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<五行霊獣競覇大占儀運動会・運動会ノベル>


『図書館は大迷路!?』



●オープニング

 五行霊獣競覇大占儀運動会の競技会場のひとつ、山音・翠(やまね・みどり)が館長を務める、巨大図書館にある迷路のような書庫。道が入り組み、不思議な生物がいるかもしれないこの図書館にて、翠が隠した銀色の本探しが、始まろうとしていた。

「本のセット完了よ。じゃ、頑張って本を探し出してきてね」
 そう言って、今回の競技の舞台となる図書館の館長、山音・翠は楽しそうに言った。
「初めまして。朱雀組、櫻・紫桜参加させていただきます」
 物静か、かつ礼儀正しい態度を取り、櫻・紫桜(さくら・しおう)は翠に軽く頭を下げて、次に今回この競技に参加する他の者達へと丁寧に挨拶をしていた。
「赤組の櫻・紫桜です。よろしくお願いします」
「あなた高校生か?随分落ち着いてるじゃないか」
 黒神・妖(くろがみ・よう)が、真っ黒な服装をして軽く笑っていた。
「私は黒神・妖だ。何だか良くわからないが、運動会だと皆が騒いでいるからな、何となく参加した」
「何となく、ですか」
 紫桜が返事をすると、妖があたりを見回して答える。
「こんなに大きな図書館とはなあ。こりゃあ、探すのが面倒そうだ」
「だからこそ競技で使ったら面白いんじゃなねえの?あ、俺は天慶・律(てんぎょう・りつ)ってんだ。本当は探し物って苦手なんだけどな。ま、楽しくやろうぜ?」
 律が元気良く答えながら、妖の方を眺めていた。
「なあ、お前はあの鉢巻使わねえの?」
 青龍組の青い鉢巻を締めながら、律が妖に問い掛ける。
「別に、義務じゃないだろう?私のこの黒の格好で十分識別可能だが、何か?」
「皆様、色々な格好をしていますのね」
 学校の女子が着ているのと同じ、体操着とブルマー姿に白い鉢巻をつけた姿のマイ・ブルーメ(まい・ぶるーめ)が、にこやかに微笑んで見せた。
「体操服か?気合入ってんなー」
 律の言葉に、マイはさらに明るい笑顔を作って答えた。
「これが日本での運動する時の伝統服装だと、私が良く行く商店街の方々に言われましたので」
「まあ、間違ってはいないと思いますけどね」
 この競技に参加した、唯一の女性であるマイの姿を見て、紫桜はそっと呟いた。
「普段の生活を全て忘れて、参加させていただきます。運動会ですしね」
 落ち着いた、ゆっくりとした口調で加藤・忍(かとう・しのぶ)も皆の会話に話を続けた。忍の額には、黄色の鉢巻が巻かれている。
「私は今回は運営係りとして、翠さんのお手伝いをする事にしますね」
「あら、そうなの?それは助かるわねえ。一人では何かと行き届かない所もあるだろから。それにしても、今回見事にチームがばらけたのねえ」
 翠が言い終わるのを聞き届けてから、忍がそばの壁にかかっている時計に視線を移した。
「皆様、そろそろ競技のスタートの時間ですよ」
「おっと、遅れちゃマズイな。よし、気合入れていくか!」
 律が、メイン会場となる書庫の入り口の前へと歩いていくと、他のメンバー達もそれに続いて歩いていった。
「準備はいいわね?ここは、ひとつの書庫なんだけど、中にしきりがあって、東西南北、4つの部屋に分かれているの。ま、どの部屋の本棚も気まぐれだけどね。それでは、図書館大迷路・銀の本探し、スタートよ!」
 翠の言葉を合図にして、律達は一斉に書庫の中へと入り込んだ。



●北の書庫 〜迷える図書館!?〜

「このあたりは、西洋の歴史関係の本が並んでいるようですね」
 紫桜は書庫の棚と棚との間を通りながら、ぎっしりと詰まっている本棚に視線をじっくりと当てて銀色の物を見逃さないように、同時に妨害の物が来てもすぐに対応出来るように、自分の背後にも神経を尖らせていた。
「棚と棚との間は、1mちょっとでしょうか。刀は持たない方で良さそうですね」
 他の者達は、書庫に入ったと同時に違う部屋へと駆け込んでいった為、紫桜は一人で書庫の間を歩いていた。
 入り口から奥へ進むにつれて、部屋の中が薄暗くなっていく。まったくの闇、とまではいかないが、この北の書庫は照明もまばらであるところからして、ここにはあまり人が来ないのだろうか。それとも、わざとこうしているだけなのか。
「こんなところで本を読んだら、目が悪くなりそうです」
 ある程度歩いた所で、紫桜は本棚の所々に置いてある踏み台を使って棚をよじ登り、天井にポストイットをくっつけた。
 ただの粘着性のメモ帳であるが、翠からこの書庫の棚が移動すると聞いた以上、目印をつけておく必要があると思い、事前に用意していたのであった。
「しっかり張ったので、そう簡単には剥がれないでしょうが。さて、一体どこに隠されているのやら」
 そう呟くと、紫桜は足を止めた。
「まさか、火を使って障害物を取り除くわけにもいきませんし」
 紫桜の進む先にあった通路が、突然動いた本棚で遮られてしまったのだ。
「これでは、書庫を管理する翠さんも大変そうです」
 紫桜は動いた本棚に近づいたが、本棚が動く様子はまったくない。棚をコブシで叩いても駄目で、ずれた棚を動かすといっても、その棚にも本が沢山入っているのでかなりの重さがあり、とうてい動かす事は出来ない。
 紫桜は、動いた本棚に銀色の本がないことを確認すると、今来た道を引き返し、また別の通路を通り、探索を続けることにした。



●西の書庫 〜体操服でいっきまーす!〜

「でも、ちょうどいいイベントが重なって良かったです。この近くで運動会の練習を子供達としていたから、ちょうど良かったですし」
 マイは、科学的な内容の本が並ぶ南の書庫を歩き回っていた。
「かなり難しい内容の物もあるみたいですね。こんなに広く、本の数も多い図書館ですから、死ぬ方法についての本もあるかもしれませんね」
 マイは並んでいる本のタイトルのひとつひとつを見つめながら、通路を静かに歩いていく。
「それにしても、あの商店街の方々は、いつも私に似合う服を選んでくれるので、ありがたい事ですね。それにオマケもしてくれるし」
自分の身を包んでいる、体操服を見つめ、マイは商店街のオヤジ達を思い出していた。
「この国の学校の女の子達は、皆ここまで腿を出すのですね。健康的ですわ」
 棚を見つめながら、次の部屋へ入ろうとした時であった。
 手前にある本棚がゆっくりと動き、同時に収まっていた本が一冊、勝手に本棚から抜けて、マイの方へと飛んできた。
「あれが、武器の本というものですね!」
 それ程素早い動きではなかったが、ページがめくれたかと思うと、そのページの中から剣やナイフ、棍棒や鎖鎌といった様々な武器が抜け出してきて、マイの方へ近づいて来た。
「こんなに一度に」
 本のページから出現したナイフが真っ先に飛んできたので、マイは身をかがませてナイフを避けた。
「危ない!」
 本は床に刺さり、しばらくするとその本はまた別の武器をマイへと投げかけてくる。次に登場したのは弓と矢で、マイは無数の矢を体に受けた。
「激しいですね。でも、私ではつまらないでしょう。私は、死ぬ事を禁じられていますから。こんな傷、夜になれば治ってしまうもの」
 マイは体に刺さった矢を一本一本引き抜くと、それを床に投げ捨て、再び銀の本を目指して歩き始めた。
「でも、あんなものが出るとなると、他の皆様が心配。怪我をしていたら、私の能力で癒してあげられるけど、どこにいるかわからないし」
 本棚の並びと動きを見、さらに一緒に参加した他の者達の声が聞こえるように、マイは神経をとがさせながらも、書庫を歩き続けた。

●東の書庫 〜目指せ一番乗り!〜

「それにしても、すげー迷路みたいな図書館だな」
 律は文学の本が並んでいる書庫を歩き回りながらも、動く棚の存在に頭を悩ませていた。
「邪魔な棚だよな。この棚、蹴倒せねーかな」
 律の動きに合わせるかのように、棚が動き回り、律の行く手を遮っていた。おかげで、思った通りの方向に進めやしない。
 多少苛立ちを感じていたが、だからといってここで能力を使い、この本棚を燃やしてしまうわけには行かない。
「ま、本当は燃やしながら進むのが早いんだけどさ」
 文学の本を眺めつつ、律は通路を進んでいく。
「この競技が終わっても、普通の図書館としてくるには、ちょっと難しいかな、こんな棚がいるんじゃな」
 と、顔を別の方向へと向けた時、すぐ横にある棚の脇から狼のような生き物が飛び出してきて、律の足に噛み付いた。
「うわっと!?」
 とっさに避けたので、深い傷を負う事はなかったものの、服が少しだけ破れてしまった。
「何でこんなところに。あ、そうか、あのおかしな本だな!」
 律の方へやってくる狼のような生き物は一匹だけではなかった。さっきの動物のあとに、リスやうさぎといった小動物、さらに上空からは鷹が律目掛けて飛んでくる。
「また増えた!キリがないぞ」
 律の邪魔をしようとする動物が、数秒の間で10数匹にまでなってしまった。どこかに動物の本がいるのだろう。
 しかし、この状況の中、なかなか本体を探す事が出来ない。小動物が手足で律に攻撃するのはまだいいが、狼やライオンといった大型の肉食動物の牙や爪は、ヘタをすれば重傷にまでなってしまう。それに律は、あまり小動物に乱暴な事はしたくなかった。
「そうだ、これならどうだ!」
 律は手の平に青白い炎を作り出した。それを見た動物達は、さすがに怖がったのか、律に近づいてこなくなったのであった。
「やっぱり。獣は炎に弱いんだな。攻撃は出来なくとも、威嚇には使えるかもな」
 本体の本を探そうと持ったが、グズグズしているわけにはいかない。律は炎を手にしたまま、さらに奥へと走り出した。



●南の書庫 〜私は待つだけ〜

 入り口から少し奥まったところにある南の書庫で、風土関連の本に囲まれながら、妖はそこいらの本を手にし、読んでいた。
「それぞれの風土も、なかなか面白いものだ」
 今回、偶然にも名前と同じく、黒チームであった妖は、探すのは面倒だからと自分で妖怪を作り出し、妖怪達に本の探索をさせていた。
 餓鬼10匹に火車2匹、鎌鼬3匹一組を放出し、他のメンバーを追いまわすように命令した後は、自分は入り口から少し離れた場所にある南の書庫に椅子を運び、のんびりと読書タイムを満喫しているのであった。
「ふむ。妖怪達を放ってからもう30分になるのかな?そろそろ、誰かこちらに戻ってきそうなものだが」
 そう言って、妖は書庫の奥の方へ視線を投げかけるが、特に何かがやってくる気配もない。
「他の者達が、案外時間くっているのかもしれないな。ま、ここは焦らず、といったところか」
 本を一冊読み終え、それを棚に戻し、別の本を取り出した。
 ところが、その手元の本が急に小刻みに揺れ出し、自分からページを開こうとし始めた。
「何だ、この本は。妖怪なのか?」
 とっさに手を離すと、その分厚い本のページから、煙のような物が噴出し、それが人間のような形に変形した。
「そうか、あれだな?奇妙な本がここに存在していると聞いていたが」
 本は宙に浮いたままで、人形の白い影が頭のような部分を動かして、こちらの様子を伺っている。それでも、妖はその本にそれなりの敬意を見せていた。
「変わった本だ。それに、色々な形を出せるのか?興味があるな」
 しかし、その本は妖を敵だと感じ取ったのだろう。白い人形の部分が急に伸び、妖に殴りかかってきた。煙のようなのに、殴られるとかなり痛かった。
「データーでもと思ったが、今は競技の真っ最中だ。また後日にするとしよう!」
 と言い切ると、妖は自分の腕に妖気を集め、一気に本目掛けて放出させた。しょせんは本、のようで、その妖気を全身に受けた本は、あっさりと5つ程先の通路の奥まで飛ばされてしまった。
「さて、もう少し読書を楽しむか。しかし、あの動く本には何が書いてあるのか気になるが」
 妖は、再び椅子に腰を降ろした。



●スタート地点 〜お手伝い〜

「おや、何をしているのかしら?」
 皆が競技で書庫の方へ行っている間、忍と翠はスタート地点である、書籍閲覧室のソファーで雑談などをしていたが、少ししてから、忍がゴールの目印としている白いテープを剥がし、もっと書庫に近い場所に張り始めた。
「テープをどかすの?」
「ええ。この図書館はかなり広いとお聞きしましたし、中では皆様が激しい攻防戦を繰り広げていると思うので、少しでもゴールは近い方が良いのではないかと思いまして」
 翠にそう答えると、忍はテープを書庫よりの壁、翠のいるソファーからさらに離れた場所へと張りなおした。
「まあ、それぐらいの距離を動かしても問題はないわね」
 翠がにこりとして、コーヒーに砂糖を落とす。そのコーヒーも、忍が用意したものであった。
 忍は、テープを張りなおすと、そのそばに椅子を並べ、小型のテーブルを置き、簡易版の休憩所を作り上げていく。
 コーヒーや茶、ジュースのペットボトルをテーブルへ行き、様々な種類の菓子も用意する。忍はのんびりとした話し方をするものの、休憩室を作り上げていく動作は機敏で、ものの数十分でひとつの休憩室が出来上がった。
「貴方が来てくれて助かったわ。ここで競技をすると言ったものの、いざ当日になったら、一人では大変だと思っていたところなの」
「翠さんは、最終チェックの方をお願いします。私は参加者の方々のもてなしを」
 忍はそう言いかけた時、書庫の奥からいくつかの気配が近づいて来るのに気づき、そっと呟いた。
「そろそろ、私の仕事の番のようですね」



 一番最初にゴールへ走っていくのは、律であった。律は、東の書庫で再び動物の本に囲まれたものの、とっさに近くにあった棚を蹴り倒し、動物の本を棚で押しつぶしたのであった。その時棚からこぼれた書籍の中に、この銀の本が混ざっているのを発見したのであった。
「よし、一番乗り!」
 その後ろから、同じように銀の本をかかえたマイが続く。マイの体操服は、せっかくの新品なのに無残に、所々切り刻まれている。
 マイは、5冊もの武器の本に追いかけられ、西の書庫の一番隅まで追いかけられたものの、その一番奥の棚に収まっていた銀色の本を見つけ、しっかりと抱いたまま、武器の本の下を滑りぬけた。
 怪我をしても大丈夫というものの、服だけは傷つけられてしまい、そのまま本から逃げるようにして一気に入り口まで走ってきたのであった。
「あら、これは?」
 入り口まで走る律とマイの後ろから、何かの足音が聞こえてきた。
「うわあ、何だあいつら!」
 振り向いた律の瞳に、肋骨が浮き上がり、腹だけがやたらに突出した鬼が数匹、波のように押し寄せてきた。
「誰だ!妖怪使ってるやつは!」
 律はそれら餓鬼に取り押さえられ、もう少しでゴールという所で身動きすらもとれなくなった。炎を繰り出そうとするものの、律の体には10匹近くもの餓鬼が絡みつき、手足を自由に動かせなくなった。餓鬼達が、律の本を奪っていく。
 その横を、マイが走りぬいていったが、マイの後ろから車輪のような姿の火車が飛んできて、マイの背中に突体当たりをした。
「うわあ!おい、マジかよ!」
 その拍子に、マイがよろめき、服の中に隠していた銀色の本が地面に落ちる。後ろから来た鎌鼬がそれを拾い上げると、ゆっくりと歩いていてくる妖とともに入り口へと向かっていってしまう。
「これも作戦の内だ。恨むなら恨め」
 妖がぼそりと律とマイに呟いた。
「ふざけるなー!」
 律が突然、体から青白い炎を吹き出し、自分の体を取り押さえていた餓鬼を炎で焼き払おうとする。突然の出来事に、餓鬼達は驚いたのか、一瞬律を押さえつける手を緩めた。そのすきを見て、律は餓鬼から逃げ出し、本を取り返し、一気にゴールへ走った。
「あいつ、妖怪使いだったんだな。それよも、大丈夫か?」
 律がマイへと近づき、体を起こそうとする。
「有難うございます。でも、私は大丈夫です。どうせ、私は死ねない体なのですから。それよりも、早くゴールへ」
 マイが微笑みながら答えた。
「ああ、ありがとな」
 律もマイに言葉を返した。

 律はゴールまで一気に走りぬけたはいいもの、急ぎすぎてすっかりまわりを見失っていた。ゴールのテープを切ったのにも気づかず、横で話し掛けようとしていた忍をも無視して走り抜けており、気づけば翠の前に立っていた。
「あら、おかえり。貴方が一番ね?」
「あ?俺、一番?よっしゃ!」
 律は、翠に本を手渡した。

「お帰りなさい。お疲れでしたね」
 律に続き、2番にゴールへたどり着いた妖に、忍が飲み物を持って話し掛けてきた。
「おめでとうございます。惜しいですね2番ですよ」
 忍が2等、と書かれた札を妖に差し出し、にこりとしてみせた。
「妖怪達が頑張ってくれたからな」
 妖がそう答えると、忍がさらに言う。
「本はこちらでお預かりします。翠さんがあちらで、今回の競技のまとめをしている所なので、私が一時的にお預かりしますよ。素晴らしいですね」
 妖から本を受け取り、忍が翠の方へ向かおうとした時、横から声が飛んできた。
「せっかく、私が見つけましたのに」
 休憩所に、マイが飛び込んできた。
「仕方がないだろう、作戦は作戦。それにもうとっくに私はゴールした」
「でも、せっかくなら本を持ってゴールしたかったです」
 マイが妖にそう言っている時、翠が忍と共にやってきた。先にゴールした律も一緒にいた。
「困ったわね。まさか、そういう手で来るとはね」
 妖とマイ、律が一斉に翠の方へと振り向いた。
「詐欺だなんて思わないで下さいね。私は私の仕事をしたまでですから」
「どういうことですか?」
 その時、後ろの方で足音がし、ようやく紫桜が戻ってきた。かなり疲れているように見えているが、その手には銀色の本が握られていた。
 紫桜は、結局地道に捜索を続け、道に迷い、どこかはわからないが、棚の一番下、足元に光る銀色の本を見つけ出したのであった。
「目印のポストイットがほとんど剥がれてしまいまして。裏を見たら、埃が沢山ついていました。おかげでかなり道に迷ってしまいましたが」
 紫桜がそう答えると、翠が少しだけ笑って見せた。
「とりあえず、紫桜君が3番ね」
「2番は私が」
 忍がそう言うと、妖が顔をしかめた。
「何だ?競技の係りじゃないのか?」
「係りのフリをした参加者。作戦のひとつですよ。こうすれば、皆に怪しまれずに、しかも楽に本を手に入れられますから」
「ずるいぞ!」
 忍の言葉に、律が抗議をする。
「ま、これはゲームみたいなもんだし、ね?」
 翠がその場をなだめようとする。
「私も知らなかったわよ。まさか、こんな手を使ってくるなんて。でも、本を持ってきたのは間違いないからね。妨害もOKって事になっているし、ね?」
 こうして、途中色々な事がありながらも、図書館大迷路の勝負がついたのであった。
 1番は突っ走ったのが幸いした律、2番は頭を使ったトレジャーハンターの忍、3番は道に迷ったおかげで、何とか順位に入った紫桜。結局奪ったものを奪われてゴールした妖は4番であった。
 体操着がはだけそうな5番のマイは順位には入らなかったが、誰よりも堂々と本を探した選手である事を称え、翠から特別賞が贈られ、今回の競技は終了した。(終)



◇登場人物◆

【0126/マイ・ブルーメ/女性/316歳/シスター/白/5位】
【1380/天慶・律/男性/18歳/天慶家当主護衛役/青/1位】
【5453/櫻・紫桜/男性/15歳/高校生/赤/3位】
【5745/加藤・忍/男性/25歳/泥棒/黄/2位】
【5768/黒神・妖/男性/25歳/妖怪使い兼妖怪研究者/黒/4位】

◇獲得点数◆

青組:30/ 赤組:10/ 黄組:20/ 白組:0/ 黒組:0


◇ライター通信◆

 天慶・律様
 
 初めまして、ライターの朝霧青海と申します。シナリオへの参加、有難うございました。
 演出重視で描いておりました。プレイングから、律さんはどんな事を思いながら行動するかを考え、最後はかなり目立った演出にしてみました。
 今回は、最初は視点別になっていますが、それぞれのシーンは、そこの主人公ごとの演出、最後のシーンは勝負の行方がわかりやすいように、神様の視点になっております。
 それでは、ありがとうございました。