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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


 ◆◇ 忘れじの王国 ◇◆


 その日、草間興信所最初のお客が来たのは、午後四時丁度だった。
 ハイ今日も誰も来ませんでした、めでたしめでたし、でヤケクソ気味に店じまい(?)をしようと尻のかたちに窪んだソファから腰を浮かせた草間は、なんとなく拍子抜けした気分でソファに逆戻りした。
 部屋に入ってきたのは、以前も依頼を持ち込んだことのある、灰色の眸をした女子高生。あのときの彼女の依頼は、興信所厳禁事項に触れるものだった。自然、草間の顔は顰められる。
「とあるお店を捜して、忘れ物を取りに行って欲しいんです」
 草間の表情を無視して、彼女は、淡々と依頼を語り始める。
 交番に行け、と喉許まで出掛かった言葉を飲み下したのは、彼女がまだうら若い少女だったからだ。零と同じ年くらいかあ、と考えると、冷淡な対応が引っ込んでしまう。
「つい、一週間前の話です。路地裏で、小さなカフェを見付けました。ちょっと薄暗くて、落ち着く感じのお店。蔦が煉瓦の壁に絡み付いて、レトロな雰囲気になっていました」
「そりゃあ、好いことで」
「折角だからお茶を飲んで帰ったんですが、あたし、そこに忘れ物をしてしまったんです。ちょっと古い懐中時計。次の日に慌ててもう一度、同じ店に行こうとしました。だけど、お店はなかった」
「場所を間違えたってことは?」
「在り得ません。だって、学校の近所だもの。それに、レシートの電話番号に電話をしても、電話は通じない。住所を捜せば、そんな番地はない。それに、路地裏自体が消え失せているんです。まるで、あったこと自体嘘だったみたい。でも、懐中時計はその場所に残されているはずなんです」
 だらけた草間の問いに、彼女は澱みなく答える。
 だから、と最後に、彼女は少しばかり厚みのある封筒とともに、言葉を押し出した。
「だから、そのお店を捜して頂けませんか。そうして、あたしの時計を取り戻して下さい」

    ◆◇ ◆◇◆ ◇◆

 珍しく彼女のレッスンがお休みの放課後、羽角悠宇はどこか浮かれた気分で街をそぞろ歩いていた。カフェや、雑貨屋。彼女が好みそうな店を見つけるたびに、そっと隣の様子を窺う。すると必ず、にっこりと初瀬日和は笑顔を返してくる。
「どこかで休もうか。日和」
 時計を見れば、午後五時を少し過ぎたところ。日が翳り始めたとは云えまだ空気は蒸し暑く、悠宇は日和を気遣うように云う。
「そうね。……どこへ行こうか? 悠宇」
「うーん……」
 かりかり、頭をかきながら幾つかの候補を思い浮かべふと、悠宇は立ち止まった。
「ねえ、あれ。透己さんじゃない?」
 つんつん、と制服の裾を、日和が摘む。
 学校帰りなのだろう。生真面目に崩さずに着用した制服。真っ黒な髪。見慣れた姿の少女は、ふたりの後輩、新見透己だった。
「なにやっているんだ、あいつ……」
 訝しげに、悠宇が呟く。透己は、雑貨屋の店先、ショーウィンドウの真正面に向かって仁王立ちをしていた。ファンシーな色で埋め尽くされた硝子越しの店内。だが、彼女の視線はそこから少しずれている。隣の店と店の狭間、路地にもなり切れないひとも通れない隙間を、物凄い目で睨み付けているのだ。視線を逸らすと見れば、今度は電信柱に張り付けられた、青い無味乾燥な住所表示を睨む。そうして、また視線を元へ戻す。
 店の内の店員もちらちらと、不審な女子高生の様子を気にしている。
 ふっと、悠宇の腕を促すように触れて、日和が駆け出す。慌てて、悠宇もその後を追った。
「透己さん? どうしたの?」
 柔らかく、日和が声を投げる。ぱっと、過敏なほどの速さで透己が振り返った。
「初瀬先輩? 羽角先輩も……」
 振り返った透己は、いつもの無表情が少し緩んで、なんだか泣きそうにも見えた。


 草間興信所は、分厚い冊子の山に埋もれていた。
「狭い、ですね」
 地図を広げながらぼそりと、花東沖椛司が呟く。
この興信所の所長が大嫌いなタイプの仕事を請け負う請負人であり、それゆえに今回の助っ人として呼ばれた彼女は、凛と冴えた芯を少年じみた可愛らしさで霞ませたような印象の人間だ。妙齢の女性らしい生々しさはなく、シュライン・エマは彼女を見るたびに、自分よりも年上だと信じられなくなったりも、する。
「ちょっと我慢してちょうだい。住所録やらなにやら、取り合えずは漁ってみようかと思って」
 スペースの削られた机のうえには、萎れたレシートが一枚。件の依頼人から預かったものだった。
 ちなみに、興信所の主はと云えば、すでに紙の束に追いやられて退散してしまっていた。
「住所、住所……確かに、この住所だといまはないんですよね……」
「そう。勿論、電話も駄目。そこで必要なのが、昔の住所録ってワケ」
 シュラインの言葉とともに、ばさり、と黄ばんだ地図が広げられる。ふわりと浮き上がったレシートを、椛司の人差し指と中指が素早く摘んだ。
 古い地図と、新しい地図。同じ空間を描くはずの、新旧二枚の図。だがそれらは、まるで歪んだレンズを通した風景のように、道路が、区画が違っている。シュラインの磨かれた爪が細い路地を辿った。
「どうです?」
 こちらは古びてページが反ってしまった住所録を捲りながら、椛司が訊ねる。
「いけそうよ。これは……三十年前の地図、ね」
「喫茶店、喫茶店……」
 ぶつぶつ呟きながら、椛司が字を追う。
「あった」
 そう云ったのは僅かに、シュラインの方が早かった。
 いまはすでにない、細い細い路地。その袋小路の果てに、小間が一区画。
「過去、この場所にあった、喫茶店ですか……? 依頼人さん、どうやってそんな場所に行ったんでしょうか」
「なにかの、波長が合ったのかしら、ね」
「古い喫茶店と、古い懐中時計、ですか……」
 椛司は思案げに顎に手を添える。
 と、そのとき、ひどい音色が響き渡った。
「こんにちは。お邪魔します」
 にっこり笑顔で入ってきたのは、マリオン・バーガンディだった。
 勝手知ったる他人の家ならぬ事務所。すいすいと障害物を避けながら、二人の前まで歩いてくる。
「今日は、随分散らかっていますね」
 ひょい、と彼の手が拾ったのは、例のレシートだ。つくつくと裏返し、表返ししてマリオンはそれを観察する。あどけない仕草だった。
「喫茶店、ですか……好いですね。お茶、したいですね」
「生憎、その喫茶店は随分古い喫茶店らしいわよ」
 シュラインが付け加える。椛司もまた、こくこく頷く。
「ちょっとレトロな喫茶店。蔦の絡まる素敵なお店。でも、そりゃあレトロよね。三十年前なら、むしろレトロなんて云ったら殴られるかも知れないわ」
「最先端だったのかも知れませんよね」
 積み上げられた住所録に身体を預けて、椛司もシュラインに和する。小動物めいた素直さで、きょとん、とした顔をしたのは、マリオンだ。
「好い喫茶店なんですか?」
「行ったことのある娘は、そう云っていたわね。薄暗くて、落ち着くお店なんですって。そう云えば、コーヒーやら紅茶やらの味については聞いていなかったわ」
「行きましょう」
 にこり、と笑って、マリオンが云い切る。余りの迷いのなさに、今度はシュラインが目を丸くする番だった。
「雰囲気の好い処で休憩して、お茶するの。是非行ってみましょう。こんな埃っぽい場所でぐるぐるしているの、好くないですよ」
「埃っぽい場所でぐるぐるって……行けるの?」
「いや……あの?」
 驚いた様子の椛司の手を引きシュラインの肩を叩き、マリオンはふたりを急き立てた。
 彼は待つのがそれほど好きではない。気持ちが傾いた方向に流れるのを、我慢するのも嫌い。大人しそうなのに、意外と即断即決を旨とする性格の持ち主が、彼だった。
「場所と、時間がわかっているなら、簡単なことですよ。ほら」
 ずいずいふたりを押しながらふと、ぴたり、と足を止める。
 半ば流されるのを承服し、ずるずる歩き始めていたふたりが、振り返る。
「どうしたの?」
「忘れ物です」
 シュラインが訊ねるのに、マリオンはにっこり笑って応えて見せた。
 その手には、少女が差すのに似合いそうな、白いレースの日傘があった。微妙に、可愛らしいマリオン自身にも似合っている。
「暑いですから、ちゃんと日傘持ってくださいね」


 日傘を差したバーガンディと、サングラスを掛けたシュライン、そして日差しに無頓着な椛司、と異種格闘技のごときトリオが向かったのは、件のあるべからざる路地。
 鉢合わせしたのは、その場所を離れることができずにコンビニで買ったジュースやアイスで涼を取る悠宇と日和、そして透己だった。
「ここが、その場所なんですね」
 少し舌足らずな口調で、マリオンが確認する。無言で、透己は頷いた。
「この場所に路地があったのは、大体三十年前」
「もしかしたら、もっと最近まであったのかも知れないけれど、取り敢えずはね」
 マリオンの台詞に、シュラインが応える。
「じゃあ、その時間帯に行っちゃいましょう」
「行っちゃいましょうって」
 不審そうな声を上げたのは、悠宇。
「そんなに、難しい話じゃないです」
 にこりとマリオンは笑って、両手を翳した。
 あるべからざる路地の、あるべき時間と、空間へと。
「繋いじゃえば、簡単です」
 それは言葉と同じほど、容易く。
 ゆらりと、透己が目にした憶えのある路地が、目の前に浮き上がり始めた。


「素敵なお店ねえ、確かに」
 四人掛けの席に着きながら、シュラインは溜め息を吐く。目の前には、メニューと首っ引きになったマリオン。真横には、きょろきょろと周囲を見遣る椛司。確かに、程好い暗さは気持ちを落ち着かせ、椅子の木目は目に優しい。
 余りテーブル席自体は多くない。店の大部分を占めるのは、飴色にひかる分厚いカウンターだ。そしてそこには、ドアから大股で一番に走り寄った透己と、一歩下がってそれを見守るような悠宇と日和が佇んでいた。
「時計! 時計忘れたんですけれど!」
 日和と悠宇が顔を見合わせて、笑みと呆れと半々交じり合ったようなお互いの表情を確かめ合っている。
「ああ、時計……預かっているよ」
 寡黙そうなマスターが、カウンターの下からハンカチに包まれた塊を引っ張り出してくる。ぱっとそれに飛びついて中身を確認し、それからきちんと大切に保管されていたことに気付いて、透己は頬を赤らめた。
「ごめんなさい……ありがとう」
 マスターは無言で、首を振る。愛想めいた笑みがひとかけらだけ、唇の端に貼り付いてすぐに剥がれて消えた。
「はい! 取り合えずはイチゴショートケーキとババロアからお願いします。あと、アップルパイとシュークリーム、そしてダージリン」
「……じゃあ……私はレアチーズケーキとアイスティを」
 『から』ってなんなのかなあ、と頭の片隅で突っ込みながら、椛司がオーダーを重ねる。
「私はアイリッシュ・コーヒー。うーん、私もケーキを食べちゃおうかしらね……」
 片手を上げて、シュラインも付け加える。
 次々に出されてくる白い皿の上のケーキは、どこか懐かしさを感じさせるものだ。シンプルで、定型。
 あっという間にテーブルはケーキ皿で満開になったのに、マリオンは更に追加オーダーをすべく、メニューを食い入るように見ている。その様子を横目に、シュラインは小さな三角形のPOPを手に取った。
「これ、テイクアウトはできますか?」
「ええ」
「じゃあ、クラブハウスサンドと、ミックスサンドを」
 マリオンの前にサバランの皿を置いたマスターが、頷く。
「それにしても、何故、この店に透己さんは来れたのかしら?」
 結局カウンターに座った日和が不思議そうに呟く。半身を捻りながら、シュラインはそちらに顔を向けた。
「そうなのよね。ちなみに、ここは三十年前まであった番地なのよ」
「もしかしたら、もっと後々まで残っているのかも知れませんよ。古いものから調べ始めたんですから」
 内容が内容だけに、潜めた声で椛司が云う。
 透己はただ、手の中の時計を見詰めている。
「このお店に来れた透己さんと、このお店に辿り着けなかった透己さん。なにが違うかと云うと……時計を持っていたかいないか、ですよね?」
 日和の発言に、一同の目が、ケーキに夢中のマリオンを除いて透己の手元に集まる。
「お前の時計が、呼んだのかな?」
 揶揄うように悠宇が云う。透己が、恨めしげに上目遣いで悠宇を睨んだ。
「そんなけったいなものじゃありませんよ」
「じゃあ、どんなものだよ?」
「これは、あたしが実家から持って来たものです。実家を出るときに……兄さんの部屋から掏り取りました」
「……そりゃあ、充分に怪しいものだと思うぞ」
 透己の兄を思い出し、悠宇は手のひらで目を被う。
「悠宇!」
あんまりな台詞を、日和がそっと諌めた。ムキになった透己が、悠宇の云い草に抗弁する。
「取り合えず、そんな変なものじゃないと思います。兄さんが、知り合いのお店のご主人から貰ったものだそうです。変なものじゃなさそうだから、持ち出したんですよ。変なものなんて、何も欲しくないから。純粋に兄さんのもの、ひとつくらい貰ったって好いじゃないですか」
 云い切って、やけくそ気味に透己はアイスティを啜る。
 と、そのまま、なにかに気付いたかのように、透己は思案げな表情のままで固まった。
「結局、なんだったのかしらね……」
 シュラインは首を傾げながら、ぽってりとしたコーヒーカップを手に取る。
「どちらにしても、大事なものが戻って、好かったです」
 朴訥と椛司が云うのに、日和が素直に頷く。
 四隅を色硝子で加工した窓からは、まだ夕暮れは遠い黄色い日のひかりが差し込んでいる。甘いお菓子の香りに、コーヒーの香り。全部を飲み込む分厚い、店全体の雰囲気。
「ここに来れたのは好い収穫だったわね」
「そうですね。ケーキも、美味しいです。パフェも」
「……そんなに食べて、大丈夫ですか?」
「勿論。甘い物、大好きなのです」
「大丈夫なんですね……」
 そんな会話を聞きながら、椛司は、テーブルの端にシュガーポットと一緒に置かれた硝子壜を手に取った。
 丁度手のひらにすっぽり包める大きさ。琥珀色の液体で満たされている。蜂蜜かな、と思いつつ、椛司は自分のグラスの上で、それを傾けた。
 金色の液体が、一滴、二滴、アイスティに溶けていく。
「ああ、それ、香り付けに好いわよね。最近、そういうものを置いている喫茶店って余りないけれど」
 シュラインの言葉に曖昧に頷きながら、椛司は一口、アイスティを飲み込んだ。
「―――!!」
 一瞬で、顔色が変わる。
「あら、ブランデー嫌いだったの?」
 シュラインの言葉が、トドメ。
 椛司の顔色が青くなったあと、一瞬で今度は赤くなる。わたわたと、手が他の飲み物を探す。シュラインのカップをようやくその手が掴み、ぐっと一気に飲み干した。
 ――さっと、椛司の目が据わった。
 ブランデー含有アイスティ×ウィスキー含有コーヒー――その名も、アイリッシュ・コーヒー。飛行艇旅行の待ち時間、身体を温めるために発明されたホットカクテルである。
 不穏な空気に、カウンターに向かっていた三人が振り返る。
 ゆらあり、と椛司が、立ち上がる。
 そして、ふわりと、恐ろしいほど艶やかに微笑んだ。
「花東沖、さん……?」
 シュラインが恐る恐る、声を掛ける。
 さっと、条件反射で悠宇が日和を背に庇う。
 そんな状況下においても、マリオンはスプーンを咥えたまま。目だけはきらきらさせて様子を見ている。
 透己は、目の前の女性の変貌に、呆然。
 すう、と彼女の手に現れたのは、淡く発光する霞陽炎のごとき剣。儚いくせに鋭い気を放つその剣を、彼女は貼り付いた笑みを浮かべながら正眼に構え、振り被った。
「―――!」
 そのとき、シュラインはとっさにテイクアウトの紙袋を掴み、マリオンは食べ掛けのパフェのグラスを掴んだ。悠宇は日和を庇うように肩を抱く。
 ――そして、無防備な透己の手から、懐中時計が零れた。
「きゃあああああッ!」
 すぱっと綺麗に切り裂かれた空間の狭間。
 透己の悲鳴と彼女の手から離れた懐中時計が、漆黒の闇に吸い込まれていった。


 はっと気付くとそこは、見慣れた風景。
「……なあんでいつも、こんなことになっちゃうのかなあ……」
 小汚い草間興信所の片隅。半泣き状態で呟いて、力尽きたのか真横に椛司がくず折れる。
 そのまますうすう寝息を立て出した椛司の身体を悠宇がソファに抱き上げる。日和がそっと、彼女の汗をハンカチで拭った。
 取り合えず、各々ソファやら椅子やらに、落ち着いた頃。
 暗い口調で、ぽつん、と透己が呟いた。
「時計、またなくなっちゃいました」
「透己、さん」
 日和が、慰めるように肩に手を置く。それを振り払って、透己は汚れた床を見詰めていた。ひどく減り込んでいるような、深く考えているような、不思議な表情を浮かべている。
「もう一度、行きますか?」
 喫茶店から連れて来たパフェグラスを置いて、マリオンが訊ねてくる。
「とても素敵な喫茶店でした。だから、もう一度行っても構わない気がします」
 云い添えたマリオンに、透己は首を振る。
「あたし、好く考えてみたんです。兄さんは、知人のお店であの時計を貰ったって云いました。それって」
「……もしかしたら、あの喫茶店かも知れない、ってことか?」
 悠宇が、言葉を引き取る。こくん、と透己が頷く。自分に云い聞かせるように、咳き込むように話を続ける。
「もしかしたら、将来、兄さんの手に渡すためにあたしは、あの店に時計を残したのかも知れません。だからいつか、あたしの手にあの時計は戻ってきます。そのために、いまは手放しておくべきなのだと、思います」
「上等ね」
 シュラインの言葉に、うっすらと透己が笑みを返す。
「上等です」
「どちらにしても、好いお店を紹介して頂いて、ありがとうございました」
 マリオンが、ひらひらと手を振る。
「また、行くの?」
「もちろん。今度は、端から端まで制覇します」
 安らかに眠り込んだ椛司の姿を横目に、マリオンは力強く頷く。
「取り敢えずは……」
「取り敢えずは、誰かさんに邪魔をされないうちに、ね」
 シュラインが、悪戯っぽく囁いた。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 0086 / シュライン・エマ / 女性 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員 】

【 3524 / 初瀬・日和 / 女性 / 16歳 / 高校生 】

【 3525 / 羽角・悠宇 / 男性 / 16歳 / 高校生 】

【 4816 / 花東沖・椛司 / 女性 / 27歳 / フリーター兼不思議系請負人 】

【 4164 / マリオン・バーガンディ / 男性 / 275歳 / 元キュレーター・研究者・研究所所長 】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは。不束ライターのカツラギです。この度はご発注、ありがとうございました。
 今回は裏テーマ『皆様でお茶会を』でお送りさせて頂きました。集団劇として、みんなが別々の方向に目を向けつつも一枚の絵になっているような、多人数のピンナップめいた仕様でやりたいなあ、と思ったのですが……うまく纏まりきらず、ばらばらとした印象になってしまい、申し訳ないです。少しでも、愉しんで頂けたら嬉しいのですが……。
 繰り返しになりますが、この度は本当にご発注、ありがとうございました。また是非、宜しくお願い致します。