられるPC様を演出させて頂くのは、なかなか緊張ものでしたが、いかがでしたでしょうか?
 なかなか面白い能力を持っていますね。巻き込まれ型希望との事でしたので、ダイレクトに巻き込んでみました(笑)。打撃に通常の何倍もの力を出せるなら、具現化も可能でしたので、敢えて隠し能力を演出させて頂きました事を御了承下さい。後は、文武両道をモットーにしている事を演出し、読書しているシーンがありますが、イメージに相違なければ幸いです。
 迷うような感じになっているのは、少年主人公のセオリーです(笑)。
 他のPCの活躍と視点が違っていたりする部分もございますので、お時間があれば読んで頂けると嬉しいかも。
 楽しんで頂ければ幸いです。よかったら感想お聞かせ下さいね。
 それでは、また出会える事を祈って☆