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<東京怪談・PCゲームノベル>


具現化協奏ファントムギアトルーパー――testee2

 ――燦燦と輝き照り付ける陽光。
 雲一つ見当たらない澄みきった青空。小波の音と共に揺れる紺碧の水面。ジリジリと熱を帯びた気温と焼ける砂浜――――
 歓声を響かせながら幾つもの足跡を残して砂浜を駆けて行くのは少年少女達だ。はしゃぐ声が時折流れて来る心地良い潮風に運ばれて行く。
 ここは貸し切り状態の楽園そのものだった‥‥。

■testee2:臨海学校の中で
「良いお天気ですね〜、ファルファさん♪」
 砂浜に一歩を踏み出し、ファルナ・新宮は大きな緑色の瞳をキラキラと輝かせて、紺碧の海原に微笑む。背後に佇むのは、青いセミロングシャギーヘアの神秘的な風貌の少女だ。
「そうでございますね、マスター」
 淡々とした響きで無表情のまま、護衛メイド・ファルファ答えた。
 実は彼女、ファルナの血肉の一部を用いて作成した人型人形である。しかし、その容姿からは悟られはしない。今もこうして傍らに佇む少女は、飾りの無いシンプルな水着に肢体を包んでいるのだ。
「それにしてもファルファさん?」
「‥‥なんでございますか?」
「どうしてこんな面白くもない水着を選んだのかしら? 好きなの選んで良いと言ったじゃありませんの〜」
「‥‥これが気に入ったのです」
 勿体無いです〜。と呟きながら、ファルナは緑色の瞳を少女に流す。ファルファは豊かな二つの膨らみも窮屈そうなほど豊満で、腰は緩やかに曲線を描き、キュートなヒップラインとバランスに申し分がない。正直に言えば、作り出した主人よりナイスバディだ。
「ま、ファルファさんがそう仰るなら仕方ありませんね〜」
 パレオを巻いた細い腰に両手を当て、ファルナは屈託のない微笑みを浮かべて見せる。ファルファは、何が仕方がないのか半信半疑で表情を固めていた。そんな中、クラスメイトが呼ぶ声が飛び込む。
「ファルナさーん、一緒に泳ごう☆」
 ブンブンと元気よく腕を振る少女は、銀野らせんだ。緩やかな茶色の癖っ毛の彼女は、腰ほどまである後ろ髪の大きな三つ編みを左右に揺らして、身体全体で呼び掛けているように見えた。
「銀野さーん、いま行きますね〜! 泳ぎますよ、ファルファさん♪」
「‥‥了解いたしました」
 ファルナは柔らかそうな金色に輝くウェーブヘアを舞わせて、駆け足でクラスメイトの元に走って行く。その後をゆっくりとファルファが歩いて行った。‥‥多くの男子生徒の熱い視線を気にする事もなく――――。
 ファルナは大富豪の家の生まれで、らせんはトップクラスの玩具メーカー『シルバーフィールド』の社長令嬢である。お嬢様という点では変わりなく、二人が友人になるのに時間は掛からなかった。
「きゃん☆」
 大きな波が押し寄せ、ファルナが小さな悲鳴を洩らす。波に合わせてジャンプするものの、強かに海水を飲む羽目になっていた。そんな少女の姿に、らせんは指差して笑ったものだ。
「もう、なにやってるのよ♪ 次、大きいの来るわよ」
「えぇッ!? やっと足がつきますのに〜‥‥」
「ほら、リズム合わせて、波に身体を預けるのよ!」
 ――今よ!
「きゃああぁぁん☆」
 波に押されてファルナが浅瀬に流されていった。「あははは☆」と少女は声高らかに笑い声をあげた。
「けほけほ‥‥そんなに笑わなくてもいいじゃありませんの〜」
 起き上がった金髪の少女が頬を膨らます。すると一気に笑い声が掻き消えた。らせんは瞳を見開き、パクパクと金魚の如く口を開きながら指差す。
「フ、ファルナさんッ! む、胸! 胸!」
 大抵こんな時は大きな声で注意してしまうものだ。それが周囲の目を集めてしまうとしても――――。
「ふぇ? 胸? ‥‥!!」
 キョトンとした表情で慌てる少女からゆっくりと視線を自分の胸元に流す。瞳に映ったのはビキニが波に捲り上がり、曝け出された二つの膨らみだ。長い金髪で部分的にしか周囲に見えないものの、これは流石に恥かしい。ファルナは胸元を庇い悲鳴を響かせた。

●女子高等部のどきどき☆
「えっ? 肝試し、ですか?」
 ファルナは呆けたような声で応えた。するとズイッと眼鏡の奥に円らな瞳を輝かせ、人差し指を立てると、らせんは興奮気味に先を話す。
「そ☆ なんと男子と一緒よ〜! ファルナさんとファルファさんも行くでしょ?」
「うーん、肝試しですのー」
「‥‥いかがなさいますか?」
 人差し指を顎に当て、ちょっと考え込むファルナ。ファルファはどちらでも構わないような感じだ。そんな中、3人の間にハシャいだ声が飛び込む。
「まあ☆ 肝試し♪ わたくしも参加いたしますわ」
「榊船さん、乗ってくれるの!?」
「勿論ですわ☆ 皆様も行きますわよね? ね?」
 両手を合わせてキャッキャッと飛び跳ねると、亜真知は金色の瞳をファルナとファルファに向ける。
「そうですわね、楽しそうだしファルファさん行きましょう?」
「了解でございます、マスター」
「あ、でも撫子お姉様が零してましたけど、先生達が見まわりするそうですわ」
「うふふふ、それこそ宿泊イベントの醍醐味よ☆ 先生の防衛ラインを突破して、男子と肝試し! 真夏の夜の海岸を歩くのよ〜♪ 素敵な彼だったり、強引な彼だったりしたら、きゃー☆」
 あれこれ想像して夢見る乙女はロマンスに期待一杯だ。しかし、亜真知だけは話を聞いて瞳を研ぎ澄ませていた。
 ――海岸で肝試し? でしたら‥‥。

■肝試しの中で
「それじゃ集まった皆さん、これから中等部と高等部男女混合による肝試しを開催しまーす!」
 教師達の防衛ラインを潜り抜けた少年少女は、真夜中の浜辺に集まっていた。発端は、進行役を務めている彼女――らせんが「肝試しをやらない?」との発言だ。夏の宿泊イベント恒例でもある肝試しの提案に、面白くないと思う連中は少ない。
「えーと、先ずは籤引きしてパートナーを決定ね☆ 男女ペアにならない場合もあるからそこは勘弁! それと肝試しコースは‥‥」
 真夜中の海岸をペンライト一つで往復するというものだった。ネット等で行方不明騒動は知っている者は少なくない。況して曰くもない宿泊施設にネタもなく、水場は心霊現象としても多いものだ。
「渡したモノに名前は書いて来たわね? これをペア同士で突き当たりの岩場に置いて来るのが目的よ♪」
 こうして海岸往復肝試しは開催されたのである――――。

「さ、行こっか☆」
「は、はい‥‥」
 眼鏡を掛けた茶髪の後ろ髪を三つ編みにした少女が明るい声を投げ掛けた。小柄な銀髪の少年は困惑しながらも返事を返す。‥‥が、らせんは不満そうな瞳で七重を見下ろした。
「キミ、折角なんだから手くらい握りなさいよ。だいじょーぶ☆ お姉さんが守ってあげるから怖くないわよ♪」
「‥‥はぁ、よろしく、お願いします」
 七重は差し出されたしなやかな手を握ると、2才年上の少女が口元に手を運んで笑った。
「やだ、キミ震えてない? 女の子の手、握った事ないの?」
「ち、違いますよ! でも」
 ――なんかドキドキする。
 頼りはペンライトと月明かりのみ、静寂の中に聞えるのは小波の音。闇に包まれた真夜中の海岸ほど不気味なものはない。そんな暗がりで年上の少女と手を繋ぐ行為に、少年は胸の高鳴りを感じた。
「悪いわね、あたし言いだしっぺだから最初なのよ。ま、籤で当っちゃった不運を悔やみなさい‥‥ん? 不運? なんかヤダな。こんな美人のお姉さんとペアになれた事を感謝しなさいよね♪」
「‥‥そう、ですね」
 少年は苦笑する。幸いかペンライトは僅かに前方を照らすのに精一杯で、七重の表情がバレる事はない。
 それにしても、暗闇で会話するのは不思議な感覚だ。相手を確かめられる手段は声と繋いだ手の暖かさのみ。彼女は明るくて元気な声で話してくれたから肝試しの感覚は鈍るが、もし、無口な少女だったりしたら、意外と怖いかもしれない。
「もし?」
「え? なに? 尾神くん」「なんですか? 銀野さん」
 ――えっ?
『もし?』
 その切ない声は背後から聞えていた。小波の音に交じり、ポタリポタリと雫が零れる音も聞える。二人は立ち止まり、固まった。不意に少女の手が七重の手をキツく握る。
「お、尾神くん、じゃない‥‥みたいね‥‥尾神くん?」
 らせんに彼の表情は分からない。その時、少年は赤い瞳を研ぎ澄ましていた。
『もし? 少しの間だけ子供を抱いていてくれませんか?』
「‥‥現れましたね、妖怪濡れ女。いえ、妖機怪!」
 ポケットの中で、七重は懐中時計のようなデザインの装置に指を掛け、スイッチを押し込んだ。刹那、響き渡る轟音。慌てたのは、らせんだ。
「なになに!? 地震!?」
 ――霊波動確認 パイロット照合・尾神七重
 霊駆巨兵ファントムギアトルーパーリフトアップ――――
 突如砂浜が大きな山の如く盛り上がり、頭上から砂飛沫が降り注ぐ中、月明かりに照らされたのは鋼鉄の輝きだ。
「これって‥‥ファントムなんとかって」
「ファントムギアトルーパーですわ☆」
 鋼鉄の機体を見上げるらせんの肩に、スッと触れた感触と共に、少女の声が耳元に飛び込んで来た。彼女の肩に浮かび上がったのは銀髪の西洋人形のような少女の顔。らせんを覗き込むように顔を近づけて来る。暗闇に発光するかのように、クッキリと浮かび上がる娘の顔は幽霊か何かとしか思えず‥‥怖い。
「ひいぃぃッ! な、なに? キミ?」
「‥‥幽霊かしら☆」
「‥‥ゆうれい?」
 もはや、少女は涙目だ。眼鏡のレンズに妖艶な顔が映り込む。
「あなたも乗ってみませんこと?」
「あ、あたし自身には能力なんてないはずです‥‥! また地震?」
「うふ☆ 呼んでしまいましたわ♪」
「はぁぁぁッ!?」
 再び激しい振動と共に砂飛沫があがり、体育座りをした鋼鉄のシルエットが姿を見せた。後部タラップが降り、誘う準備が整う。
「はやくお乗りになって☆ 中に入ったら先ずは着替えて下さいな」
「あたしは乗るなんて! ‥‥着替え?」
 スゥーっと少女の顔が肩から離れてゆく。らせんは肩越しに振り向くが、そこに銀髪の娘はいなかった。背筋に寒いものが疾る。
「と、とにかく、ここにいたら危険よね」
 らせんの瞳に映し出されたのは、複数の座席のある機械の部屋だった。例えるなら、ゲームセンターの横並びになった対戦筐体が似ているだろうか? 二本のスティックが突き出しており、その周りには複数の赤や青色のスイッチやレバーが覗えた。足元にはレースゲームで目にするアクセルとブレーキに酷似したものが見える。そして――座席に白のラインを施したピンク色の衣服が置いてあった。
「なに? これに着替えるの? って、レオタードじゃない!?」
 やけに露出度が激しいレオタードを広げ、げんなりと表情を崩す。しかし、着ろというからには意味があるのだろう。少女は機械だらけの部屋にキョロキョロに視線を疾らせると、一気にTシャツを捲り上げた。
 一方、七重の機体は急に吹き荒れた津波を躱すような挙動を見せていた。左右に逃げ回り防戦に徹しているようだ。
「なに? 何も見えないじゃない? 尾神くん何やってるのよ! もしかすると濡れ女と牛鬼の2体と?」
 らせんの視界には霊駆巨兵しか映っていない。彼女には妖機怪を見る能力は無いのだ。次第に表情が雲ってゆく。
「あたし自身には能力なんてないのに‥‥魔法のドリルがあるからドリルガールになれるのに‥‥」
 ――ドリルガール!?
 キョトンと瞳を見開く。
「って、もしかして魔法のドリルを使える事があたしの能力!?」
 らせんはスティックを握り締め、声高らかに叫ぶ。
「ドリルガール・フォームアップ!」
 ピンクのレオタードに身を包んだ右腕が発光し、操縦桿へと伝達されてゆく。同時に巨兵の右上腕装甲が展開、光の放出すると共に巨大過ぎる円錐状へと変容すると、尚も機体全体が発光した。横薙ぎに右腕の振るうと共に光が集束、浮かび上がったのは少女の風貌を模ったマスク、身体、そして集束された光が描き出したのは、右腕の巨大なドリルだ。
 らせんの目元をバイザーが覆い、ヘッドセットディスプレイが状況を捉えた。映し出されたのは、人の顔を模ったようなメカニカルな蛇と、水牛のようなシルエットの巨大な機械の化物だ。
「やっぱり2体いたんだ。待っててよね、今、支援するから!」
 少女はフットペダルを踏み込み、巨兵を前進させる。刹那、通信機から少年の声が飛び込んだ。
『銀野さんですか? 僕です。濡れ女の方をお願いします』
「えっと、これかな? 了解よ! いっけえぇぇッ!!」
 ドリルを勢い良く引き構えると、螺旋が高速で回転して唸り声を響かせた。濡れ女は身体から次々と人の子供を模った塊を投げて来るが、攻撃は予想通りだ。左右に跳び、ドリルガールと化した巨兵が躱しながら肉迫する。
「銀の螺旋に勇気を込めて、回れ正義のスパイラル! ファイナルクラァァッシュッ!!」
 濡れ女の頭部に叩き込まれ、ドリルは抉り込むように長い胴へと潜ってゆく。機体部品が粒子となって彼方此方に飛び散る中、螺旋の回転は尻尾まで貫いた。背後で断末魔ような奇声が響き渡り、パンッと光の粒子となって失散する。
 機体を振り向かせると、らせん‥‥否、ドリルガールは驚愕に瞳を見開く。七重の機体が牛鬼の放った火炎放射に包まれているのだ。
「尾神くんッ!」
 ドリルの右腕を持った女のシルエットが飛び込み、螺旋の回転が巨体を抉る。妖機怪は悲鳴のような声を轟かせると、凶眼の効果が消滅した。
『銀野さん下がって下さい!』
「了解、後は任せたわよ☆」
 巨兵の腕がエネルギーに一瞬押されながらも、見えないパワーが空気を巻き込んで放たれた。砂が竜巻のように渦巻き、海面が大きなトンネルを描き出す中、重力操作の能力により、水牛を模ったメカがゆっくりと前方から押し潰されてゆく。次々と破片が粒子と化して吹き飛び、牛鬼は悲鳴のような声を響かせる中、その巨体の中に人影を捉える。一人、二人‥‥。
「あれって、行方不明の人達なの?」
 牛鬼が完全に消滅すると同時、男達が落ちる。或る者は海面に飛沫をあげ、或る者は小さな砂煙を舞い上がらせた。いずれにしても、大怪我の心配はなさそうだ。
「やったね♪ 尾神くん☆」
『ありがとうございます。おかげで助かりました』
「言ったでしょ♪ お姉さんが守ってあげるって☆」
 少女は視界に映る七重に機体にウインクして見せた。

●格納庫にて
「皆様、お疲れ様でしたわ☆」
 胸元で手を組み、鎮芽は満面の笑みと共に霊駆巨兵ファントムギアトルーパーのパイロット達を迎えた。皆、後部ハッチを開くと次々と咳き込んだり、顔を顰めたり、リアクションは様々だ。何故なら機体は砂浜や浅瀬で戦いを繰り広げた為、砂と潮に塗れていたのである。
「まあ☆ 大変でしたわね。後でFGTも洗ってあげなきゃですわ」
 あまり大変そうに聞えない。
「それは兎も角として、まあ☆ 沢山集まってくれましたのね♪」
 瞳を輝かせてパイロット達に視線を流す。ずらりと並ぶ人数は11名の生徒に教師だ。
「では、折角ですから自己紹介でもしませんこと?」
 両手を合わせ小首を傾げての笑顔に、小麦色の肌が健康的な青年が苦笑してみせる。
「まあ、共に事態を収めた仲間だからな。俺からいくぜ? 藍原和馬だ。知ってる奴もいるだろうが、麗刻学園の体育教師を務めている。ま、ヨロシク頼むわ」
 次に口を開いたのは、切れ長の瞳が落ち着いた雰囲気を醸し出す中性的な女だ。
「シュライン・エマよ。外国語講師を務めているわ。ヨロシクね」
「では、教師ですので、わたくしが」
 丁寧で何処か、おっとりとした口調の和服姿の淑女がお辞儀する。眼鏡の奥に浮かぶ瞳は優しげだ。
「古典補助教諭の天薙撫子と申します。皆様、宜しく」
「えーと、撫子お姉様とエマ先生に藍原先生‥‥これで先生方は終わりね☆ わたくしから始めます♪」
 長い黒髪の美少女が手をあげる。
「高等部の榊船亜真知ですわ☆ 皆様、頑張りましょうね♪」
「次はあたしでいいかな?」
 茶髪のショートヘアを掻きながら、背の高い少女が微笑む。
「あたしは高等部の月見里千里だよ。誕生日は8月12日。身長166cm、体重50kg。3サイズは秘密ね☆ ゲームが好きで、コスプレが趣味。あのパイロットスーツはあたしがデザインしたんだ♪」
 気に入ってくれた? と訊ねるものの、数名は苦笑いだ。千里は、「ま、いいか☆」と笑うと次へバトンを回す。流石に年頃の女には抵抗があるかもしれない。
「レディファーストよね。クミノちゃん、どーぞ」
「私は、別に‥‥」
 流れるような優麗な黒髪に、赤いリボンをあしらった小柄な少女が溜息を吐く。
「‥‥ササキビ・クミノ。中等部よ‥‥よろしく」
「‥‥えっと、それじゃ僕かな」
 簡単な挨拶に終わりなのかと戸惑いながら、灰色に近い銀髪のショートヘアの少年が口を開く。
「尾神七重です。あ、中等部です。よろしくお願いします」
 これで前回の妖機怪小豆荒いの時から参戦したメンバーの紹介が終わった。
「次、誰から? あたしから始めよっか?」
 丸眼鏡を掛けた少女が元気な声を響かせた。彼女が顔を左右に向ける度に、長い三つ編みの後ろ髪がブンブンと揺れる。
「お先によろしくてよ」
「私はマスターの後で構いません」
「レディファーストで来たなら、俺は一番後で構いません」
 三人の少年少女が先を譲った。
「そう? こほんっ☆ 銀の螺旋に勇気を込めて、回れ正義のスパイラル! ドリルガールらせん、ご期待通りに只今見参! ドリルガールこと銀野らせんよ☆ ヨロシクね♪」
 大きなドリルを召喚し胸に抱くと、らせんはウインクして微笑んで見せた。‥‥なるほど、確かにドリルガールだ。
「では、わたくしですね〜」
 ニッコリと微笑んだのは、金髪の少女だ。ほがらかな雰囲気を漂わせ、何処かノホホンとした印象を与える。
「ファルナ・新宮と申します〜☆ キャッチフレーズは、いつも笑顔でマイペースにです〜♪ 宜しくお願いしますね」
「私は護衛メイド・ファルファと申します。マスターであるファルナ様に仕えております。皆様、お見知り置きを」
 青い髪のシャギーヘアの少女が丁寧にお辞儀する。確かにメイド服を纏った彼女は、護衛は兎も角、紛れも無くメイドだ。
 最後に残った、整った風貌に精悍さを漂わす少年が、組んでいた腕を下ろして背筋を張る。
「俺は櫻紫桜です。偶然、ササキビさんに乗せてもらっただけの、普通の高等部生徒です」
「‥‥普通? 紫桜さん、妖機怪が見えてたでしょ?」
 クミノが冷たい視線を流してポツリと洩らす。すると話に割って入ったのは、和馬だ。
「妖機怪が見えるのかよ! 俺と同じ能力じゃん。謙遜するんじゃねーぞ? 少年は、自己主張も大事な勉強だからよ」
「勉強、ですか。覚えておきます」
 総数11名の挨拶が終わると、鎮芽が締め括る。
「頼もしい方々ですわ☆ もっともっと増えると部隊編成が出来て楽しそうですわよね? 次もお願い致しますわ♪」
 結局、新たな情報は見つからなかったが、戦いは始まったばかりである。妖機怪とは? 作られる目的とは何なのか?
 ――不明な点は多々ありますが、戦い続ける事で真相に近付けると信じています――――。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/担当】
【5453/櫻紫桜/男性/15歳/高等部学生】
【0165/月見里千里/女性/16歳/高等部学生】
【1533/藍原和馬/男性/920歳/体育教師】
【1166/ササキビ・クミノ/女性/13歳/中等部学生】
【2557/尾神七重/男性/14歳/中等部学生】
【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/外国語講師】
【0158/ファルナ・新宮/女性/16歳/高等部学生】
【0328/天薙撫子/女性/18歳/国語・古典補助教諭】
【1593/榊船亜真知/女性/999歳/高等部学生】
【2885/護衛メイド・ファルファ/女性/4歳/完全自立型メイドゴーレム】
【2066/銀野らせん/女性/16歳/高等部学生】

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■         ライター通信          ■
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 この度は御参加ありがとうございました☆
 はじめまして♪ 切磋巧実です。
 数多くの物語に参加されておられるPC様を演出させて頂くのは、なかなか緊張ものでしたが、いかがでしたでしょうか?
 ド、ドリルガール!! ちょっと驚きました(笑)。
 今回、肝試しと記されたのは、らせんさんだけでしたが、イベントとしてアリだなと絡めさせて頂きました。今回から基本として巻き込まれではないのですが、自然とシナリオに参加できるよう、演出してみましたが、いかがでした?
 他のPCの活躍と視点が違っていたりする部分もございますので、お時間があれば読んで頂けると嬉しいかも。
 楽しんで頂ければ幸いです。よかったら感想お聞かせ下さいね。
 それでは、また出会える事を祈って☆