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<東京怪談・PCゲームノベル>


具現化協奏ファントムギアトルーパー――testee2

 ――燦燦と輝き照り付ける陽光。
 雲一つ見当たらない澄みきった青空。小波の音と共に揺れる紺碧の水面。ジリジリと熱を帯びた気温と焼ける砂浜――――
 歓声を響かせながら幾つもの足跡を残して砂浜を駆けて行くのは少年少女達だ。はしゃぐ声が時折流れて来る心地良い潮風に運ばれて行く。
 ここは貸し切り状態の楽園そのものだった‥‥。

■testee2:臨海学校の中で
「おいコラ、ちゃんと準備運動しろよ! 足攣って溺れても知らねぇぞ!」
「先生も一緒に泳ごうよぉ」「駄目よ、先生は私と泳ぐの!」
 体育教師の彼は女子生徒からの人気が高い。小麦色の精悍な風貌、がっしりとした体格、身長も高く、男子に厳しい割りに女子には優しい。気さくな性格は顔と口調からも窺えるものだ。
「あー分かった分かった! その前に準備運動だ。ちゃんとやったら遊んでやるぞ!」
 中等部の女子生徒達は、きゃあきゃあと騒ぎながら、砂浜を蹴ってゆく。そんな光景が陽光に照り返し、やけに眩しく感じた。
「しっかし、なんだかなあ。あんなに堂々とぶっちゃけて良かったのかね?」
 頭の後ろに両手を回し、独り言のように彼は呟く。先日の校内公表の件だ。幸い、大きな騒ぎになる事は無かった。参加は自由意思という事もあり、パイロット志願する者と普通に学園生活を謳歌する者の間にトラブルが無かったからだ。しかし、教師が見ていられる生徒の姿は、ほんの数分から数時間が限界。子供達の小社会は教師の知らない事の方が多い。
 ――まあ、いいか。‥‥ん?
 周囲を見渡す彼の瞳が止まった――――。

「おい? 月見里だったか?」
 月見里千里が深い溜息を吐く中、不意に飛び込んで来たのは男の声だ。聞き覚えはある。ショートヘアの少女はゆっくりと顔を向けると、小麦色の肌が陽光によく似合う精悍な風貌の男が瞳に映った。
「藍原、先生」
「よぉ、名前は覚えてくれてたみたいだな」
「はい‥‥それより何か用ですか?」
「いや用って程じゃないけどよ。折角の海だぜ? 月見里は泳がないのか? 水着忘れたのか?」
 確かに千里はビニールシートの上で膝を抱えており、細い身体を包むのは軽装の私服だ。あれこれと詮索する藍原和馬に、少女は不機嫌そうに片眉を跳ね上げる。
「気にしないで下さい。担任には許可してもらっているんですから」
「まあ、担任が良いって言ってるなら仕方ないが‥‥臨海学校だぜ? それとも具合でも」
「藍原先生?」
 声は彼の背後から聞えた。咎めるようなキツイ感じの声だ。和馬が視線を流すと、瞳に映ったのはシンプルなワンピースの上にパーカーを羽織った、中性的風貌の女だった。腕を組んで仁王立ち。切れ長の青い瞳が男を射抜く。
「エマ先生‥‥な、何か?」
「何かじゃありません! 体育教師なら準備運動させたり、事故が無いかもっと周りを見るべきじゃありませんか? 月見里は私が見ますから大丈夫です」
 やたらと大丈夫を強調した声だった。これは退散した方が良さそうだ。茶髪をポリポリと掻いてバツが悪そうに周囲を見渡す。
「分かりました分かりました、月見里はエマ先生にお任せしますよ。じゃな、気が向いたら俺に相談してくれよな」
 軽く手を振って和馬はその場を離れた。しかし、行き先はまたしてもビニルシートで腰を降ろす生徒の元だ。見れば、ハーフパンツ風の膝までの長さの水着にフード付半袖パーカーを羽織った少年ではないか。灰色に近い短めの銀髪がサラサラと潮風に揺れていた。
「ったく、どいつもこいつも、パラソルの下に潜りやがって、太陽と海が泣いてるぜ。お」
 ――おい! 尾神。
 そう口に出そうとした矢先である。和馬の視界に映ったのは、流れるような銀髪を揺らして横切る少女だ。
 ――鎮芽‥‥グリーペル‥‥。
 彼等を霊駆巨兵へと導いた少女。学園の最高管理者――――。
「先客じゃ仕方ねぇな。青春を邪魔すりゃ馬に蹴られちまう」
 ポリポリと頬を掻いて微笑むと、生徒達が自分を呼ぶ声が飛び込む。
「せんせーい! こっちこっち〜!」「泳ぎ教えてくださーい!」
 柔らかそうな肉体に、一生懸命色気を注いだ水着姿の少女達が手を振っている。未だビキニはセクシーに見えないものの、可愛らしさの中に色香がほんのりと漂う。オマセさんは何処にでもいるものだ。
「‥‥しゃーねぇな。おう! 直ぐ行くから待ってろ!」
 和馬は砂浜を蹴って駆け出した――――。

●先生達の予定
「どうやら亜真知様は出掛けたようです」
 夕食が終わり、暫らく時間が経過した後、ドアを開けて部屋に入って来たのは撫子だ。集まっているのは3名の教師である。彼女の話を聞き、和馬が口を開く。
「青春だね〜。俺も学生時代に戻りてぇなぁ」
「‥‥やはり学園側で、もっと管理した方が安全だったかもしれないわね」
「あまいなぁエマ先生。管理されればされるほど燃えるもんだぜ?」
「いずれにしても、生徒達が規則を破るのは良くありません」
「それが青春ってもんだぜ、撫子先生」
 シュラインは、当たり前のように青春を語る、小麦色の青年に溜息を吐く。
「そんな歪んだ青春を称賛されてもね‥‥」
「分かってるって。この海岸に恐らく出現するだろう存在だろ? 生徒達を危ない目に合わせる訳にゃいかねぇからな」
「やはり、妖機怪でしょうか?」
「可能性は高いわ。多くの人に目撃されていない事から、出現時刻は遅い筈。‥‥そうね、分担して部屋を見回りましょう」
 中性的な女は腕に虫除けを擦り込み、行動に備える。腰にはしっかり虫除け用の音波発信機が付けられていた。

■肝試しの中で
「はぁ? 肝試しだと?」
 素っ頓狂な声をあげたのは和馬だ。傍にはシュラインや撫子といった教師達が立っており、対面して顔色を曇らせているのは肝試しに参加した生徒達である。生徒の一人に目線を合わせ、眼鏡を掛けた和服美女が穏やかに口を運ぶ。
「それで、もう肝試しに行った子はいるのですか?」
「‥‥尾神君と、銀野さん。後から榊船さんと‥‥」
「亜真知様!?」
 生徒の小さな声に、撫子は上擦った声をあげる。
「亜真知様が肝試しに? わたくし、行って来ます!」
 慌てた様子で駆け出した。そんな様子を精悍な風貌の体育教師が眺め、溜息交じりに呟く。
「歩幅の取れない和服で転ばねぇと良いがな」
「他には? 零ちゃんとか行ってないの?」
「‥‥あの娘は来てないです。肝試しなんてやめた方が良いとか言ってました。後は、ファルナさんと‥‥あれ? メイドさんも行ったのかな?」
「‥‥メイドさん?」
 そう言えば、何故かメイドを従えた金髪の少女がいた。それは兎も角、疑問点を感じた外国語教師が切れ長の青い瞳で射抜く。
「どうして、そんなにバラバラに? 戻ってから次のペアが行くのではないの?」
「‥‥先生に見つからないように手早く済まそうと思って‥‥距離も長いし、人数も多かったから‥‥」
 シュラインは溜息を吐いて、腰に手を当てた。七重は霊駆巨兵を呼び出せるし、問題は無いだろう。しかし、もし、他の生徒が騒動に巻き込まれれば‥‥。
「まあ、男女ペアなら大丈夫かしら?」
「分からないぜ? 若い少年は食べ頃じゃねーの? 俺は探しに行って見る。エマ先生は生徒達を頼む!」
「ええ、藍原先生‥‥何かあったら携帯に」
 青い瞳に不安の色はなく研ぎ澄まされていた。意味を理解した和馬は二ッと歯を見せる。
「ああ、分かってるぜ★」

 月明かりの中、懐中電灯を持って和馬は疾走した。しかし、砂浜を歩く生徒達に遭遇する事はない。男は焦った。能力者といえど、少年少女だ。強い力を持つ妖怪なら、最悪な状況も考えられる。
「ちっきしょう! どこまで行ったんだ? まさか懐中電灯の明かりで叱られないよう隠れてるんじゃねぇだろうな?」
 浜辺一帯に精悍な顔を向けるものの、真夜中の砂浜は静寂と闇に包まれたままだ。
「埒が空かねぇ。真夏の怪談か‥‥狼男が現れても構いやしねぇか」
 不敵な笑みを浮かべる和馬。獣人の血を受け継ぐ彼が、変身してしまえば浜辺の往復なぞ、どうという事はない。男は瞳を研ぎ澄まし、奥歯を食い縛った。
 ――その時だ。
「もし?」
 切ないような女の声が背後から聞えたのである。波の音に交じり、ポタリポタリと雫が零れる音も聞えた。和馬は振り返らず研ぎ澄まされた視線で背後を警戒する。
「おいおい‥‥生徒の悪戯かぁ?」
「少しの間だけ子供を抱いていてくれませんか? 海水で服が濡れてしまい、絞りたいのです」
 哀願するような声だった。並の男なら容易く振り向いてしまうかもしれない。甘い響きの声は美しい若い女をイメージさせる。和馬とて人間の女では無いと知りながらも、振り向きたい衝動に駆られていた。青年はポケットを弄り、予め記録して置いた携帯電話のアドレスにメールを送る。

 ――濡れ女と遭遇。
 数分後に霊駆巨兵を呼ぶ――――

「そりゃ‥‥お困りのようだな?」
「そうでございましょう? さぁ、前を向いて子供を抱いて下さいまし。叶えてくれるなら、私にできる事を何でも致します」
 和馬はポケットを弄り、懐中時計のようなデザインの装置に指を掛ける。鎮芽が予め渡したGPSのようなものだ。スイッチを押せば電波により、千里の現在地点に近い場所に霊駆巨兵が届けられるという話である。
 ――ドサッ!
 砂浜に何かが落ちた音がした。再び女の声が響く。
「あぁ‥‥寒い‥‥このままでは身体が凍えてしま‥‥」
 ――今のは女が膝を付いた音か?
 男は更にポケットを弄り続ける。指に当る感触――――。
「分かった分かった。立ち上がってくれ‥‥じゃねーと」
 和馬はスーツを翻しながら一気に振り向きながら、胸ポケットに忍ばせた腕を前に突き出した。二本の指に挟まれている細長い紙は、動きを封じる呪符だ。
「なにぃッ!?」
 声の距離から推測すると、女の胸元に呪符は突き付けられ効果を発動する筈。しかし、男は険しく眉を顰めた。
 確かに女の振り向いた先にいたのだが、彼の叩き込んだ腕は、美女の身体を突き抜けていたのだ。哀しそうな瞳で、美女が和馬を見つめる。
「‥‥幻かよッ! ‥‥なるほどね、がっかりだぜ‥‥」
 一気に砂を蹴り、バックステップで飛び退くと、男は不敵な笑みを浮かべた。和馬の視界に映るのは女の風貌を模った頭部のメカニカルな大蛇の姿だ。
「本体みたぜ! 妖機怪濡れ女!」
 ポケットの中でスイッチを押し込む。

 ――霊波動確認 パイロット照合・藍原和馬
 霊駆巨兵ファントムギアトルーパーリフトアップ――――

 妖機怪濡れ女は体内から塊を放つ中、和馬は人間の赤ん坊のような形体と化す物体を躱しながら、肉迫する。デカイ! 顔だけで4mはあり、トグロを巻いているが体長は300mはあるだろうか。
「俺のサインだ! 受け取りやがれ!」
 臆する事なく、妖機怪濡れ女の胴体に呪符を叩き込む。しかし、効果は一瞬だった。再び長い胴体を滑らせ、和馬に迫る。
「デカイから効かねぇってのは無しだぜ! それとも機械仕掛けだからかよ!」
 刹那、砂浜が大きな山の如く盛り上がり、頭上から砂飛沫が降り注ぐ中、月明かりに照らされたのは鋼鉄の輝きだ。
「待ってたぜ! なにッ!?」
 和馬が体育座りをしている霊駆巨兵に向かった時だ。耳に大きな波飛沫の音が飛び込む。男は次に出現したモノに顔をあげながら、スーツの胸ポケットに腕を入れた。彼の瞳に映るのは、巨大な水牛を模った機械の獣だ。赤い双眼がスーツ姿の人物――の影を射抜く。
「なるほど、頭上を見上げるとは、おまえの現れる前兆の事か! なに!? 動けねぇだと!? (頭上を見上げたまま動かなくなってた?)」
 ――牛鬼には、凶眼という能力がある。
 じっと見つめられた人間は死ぬとか、影を飲まれ黒焦げになったという話が伝わっているのだ。これを『影を飲まれる』と言ったそうである。
 様々な説の中で、凶眼が相手の影を縛り、身動きを止めるとしたら――――。
「ちっきしょう‥‥やってくれるぜ」
 大きな口を開け、妖機怪牛鬼が迫る様を、瞳に映し続けた。汗が頬を伝う中、和馬は口元を歪ませる。
「藍原先生ッ!」
 聞き覚えのある声が飛び込んだ。忽ち、水面が暴れだし、牛鬼が悲鳴のような叫び声を轟かす。
「エマ先生ッ!!」
「もう、情けないわね。濡れ女に鼻の下を延ばしてた訳?」
「いい女だったぜ‥‥幻だったけどよ♪」
「‥‥幻?」
 駆け着けたシュラインが腕を組み、細い顎に指を当てる。
「妖怪濡れ女の正体は大きな大蛇で、美女の姿で騙すって話は確かにあるわね」
 女性が実在の人だとしたなら、敵に関しての何らかの情報得られるかもしれない。そう考えていたシュラインは溜息を吐いた。
「それより、聞えているだろ?」
「ええ、二体いるわね‥‥濡れ女と牛鬼かしら?」
 二人は妖機怪が警戒している内に、巨兵へと乗り込んだ。
「先ずは武器だな!」
 和馬が二本の操縦桿を握ると、霊駆巨兵は変容を開始した。光の中から姿を見せたのは、彼のワーウルフの変身能力により、変容を遂げたメカニカルなシルエットの半獣人と化した巨兵だ。盛り上がった肩まで太い腕をあげ、ファイティングポーズを見せる。
「俺を食おうなんざ10000000年早いんだよッ!」
「待って! 何か飛んで来るわ!」
 瞳を閉じたシュラインが、注意を促がす。次の瞬間、コックピットは鈍い衝撃に包まれた。和馬が顔色を変える。
「おい、こんなに動きが遅かったか?」
「違うわ! 何かもう一体からの攻撃を受けたのよ!」
 対峙しているのは牛鬼だ。ならば濡れ女が手薄になったという事か。
「あの妖怪は赤ん坊を投げ付けるのが攻撃だからな」
「赤ん坊を抱いた男の腕は、石のように重くなるというわ」
 ――マズイ!!
 一機の巨兵で対処できるものじゃない。
「おいおい! 牛鬼は口から火炎放射して来るぜ!」
「また音が聞えたわ! 躱して! あぁッ!」
 再びコックピットを襲う振動。刹那、室内は灼熱に包まれた。
「うあぁぁッ! タダでさえ暑い真夏に勘弁して欲しいぜ!」
「冗談言ってる場合じゃないでしょ! こんな所で、ローストは、願い下げよぉぉッ!」
『こちら千里です。これより支援に入ります』
 通信機から飛び出したのは少女の声だ。
「月見里か、助かったぜ! 生徒達を探していたら見初められちまってよ」
「藍原先生、惚気るのは構わないけど、状況を理解してるのかしら。千里さん、妖機怪がニ体いるの。どちらかお願いしていいかしら?」
『エマ先生? 分かりました。でも、あたしには敵が見えなくて』
「私がサポートするわ。藍原先生には直接見えるみたいなの」
『お願いします☆ 牛鬼と濡れ女ですよね?』
「御名答よ。それじゃ、濡れ女を頼むわね。妖機怪は赤ん坊の形をした物体を投げて来るらしいわ。微かな音で分かるけどね防げるならそうして頂戴」
『分かりました! 広域シールドを展開します』
 フッと安堵の笑みをシュラインは浮かべる。
「藍原先生、操縦を私に回して! 機体に音波を流して赤ん坊を振り落とすわ」
「できるのかよ?」
 顔を向ける和馬を、切れ長の青い瞳が射抜く。
「私達に害が無いとは保証できないわよ」
 選択肢はない。濡れ女の攻撃は千里が食い止めてくれるとしても、今の鈍い動きでは牛鬼の放つ紅蓮の洗礼を防ぐのは困難だ。
「‥‥やってくれ!」
「‥‥分かったわ、いくわね」
 操縦桿を握る絞め、シュラインが絶叫する。コックピットを小刻みな振動が包み込む中、巨兵は青白い波紋を全身に伝わらせた。ボトリボトリと、赤ん坊の形をした塊が砂浜に落下してゆく。
「‥‥終わったわ」
「よっしゃあぁぁッ! 水牛狩りだぜッ!!」
 鋼鉄の指に鋭い爪が生え、獣の牙が揃った大きな口を開いて、ワーウルフと化した巨兵が、妖機怪へ飛び掛かる。爪が切り裂き、牙が装甲に食らいつく。止めとばかりに繰り出した文字通りの鉄拳が牛鬼の頭部にメリ込み、そのまま腰を捻って奥へと叩き込むと、巨体は光の粒子と化して失散していった。
『終わったみたいです。そちらはいかがですか?』
 深い溜息を洩らす和馬の耳に、少女の声が飛び込む。
「おう! ご苦労さん。こっちも終わったぜ★」
「ありがとう。助かったわ」
『いえ、こちらこそサポート助かりました♪』
 和馬は巨兵の腕を千里の方角へ向けさせると、親指を突き出す。すると、彼女の駆る巨兵も、同じように親指を突き出して応えた。

●格納庫にて
「皆様、お疲れ様でしたわ☆」
 胸元で手を組み、鎮芽は満面の笑みと共に霊駆巨兵ファントムギアトルーパーのパイロット達を迎えた。皆、後部ハッチを開くと次々と咳き込んだり、顔を顰めたり、リアクションは様々だ。何故なら機体は砂浜や浅瀬で戦いを繰り広げた為、砂と潮に塗れていたのである。
「まあ☆ 大変でしたわね。後でFGTも洗ってあげなきゃですわ」
 あまり大変そうに聞えない。
「それは兎も角として、まあ☆ 沢山集まってくれましたのね♪」
 瞳を輝かせてパイロット達に視線を流す。ずらりと並ぶ人数は11名の生徒に教師だ。
「では、折角ですから自己紹介でもしませんこと?」
 両手を合わせ小首を傾げての笑顔に、小麦色の肌が健康的な青年が苦笑してみせる。
「まあ、共に事態を収めた仲間だからな。俺からいくぜ? 藍原和馬だ。知ってる奴もいるだろうが、麗刻学園の体育教師を務めている。ま、ヨロシク頼むわ」
 次に口を開いたのは、切れ長の瞳が落ち着いた雰囲気を醸し出す中性的な女だ。
「シュライン・エマよ。外国語講師を務めているわ。ヨロシクね」
「では、教師ですので、わたくしが」
 丁寧で何処か、おっとりとした口調の和服姿の淑女がお辞儀する。眼鏡の奥に浮かぶ瞳は優しげだ。
「古典補助教諭の天薙撫子と申します。皆様、宜しく」
「えーと、撫子お姉様とエマ先生に藍原先生‥‥これで先生方は終わりね☆ わたくしから始めます♪」
 長い黒髪の美少女が手をあげる。
「高等部の榊船亜真知ですわ☆ 皆様、頑張りましょうね♪」
「次はあたしでいいかな?」
 茶髪のショートヘアを掻きながら、背の高い少女が微笑む。
「あたしは高等部の月見里千里だよ。誕生日は8月12日。身長166cm、体重50kg。3サイズは秘密ね☆ ゲームが好きで、コスプレが趣味。あのパイロットスーツはあたしがデザインしたんだ♪」
 気に入ってくれた? と訊ねるものの、数名は苦笑いだ。千里は、「ま、いいか☆」と笑うと次へバトンを回す。流石に年頃の女には抵抗があるかもしれない。
「レディファーストよね。クミノちゃん、どーぞ」
「私は、別に‥‥」
 流れるような優麗な黒髪に、赤いリボンをあしらった小柄な少女が溜息を吐く。
「‥‥ササキビ・クミノ。中等部よ‥‥よろしく」
「‥‥えっと、それじゃ僕かな」
 簡単な挨拶に終わりなのかと戸惑いながら、灰色に近い銀髪のショートヘアの少年が口を開く。
「尾神七重です。あ、中等部です。よろしくお願いします」
 これで前回の妖機怪小豆荒いの時から参戦したメンバーの紹介が終わった。
「次、誰から? あたしから始めよっか?」
 丸眼鏡を掛けた少女が元気な声を響かせた。彼女が顔を左右に向ける度に、長い三つ編みの後ろ髪がブンブンと揺れる。
「お先によろしくてよ」
「私はマスターの後で構いません」
「レディファーストで来たなら、俺は一番後で構いません」
 三人の少年少女が先を譲った。
「そう? こほんっ☆ 銀の螺旋に勇気を込めて、回れ正義のスパイラル! ドリルガールらせん、ご期待通りに只今見参! ドリルガールこと銀野らせんよ☆ ヨロシクね♪」
 大きなドリルを召喚し胸に抱くと、らせんはウインクして微笑んで見せた。‥‥なるほど、確かにドリルガールだ。
「では、わたくしですね〜」
 ニッコリと微笑んだのは、金髪の少女だ。ほがらかな雰囲気を漂わせ、何処かノホホンとした印象を与える。
「ファルナ・新宮と申します〜☆ キャッチフレーズは、いつも笑顔でマイペースにです〜♪ 宜しくお願いしますね」
「私は護衛メイド・ファルファと申します。マスターであるファルナ様に仕えております。皆様、お見知り置きを」
 青い髪のシャギーヘアの少女が丁寧にお辞儀する。確かにメイド服を纏った彼女は、護衛は兎も角、紛れも無くメイドだ。
 最後に残った、整った風貌に精悍さを漂わす少年が、組んでいた腕を下ろして背筋を張る。
「俺は櫻紫桜です。偶然、ササキビさんに乗せてもらっただけの、普通の高等部生徒です」
「‥‥普通? 紫桜さん、妖機怪が見えてたでしょ?」
 クミノが冷たい視線を流してポツリと洩らす。すると話に割って入ったのは、和馬だ。
「妖機怪が見えるのかよ! 俺と同じ能力じゃん。謙遜するんじゃねーぞ? 少年は、自己主張も大事な勉強だからよ」
「勉強、ですか。覚えておきます」
 総数11名の挨拶が終わると、鎮芽が締め括る。
「頼もしい方々ですわ☆ もっともっと増えると部隊編成が出来て楽しそうですわよね? 次もお願い致しますわ♪」
 結局、新たな情報は見つからなかったが、戦いは始まったばかりである。妖機怪とは? 作られる目的とは何なのか?
 ――不明な点は多々ありますが、戦い続ける事で真相に近付けると信じています――――。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/担当】
【5453/櫻紫桜/男性/15歳/高等部学生】
【0165/月見里千里/女性/16歳/高等部学生】
【1533/藍原和馬/男性/920歳/体育教師】
【1166/ササキビ・クミノ/女性/13歳/中等部学生】
【2557/尾神七重/男性/14歳/中等部学生】
【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/外国語講師】
【0158/ファルナ・新宮/女性/16歳/高等部学生】
【0328/天薙撫子/女性/18歳/国語・古典補助教諭】
【1593/榊船亜真知/女性/999歳/高等部学生】
【2885/護衛メイド・ファルファ/女性/4歳/完全自立型メイドゴーレム】
【2066/銀野らせん/女性/16歳/高等部学生】

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■         ライター通信          ■
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 この度は御参加ありがとうございました☆
 引き続き参加して頂き、嬉しく思っています。切磋巧実です。
 口調の件は温かいお言葉有り難うございます。何か暴れ回っていてアレですが(汗)、イメージを阻害していなければ幸いです。
 他のPCの活躍と視点が違っていたりする部分もございますので、お時間があれば読んで頂けると嬉しいかも。
 楽しんで頂ければ幸いです。よかったら感想お聞かせ下さいね。
 それでは、また出会える事を祈って☆