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貴女の落としたものはミスリルのアフロ?
それは不思議な世界。何も知らぬ者に話せば夢の話か頭のおかしい者と思われるだろう。しかし、現実にある世界。ゲームの中ではあるが。
その呪われたゲームの中で本郷・源は半ば強制的に嬉璃を引き連れダンジョンへ入った。神秘のアイテムが在るというダンジョンの数々の難関、罠を源は潜り抜けた。たとえ、嬉璃がボロボロになろうとも、行く先に宝がある限り進み続けた……そして、お宝を手に入れたのだ!ミスリルのアフロを!!
神秘の金属、ミスリルで出来た伝説のアフロ。ギンギラ輝き、かなり重いがゴージャスな気分になれるらしく、現実世界に戻ってきた源はかなり上機嫌でさっそくミスリルのアフロを装着。ミスリルのアフロは神秘のアイテム。装着した者の頭のサイズに自動フィットというナイス機能付き。
小さな頭にギラギラ輝くアフロを乗せ、ご満悦な少女だが一歩足を踏み出すたび重たい頭を支えフラフラと歩く姿は実に危なっかしい。オマケに着衣は着物で足元は草履という足の踏ん張りつらい恰好である。
上機嫌でじっとしていられないご様子の源は重心の重い頭をふらふらさせて歩き、お約束の事だが石に躓いた。バランスを崩した源の頭の上のミスリルのアフロが偶々、偶然、ほんとーに偶然そこにあった沼へボチャンと落ちる。
「ああっ!源のアフロが沼に!!」
空しく沼に伸びる手。
と、その手の先の薄暗い水面がイキナリ盛り上がり、何かが現れた!
「待っていたわ、小さき者よ。貴女の落としたアフロはこのミスリルのアフロですか?」
沼から現れたのは美しく妖艶な美女。瞳を閉じ、微笑みを浮かべる美女は左手のミスリルのアフロを少し掲げ言うと、反対側の手に持った金色のアフロを持ち上げる。
「それとも、オリハルコンのアフロですか?……ヒヒイロカネのアフロですか?いえ……それともこの様々な金属の妖しく輝くアフロですか?」
泉の精は両手だけでなく、泉からにょっきり伸びる棒にキラキラギラギラ輝くアフロたちを乗せ、源に問いかける。
その光景は異様。
何故沼の中から人間がっ!?
っつーかなんだ、そのアフロの数はっ!!
と、あまりの衝撃に声も出ないご様子の嬉璃は顔を青くして口をパクパクさせる。
(なんぢゃ……あやつは?!まるでなんぞの童話のような事をしよるのぢゃ……んなバカな話が……はっ!)
心の中で呟いていた嬉璃は、ハッと友人の顔を見た。様々なアフロを前に目を輝かせる源。瞳を輝かせて少女は言った。
「ミスリルのアフロじゃ!源のアフロはミスリルのアフロなのじゃ」
「ふふふ。貴女は正直ですね……そんな貴女にこのアフロたちを差し上げましょう」
「なにー!?」
沼の精は妖艶に笑み、その一連のやり取りを見ていた嬉璃は驚愕の声を上げ、怒りの炎を燃やす。
(おのれ、あのアマ余計な事を!)
源と嬉璃は似たもの同士と言おうか、ライバルであり気の合う仲間。だが、そんな嬉璃でも源のアフロ好きだけは理解できなかった。
アフロのどこがいいのか?何がそんなに魅力があるのか?まったくもって嬉璃には理解し難い物体なのだが、その物体に子供らしい純粋な眼差しを向ける源にそんなものは捨てろと言う事が出来なかった。
しかし、このままでは更に源コレクションに部屋を占拠されてしまう……!
「源のアフロはミスリルのアフロのみぢゃ!余計なアフロまで出してくるでない!!」
怒鳴る嬉璃をきょとんと見る源と相変わらず薄っすら笑みを浮かべた顔を向ける沼の精。
「と、あの者は言っていますがどうしますか?」
「嬉璃……ダメなのか?」
シュン、と哀しそうな目で懇願され言葉に詰まる嬉璃。
「うっ……!」
こうして、あやかし荘の一角に源コレクションが順調に増えていくのだった。
嬉璃の胃を痛めながら――
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