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五行霊獣競覇大占儀運動会エキシビョンゲーム【ドロケイ ― 君を見つけたい ―】
それはいつだったか?
―――わからない。
忘れた。
それだけの時が経った?
ううん、時は関係無い。
時とは関係無い場所に居る。
前は寂しかった。とても寂しかった。寂しくって、どこか透明になってしまいそうだった。
違う。透明になった。透明になったんだ。
周りとは違う自分。
自分は違う。
見えないモノが見えた。他の人には何も見えなかったモノが見えた。
だから自分は違う。
違う、は、排除される。
違うから排除される。
「やーい、狐の子ぉー」
「狐の子ぉー」
見えないモノを見、聞けないものを聞く私は狐の子、そう化け物扱いされた。
違う。違うよ。私は人間だよ。
………………人間だもの。
「でもお前を人間扱いしてくる者は人間の中には居ないよ」
私の前に現れた神隠し。
「私とおいで。私もずっと独りで寂しかったんだ。おまえとなら私はずっと一緒に居られる」
神隠しは私を欲してくれた。
きっと私の事を欲してくれる人は人の中には居ない。
だから一緒に行こう。この神隠しと。
私は神隠しの手を握った。
「ねえ、私は人間。化け物の恰好をしなくとも大丈夫?」
「大丈夫。おまえはずっと狐の面を付けているじゃないか」
私は狐の面を付けている。
―――それは私の心の面。
あたしは綾瀬まあや。
彼女の、その神隠しの歌はだからきっとあたしには聞こえた。
「闇の調律師よ、あの子を連れて行く気かい?」
「そうね。だってあの子は人間だもの」
「そうだね。おまえよりもよっぽど人間だ」
「そう。あたしよりもよっぽど人間。だからあたしは助けたい」
「でもおまえには無理だね。心の欠けが大きすぎるおまえには無理だ。あの子を救えない」
「そうね。でも知っている人たちなら、どうかしら?」
まあやは美しく妖艶に微笑んだ。
五行霊獣競覇大占儀運動会。
その運動会が盛り上がる中で碧磨蓮の前に立つ。
「あら、久しぶりだね、闇の調律師」
「ええ、蓮さん。実はあたしからこの運動会に出場している人たちにゲームを申し入れたいの」
「ゲーム?」
「ええ。あたしからの挑戦状。あたしとこの子、それから皆さん(NPCたち)からの即席チームと、選手代表チームとでドロケイをやりませんか? エキシビョンゲームとして」
「ドロケイ? ああ、泥棒チームと警察チームに別けて、泥棒チームは逃げて、警察チームは逃げる泥棒チームを捕まえる遊びだね」
「はい。あたしたちは泥棒チーム。そして選手たちは警察チーム。あたしたちが逃げ切れば、このゲームに出た選手たちの取得した点数はゼロ。でもあたしたちを全て捕まえれたら、出た選手たちにあたしから賞品を出します。どうかしら? 特にこの子は今はあたしの音楽のせいで姿を保っているけど、あたしがその力を解けば、この子は神隠しだから、見つけるのは困難よ? そう簡単には勝たせないつもり。賞品出すのあたしだし」
蓮は悪戯っぽくウインクするまあやに妖艶に微笑む。
「面白い。ではこちら側(NPCたち)から見繕った数人とあなたとそっちの神隠しの泥棒チーム。そして選手たちの警察チームでドロケイをやりましょう。場所はどこでやるの?」
「ああ、それなら心配無いわ。何だか面白そうだからあたしが場所は提供してあげる♪ その子たちにぴったりで、時には大苦手な場所をね」
そうしゃしゃり出てきたのは紫陽花の君。物語を自由に形作れる能力を持つ少女。うつろぎな性格の彼女はどうやら今回はまあやの手助けをするようだ。
そうして今ここに五行霊獣競覇大占儀運動会エキシビョンゲーム、ドロケイが始まる。
―――――――――――五行霊獣競覇大占儀運動会エキシビョンゲーム【ドロケイ ― 君を見つけたい ―】
【ゲーム開始前】
「やれやれ。勝手に決めるなよ」
火のついていない煙草を口にくわえながらブルーシートの上に寝転がっていた草間武彦は愚痴った。彼が手で弄ぶのは泥棒たちに配られた赤白帽だ。
それを見る武彦の目は不機嫌そうに細められている。
ハードボイルドを気取る俺にこの帽子をかぶれ? と。
そんな彼の隣で両手で足を抱えて座っているシュライン・エマがくすくすと笑っている。
「かわいいじゃない、赤白帽。似合うと想うわよ?」
シュラインは小学生の時、男子がよく体育の授業でやっていたように赤白帽をあの有名なヒーローのように見えるようにつばを上にして、縫い目で広げる。そしてそれを片手で武彦を引っ張り起こして、彼の頭にかぶせる。
武彦はものすごく嫌そうな顔をして煙草をくしゃくしゃの箱の中に戻した。
「審判だって面倒だというのに」
「でも面白そうよ?」
悪戯っぽく小首を傾げる。
「面白そうとか、そういうのは俺には関係無い」
「ハードボイルドな探偵が泥棒役なんて嫌?」
どこか余裕のある母親が拗ねた子どもを諭すような甘やかな声をかける。
「まあ、確かに武彦さんが警官役だったら良かったんだけどね。そしたらほら、おほほほほ。私を捕まえてごらんなさい♪ っていう感じであ・そ・べ・た・の・に・ね」
サングラスの奥の双眸は半眼になっている。その半眼の前でメトロノームのようにリズミカルに振っていた右手の人差し指。その指の先でシュラインは武彦のサングラスのブリッジをひょいっ、と上げてやる。
そしてにんまりと笑うシュライン。
武彦は不器用に目をそらす。
「もう」
シュラインは苦笑しながら武彦にかぶせた赤白帽を下に引っ張った。
それから彼女は手を上げる。蓮とまあやに向かって。
「はい。そのエキシビョンゲーム。私も立候補するわ」
と、言ったのは同時だった。セレスティ・カーニンガムと。
挙手したのは二人。
シュライン・エマとセレスティ・カーニンガム。
綾瀬まあやは肩にかかる黒髪を優雅に払う。
すさまじく不敵に微笑んで。
「敵として不足は無し。がんばらないとね、草間さん。ハードボイルドな探偵がゲームとはいえ負けるわけにはいかないもの。逃げるなんてもってのほか。ねぇー、シュラインさん♪」
仔猫が捕まえたネズミを弄ぶようにほくそ笑むまあやにシュラインも大げさに両腕を開きながら大きく肩を竦める。
「私が他の男の人を追いかけても良いの?」
軽く上目遣いで自分を見ながらそう言うシュラインに武彦は苦虫を噛み潰したような顔をする。
そんな武彦に大げさにまあやは口元を両手で隠して騒ぎ立てる。
「まぁー。まぁー。まぁー。最低ぇー。女のシュラインさんにそこまで言わせるなんて!」
ほろり、と涙を一滴流すシュライン。
顔を片手で覆う武彦の肩にぽむ、と手を置くセレスティ。
「逃げられませんよ、草間氏」
「おまえまでやめろよ。こんな物をかぶれるか」
ひょいっ、と、赤白帽を投げて、右手の伸ばした人差し指で回す武彦にしかし、セレスティはとてもにこやかに美しく微笑んだ。そう、きっと天使のふりをして人の前に悪の誘いをしに来る悪魔はこのように微笑むに違いない。
「そうですね。ハードボイルドを気取るキミがそんな物をかぶるなんて絶えられない屈辱でしょうね。そして私かシュライン嬢、この二人に捕まるのもまた、ハードボイルドなキミには絶えられない屈辱でしょうしね。そう、逃げられるはずがありませんものね、キミが。私とシュライン嬢から」
子どもをあやすようにそう言うセレスティの言葉に、武彦の顔がぴきぃ、っと引きつった。
「ちょっと、待て。俺がおまえらから逃げ切れないとでもいうのか?」
「おや、逃げ切れるとでも?」
意地悪そうに目を細めるセレスティ。
ますます武彦は子どものように意固地になる。
「面白い。逃げ切ってやろうじゃないか」
「決まりですね♪」
にこりと微笑むセレスティ。
「ええ、決まりね♪」
同じく満足そうに微笑むシュライン。
その二人の表情に武彦はさらにまとめて苦虫を5、6匹まとめて口の中に放りこんだような表情をしたが、時既に遅し。ここけで引けばさらに男が廃る。
「くぅそぉ。絶対に俺はおまえらには捕まらんぞ」
火のついていない煙草を口にくわえて、そして武彦はそろりそろりと逃げ出そうとしていた三下を見つけると、どしどしと音がするような足取りで三下に追いついて、嫌がって逃げ出そうとする彼の首に片腕を回して警察チームが集まる方へと連れて行く。
「まあ、八つ当たりだわ」
「八つ当たりですね」
横目でお互いに視線を合わせあって、二人でくすりと小さく肩を竦めて笑いあう。
それから二人はまあやに視線を投げかけ、まあやはこくりと頷く。
「と、ではこの五行霊獣競覇大占儀運動会エキシビョンゲーム・ドロケイの説明をします。泥棒チームはあたしたち運動会スタッフチーム。それで警察チームがセレスティさんとシュラインさん。能力は使って自由。ゲームをする場所は」
まあやが紫陽花の君を見る。
紫陽花の君は水色の日傘をくるくると回して、小さく傾げさせた顔ににこりと花が咲き綻ぶような楽しげな笑みを浮かべる。
「ええ、場所はあたしがご用意するわ。物語の世界、夢の世界。そんな世界を追いかけっこ。それは、どこかあの子たちに似ているのかもね?」
まあやは肩を竦め、片手をひらひらと振った。
「余計な事は良いわ。とにかくゲームステージ管理、任せたわよ?」
「ええ」
くるくると日傘を回す紫陽花の君からセレスティとシュラインに視線を戻して、まあやは説明を続ける。
「で、捕まえた人たちを待機させる場所だけど…」と、彼女が言ったその時に、ちりーん、と澄んだ風鈴の音。
その純粋な硝子の音色が溶け込んだ空気がわずかに揺れ動いたそこに何時の間にか一匹の黒猫がいる。
「猫さん?」
「ああ、そうだとも闇の調律師。少女からの言伝だ。どうぞ、庭園を、と」
両目を細めて自分を見る猫にまあやは「まあ、素敵」、と喜んだ。
「では、捕まった人たちの居場所並びにセレスティさんとシュラインさんの休憩場所は庭園を」そう宣言して、それからまあやは猫を見る。
「少女さんにありがとう、そうお伝えください。とても嬉しかったと」
「ああ、伝えておくよ」
そして猫の姿は消える。
「ではゲーム開始。泥棒チームは各々逃げて、警察チームはその10分後にゲームスタート。ああ、でもこのゲームには更なる隠しキャラが居て、その子は色んな妨害行為をしてくるからお気をつけを」
にんまりと悪戯っぽく笑うまあやにセレスティとシュラインは顔を見合わせる。
そうして、ゲームスタート♪
警察チームは現れた巨大な扉の向こうに次々に消えていって、そして最後にまあやが神隠しの少女を連れて、その扉を、くぐった。
――――――――――――――――――
【シンデレラ】
シュラインとセレスティは扉をくぐる。
そこにあるのは小さな世界。物語の世界。
セレスティはふむ、と頷く。
「どうやらここがゲーム世界のようですね、シュライン嬢」
「ええ」
シュラインは物珍しそうに辺りを見回す。
「どんな世界なのかしら? 日本ではないようだけど」
小首を傾げる彼女にセレスティは街の人を指差す。
「RPGの基本ですね」
シュラインは苦笑した。
にこりと笑うセレスティは杖をついて歩く。
まずはこの世界がどこなのかを知らねばならない。そしてこの世界に居るのが誰なのか?
街の人々の会話から知れたのは今夜城で舞踏会が開かれる事。
そしてその舞踏会で王子はお妃を決めようとしている事。
街の多くの娘たちがこぞってお洒落をしている事。
それから………
「継母と義姉たちに苛められる娘、ね」
シュラインはくすりと笑う。
シンデレラの世界だ、ここは。
「シュライン嬢は誰だと思いますか、この世界は?」
「そうね、零ちゃあたりかしら? とてもそれは似合うと思うのだけど」
「そうですね」
セレスティがくすりと微笑んだのは愛らしく健気な零にはその役が良く似合っているように思えたから。
「さてと、それではどのあたりで彼女を捕まえましょうか? 出来ることなら愛らしい零嬢のシンデレラ役を最後まで見ていたい気もするのですがね」
ああ、でも幸せになる前には苦労に耐えねばならない。意地悪な継母や義姉たちの苛めの標的に彼女をしておくのも忍びない。
「大丈夫。零ちゃんは強いし、それに武彦さんよりもしっかりとしているあの子ですもの。逆にぴしゃりと継母や義姉たちを窘めているんじゃないかしら? だらしが無い、って」
セレスティは苦笑しながら肩を竦めた。
「まあ、零嬢ならばそれが苛めとも気づかずに言いつけられた仕事をこなしてそうですがね。完璧に。彼女は素直ですから」
ひょいっと肩を竦める。
紫の薔薇でもあればそれを零嬢に贈るのも悪くは無いかも。しかし生憎とここにはそれは無いようだ。
苦笑したのは今の自分はドロケイで警察チームとして泥棒チームを追っているというよりも何だか娘の学芸会でも見に来た父親のような気分だったから。
父親、という物を連想して当然の如く頭に浮かんだのは武彦の顔。
「でも、武彦さんがここに居たらさぞかし機嫌が悪いでしょうね」
どうやらシュラインも同じ事を考えていたらしい。
きっとさぞかし眉間に皺を寄せて、煙草を普段よりも多く吸い出すに違いない、と二人で笑いあう。
「やれやれ。妹離れのできない兄上を持って零嬢も大変ですね」
「本当にね」
二人でまた笑って、そして保護者代理としてとりあえずシンデレラに会いに行く事にした。
シンデレラの家はすぐに割れた。
どうにもRPGのように会話にさえ耳を澄ましていれば情報は簡単に得られるらしい。
街の片隅の屋敷。その屋敷の裏口に立ち、シュラインは中を覗き込んだ。果たしてそこに居たのはとてもシンデレラらしい、確かにこのシンデレラ、という物語がぴったりの人物で、その灰だらけの姿を見て、隣でセレスティは楽しそうにくすくすと笑いだす。
シュラインは苦笑。
「そんなに笑ったらかわいそうよ、セレスティさん」
シンデレラ、はそんなセレスティの笑い声を聞いて、そちらを見、そしてものすごくショックを受けたような顔をして大きな瓶の陰にその身を隠した。
そんな愛らしいシンデレラにセレスティは朗らかに両目を細める。
「かわいらしい事この上なしですね。そんな姿を見ていると本当に初心な生娘のようですよ、三下君」
そう、セレスティの目の前にいるのは零ではなく、この物語の主人公、この世界に逃げてきたために、この世界に溶け込んだのは三下だったのだ。
「うぅぅ。どうして僕ばかりこんな目にぃ〜〜〜」
まるでこの世の不幸をその身に一心に背負っているかのような暗く哀しげな声でそう嘆く三下にセレスティは優しく微笑む。まるで天使が憐れな子羊の前に舞い降りて、天啓を与えるが如く。
「大丈夫。だからこそ、この物語はキミのために用意されたのではありませんか。普段恵まれぬキミに美味しいお料理と綺麗なドレス、優雅な舞踏会を楽しんでもらうために。そしてほら、最後には王子様が迎えに来てくれますよ」
右手の人差し指一本立てて本気で言っているようにしか見えないセレスティに、こちらも本気で泣き出す三下。
「そんなのはごめんですよぉ〜〜〜。ってか、これが広く知れ渡っている子ども版のシンデレラならまだましですけどぉ、本当は残酷な〜っていう方のシンデレラだったら僕は耐えられませんよぉ〜」
ひょいっ、と、シュラインもセレスティも肩を竦める。二人はこの世界が零のために用意された世界だと思いこんでいた時にふと思ったのもその事だった。確かにこの世界がそれだったら零をとっとと捕まえて、保護せねば、と。でもそれが三下だったのなら………
「何か問題でも?」
パンにイチゴジャムを塗っても問題は無いよね? とでも訊かれたような気軽さで小首を傾げたセレスティに三下は今度こそ本気で泣き出した。
「ちょっとセレスティさん!」
くすくすと笑いながらシュライン。
「いいですよぉ。いいですよぉ。どうせ僕なんてそんな苛められ役キャラなんだぁ〜〜〜」
ええ、そうですね。と、笑顔で出かかった言葉は飲みこんでセレスティはひょいっと肩を竦めた。
「冗談ですよ、三下君。それではキミを逮捕」と、言いかけた所でぶぅーんとその場の空気が震える。
そこに現れたのは三角帽子をかぶって、ローブを身に着けた魔法使い。でもどこかそれの様子がおかしいと思ったのは、その気配が知っている気配だったからだ。
セレスティがしまった、と思ったのは、その気配に思い至り、そしてまあやの言葉を思い出したから。隠しキャラが居て、それが妨害をしてくる。
果たしてそのキャラとは???
「キミは、かわうそ?」
|Д゜) 魔法使い!
にやりと笑ったかわうそ?は魔法の杖を振るう。
ぶぅん、世界が低いうなりをあげて、そして突然にかぼちゃの馬車がそこに現れて、かわうそ?はさらに魔法の杖を振るって三下をそのかぼちゃの馬車に入れて、自分は御者台にテレポーテーションした。
次いでかぼちゃの馬車が走り出す。
「セレスティさん、どうするの?」
小首を傾げながらそう訊いてくるシュラインの表情はしかし穏やかだ。焦っている様子はまるで無い。
それを見据え、セレスティは右手の人差し指でさらさらの前髪を掻きあげて、
「やれやれ。一応は魔法が解けるシンデレラタイムの終わりと共に三下君の悪夢の時間も終わりを迎えさせてあげる予定でいたんですがね」
さらり、と銀糸のような美しい前髪が再び額の上に落ちると共に井戸の水が吹きあがった。
そしてそれはまるで生きているように水の蛇の姿を取って、憐れなネズミを丸呑みするようにかぼちゃの馬車を丸呑みする。
「そういえばかぼちゃの馬車の馬はネズミでしたかね?」
優雅に微笑むセレスティ。
三下は水の蛇の腹の中できゅぅー、と気絶していた。
+++
三下の赤白帽を取る。
しかしそれでこの世界が終わる事は無かった。
「あら、この世界は終わらないのね。という事はまだこの世界には続きが?」
小首を傾げるシュライン。
「でもシンデレラは三下君だったし、魔法使いはかわうそ?君。後は主要な登場人物といったら………」
「継母に義姉。それから王子ですね」
「その誰かが?」
「もしくは全員、ですね」
セレスティは肩を竦める。
「じゃあ、舞踏会が次のステージなのかしら?」
「そういう事です」
かわうそ?が落としていった魔法の杖を手で弄びながらセレスティはにこりと笑った。
その笑みに何かしらを感じたシュラインがにこりと微笑む。
「何を考えているのかしら、セレスティさん?」
「いえ。この世界が続くのなら、シンデレラが存在しないと。そうでしょう?」
と、言うが早いかセレスティは魔法の杖を振る。
そうすればシュラインは真紅のドレスを着ていて、セレスティは魔法使いのローブを身にまとっている。
シュラインは耳まで真っ赤だ。
「ちょ、ちょっとセレスティさん…」
「似合っていますよ、シュライン嬢」
さらり、と前髪を揺らして小さく傾げた美貌に笑みを浮べたセレスティにシュラインは「もう」、と小さく呟いたが、その表情はまんざらでもなさそうだった。
舞踏会へと向かう。
華やかな曲が夜に広がり、美しく着飾った女性たちと、今宵の舞踏会に呼ばれた貴族の紳士たちが言葉を交わしている。
城の赤絨毯を優雅にセレスティにエスコートされて、そこに立ったシンデレラ。シュライン・エマ。
その彼女に寄ってくる女性たち。
「ちょっとシンデレラ、あなた、こんな場所で何を?」
「言いつけた仕事は済ませたの?」
早口でいくつもの文句を口走る彼女らにシュラインは大きくため息を吐き、それから物怖じしない性格で彼女らが口にした矛盾点を言おうとした、その時に、しかしセレスティはひょいっ、と軽やかに魔法の杖を振る。そうすれば彼女らはまるで夢遊病のように城から出て行った。
「ありがとう、セレスティさん」
「いえ。この場所にあのような輩は無必要ですので。ここの主役はキミですしね、シュライン嬢」
「え? あの、セレスティさん」
そんなご機嫌そうな笑みを浮べて………
シュラインは苦笑する。
それから緋色の椅子がある方を見る。
果たしてそこに居たのは、
「武彦さん?」
緋色の椅子に苦々しそうに座るのは武彦だ。
セレスティは嫌そうな顔を武彦がするのにも関わらずにくすくすと笑い、シュラインも必死に笑いを我慢しながら、セレスティの服の裾を引っ張る。
「笑ったら失礼よ、セレスティさん」
ますます武彦は嫌そうな顔。
そして彼は不貞腐れたような動きで右手を軽く上げる。と、曲が変わる。
緩やかなテンポの曲。
そうしてそこに居る全員が輪となって、ダンスが始まり、
|Д゜) これが次のゲーム
|Д゜) ダンスで最後まで踊りきって、王子様を捕まえて!
と、どこからともなく現れたかわうそ?が教えてくれる。
ひらり、と尻尾を振って、かわうそ?は音楽団の一員、チェロ奏者となって音楽を奏で出す。
シュラインはひょいっと肩を竦めた。
それから思春期の少女のような上目遣いでセレスティを見る。
「セレスティさん、わかっていたんでしょう?」
「ええ。紫陽花の君が考えそうな事ですからね。悪意としても、善意としてもね。それに彼女はキミを気に入っているらしいですし」
シュラインは大きくため息を吐く。
「これは善意として受け取っておけばいいのかしら?」
「ええ、間違いなく」
「だけど武彦さんはあんな格好をさせられて不満そう」
横目で武彦を見て、また笑う。
顔を歪める武彦。
「ハードボイルドが形無しね」
「でも、これだって彼への善意かもしれませんよ?」
ウインクするセレスティにシュラインはまた苦笑した。
音楽は催促するようにテンポが速くなる。
シュラインは肩を竦める。
「行ってくるわ」、と輪に入った。
ルールはいたって簡単。
男女でテンポが慌しく変わる音楽でダンスを踊り、その音楽にあわせて踊りきる事ができれば、次のダンスを踊れる。しかし失敗すればそこでゲームオーバー。
シュラインは優雅にドレスのスカートを持ち上げて、そしてお辞儀。
相手の手を取って、踊る。
ちらりとシュラインは踊りながら武彦を見る。
彼はもの凄く嫌そうな顔をする。
シュラインは、ちょっと不満………
………いや、大いに不満。
(もう少し、この私のドレス姿にときめくとか、なんかしてくれてもいいのに)
曲は速くなったり、遅くなったり。
しかしこれは別に彼女にとっては苦ではなかった。
彼女は歌が上手い。だからリズムを取る事は上手だし、それにこっそり大型自動二輪免許所持する彼女は運動神経だって悪くは無い。
故に………
「簡単よね」
彼女はひょいっと肩を竦める。
最後の一曲を彼女は踊りきろうとしている。
しかし、ふいにどこかからか飛んできたあの茶翅のアイツ。
それまで流れるように動いていたシュラインの身体が固まる。
がたぁ、どこかで音がした。
セレスティは目を細め、こっそりと魔法の杖を振った。アイツは、その魔法で美しい歌を詠う小夜鳴鳥(ナイチンゲール)に変わる。
美しい歌が、空間に広がった。
砂糖菓子が水に溶けるように。
それでシュラインははっとする。
その美しい歌にあわせて彼女は軽やかに踊りを立て直した。
自分からリードする。相手を。
しなやかに身体で詠うように踊りをし、そこに居る全員がそのダンスに心と目を奪われ、
そうしてもう一度、小夜鳴鳥が澄んだ鳴き声をあげる。
それが、終わりであった。この最後のダンスの。
「王子様。シンデレラでございます。どうでしょうか、一曲?」
ひらり、とスカートの裾をわずかにあげて優雅にお辞儀。
「ゲームは終わりだろう?」
ぶっきらぼうに言う彼にシュラインがふふん、と意地悪そうに笑う。
「さっき心配して立ちかけてくれたでしょう?」
無論、武彦は嫌そうな顔をして、
そしてセレスティは魔法の杖をヴァイオリンに変えて、音色を奏で出す。
|Д゜) はわぁ、かわうそ?も負けない
流れ出す音楽にシュラインは小首を傾げて瞼を瞬かせた。
「ほら、早く。観念なさい」
差し出した手を、武彦は握った。
【ジャンケンゲーム】
シュラインが降り立ったのは青い空の上に渡る橋だった。
まるで水の上に浮かぶように橋が空にある。
その橋にはマスがあり、そしてその先に碇が居た。
シュラインは彼女に手を振る。
「追いついたのかしら、碇さん」
「いえ、追いつくとか、追いつかないとか、まだそういうお話ではないわ。だってゲームは今から始まるんですもの、シュラインさん」
眼鏡のブリッジを右手の人差し指の先で押し上げながら彼女は微笑んだ。
となれば気になるのはこのマスの目か?
シュラインは額を覆う前髪を掻きあげながらマスを見る。
「なんだか懐かしいわね。でも」
そう呟いたシュラインの言葉を聞いて、碇も懐かしそうに微笑む。
「あら、シュラインさんもやった? これ」
と言いながら彼女は軽く握った手を上下に振る。
そのリズムに合わせてシュラインもにこりと微笑んで手を振る。
二人で呼吸を合わせて、じゃんけん、ぽい。
後出し無し。
で、
二人でにんまりと笑いあう。
シュラインがグーで、碇がパー。
そしたら碇はひらりと半回転。
「パ・イ・ナ・ッ・プ・ル」
「まあ! ひょっとしてここは、そういう場所なの?」
くるりと碇は半回転して、それから小首を傾げる。
「試してみたら?」
からかうような言い様。
シュラインはこくりと頷いて、足を前に出そうとする。
だがそのマスから前のマスへと足を出そうとすると、その場に現れた…
「かわうそ?君」
|Д゜) ズル駄目!
|Д゜) かわうそ? 断固邪魔する
|Д゜) かわうそ? 審判!
ふむ、とシュラインは頷く。
「つまりはジャンケンに連勝すれば良いって事かしら?」
「そういう事ね。でも勝てるかしら?」
「勝つわよ。こう見えてもじゃんけんは強いのよ?」
「結構。敵として不足は無いわ、シュラインさん。さあ、かわうそ?君、この世界のルールを」
|Д゜) かわうそ? 了解!
|Д゜) かわうそ? 説明する
|Д゜)碇女史を捕まえるには同じマスに来る事
|Д゜)それが一つ目の条件
|Д゜)二つ目の条件はあそこ
………先を指差す。
|Д゜)あそこが終点
|Д゜)あそこに辿り着いたら折り返し!
そこは碇から見て、10マス先。
で、二人でにんまりと笑いあって、じゃんけん、ぽん!
「ぐぅー」
「ちょき」
シュラインはグゥーで、碇はチョキ。
「ほら、勝った」
にこりと笑ってシュラインは、
「チ・ョ・コ・レー・ト♪」
スキップを踏んでシュラインは5マス前に行く。
碇との間は10マス。
「チョキで二連勝、っていうのは狙いすぎかしらね?」
でも碇さんを捕まえるためには同じマスに行かないと行けないわけで、グゥーならグリコの3マス。チョキならチョコレートの5マス。パイナップルなら6マス。
「連勝狙いならチョキ。なるほど。シンプルな腹の探り合いか? さてと、じゃあ、どうする、私」
シュラインは口元に手をやって考える。碇との差は10マス。偶数。もしくは向こうを勝たせる事で追い詰める事もできる。
「残念だけど優雅に考えるお時間はあげないわよ、シュラインさん。はい、じゃんけん、ぽい」
「ちょっと」
慌ててシュラインはチョキを出す。
碇はグゥー。
「はい、私の勝ち。グ・リ・コ、と」
碇は3マス前に。
その差は13マス。折り返しまでに彼女は7マス。
追いつくなら………
「グゥーかチョキね。それで私はあなたに勝つわ、碇さん」
「あら、心理作戦?」
二人で笑いながら見詰め合う。
勝ち続ける事を狙うなら、グゥー一回、チョキ二回で同じマス。
そして実は私よりも碇さんの方がプレッシャーがかかっているはず。
そう、こういうのは追いかけるよりも追いかけられる方がキツイんだから。そしてグゥーかチョキを出すと言った以上、碇さんが出しやすいのはグゥー。それなら相子で済むのだから。負けが無いそれを選ぶのが定石。
「と、見せかけてあなたが出すのは」
じゃんけん、ぽい。
シュラインと碇は同時に出す。
グゥーとチョキ。
シュラインがグゥーで、碇がチョキ。
「ほら、言ったでしょう? 私はグゥーを出す、と。パーなんか出さないわよ」
「そうね」
くすりとシュラインは笑って、チョコレート、で5マス進む。
8マスの差。
シュラインは碇に右手を伸ばす。
「あともう少し」
「8マスの差は大きいわ。それにあなたにはグゥーかチョキで勝たなければね」
「そうね」
にこりと笑いあう。
そしてじゃんけん、ぽい。
グゥーにグゥー。
「あら、今度はチョキを出さなかったのね」
「あなたこそパーを出さなかった」
それから間髪おかずに、
「「じゃんけん、ぽん」」
グゥーとグゥー。
その後連続グゥーとグゥー。
「「あいこでしょ!」」
「「あいこでしょ!」」
「「あいこでしょ!」」
「「あいこでしょ!」」
「「あいこでしょ!」」
「「あいこでしょ!」」
「「あいこでしょ!」」
「「あいこでしょ!」」
「「あいこでしょ!」」
延々とそれが続くかのように二人してグゥーを出し合う。
その後何回目かのじゃんけん。
手を振り下ろす碇の表情が、
にたりと笑う。
「碇さん、百面相?」
呟くシュライン。
ポーカーフェイスの彼女があいこが続く騙し合いの中で表情を変えるなんておかしい。
―――条件反射で私がグゥーをもはや出し続ける、そう思って?
だからそれを見越してあなたはパーを出すから、それで勝つから、だから笑顔が浮かんだ。
いえ、その笑みはトラップ!
ミスリード、そんなのに負けると思って?
シュラインはチョキを出す。にこりと微笑んで。
「私の勝ちね、碇さん」
「そのようね。あなた、本当にチョキを出すんですもの」
パーを出した自分の手を見て、碇は肩を竦めた。
「性格がわかりあっているからこそ、難しいわね」
シュラインはチョコレートと、5マス前に。
残り3マス。
シュラインはこくりと頷く。
「さあ、じゃんけんを」
じゃんけん、ぽい。
で、二人ともグゥー。
「「あいこでしょ!」」
またグゥー。
「「あいこでしょ!」」
グゥー。
「「あいこでしょ!」」
そして、
「あ」
「勝った」
グゥーとパー。
シュラインがグゥーで、碇がパー。
パイナップル。
差は9マス。折り返しまで1マス。
シュラインは間髪入れずにじゃんけんの宣戦布告をする。
「じゃんけん、ぽい」
慌てて碇は出す。パー。
シュラインはグゥー。
不敵に笑うシュライン。
グリコ。
6マス、3マスの差。
また間髪入れずに。
「じゃんけん、ぽい」
碇がチョキで、シュラインがグゥー。
碇が顔を歪める。
「さあ、どうする、碇さん。確立、いえ、腹の探り合い。私の性格、考えている事が読めるかしら?」
碇は微笑む。
最後の心理作戦。
裏の裏の裏………
「「じゃんけん、ぽん」」
碇がチョキで、シュラインがグゥー。
シュラインは満面の笑みを浮かべた。
「グ・リ・コ♪ と。はい、碇さん、捕まえた」
【神隠しの少女】
そこは霧の深い草原。
朝露に花が濡れている。
どこかであがった野鳥の羽音。
私は歩いていく。
視界の端に時折映るのは狐の面を顔につけた少女。
神隠しにより一見、消えたように感じる姿。
瞼の裏には周りの霧の白や、草の緑、風景の色よりも、狐の面が焼きついている。
「狐の面、何かに化けるのが得意って事かしら?」
化けるというか、真似る?
どこからか流れてくる音色。
「まあやちゃん?」
その音色が私に見せてくれる風景。
「ああ、これは神隠しの少女の過去?」
きっと、そう。
とても悲しく、寂しい想い。
だから彼女は………
でもね、それは違うと想うわ。
―――伝えたい、と想った。それを。
そしたら鳴った、風鈴の音色。
「ああ、そうか。それで少女さん」
私はそれに行き着いて、くすりと肩を揺らす。
瞼を、閉じる。
風鈴の音色が聞こえる。彼女の風鈴の音色が。
古来、鈴は魔除けの道具であったという。
風鈴はそれに通じている。
そしてそれは彼女の心の風が、奏でる、音色。
この音の先にあなたは居る。
私は音色を頼りに進み、そして音色が消えたそこで、瞼を開いた。
「見つけた」
狐の面の裏で彼女はどんな表情を浮べたのだろうか?
私にはわからない。
風鈴が大きく鳴る。
逃げ出そうとする彼女の着物の袖の裾を、だけど私は掴み、彼女を後ろから私は抱きしめた。
「あなた、人と違う、と言われたのなら、そしたらあなたが人と違う所は何?」
腕の中で彼女は震える。
「私は歌が好きだわ。草間興信所の仕事が好き。そこの所長の草間武彦、フィアンセも好き。バイクも好きだわ。あなたは好きな物は?」
「絵。絵が好きだった」
「そう、絵が。どんな絵を描くの?」
「動物。鳥を描くのが好き」
「そう。だったら人の世界に帰って、そして絵を、描かない?」
「わた…しは、でも………」
「人じゃない?」
私の腕の中の彼女は、動かない。
彼女の風鈴は、ずっと止まったまま。
「狐の子?」
彼女は頷く。
私は微笑む。
「馬鹿ねー。他人との違いなんて誰でも持っているわ。そしてそれが個性。大なり小なり、それは誰にでもあるもの。大切で、そしてそれがまた個性、違う物だから、相手に異質を感じさせてしまう。そうだから、人はそれが自分でもわからないと、不安になってしまうのね。だから見え易くわかり易い違いがあれば、そのもやもやと羨ましさをそこにぶつけてしまう。あなたを狐の子、そう呼んだ人たちはそうだったのよ? そして彼らはそこに自分の異質を映し見て怖がっていた。だから」
私は彼女に絡めていた腕を解き、彼女の前にまわる。
「あなたが大好きな絵で、彼らじゃなく、繊細で感じやすく震えているあなた自身を見てもらおう? それはあなたが誇るべき、大切にしていい個性、宝物なのだから」
私は彼女に手を出し、そしてその手を彼女は握ってくれた。
風鈴が鳴る。
ちりーん。
頭上を見上げると、どこまでも広がる青空。そしてそこにある風鈴。
ちりーん。
温かな橙色の風鈴。
ちりーん。
とても澄んだ、清らかで優しい音色を奏でる。
「シュラインさん。それがその方の風鈴です」
「ええ」
とても嬉しそうに微笑む少女さんに私も頷き、それからその風鈴を指差す。
「これがあなたの風鈴」
ちりーん。
「個性の、風鈴です。あなたの個性は、この風鈴の音色を心に持ち、人を、癒す事ができるんです。だからがんばってください」
少女さんはにこり、と笑い、それから皆が集まるテーブルの方を手で示した。
「さあ、あちらにお茶の用意ができています。どうぞ、あちらへ」
「皆も来るのを待っているよ」
猫さんと一緒に少女さんも行き、
私は彼女の手を握ったままの手を、握り直して、
「行きましょうか」
と、告げた。告げて、だけど一歩前に進んで足を止める。待つ。
「………はい」
そして彼女は私の手をぎゅっと強く握って、前に歩き出して、私と並び、追い越した。その彼女の顔から狐の面は外れる。
ちりーん。
そこにあるのは、とても綺麗な笑顔だった。
【ラスト】
庭園に用意されたテーブル。
そのテーブルで皆は席に着き、お茶を飲んでいる。
運動会の途中だが、まあ、休憩は大事。
「うむ。これは美味ぢゃ。少女殿、もう一杯もらえるぢゃろうか?」
空のカップを出す嬉璃。少女は嬉しそうにそのカップにお茶を注ぐ。
さて、ところでこの場所にいるのは捕まえられた泥棒チームの面々なのだが、しかし…
「ねえ、セレスティさん。セレスティさんが、嬉璃さんを捕まえたの?」
温かそうな湯気を上らせるカップを両手で持ちながら小首を傾げるシュライン。
喉から胸に落ちた温かみに満足げに微笑んでいたセレスティは「おや?」、と小首を傾げる。
「シュライン嬢が捕まえたのでは?」
「いいえ、私は、違うわよ。てっきりセレスティさんが」
「いえ、私もシュライン嬢が」
と、いう事は………
二人して嬉璃を見る。
大人ヴァージョンの彼女は艶っぽい笑みが浮かぶ顔でちろり、と舌を出した。
「もう少しお茶を楽しみたかったのぢゃが、まあ、しょうがない」
そう言うが早いか、嬉璃は大人ヴァージョンから子どもヴァージョンへと。
そして彼女は捕まえられた泥棒チームを解放させる事ができるルール、庭園の一角に置かれたテーブルを囲む線(チョークで書かれた)を、足で切って、
|Д゜) 泥棒チーム、解放!
とのかわうそ? の宣言で、再び捕まえた泥棒チームは放たれて、
後に残されたセレスティとシュラインはお互いに顔を見合わせて、苦笑を浮べあった。
「と、いう事みたいよ、セレスティさん」
「らしいですね。では、もうひと頑張りしますか、シュライン嬢。ああ、でもその前にもう少しお茶を楽しんで」
「そうね」
頷くシュラインのティーカップに少女はくすくすと静かに笑いながらお茶を注いで、それにお礼を述べてシュラインはお茶を飲み、
セレスティは猫と楽しく談笑した。
【END】
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0086 / シュライン・エマ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員 / 白虎組】
【1883 / セレスティ・カーニンガム / 725歳 財閥総帥・占い師・水霊使い / 朱雀組】
【NPC / 風鈴売りの少女】
【NPC / 猫】
【NPC / かわうそ?】
【NPC / 綾瀬まあや】
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、シュライン・エマさま。
いつもお世話になっております。
このたび担当させていただいたライターの草摩一護です。
今回はご依頼、ありがとうございました。
いかがでしたか?
お気に召していただけていますと嬉しいのですが。^^
神隠しの少女への個性のお話、なるほどと想いました。
そうですよね。個性ってそういう物で、だからこそ難しくって、だからこそそれが同時に人を集めるのですよね。
プレイングからはシュラインさんの優しさがとてもよく感じられて、そのプレイングに書かれたシュラインさんの優しい気持ちをノベルに書き表せるように、と想いながら書きました。
最後の方の手を差し出す、というのは大好きなシチュエーションなので本当に嬉しかったです。
本当に優しく、凛としたシュラインさんらしい最大限の優しい行為ですよね。^^
じゃんけんのシーンもすごく楽しく。^^
いかがでしたか?^^
一応は矛盾が無いようにちゃんと心理面とか、マスの事を考えて書いたのですが、どうかな?^^;
だけどこういう心理的やり取り、本当にすごく好きだったりしたので、シュラインさんでやれて嬉しかったです。^^
それでは今回はこの辺で失礼させていただきますね。
ご依頼、本当にありがとうございました。
失礼します。
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