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Message Baton
『メッセージバトン。最近ふえてきたよね』
メッセージバトン……それは、此処最近急増し社会現象にもなりつつあった。
『そういっても以前にはやったチェーンメールと同じ類のものでしょう?」
『そうなんだけど……なんか答えちゃうのよね』
雫はカタカタとキーボードを打ち込みかえしながらながら、別の窓で違うサイトを見て回る。
不幸の手紙、チェーンメール。嫌がらせの一部とされていた以前の形態と少し形が違うそう感じ取っていた。
それらの殆どが今流行のウェブログなどを介し、直接ではなく間接的に広がっているからだろうか?
雫さん見てたら、このバトンに答えて下さいねvv
そんな矢先の知り合いのブログの書き込み。
『あ、バトンまわされちゃった』
次にまわす友人達を考えながら、雫は質問事項を確認した。
無機質な光を放つこの画面の向うに必ず誰かしらいる。それは名前も年齢も性別すらも定かではない誰かで、もしかしたら自分のしっている誰かかもしれない。
世界中に張り巡らされた、ネットワーク上に作られた架空と現実の狭間にある不思議な場所……電脳世界……インターネット。
「メッセージバトン?ああ、昔で言う『不幸の手紙』ってヤツか」
少しだけ呆れたような拍子抜けしたような呟きを上げ五代・真は一つのサイトに目をとめた。
「まだこういうの流行ってんのか…。いつの時代も、こういうのは変わらないもんなんだな。ま、暇だし答えてやるか」
手を変え品を変え人というものはかくも暇なものである。
『不幸の手紙』
その昔はやった、『この手紙を受け取ってから○日以内に○人の人に同じ内容の手紙出さないと貴方に不幸が訪れます』といった内容の手紙のことである。
誰が何時ごろから始めたか分からない、最初は些細な嫌がらせが社会現象にまでなった奇奇怪怪な手紙。
「その後は幸福の手紙だったか?」
内容は不幸の手紙と略同じものが、形式を変え『○人の人に同じ内容の手紙を出すと貴方は幸福になれます』といった内容に変化し広がった。
「ええと……で、最初の質問は…何々?」
『貴方の好きな言葉は?』
「そりゃ、男ならこれだろこれ!」
真は迷わず、『根性』と書き入れる。
肉体派な真らしい、簡潔かつあっさりとした答えである。
「そういえば……メールが普及して、チェーンメールなんて言葉も生まれたんだっけか?」
不幸の手紙のメール版。鎖の様に連鎖していく様子からそう呼ばれたものもこれと同じようなものだった。
『今までの人生の中かけられて嬉しかった言葉は?』
「う〜ん……」
この質問に真はモニターの前でそのがっしりとした腕を組み考え込んだ。
「人生の中でかけられて嬉しかった言葉ねぇ……」
改めてそう聞かれても、咄嗟には思いつかない。
「あるような、無いようなだから……特になし…っと、これでいいだろ?」
誰ともなく呟く。
『大切な人はいますか?』
「依頼や仕事等で知り合えた友人…かな?」
一期一会とはよく言ったものである。偶然とはいえ、そこで出会った出会いには必ずといっていいほどその数だけドラマがあった。
これまでの出会いの一部をふと思い出し、真は微笑んだ。
懐かしい人たち…また、何時か会えるだろうか……いや、この東京の空の下できっとまた彼らに会うことが出来るだろう。
ひょっとしたら、今この画面の向こう側にあの時の誰かがいるかもしれない。
同じ題材で回答を繋げてリレーしていく様から、メッセージバトンと呼ばれるようになったこれについて、改めて考えてみると……
「そうか……メッセージバトンって奴はそう考えると…不幸の手紙とは少し違うものかもしれないな」
人との関係に餓えてる現代人が、誰かに自分を知ってもらいたい。自分が此処にいることに気が付いてほしい……人と接することに臆病な人にとって唯一外界との接点なのかもしれない。
強制的なことは殆どなくその大半が自由回答、時にその場で回答が止まることも多々ある。それが、前身である負のイメージの強かった不幸の手紙又はチェーンメールといったものと、今現在あるメッセージバトンの違いなのかもしれない。
真自身はまだ手をつけていないが、ホームページよりも手軽に、日記感覚で運営できるブログの存在もメッセージバトンの普及に一役かっているともいえた。
ウェブ上のログ、ウェブログ。略してブログとは良く言ったものである。
それは他人との関係が希薄になりがちな若い世代に受け、ネットに依存しがちな生活のよりどころとなりつつあった。
「あとは…大切な人に贈る言葉ねぇ……」
時に考え込みながら真は回答していく。
「在り来たりだけど……これかなぁ」
画面に打ち込まれた、言葉は『ありがとう』の五文字。
今までの出会いと、今までの出来事全てに感謝を込めた言葉。
実際に口に出して言うことは少なくなったが、何よりも気持ちを伝えるうえで世話になることの多い言葉である。
「ま、こんなもんだろ」
洒落た言葉など咄嗟でてくるほど、まめな性格でもないだからこれで十分だろう。
『このバトンをまわす人はいますか?』
「誰に回すかって……?」
最後の質問事項を前にして真の動きが止まった。
「あ〜……」
いるにはいる。
「あいつしかいないか……」
気まぐれで自分のことを振り回す親戚のことを思い浮かべ苦笑する。
「俺以上に暇人だから、こういうのあっと言う間に答えるだろうな」
とはいっても……
「俺に送り返されるだろうから……おっといけねぇ」
身内で同じバトンを投げつけあっても、つまらないと思い直し、ふと壁の時計見ると、バイトの時間が迫っていた。
「急がねぇと間に合わねぇ!」
随分とくだらない事に時間を使ってしまってものである。
「やっべぇ」
仕事だ仕事。今まで答えていたメッセージバトンのことはすっかり忘れ、慌しく真は部屋を出て行った。
残されたものは、終了画面が浮んだパソコンが一台……
他の誰かが回答を見かけ、バトンを持ちかえることもあるかもしれない。繰り返される答が伝える回答者の思い……メッセージ……この後何処を経由してどう繋がるかは誰も知らない……
【 Fin 】
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【1335 / 五代・真 / 男 / 20歳 / バックパッカー】
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■ ライター通信 ■
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はじめまして、そしてお届けが遅くなって申し訳ありませんでした。
ライターのはるでございます。遅くなりましたが『Message Baton』をお届けさせていただきます。
曖昧な依頼にも関わらず御参加ありがとうございました。
何か、イメージと違うというようなことがありましたら遠慮なくお申し付けくださいませ。
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