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<五行霊獣競覇大占儀運動会・運動会ノベル>


障害物借り物競争

●嵐の前の静けさ
 突然始まってしまった「五行霊獣競覇大占儀運動会」、その中には普通と思えるものから運動会競技とはとても思えないものまで多種多様の競技が出ている。
 そして本日行われるのは「障害物大借り物競争」というレースである。
 一見何が障害物で、何が借り物なのかわからないただの中距離走に見える為、参加者は皆不思議がっていた。
 その中でスタート地点に立つ黒髪に青い鉢巻をしたスパッツにだぼだぼのTシャツ姿の女性、佐伯隆美(さえき・たかみ)はコースを見つめていた。
「障害物競走って言う割には障害物がないじゃない…どういう事なのかしら?」
 そう言ってトラックを見渡したあと応援席でしきりにてを振って応援をしてくれている妹の佐伯狭霧(さえき・さぎり)の方を見る。
 そしてそうこうしている内にアナウンスを担当している草間武彦(くさま・たけひこ)の声が周囲に響き渡る。
「あーあー、それじゃ障害物借り物競争の説明をする。この競争は最初は普通にトラックを走るだけだが途中このマイクを通して俺が、競技者にゴールに持っていくものを指示する。競技者はその指定された物をもってゴールまで走り一番早かったものが一位になる、ただそれだけだ」
 ここまで言って草間は言葉を切る。
 一呼吸おいた後さらに言葉を続ける。
「ただし、障害となりうるものは何をしても構わない。それは当然ライバルが障害になる事もある訳だ、この言葉の意味は判るよな?なおこの障害に対して俺達は一切責任を持たない、結果として何がおきても感知しないのでそういう事でよろしく頼む」

 そう締めくくった草間のレース説明が終わり、参加者達はそれぞれスタート地点に立った。

「それじゃお姉ちゃん頑張るからね」
 隆美はそう呟くとスタート位置にたった。

………
…………
……………

「位置についてー、よーいドン!」

 そのスターターの銃声によってレースは始まったのだった。

●競技開始
「今日は敵同士になってしまいましたけど、よろしくお願いしますね。隆美さん」
 スタート地点で田中祐介(たなか・ゆうすけ)が佐伯隆美(さえき・たかみ)に小さくお辞儀をし挨拶をする。
「こちらこそ、今日は負けないわよ」
「それにしても今日のその服装もまた似合ってますね」
「あら?おだてても何も出ないわよ?」
「おだてなんかじゃないですよ、ところで時に相談があるんですけど」
 そう言って祐介は小声で隆美に話をもちかける。
「相談?」
「ええ、良ければ二人で共闘、と行きませんか?」
 祐介は相違ながらどこからともなくトランクを持ち出す。
 トランクを見て思わず身構える隆美に苦笑しつつ祐介は説明をする。
「共闘と言うのは隆美さんが他の人を牽制して俺がこのトランクの中にある服を着せて動きにくくしてしまおうというものです。どうですか?」
 祐介のその誘いにしばらく考え込んでいた隆美であったが小さく頷く。
「どうやら危険がある訳じゃなさそうね。良いわ、そういう作戦なら手伝うわ」
「それじゃ、交渉成立、という事で」
 その隣では崎咲里美(さきざき・さとみ)がどこか楽しそうな笑みを浮かべてたっていた。
「そうよ、このスタート前の緊張感ってなんだかワクワクするのよね。障害って所が少し気になるけど借り物競走ってどこかワクワクするのよね」
 里美はそう言ってコースを見つめる。
 各々がそんな会話をしているとスタートの合図の音がなった。
 まず頭一つ抜け出したのはなぜか退魔弓「氷月」を担いだ梧北斗(あおぎり・ほくと)と天慶律(てんぎょう・りつ)の二人であった。
 それに続いたのが久耀颯姫(くよう・さつき)と結城二三矢(ゆうき・ふみや)でその後に里美と祐介と隆美が続いていた。
 各人に直前にどのようなものが借り物として出るか知らされてはあったが、その内の何が実際に示されるのかはその時になってみないとわからない闇鍋のようなこの障害物競走はそうして始まったのだった。

●最初の借り物
 そして頭一つ抜け出した二人がトラックの半分くらいを走っている頃、一つ目の借り物が草間の口からマイクとスピーカーを通して発表された。
「それじゃまず一つ目の借り物の発表をするぞ。最初は、だ……」
 そう言って紙をめくる音が聞こえたあと草間は言葉を続けた。
「SIZUKUのデジタルカメラだ。頑張って取って来いよ」
 どこか楽しそうなその声を聞いた一行の内、北斗と颯姫の二人がトラックからはずれ朱雀のテントの下で寛いでいたSIZUKUの元へと我先にと走って行った。
「SIZUKUさん俺にそのデジタルカメラを貸してくれ」
「いや僕の貸してください!!」
 北斗と颯姫の全く同じタイミングで言われた言葉にSIZUKUはしばらく悩んだあと思いついたように言葉を続けた。
「ねぇ、二人ともこのデジタルカメラで何を撮ってみたい?」
 思わず出たその質問に二人は一瞬たじろぐ。
 しばらく考えた二人だったが、それぞれの言葉を述べた。
「僕は景色…がとってみたい。今を写すもの…とても使って見たい…から」
「俺は不思議なものや事件を撮ってみたいな、それでその取ったものをSIZUKUに見せてやりたい」
「はい、北斗君に決定」
 あっさりとそう言って北斗にデジタルカメラをSIZUKUは渡す。
「その代わり絶対に後でオカルトな物をあたしに見せてよね?約束だからね」
 半ば強引な約束と共にデジタルカメラを手に入れた北斗であった。

●借り物二つ目
 二人がコースに戻ってきた頃、二つ目の借り物が発表されようとしていた。
「二つ目は…げっ」
 草間は用紙を見た瞬間げんなりしたような声を上げた。
「なによ、早く言いなさいよ」
 横に座っていた碇麗香(いかり・れいか)が続けるように促す。
「……ああ、わかった、それじゃ気を取り直して発表する。二つ目の借り物は俺の横に座っている碇編集長の携帯電話、だ」
 その発表を聞いた里美は一瞬目が光ったような気がした。
「これは私以外に取ってくる人はいない、と言うよりも私にとって来いと云う神の指示よね」
 なにやら怪しげな理屈を呟いたかと思うと里美はコースを外れる。
 そしてその後を追いかけるようにその後から隆美が後を追いかけた。
 麗香の元にやってきた里美はそのままの勢いで麗香に話しかける。
「碇編集長、私に携帯を貸してください」
「貸してあげてもいいけど、その見返りは?」
 その言葉に間髪入れずに里美は答える。
「今度取った特ダネを編集部にいの一番に持っていきます」
「交渉成立ね、いいわね?絶対よ?」
「判りました!」
 そう言って麗香の携帯を里美は受け取ると再び走り出したところで隆美とすれ違った。
 隆美は里美の手に携帯が握られている事を確認すると取って返して祐介に声をかける。
「今回も駄目だったわ、仕方ないからとりあえずゴールにたどり着き難くなってもらいましょう」
「はい?そうですね、確保よりもそちらのほうが優先ですかね?」
 そう言って後ろを走る面々を見る隆美と祐介であった。

●妨害工作
 まず隆美が後ろを走る面々の前に出た。
「悪いわね、あなた達に先を行かれると厄介なのよ」
 そういって隆美はわざと彼らの前でスローペースになる。
 抜かれそうになった瞬間、その人間の前に走り邪魔をするように走る。
「いいですよ、隆美さんその調子です」
 そう言いながら祐介は器用に走りながらトランクをどこからともなく取り出す。
「隆美さん言いですよ、例の通りにお願いします」
「判ったわ」
 隆美はそう言うと今までとは代わり一人ずつ前へ出すようにして走り始める。
 そうして前へ出てきた律に祐介はトランクを器用に頭の上へ回してその力を振るった。
「な、なんだこれはー?」
 律は自らのその変わった姿に驚きの声をあげる。
 その姿はロングスカートを履いたメイドそのものであった。
「ごめんなさいね」
 その驚く姿に隆美は小さくごめんと謝罪の言葉をいれる。
「は、走りにくい……」
 律は普段履きなれないその姿に普段であれば素早いその動きを見せる事が出来ずに悪戦苦闘する事となった。
「さて、次は誰ですかね?」
 皆の目には祐介のその瞳が悪魔の輝きを放った様に走りながら感じたのだった。

●最後の借り物
 そうこうしている内に草間の声がスピーカーから響いてくる。
「あーあー、それじゃ最後の借り物を発表するぞ……、って本当にこれでいいのか?」
 疑問の篭った声が聞こえてくる。
「まぁ、なんでもアリなんだし、多分それでいいんじゃない?」
「そ、そうだなそれじゃ発表するぞ」
 麗香のフォローで体裁を取り直した草間が言葉を続けた。
「佐伯紗霧の頭につけているリボン、だ」
 草間のその言葉を聞いて一番ショックを受けたのは、知り合いであるが為にやりそうな事を想像していたため上手く着せ替えを逃れる事の出来た二三矢であった。
「紗霧さんのリボンってアレか……」
 先ほどスタート前に紗霧の姿を確認していた二三矢は一目散に紗霧の元へと走って行った。
 最初に紗霧の前にたどり着いた二三矢であったが、どう言葉を切り出そうかそこで固まって俯いてしまう。
 そして意を決して言おうと思い、顔を上げようとしたがその時の紗霧の服装、普段よりは短めの動きやすそうなスカートから見える白い二本の足に目が行ってしまい更に顔が赤くなってしまう。
「……あの二三矢さん?」
 急にやって来て俯いて赤くなったりしている二三矢の事を心配して声をかける紗霧の元へ隆美がやってくる。
「あ、紗霧、そのリボン借り物競争だからちょっと借りるね」
「あ……」
 紗霧がなにかを言う間もなく隆美がそのリボンを横から奪って以降としたその時だった。
「あの俺にそのリボンを貸してください」
 ようやく言えたその言葉に隆美は仕方ないな、と言うような顔をしてその手に持っていたリボンを二三矢に渡す。
「そうしっかり言われちゃったら渡すしかないじゃない、頑張ってね」
 そう言って隆美は再び走り出す。
「ありがとう、ちゃんと後で返しに来るから」
 そう言って二三矢も再び走り始めた。

●ゴール地点
 そしてゴール地点。
 祐介の妨害に負けたり、結局何も手にする事が出来ずに終わったものなどもいたが無事皆ゴールする事が出来た。
 そしてゴールしたとき皆疲れきった顔でこう言った。
「出来ればもうこんなレースは勘弁してくれ、と」
 そして、競技の中で交わされたいくつかの約束、それが果たされたのかはまた別の話である。

Fin


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■ 梧・北斗
整理番号:5698 性別:男 年齢:17
職業:退魔師兼高校生
黒組 1位

■ 崎咲里美
整理番号:2836 性別:女 年齢:19
職業:敏腕新聞記者
白組 2位

■ 結城・二三矢
整理番号:1247 性別:男 年齢:15
職業:神聖都学園高等部学生
白組 3位

■ 田中・祐介
整理番号:1098 性別:男 年齢:18
職業:孤児院の手伝い兼何でも屋
黒組 順位無し

■ 天慶・律
整理番号:1380 性別:男 年齢:18
職業:天慶家当主護衛役
青組 順位無し

■ 久耀・颯姫
整理番号:5829 性別:男 年齢:18
職業:古本屋の店主
黒組 順位無し

≪NPC≫
■ 佐伯・紗霧
職業:高校生兼古本屋

■ 佐伯・隆美
職業:大学生兼古本屋

■ 草間・武彦
職業:草間興信所所長、探偵

■ SHIZUKU
職業:女子高校生兼オカルト系アイドル

■ 碇・麗香
職業:白王社・月刊アトラス編集部編集

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■          獲得点数           ■
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青組:0/ 赤組:0/ 黄組:0/ 白組:30/ 黒組:30

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■         ライター通信          ■
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 どうもはじめましてもしくはこんにちは、ライターの藤杜錬です。
 今回は『五行霊獣競覇大占儀運動会 障害物借り物競争』にご参加いただきありがとうございます。
 オープニングに書いてあったとおり何が借り物と示されるのかはランダムという事でサイコロの神様に決めていただきました結果このような結果になりました。
 無事上手くプレイングに書かれたものが示されていたものに関しては競争者がいない限りは手に入れる事が出来る結果となりました。
 競争者がいた場合プレイングの内容を見て判断させていただきました。
 妨害も言うほど差がつくものではなかったのでこのようになりました。
 今回は競争型ノベルという頃で個別メッセージは割愛とさせていただきます。
 少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
 これからどんどん寒くなりますが、皆様風邪など引かぬようお気をつけください。

2005.11.10.
Written by Ren Fujimori