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<東京怪談・PCゲームノベル>


中盤事変

仕事をサボってお昼過ぎ、ふいに迷い込んだ先に現れたのは古びた書店。
書店に急用などあるはずもなく、通り過ぎれば良いのだが、気になり始めると無視もできず、気がつけば書店の重い扉に手を掛けていた。
軽く中に頭を突っ込みつつ、慎重に言った、のだが。

「あのー、ドイツ料理の本とかって置いてませんかね〜・・・って、な、な、なんスかっ!?」

「私の息子たちの為に、力を貸してはもらえまいか!!」

期待していた「いらっしゃいませ★」なんて優しい声もなく、ものすごい形相の男が相澤の肩をがっしり掴んで迫ってきた!
相澤はきょどりながらも、それ以上の男の接近を防ぐばかり。
そのうちに店員らしい女性が、背後から分厚い本でその男をぶん殴って引き離し「ごめんあそばせ」なんて言いながら相澤に微笑んだ。
無念、迫ってきた男はその場にぐったり倒れる。

・・・と思いきや、俊敏に立ち上がり再び相澤の前へ躍り出た!
相澤に驚きの暇も与えず、口早に言った。

「この本に入って我が息子を助けて欲しいのだ、あなたの名前をこの本に書いてくれ!!」

「ピンチ?力を貸す?本の中に?名前?」


話もあまり把握できないまま、相澤は律儀にその本へ名前を書き込む。
これが悪徳商法ならば大変だ。

とはいえ、半ば悪徳商法などよりたちが悪いが・・・。
本は力を発揮し、相澤を眩い光に包みつつ静かに彼を本の世界へと誘っていった。


◆◆◆◆


「本の中、っつっても、普通の現実世界と一緒だよなぁ、ココ」


光の中で白い世界を見た後、改めて目にしたのは、変わらない東京の街だった。
人も建物も車も空も、別段普段と異なる点は無い。

変わらない昼下がり、これはあの書店に足を踏み入れたこと自体が夢だったのか。
とはいえ、あの凄い形相の男に迫られた恐怖は夢で片付けるには少々リアル過ぎだ。

しかし、考えていても埒が明かないので、とりあえず歩く歩く歩く。
歩いても歩いても見えるのは人ばかりだが、ふいに人だかりが目に入った。


その中心には今流行りのコスプレってやつ!?
明らかに可笑しな着物を着た少年二人が、何やら「助けて!!」オーラを出している。

もしかして、彼らが息子さん!?

と思いつつ近寄ってみる相澤。
段々明確に見えるようになってきた諸悪の根源。
それは身長2メートルはあるのではないかと思われるほどの長身、厚い化粧に、ギラギラのセクシースーツ。

これはまさしく・・・オカマだ!それもかなり屈強な・・・!!


「二人とも可愛いわねぇ〜うちのお店で休んでいかないっ?」


哀れ少年二人は硬直状態。息子の貞操の危機とあらば、あの男の動揺も頷ける。


「俺はなんか、あの、あれだから・・・こっちの時雨がいいと思います!」
「は!? お前だけ逃げる気かよ!!押すな、バカのめ!!」


東雲は時雨の首根っこを掴んで強靭なオカマへ差し出す。
時雨は必死に抵抗し、機から見れば兄弟喧嘩にオカマが集っている様と説明しても可笑しくない絵柄だ。
とはいえ、兄弟喧嘩に勤しむ姿もオカマ達には一段と可愛らしくうつっていると見えて、時とともにオカマのテンションはヒートアップ!耐え切れなくなったオカマの一人が東雲に抱きついてきた!


「ぎゃああ;;!!!離せこのオカマーっ!!!」
「あーら、口が悪いわよボク♪いてこますわよ、コラァ。」
「・・・・・・。」


オカマに「オカマ」は禁句らしい。東雲は極上の笑みを浮かべたオカマに力いっぱい締められてぐったり状態・・・。それを見た時雨は即座にだんまりを決め込んだ。東雲の二の舞はごめんだ。

…た、確かにこりゃあピンチだわ。っていうかどんな物語だよコレ(汗)
相澤はそう思いつつも、なんとか彼らを助けてやることにした。


「待て待て待てーっ!!!」


相澤は声をあげ、時雨の前へカッコよく登場した。
その後姿は時雨が今まで見たどのヒーローよりもカッコよかったとか違ったとか。
兎に角おかまがあっけらかんとしている間に気絶している東雲をなんとか救出。

今まで東雲を掴んでいたオカマは、手から東雲がいなくなっているのに気が付きすぐさま取り戻そうとしたが、更に相澤がその間に入るのでそれも叶わず。


「今のうちに逃げな。お父さんが心配してるぜ!」


右手を上げて時雨を見ないまま言った。
その姿は時雨が今まで見たどの刑事ドラマの刑事よりもカッコよかったとか違ったとか。

兎に角時雨は「有難う御座います」と言って、気絶している東雲をひこずって逃げる。


ずるずるずるずる


風呂に入るときに絶対痛いであろう擦り傷を東雲の背中につけつつ、時雨は一生懸命東雲をひこずった。
情けない音を東京の街に響かせながら、五分かけて六メートルばかり逃げた。

しかし自分の背後がそんな情けない背景になっているとも知らず、相澤は未だにカッコよい背中を時雨に向けていた。



決まった!!



心の中で叫ぶ相澤。これから後の自分の危険など思いもせず。


「ちょっと待って、あの着物の子達も可愛かったけどこっちのお兄さんもなかなかいいじゃなーい♪」



なんですと?



そう思う間もなく、オカマ達は「そうねぇ」なんて言いながらじりじりと相澤を取り囲む。たまに変な声で笑うからたちが悪い!ベタベタと相澤の背広を撫で、必要以上にくっついてきた。相澤の背筋がぞぞっとした。



「なな、なんですかー・・・?お姉さん方―。」



相澤は両手を軽く上げて、無抵抗の意思を見せた。しかし「お姉さん」なんて呼ばれて有頂天なオカマ達が、こんな上玉を見逃すはずも無く・・・


「うちのお店で休んで行きなさいよー。」
「いっそ一生一緒に住んでくれてもいいわよぉお。」
「やーだ、あんたそれプロポーズじゃないのよ!彼は渡さなくってよ!」


しゃがれた声が木霊する。これから先の己の不運を思うと最初の少年達のように硬直せざるを得ない。そんな硬直した相澤を、チャンスとみたオカマ達は否応なしに力ずくで店へ引きずり込もうとした。


「うわぁあああ;;;!!!!」


相澤の叫びも虚しく東京の街に木霊する。

逃げ出した少年たちはというと、丁度通りかかったタクシーに乗り込み、相澤へのご恩も忘れてお台場に出掛けたそうだよ。


◆◆◆◆◆◆


三日後、すっかり忘れていた紅によってやっと本の名前を消してもらい、オカマ達から解放された相澤であったが、なかなか味わえないような経験を色々したらしい・・・。






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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

PC

【2295/相澤・蓮(あいざわ・れん)/男/29歳/しがないサラリーマン】

NPC

【安倍 紅(あべ くれない)/男/23歳/星屑書店店長・小説案内人】
【安倍朱鷺(あべ とき)/女/22歳/星屑書店・店員&主婦】

【安倍東雲(あべ しののめ)/男/15歳/霊闘師】
【安倍時雨(あべ しぐれ)/男/14歳/新米陰陽師】

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■         ライター通信          ■
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初めまして、今日和♪ライターの峰村慎一郎です。
この度は有難う御座いました。

コメディということで、本当色々オカマ達で遊んでしまいました;
いかがでしたでしょうかっ

この後、ご恩を思い出した時雨が相澤サンにお礼をばしたようです。
まだ新米陰陽師なので大した力はありませんが、宜しければ使ってやってください。

それではまたお会いできる日を祈りつつ・・・
本当に有難う御座いました。

峰村慎一郎