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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


暴走幽霊電車!

件名 暴走幽霊電車
名前 AAA
 深夜、山手線の最終電車が終わった後、沢山の幽霊を乗せて物凄いスピードで線路を走ってる電車の話、聞いたことある? 俺の友達が何か噂聞いたらしいんだけど、他に知ってる人いんのかな。

件名 Re:暴走幽霊電車
名前 郁
 知ってるよー。山手線の暴走電車。私は見たことないんだけど、友達が飲みの帰りに見たって言ってた。深夜の2時頃だったらしいけど、大塚の線路をガーッと電車が走ってったんだって。2時って、もう山手線どころか、どの電車も通ってなくない? その子、霊感の強い子なんだけど、あれは普通の電車じゃなかったって言ってたよ。

件名 Re:Re:暴走幽霊電車
名前 ヒロ
 俺、その電車に乗ったって奴の話を聞いたことがある。終電逃しちまって、どうしようかと思ってたら、何のアナウンスもなく突然電車が来たらしい。んで、これ幸いとばかりに乗ったらさ、物凄いスピードで走り出して。もうジェットコースターとかそんなん目じゃねぇとか。

件名 Re:Re:Re:暴走幽霊電車
名前 名無しのヒーロー
 俺乗った。凄かった。スピードもそうだけど、乗ってるのも凄い。皆幽霊みたいだった。首に縄巻いてんのとか、頭半分無いのとかいた。でも皆なんか変だった。

件名 Re:Re:Re:Re:暴走幽霊電車
名前 こねこねこねこ
 これマジホントだって! 知り合いから話聞いて試したんだけど、昨日私も乗っちゃった! チョー楽しかった! 何かね、電車は外回りで毎日一駅ずつずれた駅で止まって、後は一周するまでブレーキ無しで走るんだって。で、一両目には誰もいないんだけど、後の車両には自殺した霊とか未練のある霊とかが乗ってるみたい。電車は何時に来るか判らないんだけど、山手線にそっくりなのに二両しかないから来たらすぐ判るよ。昨日私が乗った駅が有楽町だから、今日は多分新橋から乗れるよ! でも乗るには何か資格みたいなのが必要みたい。ちなみに、私は結構幽霊とか見たりする人だったりする(笑)。


「ふーん……楽しそうー」
 カチカチとマウスをクリックしながら瀬名・雫(せな・しずく)は面白そうに笑顔を浮かべていた。丁度明日は休日だし、夜更かししたって大丈夫。
「ねーねー。これ一緒に行かない?」
 そう言って雫は、インターネットカフェにやってきた人物ににっこりと笑って誘いをかけた。



 学校帰り。このまま家に帰っても暇だし、ちょっと寄って行くかとネットカフェを覗いたのが運のつきだった。
「お前、また変なこと企んでるだろ……」
 腕を掴んでキラキラと目を輝かせる雫に、悟・北斗(あおぎり・ほくと)は嫌な予感を覚えて眉を顰めた。だがそんな北斗に構わず、雫はずるずると北斗を引きずり、一台のパソコンの前に立たせる。
「ちょっとこれ見て見て」
「何なんだよ……」
 ぐいぐいと襟を引く雫の手を退けながら、北斗はパソコンの画面を覗き込んだ。そしてそこにあった記事を読んで、「へぇ」と興味深そうな声を漏らした。
「暴走電車ねぇ。面白そうじゃん」
「でしょでしょ!? でさ、今日一緒に行ってみない?」
 問われた言葉に、北斗はうーんとうなって宙を見る。丁度明日は日曜で学校もないし、急な仕事が入らない限りは予定もない。そう考えて、付き合うのも悪くないという結論に達した北斗は雫に笑みを返した。



 深夜二時過ぎ。最終電車が発車し、見えなくなったホームに北斗と雫は駅員に見つからないよう、こっそり潜んでいた。かつかつと駅員が二人の隠れている壁の向こうを通り過ぎる。
「そろそろじゃねぇか?」
「うん。でももう一人来るはずなんだけどな」
「あ? 俺の他にも誰か呼んだのか?」
 問う北斗に雫が頷きながら辺りを見渡す。と、その目に、ベンチで寝ていたところを駅員に揺り動かされて起きる男の姿が目に入った。男は一言二言駅員と言葉を交わし、入り口に足を向けたかと思うと、駅員の目を盗んでさっと戻ってくる。
「門屋さーん」
「おお、雫か。いやしかし、仮眠とろうとしたは良いが、首が痛くてしょうがねぇな」
 雫に手を挙げコキコキと首を鳴らすのは門屋・将太郎(かどや・しょうたろう)だった。門屋も昼ごろにネットカフェへ顔を出し、雫に捕まったクチである。
「ジェットコースターを越える暴走電車なんて、本当にあんのかよ」
「だと思うよー」
 半信半疑の門屋に雫が小首をかしげながら線路の奥を覗き込んだ。続いて北斗もあくびをしながら目を向けると闇の中にぼんやりと二つの光が現れる。
「来たんじゃねぇ?」
 北斗に言われて、門屋も黄線に近付いた。暴走電車と言われている割に静かに電車が入ってくる。見た目、山手線と全く同じ車両に、三人は思わす顔を見合わせた。だが、通常の山手線とは違い、三両しかないことで、普通の電車ではない事は確かである。
「とりあえず、入ってみるか」
 門屋に続いて、北斗と雫が一両目に足を踏み入れた。プシューと空気音を出し、ドアが閉まると、がらんとした車両に、アナウンスが流れる。
「えー、これよりー当車両はノンストップで山手線を一周致しーます。間違えて乗ってしまわれた方、体調のすぐれない方、絶叫系アトラクションの苦手な方は、二両目以降にお乗りくだーさい。では発車しまーす」
 さらっとアナウンスが終わり、電車が動き始めた。最初はゆっくりだったのだが、だんだんとスピードがついてくる。
「うおお。何かすげぇドキドキしてきた」
「どんどん行けー!」
 北斗と雫は既に興奮しているらしく、キラキラと目を輝かせた。門屋はそんな二人を見ながら、不安定になってきた足元に手すりに手を伸ばす。同時にがくんっとスピードが上がり、体中にジェットコースターと同じような重圧がかかった。窓の外の景色が、とんでもないスピードで流れていく。そして電車はそのままのスピードでカーブに入った。
「おわーっ!」
「キャーッ!」
「おー!」
 ギギギギと音を立てながら電車がカーブを曲がる。ドラフト並みの急な曲がり方に、北斗がゴロゴロと転がり、雫が叫び声を上げて座席にへばりつき、門屋が必死に手すりを掴んだ。
「うひゃあ!本当にジェットコースター並だぜ、この電車! 本当にあったとはな…」
「すっげぇ!!」
 感心する門屋の横で、北斗がスゲェスゲェと歓喜の声を上げる。その声に元気だなぁと目を向けた時、ちらりと後ろの車両が目に入った。
「そういや、この電車、三両だっけか」
 呟いて、門屋が後ろの車両に足を運ぶ。と、ガタンッと電車が大きく揺れて、門屋は慌てて壁に手をついた。
「うえっ……今のはちょっと胃に来たぞ……」
 乱暴な運転しやがって、と門屋は姿の見えぬ運転手に、そしてその乱暴な運転を楽しんでいる子供二人に恨めし気な目を向けると、直進に入って車体が安定したところを狙ってすばやく二両目に移った。
「っと……あれ?」
 二両目に体を滑り込ませた門屋は、その変化に面食らった。
「何だこれ。すげぇ静かだな」
 門屋が呟いた通り、ガコガコと揺れる一両目とは別世界のように二両目は揺れも全く感じられず、静かだった。
 薄くぼやけたような人たちが、覇気の無い顔で座席に座っている。
「乗ってる幽霊ってのはこいつらか」
 門屋が一番近くにいた幽霊に近付いた。「よう」と声をかけるとサラリーマン風の男の幽霊がぼんやりとした目で見上げてくる。
「この電車、何かしら未練があって成仏出来ねぇ奴らが乗ってるって聞いたんだが、あんたもか?」
「あ、はい。私、生前はサラリーマンだったのですが、リストラされてしまいまして……」
「リストラかぁ……世知辛いなぁ……」
 門屋に話しかけられた幽霊ががっくりと肩を落としてぽつぽつと語り始める。それに門屋はすっかりカウンセラーの顔で親身に聞き始めた。
「独身で恋人も作らず、ずっと仕事一筋でやってきたのにこの仕打ちです。退職した日にフラフラと会社の屋上に行ったら、こう、何だかどうでもよくなってしまって……」
「それで飛び降り自殺か」
「でも残してきたたった一人の母親の事が心配で……こうして天にも昇れずにいるのです…」
 うるうると目に涙を溜めながら話すサラリーマンの幽霊に、門屋はそっと肩を叩く。
「確かに、お前さんの辛い気持ちも判るし、お前さんが母親心を配する気持ちも判る。母親はお前さんが自殺しちまって、さぞ悲しい思いをしただろうな。だがね、だからと言ってお前さんがこんな所にずっといたってしょうがねぇだろ? 母親がもし、自分の事を気づかう所為で息子が成仏出来てねぇなんて知ったら、それこそ悲しくなるだろうよ。向こうで幸せになって、母親見守ってるのも、それも親孝行じゃねぇのか?」
 「な?」と話しかける門屋に、サラリーマンの幽霊はぼろぼろと涙をこぼしながら頷いた。その周りでも自分の境遇を思い出したのか、幽霊たちから啜り泣きが漏れ始める。そんな幽霊たちを、一人一人慰めながら、門屋は揺れている一両目をちらりと振り返った。



 一方、一両目では、北斗と雫が初体験の絶叫マシンもとい電車の暴走を楽しんでいた。
「キャーッ! キャーッ!」
「うひゃっほーう!」
 ジェットコースター以上のスピードで走る電車は、窓も開けていないのにゴーゴーと風の音がし、髪が乱れる。カーブは常に振り飛ばされそうな勢いがあって、うかつに手すりから手を離せない。そのうち、ぐらりと車体の片側が持ち上がって、斜めになった。
「やーっ! キャーッ!」
「うおー!! 片輪片輪! ヤベーッて!」
 手すりを握り締めた体が宙に浮くほど斜めになっても、そもそもこの世の物ではないからか、電車は脱線するような事はなかった。だが精神的に受けたスリルは多大で、北斗の手の平に汗が滲む。
「ちょ、ちょっと待て! これ以上はヤバイだろ!!」
「にゃーっ!!」
 焦る北斗に雫はすでに限界を超えたらしく先程から意味不明な奇声を発している。そのうち、ようやく片輪走行をやめた電車に北斗がホッと息を吐くと、電車のスピードが少しずつ落ちていった。北斗がそれに気付いて時計を見ると、電車に乗った時刻から十分の時間が経っている。
「十分しか経ってねぇのか?」
 窓の外を見れば、自分たちが電車に乗ったのと同じ駅に着いたのが判った。山手線を十分で一周するスピードとは、恐るべき暴走電車。
「えー、本日のー暴走はー終了ー致しましたー。またのご利用ーお待ちしておりまーす」
 間延びしたアナウンスと共にドアが開き、北斗はフラフラとする雫を支えながら電車を降りる。続いて二両目から門屋が降りてくると、電車は静かに発車して、闇の中へと消えて行った。
「しっかし、今回はえらい体験したなぁ」
「うひゃあーすごかったねー」
 まだ浮遊感のある足を叩きながら北斗が呟くと、雫が満足そうに笑う。その笑顔を見ながら、門屋は二両目の幽霊たちを思い出してため息を吐いた。
「若いもんはのん気だなぁ」
「あんた……ジジ臭いよ?」
 呟く門屋に北斗が憎まれ口を返すと、門屋は北斗の顔を軽くはたいた。
「あーっ! また乗りたいねー!」
 そう言って気持ち良さそうに体を伸ばす雫の腕の先で、綺麗な月が輝いていた。











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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【1522/門屋・将太郎/男性/28歳/臨床心理士】
【5698/梧・北斗/男性/17歳/退魔師兼高校生】



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           ライター通信         
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ライターの緑奈緑で御座います。
今回は『暴走幽霊電車!』にご参加、有難う御座いました。
そして遅延、まことに申し訳ありませんでした。
頑張って執筆致しましたので、楽しんで頂けていれば嬉しいです。