コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


かわうそ?すくい

●今日も受難の朝
 その日、やっと休暇を貰った三下忠雄は久しぶりにプールへと向かっていた。
 もうすぐ夏が終わる。白王社月刊アトラス編集部の編集員である彼にはバカンスなんてモノは遠い星の話よりも更に遠い。
 日々パシリに使われ、碇麗香女王様の犬として生きる三下には、バカンスなんて言葉はボキャブラリーの中から消えてる。今年もまさしくそれを体現するほどの忙しさだった。
 夏といえば怪談! 怪談といえば我、白王社の月刊アトラス!
 ほら、出番だ。身を粉にして働け。粉になっても働け。そう言う会社なのである。
 昨日だって、やっと開放されたのは終電が終わってから。そこまで働いたって残業代は出ない。三下は溜息を吐くと下宿を出て、ふらふらとプールへ向かう。
 無論、休みの間に健康的なことをしようと思ってプールに行くのではない。理由は簡単。ただ単にクーラーが無いから。
 プール代500円で二時間泳げて、ロビーは綺麗ときたものだ。
「最高……」
 何処か妖しげな表情でうっとりと言うと、重い体を引きずって区民プールに向う。区民プールまであと少しというところで、三下はかわうそ? に出会った。
「あ、かわうそ?さん、こんにちは」
|Д゚)ノシ 三下 どこいく?
「プールですよ〜」
 三下は言った。
 これから起きる悲劇にも気が付かず。
 ご機嫌な三下は己の不幸な属性がいくつもの奇跡を呼び、謎属性マックス大宇宙級なかわうそ?を呼んできたことを知らない。そして、その背後には腹黒枢機卿が存在するのだが、もちろんそんなことに気が付く三下でもない。よって、不幸は今日も発動するのであった。
「そうだ、かわうそ?さん、ご一緒します?」
|Д゚) 行く 水の中は好きなり 
「では、行きましょう〜♪」
 一人と一匹は区民プールに向かって歩いていく。
 そして………不幸はやってきた。
「かわうそ?さぁあああああん!」
 その三下は叫んだ。
|〜〜〜〜〜(゚Д゚)
「ふよふよしないでくださぁい!」
 ミニチュアかわうそ?を捕まえようと、男はあっちこっちをうろうろする。後では叫ぶ町民と悪戯をはじめる子供達の『かわうそ?追いかけっこ』が始まっていた。
|Д゚) 無理
「うわぁああん!」
 せっかくの休みもパアだと三下は泣く。
「誰か助けてぇ!」
 三下の叫びは区民プール中に届いていった。

●かくして捕獲者は集う
「区民プールなんてマイナーな所なら、知合いに会う心配無いと思ってたのに〜。何でいるんだよー、みのさんは〜!」
 隅っこで水着姿で頭抱えているのは、依神隼瀬。
 暗灰色の髪と琥珀色の瞳が印象的な、どう見ても美少年な女性だが、本人も特に訂正をしない為、大抵の依頼人は男性だと信じて疑わないので――まぁ、このプールに入る時も受付のオバちゃんと一悶着あったわけだ。
 彼女の水着は黒地に臙脂色の縦ラインが入った、競泳用のシャープなもので、くっきりと綺麗なラインが見えている。
 そして、やっと中には入れたと思ったら、なんと三下がいるではないか。おまけにプールに飛び込んだナマモノ――もとい、かわうそ?がこっちを見て――手と呼ぶべきかもしれないそれを振ってくる。もしかしたら、素直に前足と呼べば良いのかもしれないが。
|Д゚)ノシ 知り合いの けはーい 手を振ってみる〜
 のんびりと幸せそうに手(前足?)を振る姿に隼瀬が困ったように苦笑したものの、運命の神がこの区民プールに『騒動』という名の爆弾を投げ込んだであろう状態を、自分なりに何とかすべく歩き始めた。
 周囲にはかわうそ?軍団と戯れる子供たち数名に、叫ぶオバちゃんたち、そしてつるつると逃げるかわうそ?を童心に還って楽しむおじいちゃんがいた。捕まえても、ドジョウじゃないんでちなみにそれは食えませんよ――と隼瀬は思う。
|Д゚)Д゚)ノシ およ?
「へっ?」
 思わず隼瀬は目を擦った。 
 少し小さくなったかわうそ?が二匹、プールの中からこっちに向かって手を振る。
「なっ!」
 また、にゅいーんと分裂していくかわうそ?を見た隼瀬は頭を抱える。これは回収の手伝いに行けと言う天啓であろうか。
|Д゚)Д゚)Д゚)Д゚)ノシ 増え増え〜〜〜
「自分から分裂して遊ぶなっ!」
 仕方なく隼瀬は事務所から掃除用の網を借りてきて、金魚掬いかザリガニ採りよろしく、かわうそ?を回収しはじめた。
「どりゃぁあああっ!」
「依神さーん、あ゜り゜がどう゜ござい゜ま゜じゅ〜」
 泣きながら鼻を啜り、三下は隼瀬に礼を言った。
 隼瀬の方は必死で網で掬っていくが、どうもその様子が『手のりかわうそ?』一山百円なりに見えなくも無い。
「一人じゃ埒があかないなー、もォ!」
「あの……お手伝い――いたしましょうか?」
 ブチブチと文句を言う隼瀬の背後で声が聞こえる。
 隼瀬が振り返ると、濡れそぼる射干玉(ぬばたま)の色あいをした絹――と言えばいいのだろうか、そのような髪の愛らしい天使が立っているように見えたが、それは白いワンピース型の水着を来た少女……神埼美桜だった。
「あぁっ! 美桜さぁ〜〜〜ん!」
 三下は膝から崩れ落ち、その場に座り込んで泣きはじめる。辛い時、悲しい時、いつも微笑んでくれる数少ない優しい人に出会ったら、人生悲観しまくりの三下としては泣きたくのも道理だ。
「美桜さぁ〜〜〜ん!」
「あ、あのっ……は、はぁ〜い♪……」
 はにかみながら白い頬を染め、美桜は三下に微笑みかける。
「こっちはさっきから手伝ってるのにー! みのさん、あんたは無視かいっ!」
「はううう〜、天使〜〜〜〜〜」
「こ、こら!」
|Д゚)Д゚)Д゚)Д゚)ノシ 美桜、元気?
「はい、元気ですけれど…………何で分裂を?」
|Д゚)Д゚)Д゚)Д゚)ノシ 謎ゆえ
|Д゚)Д゚)Д゚)Д゚)ノシ 気にするな
「はい、かわうそ? さん。でも、小さくて可愛らしいですね」
|Д゚*)Д゚*)Д゚*)Д゚*) 可愛い 照れる
 美桜はニッコリと微笑み、かわうそ?の一つを抱きしめては撫でる。ほっこりと生暖かく、もにもにつるつるしていて、とても気持ちよかった。
|Д゚#)Д゚#)Д゚#) ぶー ずるい
|Д゚*) 役得
|Д゚#)Д゚#)Д゚#) ずるい ずるい 美桜、こっちも
「あ、はいっ」
 そう言って苦笑した美桜は四匹のかわうそ?をまとめて抱きしめる。
「何があったんですか?」
「水に入ったら、いきなりかわうそ?さんが分裂しちゃったんですよ」
 三下はそう言って泣きついた。
「こんにちは、出会った早々こんなんじゃ吃驚だな。三分の一ぐらいは捕まえたんだけどさ〜」
 苦笑しながら言う隼瀬は美桜に挨拶した。
 中々の美青年的女性に美桜は柔らかに微笑み、彼女等の口振りから何が起きているのか察することが出来た。
「もうすぐ亮一兄さんが来ますから、一緒になんとかしましょうね」
 美桜は慰めるように、ゆっくりと優しく三下に告げた。
 そして、最後の捕獲者が間を置かずに登場するのであった。

●時は戻り 夏休み習得の謎 〜如何にして東京に着いたか?
「亮一様が逃げたぞ〜〜〜〜っ!!」
 退魔師の一人が叫んだ。
 その足元には男たちが屍累々と言った風情で倒れこんでいる。皆一様に急所を一撃され、悶絶していた。
「やはり抑えられなかったか……」
 とは言え、彼らが高野山の僧が無能なのではなく、ただそれを倒した都築亮一が有能なだけだったのだから怒るに怒れない。
 上位30名をもってしても抑えることが出来ないとしたら今後どういう風にしていけばよいのか悩むところだ。
「誰かおるか!」
「はっ!」
 近くにいた男が言った。
「亮一様は何処に向かった?」
「いつもの場所……美桜様のところでございます。すでに人員は配置済みです」
「そうか……では、作戦開始。伝令せよ!」
「畏まりました!」
 後に控えていた者達が行動をはじめた。これで亮一を連れ戻すことが出来そうだとほくそ笑んでいたのだが、そう簡単に物事が運ぶはずも無く。
 彼らの努力は無駄に終わっていくのであった。

 亮一の方は夏休みシーズンに入って、やっと休みが取れたと思っていたが、無論、高野山に休みなぞあるわけが無い。
 ところが亮一にとってそんな高野山の常識などどうでもよく、可愛い従兄弟の神崎美桜に泳ぎを教えて欲しいと言われ、そのことだけが頭にあった。
 裏街道をまっしぐらに走り、追っ手を叩き伏せ、極楽橋駅へと走れば南海高野線で堺東まで出て、そこから関西空港に向かう。
 東京に着いたらプールに行くつもりなのだが、区民プールあたりがゆっくりと出来るかもしれないだろうという算段なのだ。
 泳ぎの後は屋形船を貸切って、夜は飲んで食べて楽しい一時。
 何を食べようか、次は何処に行こうかなどと考えているうちに搭乗チェックも終わり、飛行機は離陸する。空の上まで出たら東京までは小一時間だ。羽田空港から美桜の家までは遠くないから、すぐにプールに向かっても9時半か10時ごろ。そうこうしている間に飛行機は東京に着き、タラップにドッキングされて扉が開いた途端に亮一は走り出した。
 羽田空港を駆け抜けモノレールに乗り込めば、もう都心部へのゲートは開いたようなものだ。途中で電話をかけ、区民プールで待っているようにと指示する。それは邪魔者が迷うようにするためだ。
「美桜は……何処でしょう?」
 約束の区民プールに半ばウキウキとしながら中に入ると亮一はあたりを見回したが、中は騒然としている。子供達の集団でも来ているのであろうか。
 とにかくチケットを買って中に入れば、白いワンピースでパレオ付の水着を着た美桜が男女と一緒に立っている。
 おどおどした態度と似合わない眼鏡をずり上げている姿はどう見ても月刊アトラスの永遠の下僕――三下だ。
 そして、亮一の視線が美桜が両手いっぱいに抱きしめている茶色い生き物に注がれ、三下が見たこともない生物の傍にいるので何事かと近づき、そっと声をかけてみた。
「美桜? いったいどうしたんですか?」
「あ、亮一兄さん! かわうそ?さんが困ってるの、助けてあげて」
「知り合ですか?」
「そう、お友達なの」
 美桜が困ったように眉を寄せて訴えかければ、亮一は理由はあまりわからなくてもOKした。困っている人を放っておけない美桜の性格を知っているし、贅沢やわがままをいわない美桜の数少ないお願いなのだから――亮一が断るわけなんてない。
|Д゚)ノ よう
「はじめまして、かわうそさん」
|Д゚#) ぶー ちゃう かわうそ?
「あぁ、申し訳ありません。かわうそ? さんですね」
 美桜がお世話になっているというし、礼儀正しくかわうそ?に挨拶をしながら、亮一はどうやって助けるかを考える。掬うよりこの原因を作っている犯人を叩き潰した方が効率的で速いと考え、美桜に頼んで相手を感知してもらって犯人を探してもらうことにした。
「ようは、かわうそ?さんを掬えば良いのね。足のつく範囲でも大丈夫かしら?」
「そうですねぇ、無理をしてはいけませんよ?」
「はいっ♪ では、頑張って集めてきます」
 美桜は必死で水の中を歩きながら、ミニチュアかわうそ?を集める。
「きゃぁっ! つ、つるつるします〜〜〜」
 へにょへにょつるりんなかわうそ?を両手に抱きしめて回収するものの、近くにいるかわうそ?は美桜がいることに気がつくと、自分からふよふよと集まってきた。
「あ、集まってくれるのね?」
|Д゚)Д゚)Д゚)ノシ 美桜〜
「はいっ♪」
 足の付かない所にいってしまったら、直ぐにかわうそ?か亮一兄に助けを求めようと思っていた美桜も、これなら安心して集めることが出来る。
 捕ったかわうそ?は、逃げられないように、隼瀬がレンタルタオル用のタオル袋にまとめて放り込んでいく。
 そして、最大の謎が一つ。
「何でコイツはこんなに分裂してるんだ? てーか、一まとめにしたら戻るのか?」
 いぶかしんだ隼瀬が、かわうそ?に「ここに来る前、誰と会ったか?」と聞いてみたが、誰も見ていないと言われ、隼瀬はしばし悩んだ。
「見てないなら仕方ない。とは言っても、早々に合体してくれないかなぁ〜」
 とか言いつつ、隼瀬はかわうそ?ごとタオル袋を全体重をかけ、まるでうどんでも練るようにごーりごーりとやり始める。
|ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)  ふにゅぁ
「えいや、えいや!」
|Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#) 痛いなり!
「お、半分ぐらいに減った。じゃぁ、もう一回」
 隼瀬は嬉々として練っていく。
「まるでお餅ですね」
 そう形容したのは亮一だ。
|Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#)Д゚#) もち ちゃう!
「うるさい。きりきりと纏まれ!」
 と、隼瀬。再び、ごりごり。
|ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT)ДT) やめてほしいなり〜
「無事捕獲しても、元に戻らないなんてことはないですよね?」
「数も少なくなってきてるし」
 かわうそ?できるだけ多く抱きしめ、美桜はかわうそ?とは違う気配を感知しようと意識を集中する。
――あら?
 美桜の意識に引っかかってくる意識の内情は見えないが、どうも感じたことがあると思え、記憶の淵に引っかかっているその感覚を思い出そうとしていた。
――もしかして……この感じはユリウス猊下?
――あはっ、ばれちゃいました〜?
―― …………
「亮一兄さん、誰だかわかりました」
「それは誰ですか、美桜?」
「ユリウス猊下です」
「…………ほう」
 そう言ったのは隼瀬だった。
 眦がきつく釣り上がる。
「ぶっ飛ばす!」
「えっ? ケンカはだめです」
「じゃぁ、俺が行ってきますよ」
 殊のほか優しげに微笑んだ亮一は、美桜に笑いかけ、隼瀬には宥めるように「自分が話してきますから」と言った。そして、場所を聞き出して走り出したのだ。
 事務室横にあったタオルを巻きつけると、トイレの方角に走り出し、角を曲がって消えた人影を怪しんで追いかける。その先には行き止まりしか無く、相手は逃げることは出来ないだろう。
 亮一は余裕で追い込んだが、その奥には誰もいなかった。
「おかしい……さっきは見えたのに――ん?」
 足元を見れば、見たことのある緑色のリボンが落ちていて、亮一はそれを拾った。
「おや、シンデレラの落し物はガラスの靴なんですけれど。神父様はリボンらしいですね」
 亮一はそんなことを言いながら、にっと笑う。いつか倍にして返そう。二度と迷惑をかけないように笑顔で謝罪するまで注意し、影でちーくちーくと攻撃するべし。誰かが怪我をしたら美桜が悲しむから、ボコるなら隠れてやるに限るのだ。
「亮一兄さん、見つかりました?」
 長い髪を揺らして走ってくる少女は頬をやや高潮させている。一気に階段を駆け上がったのだろう、息が少し荒かった。
「あ、いいや――逃がしてしまってね」
「そうですか……」
「美桜が心配することじゃないですよ。それより、かわうそ?さんはどうしましたか」
「えっと……」
「おーい! 纏まったぞー!」
 元気に手を振って、隼瀬がタオル袋を抱えて走ってくる。
|Д゚#) ぶー ここからだす
「はいはいはいはい、わかったわかった」
|Д゚#) 返事は 一度
「はァ〜い〜」
 手をひらひらさせて隼瀬は応じた。
 隼瀬が紐を解いてやると、かわうそ?は美桜にぺったりとくっ付いたまま離れようとしない。
 プールサイドに戻ると館内も落ち着きを取り戻し、もともと仲良しだった監視員のお兄さんたちが館長にとりなしてくれた様で、かわうそ?は心置きなく泳ぐことが出来た。
 そして、当初の目的どおり、隼瀬も三下も泳ぐこことが出来、皆で泳いで遊んだ。

 随分と満足した美桜は大勢の方が楽しいと言って喜び、三下さんも苦労しているからと亮一に頼んで屋形船に招待したいと言い出した。
「ねぇ、いいでしょう?」
 くりっとした大きな深い色合いの瞳に見上げられると、亮一はダメとは言えないのだ。
「労いを兼ねて皆さんを屋形船に招待したいの」
「え?」
「亮一兄さんが言ってたでしょう? 屋形船を貸しきって、浴衣を着て――夜景を見ながらスイカを食べようって。大きなスイカは二人じゃ食べきれないもの、皆で食べましょう」
「そうですね――良いでしょう。一緒に食事しましょう」
「えっ?? だ、だって……助けてもらったのに」
 それを聞いた三下は一瞬言葉を失い、そして呆然と美桜たちを見遣る。
「連れてってくれるって言うんだから、行けばいいじゃないか。そんなに気にしなくてもいいんじゃないか?」
 隼瀬は笑って言った。
「あの……あなたも――いかがですか?」
「へ?」
 美桜の言葉に隼瀬も目を瞬く。
「いいの?」
「はい♪」
「俺も、美桜が楽しめれば良いのではと考えていますから」
「でもさぁ〜」
「用意できたら、花火も用意しましょう」
「そっかァ……悪いな〜」
「いえ、構いませんよ」
|Д゚)ノ□ 美桜 プレゼント
 そう言ってかわうそ?はA4判サイズの箱を出した。
「え? 何ですか……人形焼?」
|Д゚) つくった 食べる
「わぁ〜、凄い。じゃぁ、屋形船で一緒に食べましょうね」
|Д゚) うい 
「早く、屋形船に行きましょう」
「花火も買ってからですね」
 皆は笑い合ってプールサイドから出て行き、いつでも報われない三下は今日ばかりは苦労の甲斐があったようだ。
 実に幸せそうな顔をして、区民プールから出て行ったという。

●聖母様は見ている 〜そして何が起こったか〜
 Once upon a time.
 イタリアにユリウス少年という、のちに神父様になる子供がいました。
 近所の少年の前で魔術の研究の成果を見せ、めっちゃご近所に迷惑をかけた少年は、当時最高の出来だった『発育促進の魔法の薬』を宝物箱に隠しました。
 そんな少年も、今年で27歳。
 郷愁に駆られて持ち出した宝物を、かつての親友――現在、同じく神父になった青年に見せに行く途中で、「開けてみましょうか♪」という悪魔の囁きとしか思えないような欲望に負け……ユリウス猊下はそれをプールで開けてしまったのです。
 あぁ、何ということでしょう。
 バレる前に、すたこらさっさと逃げ出した神父様。
 ほら、大丈夫。
 ちゃぁ〜んと、神様は見てますよ〜ぅ?
 天罰は朝が一番です。
 だって、猊下がちゃんと目を覚ましていませんものねえ。

 ガッチャン!

 あら、物々しい音ですこと。何の音かしら? 痛そうな音ね。
 シスターが起こしに来たみたいですね。では、そっと『見守り』ましょう☆

「猊下……げ・い・かぁああああああああああああああ!!!!!!」
「げぇえええっ!」

 ごんっ! バシュッ! ズキューン!

――あらあらあら……(汗)

「朝から、そんなもの振り回さないで下さーい!」
「だったら……騒動を起こさないでいただけますかッ!」
「魔がさしたっていう言葉があるじゃないですかぁ」
「猊下は頻繁すぎます!!」

 今日もお二方、元気なようですわ。
 わたくしは置物。部屋に置かれた小さなセトモノに過ぎませんから、壊されないようにそっと見守るばかりですのよ――おほほほほっ☆
 ……と言う訳で、今日も賑やかな一日が用意されているようなのでございます。
    
|Д゚) ゆりうす 豆まきで仕返しなり
|) あんこ 人形焼 けけけっ
 かわうそ?はしっかり餡子武器を用意しているようですけれど……何故?
|Д゚)ノ そこ 突っ込むとこ ちゃう
|Д゚) 謎解決 一撃必殺なりよ
――はいはい。

「恥かしいから、知り合いの来なさそうな所に行ったのに……」
 青年のようにきりりとした女性が教会の外を通り過ぎていきました。
 捕まるのは時間の問題でしょう。

 そして天罰はしっかり下り、他の人たちも仕返しのご用意をし始め、一日は爽やかにはじまります……


 ■END■

* 登場NPC *
 三下忠雄、ユリウス・アレッサンドロ、かわうそ?、高野山の方々、セトモノ

□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号/ PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0413/神崎・美桜 /女/17歳/高校生
0493/依神・隼瀬 /女/21歳/C.D.S.
0622/都築・亮一/男/24歳/退魔師

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

 ご参加いただきまして誠にありがとうございます。
 朧月幻尉でございます。
 かわうそ? は こねこねされてしまったみたいですが、どうやってあの形に戻ったかは謎ですね。

|Д゚) 謎 専売特許なり

 ……だそうです。
 ご希望苦情等ございましたら、ご一報くださいませ。
 それでは個別通信です。

>神崎・美桜様
 お久しぶりです、ゲーム参加は二年ぶりでしょうか?
 懐かしいですね〜。
 可愛らしい様子を上手く書けたかどうかドキドキしますが、もにもにのかわうそ?くんを抱きしめている姿が脳裏を走ります(腐)
 
>依神・隼瀬様
 お〜〜ひ〜さ〜し〜鰤でございます〜〜〜〜〜〜う(抱きつきたい)<やめて;
 お元気でしたか?
 わぁ、わぁ〜嬉しいです〜〜〜〜〜〜☆(号泣)
 この一・二年間が走馬灯のように駆け巡ります。
 凄い嬉しいです。ひしひしとお客様ありきなんだと痛感しています。
 本当に泣きつきたい気持ちでいっぱいです。

>都築・亮一様
 二度目ましてでございます。
 先日は発注ありがとうございました。
 その時のイメージを持って書いてみましたが、これでよろしかったのでしょうかと心臓バクバクです。
 お兄さんは高野から走ってこなければ!とか思って、そこから書いております。
 妙なところに萌えてすみませんです〜。