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<東京怪談・PCゲームノベル>


具現化協奏ファントムギアトルーパー――testee2

 ――燦燦と輝き照り付ける陽光。
 雲一つ見当たらない澄みきった青空。小波の音と共に揺れる紺碧の水面。ジリジリと熱を帯びた気温と焼ける砂浜――――
 歓声を響かせながら幾つもの足跡を残して砂浜を駆けて行くのは少年少女達だ。はしゃぐ声が時折流れて来る心地良い潮風に運ばれて行く。
 ここは貸し切り状態の楽園そのものだった‥‥。

■testee2:臨海学校の中で
「わあ☆ 海ですわよ撫子お姉様♪ ああん、砂浜が熱いですわ。潮風が気持ちいいですわ〜♪」
 クルクルと回りながら、長い黒髪を舞い躍らせてハシャぐのは榊船亜真知だ。美少女が浜辺でキラキラと陽光を浴びる姿は、とても眩しいものの、あまりに子供っぽい仕草に、天薙撫子は注意を促がす。
「亜真知様、はしゃぎ過ぎですよ。同じ年頃に生徒から笑われてしまいますからね」
「だって臨海学校なんて初めてなんですもの♪ 昼は海水浴☆ 夜は何が待っているのかしら〜☆」
 撫子は清楚可憐な風貌で苦笑して見せた。
「困ったお方ですね」
「それより撫子お姉様? どうして海までいらして和服姿ですの?」
 亜真知の疑問も尤もである。彼女は普段通りに和服に身を包み、日傘を片手に砂浜に足を踏み入れたのだ。
「淑女の嗜みってものです。‥‥それにしても、いきなり学園内で公表するとは思いませんでしたね」
「そう言えば、鎮芽様が見当たりませんわ? 一緒に遊ぼうと思いましたのにぃ」
 キョロキョロと辺りを見渡すと、亜真知は残念そうに頬を膨らます。撫子は品の良い眼鏡を奥で瞳を細めた。
「意気投合って感じでしたからね」
「ふふん♪ そう思いまして?」
 美少女は可愛らしい風貌に不敵な笑みを浮かべて見せる。どうやら胸の内に何か秘めているらしい。女子高生に見えても、流石は神様だ。
「不明な点は多々ありますが、戦い続ける事で真相に近付けると思いましょう。さあ、わたくしも教師として務めさせて頂きますから、くれぐれもご迷惑をお掛けしないで下さいね?」
「分かりましたわ♪ 皆様〜わたくしもお仲間に入れて下さいな」
 少女は元気に跳ねて同級生の輪に駆け出して行った――――。

●女子高等部のどきどき☆
「えっ? 肝試し、ですか?」
 ファルナは呆けたような声で応えた。するとズイッと眼鏡の奥に円らな瞳を輝かせ、人差し指を立てると、らせんは興奮気味に先を話す。
「そ☆ なんと男子と一緒よ〜! ファルナさんとファルファさんも行くでしょ?」
「うーん、肝試しですのー」
「‥‥いかがなさいますか?」
 人差し指を顎に当て、ちょっと考え込むファルナ。ファルファはどちらでも構わないような感じだ。そんな中、3人の間にハシャいだ声が飛び込む。
「まあ☆ 肝試し♪ わたくしも参加いたしますわ」
「榊船さん、乗ってくれるの!?」
「勿論ですわ☆ 皆様も行きますわよね? ね?」
 両手を合わせてキャッキャッと飛び跳ねると、亜真知は金色の瞳をファルナとファルファに向ける。
「そうですわね、楽しそうだしファルファさん行きましょう?」
「了解でございます、マスター」
「あ、でも撫子お姉様が零してましたけど、先生達が見まわりするそうですわ」
「うふふふ、それこそ宿泊イベントの醍醐味よ☆ 先生の防衛ラインを突破して、男子と肝試し! 真夏の夜の海岸を歩くのよ〜♪ 素敵な彼だったり、強引な彼だったりしたら、きゃー☆」
 あれこれ想像して夢見る乙女はロマンスに期待一杯だ。しかし、亜真知だけは話を聞いて瞳を研ぎ澄ませていた。
 ――海岸で肝試し? でしたら‥‥。

■肝試しの中で
 ――亜真知と男子生徒が歩き出して暫らく経過した時だ。
「お待ちなさい! そこのお二人!」
 何とか砂浜を小走りに駆けて来るのは、相変わらず和服を纏った撫子である。見覚えがある人物の姿に、少年は瞳を見開くと少女を置いて走り出した。
「やべえ先生だぜ! 逃げろ、榊船!」
「あぁ! お待ちになって〜!」
 哀しげに金色の瞳を潤ませ、手を差し出すものの、少年は振り返りもせず闇に消えてゆく。まるで別れ話に縋ってみたものの、振り切られた感じの光景だ。
「ペンライトまで持っていくなんて‥‥酷いですわ」
「紳士的な方では無かったようですね、亜真知様?」
 ぷっくりと頬を膨らます長い黒髪の美少女に、追い着いた撫子が袖を口元に当ててクスリと笑う。
「もお〜、夏の思い出作りですのに‥‥」
「いけませんよ。不純異性交遊の元です。まあ、亜真知様が危険な目に会う事は無いと思いますが、この学園の生徒は能力者ですし、何より教師として許せません」
 さ、帰りますよ。と、撫子が義妹の手を握った時だ。
「うわあぁぁぁッ!!」
 前方の闇から男の悲鳴が流れて来た。
 慌てて撫子が亜真知に顔を向ける。
「もしかすると妖機怪に! ‥‥亜真知様?」
 若い教師の眼鏡に映る少女は、ニッコリと笑みを浮かべていた。
「一波乱ありそうですわね☆」
「‥‥亜真知様、まさか‥‥」
 ――囮に使いましたか?
 囮は必要だとは撫子も思っていた。敵は男ばかりを襲うらしい。ならば女だけでは敵の方から寄って来ないだろう。
「さ、撫子お姉様☆ 霊駆巨兵を呼びますわよ♪」
「‥‥嬉しそうですね」
 満面の笑みに撫子は苦笑しつつも、予め持たされた懐中時計のようなデザインの装置に指を掛け、スイッチを押し込んだ。刹那、響き渡る轟音。
 ――霊波動確認 パイロット照合・天薙撫子、榊船亜真知
 霊駆巨兵ファントムギアトルーパーリフトアップ――――
 突如砂浜が大きな山の如く盛り上がり、頭上から砂飛沫が降り注ぐ中、月明かりに照らされたのは鋼鉄の輝きだ。
 二人は別々に体育座りをした巨兵へと駆けてゆく。既に前回の騒動で把握している。しかし、今回は若干の違いがあった。
「撫子お姉様? 衣服が置いてありますわ」
『ええ、わたくしの所にもあります。着なければならないのでしょうか?』
「これ、レオタードってものですわよね? ここで着替えろと仰るの?」
『‥‥え、ええ。きっとそうですね‥‥わたくしに、このような衣装は似合わないと思いますが‥‥』
 通信機から流れる撫子の声は戸惑いがちだ。彼女とて教師を務めているが、18の娘である。無理があるとは思えない。しかし、落ち着いた和服を好む清楚可憐な大和撫子にピンクのレオタードは勇気がいる選択だ。おまけに更衣室などコックピットにある訳でもなく。
『‥‥困りましたね』
「そう? わたくしは着替えましたわよ♪ これも運動着の一つですわね。暑い日は良いかもしれませんわよ☆」
『‥‥分かりました。わたくしも着てみます』
「行きますわよ♪ 結界創世! 女神モード☆」
 亜真知の駆る巨兵が形状変化を起こし、青白い光の中で変容してゆく。光が集束すると共に姿を現わしたのは、巫女の容姿に神秘的な天女のイメージを併せ持つ、女体化したファントムギアトルーパーだ。
『お、お待ちになって下さい。‥‥御神刀『神斬』参ります!』
 少し遅れて撫子の駆る巨兵が、長い刀を出現させると、額に掲げると共に青白い光が機体を包み、ゆっくりと変容してゆく。東洋の天女を思わせる容姿が浮かび上がり、背中に三対の翼が延びる。同じく女体化したファントムギアトルーパーへと変化したのだ。
「撫子お姉様? わたくし、敵は海辺の妖怪、濡れ女と牛鬼と考えていますの☆」
『そうですね、わたくしも同じ予想です。急ぎましょう亜真知様!』
 東洋の天女は、背中の翼に淡く優しい光を浮かび上がらせると、一気に飛翔した。巫女姿の天女は、ふわりと浮き上がると、天駆ける如く、優雅に駆け出す。ニ体の天女が目的地に着くのに時間は掛からなかった。
「あ、やっぱり先ほどの生徒ですわ☆ わたくしを置き去りにした天罰ですわね♪」
『‥‥亜真知様? 悠長な事は言ってられない状況ですよ』
 視界に映るのは、ずぶ濡れの白い和服を着崩した美女と、何か塊を抱いて跪く少年の姿だ。否、そればかりではない。その傍に女性の風貌を持つ大蛇がトグロを巻いており、海面からは大きな水牛が男子生徒に顔を近づけていた。この口なら一飲みだろう。
「撫子お姉様! わたくしが後方支援いたしますわ! その隙に」
『分かりました。神斬で天薙ぎの太刀をお見舞いします!』
 東洋の天女が三対の翼に残像を描かせ、刀を構えて急降下する中、巫女姿の天女は、左腕を掲げ、手に和弓を出現させた。矢は既にセッティングされており、弓を引き軋ませる。
 亜真知が片目を瞑り、狙い定めると、声高らかに叫んだ。
「天に瞬く星々、地を穿つ矢と成さん。天星弓!」
 放たれた光の矢が東洋の天女を追い越し、吸い込まれるように巨大な水牛――妖機怪牛鬼へと突き刺さった。悲鳴を轟かせる中、亜真知は女の風貌を模った頭を持つ大蛇――妖機怪濡れ女へと牽制の矢を放つ。一機で数体と戦うのは容易でないが、同じ数で、しかも役割分担が成されていれば効果は絶大だ。しかも頭上からの攻撃では、牛鬼の凶眼や、濡れ女の赤ん坊投擲も回避対処は困難ではない。
「天位覚醒・天魔断絶!!」
 カッと眼鏡の奥に浮かぶ瞳を研ぎ澄まし、撫子が叫ぶ。『神』に対抗する人の究極の剣技。剣技の超えた存在と謂われる一刀が牛鬼の頭部を叩き切った! 続けて淡く優しい光の尾を描き、東洋の天女が濡れ女の攻撃を身体を捻りながら躱すと、巨大な女の顔を真っ二つに切り伏せる。後に残るは妖機怪の断末魔と、光の粒子と化して失散する勝利の証だ。
「やりましたわね♪ 撫子お姉様☆」
『ええ、亜真知様の支援攻撃があったからです』
 通信機から流れる声は穏やかで、少女は満面の笑みを浮かべた。

●格納庫にて
「皆様、お疲れ様でしたわ☆」
 胸元で手を組み、鎮芽は満面の笑みと共に霊駆巨兵ファントムギアトルーパーのパイロット達を迎えた。皆、後部ハッチを開くと次々と咳き込んだり、顔を顰めたり、リアクションは様々だ。何故なら機体は砂浜や浅瀬で戦いを繰り広げた為、砂と潮に塗れていたのである。
「まあ☆ 大変でしたわね。後でFGTも洗ってあげなきゃですわ」
 あまり大変そうに聞えない。
「それは兎も角として、まあ☆ 沢山集まってくれましたのね♪」
 瞳を輝かせてパイロット達に視線を流す。ずらりと並ぶ人数は11名の生徒に教師だ。
「では、折角ですから自己紹介でもしませんこと?」
 両手を合わせ小首を傾げての笑顔に、小麦色の肌が健康的な青年が苦笑してみせる。
「まあ、共に事態を収めた仲間だからな。俺からいくぜ? 藍原和馬だ。知ってる奴もいるだろうが、麗刻学園の体育教師を務めている。ま、ヨロシク頼むわ」
 次に口を開いたのは、切れ長の瞳が落ち着いた雰囲気を醸し出す中性的な女だ。
「シュライン・エマよ。外国語講師を務めているわ。ヨロシクね」
「では、教師ですので、わたくしが」
 丁寧で何処か、おっとりとした口調の和服姿の淑女がお辞儀する。眼鏡の奥に浮かぶ瞳は優しげだ。
「古典補助教諭の天薙撫子と申します。皆様、宜しく」
「えーと、撫子お姉様とエマ先生に藍原先生‥‥これで先生方は終わりね☆ わたくしから始めます♪」
 長い黒髪の美少女が手をあげる。
「高等部の榊船亜真知ですわ☆ 皆様、頑張りましょうね♪」
「次はあたしでいいかな?」
 茶髪のショートヘアを掻きながら、背の高い少女が微笑む。
「あたしは高等部の月見里千里だよ。誕生日は8月12日。身長166cm、体重50kg。3サイズは秘密ね☆ ゲームが好きで、コスプレが趣味。あのパイロットスーツはあたしがデザインしたんだ♪」
 気に入ってくれた? と訊ねるものの、数名は苦笑いだ。千里は、「ま、いいか☆」と笑うと次へバトンを回す。流石に年頃の女には抵抗があるかもしれない。
「レディファーストよね。クミノちゃん、どーぞ」
「私は、別に‥‥」
 流れるような優麗な黒髪に、赤いリボンをあしらった小柄な少女が溜息を吐く。
「‥‥ササキビ・クミノ。中等部よ‥‥よろしく」
「‥‥えっと、それじゃ僕かな」
 簡単な挨拶に終わりなのかと戸惑いながら、灰色に近い銀髪のショートヘアの少年が口を開く。
「尾神七重です。あ、中等部です。よろしくお願いします」
 これで前回の妖機怪小豆荒いの時から参戦したメンバーの紹介が終わった。
「次、誰から? あたしから始めよっか?」
 丸眼鏡を掛けた少女が元気な声を響かせた。彼女が顔を左右に向ける度に、長い三つ編みの後ろ髪がブンブンと揺れる。
「お先によろしくてよ」
「私はマスターの後で構いません」
「レディファーストで来たなら、俺は一番後で構いません」
 三人の少年少女が先を譲った。
「そう? こほんっ☆ 銀の螺旋に勇気を込めて、回れ正義のスパイラル! ドリルガールらせん、ご期待通りに只今見参! ドリルガールこと銀野らせんよ☆ ヨロシクね♪」
 大きなドリルを召喚し胸に抱くと、らせんはウインクして微笑んで見せた。‥‥なるほど、確かにドリルガールだ。
「では、わたくしですね〜」
 ニッコリと微笑んだのは、金髪の少女だ。ほがらかな雰囲気を漂わせ、何処かノホホンとした印象を与える。
「ファルナ・新宮と申します〜☆ キャッチフレーズは、いつも笑顔でマイペースにです〜♪ 宜しくお願いしますね」
「私は護衛メイド・ファルファと申します。マスターであるファルナ様に仕えております。皆様、お見知り置きを」
 青い髪のシャギーヘアの少女が丁寧にお辞儀する。確かにメイド服を纏った彼女は、護衛は兎も角、紛れも無くメイドだ。
 最後に残った、整った風貌に精悍さを漂わす少年が、組んでいた腕を下ろして背筋を張る。
「俺は櫻紫桜です。偶然、ササキビさんに乗せてもらっただけの、普通の高等部生徒です」
「‥‥普通? 紫桜さん、妖機怪が見えてたでしょ?」
 クミノが冷たい視線を流してポツリと洩らす。すると話に割って入ったのは、和馬だ。
「妖機怪が見えるのかよ! 俺と同じ能力じゃん。謙遜するんじゃねーぞ? 少年は、自己主張も大事な勉強だからよ」
「勉強、ですか。覚えておきます」
 総数11名の挨拶が終わると、鎮芽が締め括る。
「頼もしい方々ですわ☆ もっともっと増えると部隊編成が出来て楽しそうですわよね? 次もお願い致しますわ♪」
 結局、新たな情報は見つからなかったが、戦いは始まったばかりである。妖機怪とは? 作られる目的とは何なのか?
 ――不明な点は多々ありますが、戦い続ける事で真相に近付けると信じています――――。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/担当】
【5453/櫻紫桜/男性/15歳/高等部学生】
【0165/月見里千里/女性/16歳/高等部学生】
【1533/藍原和馬/男性/920歳/体育教師】
【1166/ササキビ・クミノ/女性/13歳/中等部学生】
【2557/尾神七重/男性/14歳/中等部学生】
【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/外国語講師】
【0158/ファルナ・新宮/女性/16歳/高等部学生】
【0328/天薙撫子/女性/18歳/国語・古典補助教諭】
【1593/榊船亜真知/女性/999歳/高等部学生】
【2885/護衛メイド・ファルファ/女性/4歳/完全自立型メイドゴーレム】
【2066/銀野らせん/女性/16歳/高等部学生】

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■         ライター通信          ■
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 この度は御参加ありがとうございました☆
 引き続き参加して頂き、嬉しく思っています。切磋巧実です。
 基本NPCと絡む場合はプレイングに記して頂けると助かります。構成等の都合により、描写されておりませんが、彼女とは良いお友達です。但し、学園の生徒として姿を現わす事はありませんので、霊駆巨兵格納庫内とか、騒動を解決した後に、楽しく日常会話を繰り広げている事でしょう。
 他のPCの活躍と視点が違っていたりする部分もございますので、お時間があれば読んで頂けると嬉しいかも。
 楽しんで頂ければ幸いです。よかったら感想お聞かせ下さいね。
 それでは、また出会える事を祈って☆