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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


永久秋温泉旅行記 2日目

 秋の日差しは春の日差しより弱い感じがする。
 秋の女神は、風を送る。
 そして、其れに倣って静香も風を送った。
 

「さて朝ですよ〜」
 と、恵美が皆の部屋をノックして起こす。
 嬉璃は眠たそうに朝のTVをつけている。
 同じように、草間零が草間達を起こしていた。
「うーん、後5分仕事はもうちょっとあと……」
「兄さん今日はお仕事じゃないですよ。旅行でお祭りです」
「あ、此処は永久秋か」
 
 と、皆が洗面などおわり、朝食を摂った。
 すると女将が、
「申し上げましたとおり、今日は松茸狩りを行う日でございます」
 と、本日の予定を教えてくれた。
「松茸沢山取れたらいいな♪」
 エヴァもSHIZUKUもうきうきしている。
「あ、此処の饅頭は美味しいんだよ。誰かの所為で前、食べ損ねたし」
 茜は永久秋饅頭を言っているようだ。

 と、各々が楽しみを持ちながら、準備と直ぐにでも帰る事が出来るように帰り支度も済ませておく。

「では、本日もお楽しみ下さい。お昼になりますと、近くの河原で祭り、と言いますか宴が催されますので是非ご参加下さい」
 と、女将が言ってくれた。


〈朝の一寸した事〉
 アルシュとチャーム、焔が屋根の上で白里焔寿を待つ。既に人より早く起きており、女将の猿渡秋葉に朝ご飯を貰っていた。人が準備するまで暇なのである。赤とんぼを観ては其れにじゃれながら飼い主を待っていると、着物の女性が屋根に登ってきた。
「?」
「おはようございます」
「にゃあ」
 獣たちは彼女が見えない。静香が登ってきたのだ。
 声で分かったので、猫なりの挨拶をする。
「皆様、楽しみのようですね」
「にゃー(焔寿も張り切ってる)」
「其れは何よりです」


 さて、早起き組の方は、シュラインに零、牧鞘子だ。彼女たちは朝風呂を満喫するのだが、先客が居たようだ。
「みそのちゃん……」
 そう、海原みそのは気持ちよさそうに温泉で眠っている。
「おきて、おきて」
 シュラインさんが起こすと、未だ寝呆けているため、
「あ、え?ここは? まぶしい……おはようございます」
「ヒョッとして……寝てたの?」
 牧鞘子が怖ず怖ず訊いてみると、
「え? はい♪ あまりにも気持ちいいモノでして、そのまま眠ってしまったようです。あ、安心して下さい。溺れませんし風邪もひきませんから♪」
 と、にっこり微笑むみそのさん。
 彼女の正体を知っているシュラインさんや零ちゃんは苦笑するが、
「じょ、丈夫なのね……」
 牧鞘子は分からない模様。
 温泉自体、神属性の強い存在は眠ってしまうため、みそのにとっては極楽なのだ。彼女の特性からすれば水の中で生きている存在な為問題はない。湯に浸かっていると、またそのまま眠ってしまいそうだ。

 朝風呂を満喫する数名の中、
「こ、恋人だらけ……」
 と、水面まで口を付けて、ブクブク呟く鞘子。
 恋人居ない歴=年齢らしいので、彼女にとっては針のむしろ。かなり、悲しい気分になる。そんな事を考えているのだが、何となく上に何か居るような気がした……。
「あら、焔ちゃんおはよう。お風呂好きなのね」
 と、シュラインさんがにっこり笑う。
「にゃ〜」
 そう、鞘子の頭には焔がのっかっていたのだった。機嫌良さそうに鳴いている。
「何時の間に!」
 驚く鞘子。
「ふにゃ!」
 鞘子が驚いたため、焔が温泉の中に落ちてしまう。猫なので、泳げないという先入観から、急いで助け出す鞘子。猫はあまりに驚いたのか目を回していた。
「ご、ごめんねぇ」
「ふ――ッ!!」
 猫は怒っている。

 結局、鞘子は朝っぱらか酒を飲んで恋人の居ない寂しさを紛らわし、シュラインと零はそのまま朝風呂で気持ちよくなっていた。因みにみそのはそのまままた眠ってしまったため、かわうそ?によって助け出される。
「今年こそ恋人ゲット!」
 と、秋の空に叫んでみる鞘子だが。
「むりー むりー むりー」
 木霊が例の小麦色の声で返ってきた。
 ずっこける鞘子。
「かわうそ? くんのいじわるー!」
 叫び返す鞘子。
「可哀想ですね」
 零が心配そうにするが、
「あんな感じでも、楽しんでそうよ」
 微笑んでいるシュラインさんであった。
 鞘子は徳利を空けるまでゆっくりするそうだ。「湯当たりしないように」と一言言って、シュラインさんと零ちゃんは先に上がっていった。
 鞘子は、風呂から上がった後、保護者の人形師に自分が遭難した事を告げるのだが、
「何かに引き寄せられているのかも知れないな」
 と、言ったらしい。
 鞘子は一応天狗使いの修行をしているわけで、迷う事はないという。しかし遭難するというのは何か不思議な力が作用していると考えられるのだ。推測の域を出ないのだが。

 ハッキリ目を覚ました海原みそのは、女将にサラダ油セットを渡す事をすっかり忘れていた。
「ああ、うっかりしていました」
 しかし、済んでしまった事を悔やんでも仕方あるまいと、女将を捜して、
「秋葉様。おくれまして申し訳ありません。これつまらないものですが」
「あ、これはどうもありがとうございます」
 秋葉に出会い、昨日の忘れ事を果たせたのであった。


 鹿沼デルフェスと響カスミは、同席の人より早く起き、顔を洗う。
 デルフェスは溜息をついていた。
「友だちとの楽しい一時や、好きな人と過ごす時間は早いですわ」
 と、呟く。
「そうよねぇ。いつの間にか終わってしまうんですよ。2日目もしっかり楽しみましょうね」
 と、響カスミが乱れた髪にブラシを通している。
「ふぁー おはよー」
「おはよー」
「おはようございます」
 SHIZUKUやエヴァ、榊船亜真知も欠伸をしながら起きてきた。
「おはようございます、エヴァ様 SHIZUKU様、亜真知様」
 にっこり笑うデルフェス。

 白里焔寿はと言うと、
「数時間記憶がないような気がします」
 と、チャームに話しかけるが、所詮チャームは猫なので、
「にゃー? にゃー、にゃー」
 と、鳴いているだけ。
 動物会話の指輪をしても、「お腹空いた」か「遊んで」くらいしか無い。簡単な言葉が分かるぐらいだ。焔並の知能があれば、人間並の会話が出来るらしいが、焔は今何処かに出かけている様子だ。猫故に気ままなのだ。焔寿は猫が好きである。故に猫の気ままな性格を好きであろう。
“にゃ? どしたの?”
 と、思っているときに焔が戻ってきた。
「おはよう焔ちゃん。う〜ん、記憶がなくなったから一寸、ね」
“……あまり気にする事無いよ”
「うん」
 と、身支度して、キノコ図鑑を手にした。


 梧北斗は窓際で黄昏れている。
「はーあっという間だったなぁ」
 秋の景色を見ているが、張り切りすぎたためか
「梧、もうご飯だ。行くぞ」
 と、皇騎が言って、鼻歌交じりで食道に向かう。
「おい、まてよ! 恋人と会ったからってウキウキしてるんじゃない!」
 と、梧が追いかける背中で、窓の外に“いる”静香がクスクス笑っていた。


「義明君 義明君」
 天薙撫子は寝相の悪い恋人を起こしている最中である。恋人の名は織田義明。ゆさゆさ彼の身体を揺らすが反応がない。まるで死んでいるかのように眠っている。
「本当に疲れていらっしゃるのですね。本当、戦い続き(?)ですからね」
 と、撫子は彼の頭を撫でる。
|Д゚) ……
|Д゚) ちう
|Д゚) ちういけ、ちう
「そう! 其処を……」
 小麦色と長谷茜が隠れて見ている。
 呆れていると言えば、欠伸をしている草間武彦だ。
「朝っぱらから……楽しい事を……あぁ眠」
 と、喫煙場を探している様子。
 微笑みながら、シュラインとが草間のぼさぼさ寝癖を軽く叩きながら(寝癖を直しなさいと言う事だ)、
「茜さん、かわうそ? 朝から覗きなんて趣味が悪いわよ」
 と言った。
|Д゚*) むぅ 美人に注意された
|Д゚)ノ 御意
 素直な小麦色は茜を引っ張って退散する。
「ああ〜」
 ズルズル引っ張られる茜。苦笑するシュラインさんは草間の寝ぼけた顔をながめ、彼が煙草を吸い終えるまでじっとしていた。
 気配が消えたのを確認してから撫子はキョロキョロして、何かを決意した模様。少し頬を赤らめて、義明の頬にキスをした。すると、義明のどんどん血色が良くなる。目が覚める義明。
「おはようございます義明君」
 微笑む撫子。
「あ、お、おはよう。もう朝か……早いね」
 未だ寝ぼけている様子の義明だが、まだ寝顔やその寝ぼけ顔に子供っぽいところがあるようだ。其れがまた可愛くて仕方なかった。


〈さて松茸狩り 10:00〜12:00〉
 朝食を一通り済ました後、亜真知と女将が話している。
「申し訳ありませんが、ここは民宿ではないのでお客様に厨房をお貸しする事は出来ません」
 と、女将は榊船亜真知に深々と頭を下げた。
「あら〜残念です。撫子姉さまにお伝えしなきゃ……」
 ションボリ気味の亜真知サマ。
 梧と零が近くでその話を聞いており、
「あの、亜真知さん」
「はい?」
「村の人の手作り料理を楽しむのもまた風流と思いますよ?」
 と、零が言う。後ろで梧画ウンウン頷いている。
「そうだとおもうな。確かに、あんたの料理の腕は素晴らしいだろうけど、此処では“永久秋自慢”の味を堪能する方がいいぜ。其れに俺たち客だから楽しようぜ?」
「それは、そうですが……」
 確かに零や梧の言葉に一理ある。此処は納得するしかない亜真知サマであった。
「約束は、帰ってからでもいけるよね……」
 と、後に事情を聞いた撫子が呟いた。


 そして、入山する一行。こう言うときに団体行動より、個人の行動になるため、必然的に数グループに分かれるだろう。

 1:シュライン・エマ、草間武彦、白里焔寿、草間零と猫3匹
 草間武彦とシュラインは、焔寿と零達を連れていた。草間は流石に此処で煙草が吸えない事に少しイライラしているようだが、妻と妹の楽しむ姿に其れを我慢しているようだ。こんなところで煙草でも吸えば火事になりかねないと言う事は、草間は知っている。
「愛煙家であるために、ルールは守らないとな」
 とか、心の中で思っていてくれればいいが。
 其れはともかく、シュラインが零と草間にこういった。
「武彦さん零ちゃん、ねぇ、少し多めにとって、家で食べないかしら?」
 と。
「いいですね♪ 賛成です♪」
「そうだな。其れはまた贅沢なモノになるだろうな。酒のつまみにももってこいだ」
 零は笑って喜び、草間も少し笑って頷いていた。
「あ、発見です。さてこれを」
 と、零が赤松を見つけて松茸を採ろうとするが、
「それは、もう笠が大きく開きすぎて美味しくないですよ」
 と、焔寿が止めた。
「え? そうなんですか?」
 キョトンとする零。
「あ、確かそんな事を聞いた事があるわね。傘が小さいものを探しましょう」
 シュラインがうんうんと頷き、美味しそうなものを選んで籠に入れる。
 草間と、シュラインがこうして松茸狩りを満喫している最中……、焔寿はというと、辞典を片手に毒キノコを避けて松茸を採っている。零も二人っきりにしたいと思ったのか(誰を?)、焔寿と共に行動している。
「だめよ、アルシュ! チャーム!」
 猫たちが野生本能を刺激されたのか、近くを通っていたリスを見つけては追いかけようとしているのを焔寿が止める。
“りすだー! りすだー!”
“きゃー た、たべられる!”
 猫たちは聞いちゃ居ないようだ。
「もう! 2人とも! 待ちなさい」
 追いかける焔寿。
「焔寿さん危ないです!」
 零が焔寿を追いかける。
「きゃあ!」
 足を滑らせて、焔寿が勾配から転げ落ちる!
「!?」
 零が彼女を支えたが 反動が零も巻き込まれそのまま転げ落ち……。
 と思ったようだが、何かにぶつかった感じがする。そして「ぎゅう」と間抜けな声。
 落ち葉が舞い散る中で、2人は気が付くと、草間を下敷きにしていたようだ。
「まったく、危なっかしい。むやみに走るな、焔寿、零。で、2人とも大丈夫か?」
 と、下敷きになっても草間は2人を心配しているように言った。
「大丈夫? 武彦さん? 零ちゃん 焔寿さん……?」
 シュラインが小走りにやってくる。
「えと、わたしは大丈夫です……」
「わたしも……ありがとうございます」
 と、零と焔寿が起きあがった。
「ごめんなさい」
 2人は謝るが、
「いや、無事なら良い。気をつけろ」
 と、草間は2人を怒らなかった。
 草間の下には……目を回している小麦色が伸びていたのだった。
「あらま 3人分支えてたの?」
 シュラインと焔寿は小麦色を抱き上げて介抱した。

 そして、猫も気分良く遊び、4人とも山の景色を満喫しながら、松茸狩りを再開する。シュラインは綺麗な落ち葉も拾って、彩りにするそうだ。
「あ、武彦さん。頭に落ち葉」
「ん?」
 シュラインが草間の頭に着いた落ち葉を取った。
 鮮やかな赤。
「綺麗ね」
「そうだな」
 と、穏やかに笑う2人である。

 少し遠くで、松茸狩りをしている零と焔寿は、こっそり木の陰に隠れて見ている。
|Д゚) ちょっちわりこめない
「やっぱり、良い感じですねぇ」
 ナマモノが焔寿と話し合っている。
「あんなゆったりした兄さんはあまり見かけません」
“熱々カップルやバカップルじゃないし。夫婦だし”
「其れはそうですね焔ちゃん」
 お邪魔ムシは退散する方向で、草間達が心配しない程度にではあるが少し距離を置いた。


〈午後の宴会〉
 河原には沢山の人だかりが出来ている。
「祭りだー!」
 と、元気な子供達が走っていく。
「逃げないから。危ないよ」
「あ、ここみたいよ?」
 シュラインが〈あやかし荘ご一行〉、〈草間興信所ご一行〉と書かれている。席を見つける。
「ようこそ、いらっしゃい」
 と、村人が迎えてくれた。
 農作業から戻ってきた人や、思い思いの服を着ている人、浴衣姿の観光客と様々だ。かなり和気藹々としており、村人と観光客が談話している風景を見かけるのだ。川では、釣りをしている人もいる。相変わらず例のアレも釣りをしている。カワウソの身体能力があるのだからそっちが良いのではと思うだろう。
「いや、アレはアレで見合った行動だと思う」
 梧は思った。釣りをしているときに不慮の事故というモノがある。魚ではなく、アレが釣れるは困ったものだろう。
 バーベキュー、松茸づくしである。そのまま釣った魚は簡単な下ごしらえをするだけで、炭火で焼く。屋台らしきモノは全て近場の店舗みたいなもので、八百屋、肉屋、お土産屋である。あと、草鞋作りコーナーなどの体験場所。中央には盆踊りの櫓っぽいものがある。言ってみれば、村総出のバーベキュー大会。
「踊るのかしら?」
「歌うのかな?」
 カスミやSHIZUKUが首を傾げる。
「歌って踊るようですわ」
 デルフェスがガイドなどをするために下調べした知識の中に少しだけあったので説明する。
「地元の歌似合わせて踊ることもあれば、青年団主催のカラオケ大会などもあるようですわ♪ 此処の伝承を伝えていくための一環でも合うようですわ。昔の事を語り継ぐための祭りなのだとか」
「なるほどー」
「音楽という事は私たちも頑張らなくてはなりません」
 アイドルと音楽教師は燃え上がるが、お腹が鳴るので、2名赤面。
「まずは、お昼ですね♪」
「ですねー」

 準備は全て秋葉と村人がしてくれたので、後は焼くだけ食うだけ飲むだけ。足りなければ、屋台まで走っていけばよいし、釣りという現地調達も良い。
 草間や零は飲み、他の成人も軽くは飲む。
「あの草間さん」
 焔寿がご機嫌の草間を呼ぶ。
「どうした?」
「帰りは明日の方が良いと思います」
「ふむ。それだと、俺も飲めるな」
 真剣に考える草間。
「だめよ。仕事無いと貧乏でしょ?」
「その辺は大丈夫じゃないでしょうか? かわうそ?さんに訊いてみた方がいいですね」
 と、猫たちを連れて、焔寿はかわうそ?の方に向かっていった。
「う〜ん。飲酒運転で更に厄介になるのも避けたいわね……」
 草間が飲んでいるのは焼酎のようだ。
 実際、一口でも飲んだ場合、半日は酒を抜かないとアルコールチェッカーに反応するらしいとか。便利な亜真知達の神秘で解毒は出来るだろうが、かなり興を殺ぐものだ。そんなもの今の宴会に必要ない。情緒もへったくれもなくなる。そんな事を考えているのは、参加している人間では誰もいないのだが、念のため。
 詰まるところ、飲んでしまった運転手・草間。もう一泊確定とも言う。
|Д゚)ノ たけぴー シュライン楽しんでる?
「連れてきました」
 焔寿が小麦色を連れてきた。
「先ほどはありがとうね」
|Д゚) 仕事だし
|Д゚) そーそー、たけぴー、バイトすれば……
「まて、無理矢理誘って其れはないだろう」
|Д゚) うそっぷ
|Д゚)ノ 無料招待気にするな。
「……なら、泊まり確定だな」
 と、満足して飲めると安堵する草間。
 ――沢山飲みたかったのね……。
 シュラインは溜息をついた。
 飲んで騒いでということがあまり出来ないのも悲しいだろう。
 シュラインがお猪口にきれいに洗った落ち葉を浮かべると。
「風流だな」
 と、草間は笑った。
 ゆったりと流れる雰囲気を満喫する草間とシュライン。
「では、ごゆっくり」
 焔寿はニコニコ笑って猫たちと共に何処かに向かった。
 零は、贅沢品の松茸の匂いに酔っている模様だ。始終無口である。


 牧鞘子はと言うと既に出来上がっており、もう秋葉や恵美とワイワイ話している。
「きいてよー。私彼女出来ないのはなぜ? 天薙さんや長谷さんにはいるのにー」
 否、愚痴をこぼしまくっていた……。
 ――ただ、恋人同士だらけの団体旅行なので肩身は狭い
|Д゚)― ぐわしっ ←鞘子を掴むナマモノ
|Д゚) 話し相手、其処にいる
 ナマモノが鞘子を引掴んで、引きずっていった。
「え〜だれ〜? ああ〜このひとねぇ〜」
 と、哀れ、地蔵に話しかける鞘子。

 気を取り直して恵美が話をする。
「〜で、なのですよ」
「あらまぁ」
 外の世界を詳しく知りたい秋葉にとって、外の者の話は願ってもないものだ。
「失礼します」
 と、海原みそのもやってくる。彼女は座って、
「この度はお招き頂きありがとうございます」
「いえいえ、楽しんで頂ける事幸いに」
 お互いお礼を言う。
「外のお話しに興味があるようですが?」
 と、みそのが小首を傾げる。
「はい。なにぶん女将の仕事は時間との戦いみたいなものですから」
|Д゚) 謎に免許とか沢山あるけど
|Д゚) ボイラー2級 情報処理1級 英検準1級……
「「へぇ〜」」
 感心する2人。
「趣味みたいなものです。免許や資格を取るのは」
 苦笑する女将。
 一息ついて、みそのが言った。
「外の世界と言いましょうか、今までわたくしが体験した事をお話しましょう」
「其れは嬉しいです。是非」
 と、微笑む女将であった。

「あら? 誰ですか? このキノコこっそり焼いたのは……」
 亜真知がむぅと唸る。
 それは、〈マツタケモドキ ネコタケ〉。あの毒キノコで有名どころのテングタケではなく、謎キノコである。毒の効果は性格変更だ。其れを食したのは……
「にゃ〜」
 猫化したエヴァである。ネコエヴァ。可愛いかもしれない。
 今ではデルフェスの膝のところで丸くなっている。端から見れば酔っ払って猫化したとも言えるのだが。デルフェスは顔には出さないが幸せ絶頂であろう。
「誰でしょう?」
 と、素知らぬ顔で答えるデルフェス。
 まあ、ネコなら
「動物変化茸……色々あるのですね……」
 と、零が松茸を食べている。
 運良く食べていないのは響カスミと嬉璃だった。SHIZUKUが歌うとか言うので付き添っていたらしい。

「これキツい香りだな」
 一寸退いている梧北斗。
 草間が飲んでいる焼酎の香りだ。
「美味いぞ。この味が分からないではまだまだガキだな」
「いや、俺。未成年だし其れで良いよ」
 と、自分のコップを取って中に入っている液体を飲むと……、
|Д゚)b
 草間とナマモノ親指立てていた。
「!! @xかftじこlp;」
 梧北斗は草間とナマモノに酒を飲まされてしまい、ダウン。
「武彦さん……ダメじゃない……」
「大人の儀式とも言う。偉くなったな、梧」
|Д゚) うし 果実酒で酔った!
 始終遊ばれている様子の梧の様だ。

 取り敢えず、バカップル2組はと言うと……。いつの間にか居ない。
「デートだし、お邪魔しちゃ悪いよね」
 と言うのが全員の意見だ。鞘子には悪いが。
 かなり離れた場所で、2組ともお休みの様子だ(当然別の方向だが)。
 皇騎は茜の膝枕で、義明と撫子は一緒に木陰でうたた寝である。

 そのあとは、事故も起こらず平和に幕が下りる。
 クライマックスは櫓を燃やし、秋の女神に祈りを捧げる踊りは、美しかった事を良くお覚えている。


〈終わりの日に〉
 そのあと、あやかし荘組はマイクロバスに乗って、予定通りに帰る事になる。鞘子は暫く此処にいる方向になる。泥酔しているためだ。草間組はというと、
「結局、一泊するのね」
 と、溜息のシュラインさん。
「まあ、いいわ。武彦さん温泉に入る? 酒を抜くために」
「そうだな。そうしよう」
 と、同意する。
 酔っぱらいの方は、秋葉と零が看病するそうだ。みそのはのんびりと秋の風に身を委ねて、立ったまま眠っている様子だ。実際は女神に出会って、ゆっくりしているようなものだが。


 バスの中、元気になった撫子が、義明に
「ここに来て良かったです。骨休みになりましたか?」
 と、訊いた。
「ああ、なったよ」
 と、笑う義明だった。

 バスは、秋の楽しい思い出も乗せて再び日常に戻る。

 
End

■本日の旅行者
【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生・巫女・天位覚醒者】
【0461 宮小路・皇騎 20 男 大学生・財閥御曹司】
【1305 白里・焔寿 17 女 神聖都学園高校生・天翼の神子】
【1388 海原・みその 14 女 深淵の巫女】
【1593 榊船・亜真知 999 女 超高位次元知的生命体・・・神さま!?】
【2005 牧・鞘子 18 女 人形師見習い兼拝み屋】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップ・レンの店員】
【5698 梧・北斗 17 男 退魔師兼高校生】


■ライターから
 滝照です。永久秋温泉女将の猿渡秋葉でございます。今回の宴は如何でしたでしょうか? いろいろかわうそ? がちょっかい出しておりますが……。
 秋の女神は散歩には付き合いますが、一緒に宴には参加しないというのは何故か? それは、今のところ語られません。
 皆様の行動の中で重要と思った事は可能な限り、執筆致しました(こっちで付加したものもありますが)。楽しんで頂けると幸いです。

 では、いつしか再び永久秋に訪れる事を……願い。

|Д゚)ノ またー

滝照直樹拝
20051105