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<五行霊獣競覇大占儀運動会・運動会ノベル>


花と嵐の応援合戦

「…はあ、皆さん楽しそうですねえ…」
 運動が苦手な少女は呟いた。

「おや、でもほら、君でも楽しめそうな競技も有るみたいだよ?」
「え?」

 そんな彼女に苦笑した男の示した方向に目をやり、少女はきょとんとした声を上げる。

『応援合戦選手受付所』

 そんな文句がかかったそのテントは、他の競技に比べ、どうやらあまり人気がないらしく少し閑散としている。
「応援合戦なら、君でも活躍できるんじゃないかな。それに、あまり人も集まっていないようだ。人数の少ないチームにでも潜り込めるんじゃないかい?」

 笑顔で告げる彼に、彼女はガッツポーズを一つしてから、そのテントへと駆けだしていった。


 ※ ※ ※ ※ ※

=応援合戦のその前に=

 ばん、ばんと花火やら、スタート開始のピストルの音が入り乱れる。
 人のざわめきもただ賑やかで、祭りもたけなわ、といった様子だ。
「さて、まず競技のルールを説明しておこうかな」
 『応援合戦担当説明官』というド派手なウィンドブレーカーを着込んだお兄さんが、集まった選手達に声をかける。
「基本的に、他人に迷惑をかけなければ何でも有りだ!得点だが、団体戦扱いになるので、チームごとの順位に応じて加算される。以上!」
 案内係のお兄さんは、選手達をチームごとに分けると、良い応援を期待してるよ、と言い残して去っていった。
 必要もないくらい簡潔な説明だった。お兄さんの存在意義が疑われる。


 青龍組の選手達の中、天慶・律は隣に立っていた、自分と同じ年頃の青年に目をやった。
「俺は天慶・律っていうんだ。よろしくな。お前も青龍組だろ?」
 律に声をかけられた青年は、一つ頷いて笑顔を見せる。
「ああ、よろしくな。俺は志羽・翔流だ」
「お前はどうして応援合戦に出ようと思ったんだ?」
 律の問いに、翔流はきらりと目を輝かせた。
「応援合戦だぞ!?おおっ、まさに俺の見せ場じゃないか!それにしても、いいよなぁ、応援合戦。体力自慢もそうでない奴も皆がひとつになって参加できるんだからっ」
「あ、ああ、うん、そうだよな。俺も、実はちょっと憧れてたんだよなー、応援団って」
 翔流の勢いに、少々押されつつも、律は頷く。
 互いに、少しそこで言葉を止めて……。
「なら、決まりだな?」
「ああ、決まりだ」
 律と翔流は、お互い力強く頷きあったのだった。


「白虎組の参加者は…と、あれ?」
 シオン・レ・ハイはふと自分のすぐ側に、所在なげに佇む少女に目をとめた。
 自分のチームにこんな子が、いただろうか…?他の参加者達は、なんとなく見覚えが有るような気もするのだが。
「あ、はじめまして。実は私、どのチームの選手でもないんですが…。あの、この応援合戦の間だけ、混ぜて頂けないでしょうかっ。ってああっ、あの私、藤本文音と申します宜しくお願いしますっ」
 舌を噛みそうな勢いでまくしたてた少女に苦笑して、シオンは頷く。
「私はシオンと言います。どうぞ宜しく、文音さん」
 彼の言葉に、文音の顔が傍目に見ても分かるくらい、明るくなった。
「は、はいっ、宜しくお願いします。あ、あの、私、こういった行事に参加するのは初めてなので…。宜しければ、シオンさんのまねっこをさせて貰ってもかまいませんか?」
「…私の?それはかまわないけれど」
 文音が嬉しそうに笑う。
「有り難う御座いますっ、宜しくお願いしますね、シオンさん!」


 所変わって朱雀組。
 衣装について話し合う、少年と少女の姿があった。
 荘子・真人と陸・暖菜だ。
「ふむふむ、学ランが基本スタイルなのか…。僕あんまり似合わないけど平気なのかな?」
「私は私服着てやる〜〜〜♪」
 思案顔の真人に、暖菜は身に纏った赤いチャイナドレスを示し、その場でくるりと回って見せた。
「そっか…赤……。朱組だから、なんか赤い格好のコスプレとかした方が遠目にも判りやすくていいよね」
 真人は顎に手を当てて、難しい顔をする。
「赤、赤…。トマトとか?」
 暖菜がふと、今日のお弁当の中に入っていたミニトマトを思い浮かべながら言った。真人が、ぽむ、とその手を打つ。
「良いね、トマト。トマトの着ぐるみとか作って応援したら目立つかなぁ。……うん、楽しそうだ!」 
 時間的な余裕はあまり無いが、やってやれない事はない。真人は着ぐるみの材料を貰い受けるべく、応援合戦本部へと急いだ。

  
=応援合戦当日!=

 ばあん、ばん!
 応援合戦をもり立てるように花火が空に散る。

 その下には、とても不思議な一団が布陣していた。
 一言で言うなら、赤い。黄龍組、玄武組に続いて、三組目の演技となる、朱雀組だ。
「朱雀組ーーーっ!ファイトーーーーっ!」
 拡声器を通してとは言え、普段の彼からは想像も付かない、大きな声を真人が張り上げる。
 ………トマトだ。
 会場中の観客の気持ちが、一つに纏まった。
 真っ赤に熟れたトマトの着ぐるみを着た、朱雀組のメンバーがずらり、と並んでいる。
 おそらくは手作りなのだろう、所々歪な物も有ったが、そこは愛嬌と言う物だろう。
 確かに、一度見たら忘れられないインパクトは、応援合戦には持ってこいだった。
 ぴったりと足並み正しく、トマトな朱雀組の選手達が移動していく。
 彼らが移動する事によって開いた、中央のスペースにするり、と暖菜が躍り出た。
 彼女は着ぐるみでなく、どうやら私服らしい、赤い中華風の服を身に纏っている。
「剣舞やりま〜〜〜っす!これでみんな元気出してくれるとい〜な♪」
 良く通る声で彼女は言い、対極剣を手に、静かに踊り出した。
 元々運動神経が並はずれて良いのだろう。見る人の目を釘付けにする、凛とした動きだ。
 歓声にざわめいていた会場が、一瞬しんとなる。
 彼女の剣舞が終わって、再び真人達に目をやった、観客達は再びざわめくことになる。
 そこには、赤い衣装を着た選手達が整列することで、大きな朱雀が出現していたのだ。
「朱雀組ーっ」
 再び真人が拡声器で声を張り上げる。その声に続くように、選手達がファイトー!と声を上げ、ぴったりと揃った動きで礼をした。
 

 そのまま揃った動きで退場していった朱雀組に続くように現れた、白虎組の集団、観客の動きは止まった。
 先頭をゆくはシオン・レ・ハイ。男性42歳。なかなかに渋い容姿の、男前だ。
 ………ただし。
 学ランを身に纏い、長い白ハチマキをなびかせて、胸を張る彼の洋装には、一つだけ不審な点が有った。
 パウスカート。ふんわりとしたそれを、何故か学ランのズボンの上から着込んでいるのだ。
 白虎組の選手達一同は、みなシオンと同じく、学ランとパウスカートで構成されていたのだ。
 選手が布陣し終わったのを確かめて、シオンは大きく息を吸い込んだ。
「フラーフラーフーラーダンスッ!フラフラフラダンス!フラフラフラダンス!」
 場が、静まりかえる。一体何事だろう。
 ばっ、とキレの良い動きを見せて、シオンは少し動作を貯めた。そして唐突に踊り始める。
 言葉の通り、パウスカートを揺らし、フラダンスを踊り始める白虎組に、観客はどよめいた。
 何だ、何だこれは。新手の儀式だろうか。
 観客の困惑はそれだけでは留まらなかった。
 後ろの方で数名が奏でていた太鼓が、がらりとリズムを変える。
 するとシオンをはじめとする面々が、軽やかにスキップを踏みつつ、立ち位置を移動していく!
 文音をはじめとする、女性組が白い花びらと紙吹雪を散らす中、シオンは白いボンボンを両端に付けたバトンを両手に持ち、くるくると回しながら次のダンス…───ファイアーダンスへと移行した。回されるバトンはさながら、たいまつだろうか。
 踊りは次第にヒートアップしていき、途中からなんだか、どこに分類していい物やら分からないものへと変わっていったのだが(どうやらどこかの部族の踊りにシオン独自のアレンジをくわえた物らしい)メンバーが長い、装飾を施された棒を持ち出した事によってリンボーダンスへと変化したようだった。
 いきなり太股の辺りで棒を支える選手達。低い。いきなり低すぎる。
 しかしシオンは怯むことなく果敢にそれにチャレンジしてゆき……。
 長いハチマキを思い切り踏みつけ、大きく仰向けに倒れた。直前に会場中に響いたぐきり、という非常に痛そうな音は、恐らくシオンの腰があげた悲鳴なのだろう。
 慌てながら、しかしそれでも楽しげに踊りながら、撤収していく白虎組を眺めて、観客達はそっとリズムを取りながら涙をぬぐったのだった…。


 多少のハプニングを交えた白虎組の後には、全員ばっちりと長ランに身を包んだ青龍組が布陣していた。
 律を先頭とする、黒い長ランのメンバーと、翔流を先頭に並ぶ、白い長ランのメンバー。
 皆一様に、青いタスキと長鉢巻きを締め、風になびかせている。
「フレー、フレーッ、青龍!」
 律が声を張り上げる。
 それと当時に、翔流が両手に、青色の扇子を広げる。
「目をかっ見開いてとくとご覧あれ!それぇ!」
 他のメンバー達が声を合わせて応援の台詞を叫ぶ中、翔流の扇子から二本の棒状の水が、立ち上った。水芸だ。
 その間に、律をはじめとする黒長ランメンバー達は、翔流達の背後へと移動して整列する。
 どうやら律を頂上とした、ピラミッドを造るらしい。
 翔流の水は見る間に姿を変え、二匹の水龍の形を取った。右に左に体をくねらせながら、天へと向かった。
 そして、その背後では、さらなる龍が姿を見せていた。
 律の操る青い幻炎が、大きくゆらめき、龍の姿をとったのだ。
 三メートルほどもあるだろうか。巨大な炎の龍が会場を睥睨する。水龍と、炎龍の三匹の青龍の出現に、会場がどよめいた。
「青龍組の勝利を願って、天高く舞い上がれ、青龍っ!」
 翔流と律をはじめ、青龍組が大声でそう叫び、一際龍達が勢いを増す。
 
 観客の歓声でその応援合戦の幕を閉じた。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1380/天慶・律/男性/18歳/天慶家当主護衛役・アルバイター/青龍組/1位】
【2951/志羽・翔流/男性/18歳/高校生大道芸人/青龍組/1位】
【3356/シオン・レ・ハイ/男性/42歳/びんぼーにん+高校生?+α/白虎組/3位】
【5112/陸・暖菜/女性/16歳/学生兼女冠/朱雀組/2位】
【5742/荘子・真人/男性/14歳/中学生兼客員教授/朱雀組/2位】


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■          獲得点数           ■
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青組:30点 / 赤組:20天 / 黄組:0点 / 白組:10点 / 黒組:0点

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■         ライター通信          ■
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荘子・真人様

はじめまして、新米ライターの日生 寒河と申します。
この度は応援合戦に参加頂き、有り難う御座いました!
トマトの着ぐるみ、しかも手作り…なんて可愛らしいんだろうとひたすらメロメロしつつ書かせて頂きました。少し大人びたキャラさんのようだったので、楽しんで頂けるといいなあと思いつつ…。そして本当にお疲れ様でした。

口調などの不備が無ければ良いのですが。
ではでは、またお会いできることをお祈りしております…。

日生 寒河