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■悪魔の指紋−子供部屋−■
キィ、キィ、キィ、………
闇のように暗い部屋に、たったひとつの窓から月明かりが射し込んでいる。
ゆりかごを揺らしているのは、まだ小さな、子供の手。
「ねんねや ねんねや……」
子守唄を唄う声は、どこかうつろで。
「ねんねや……ねむった……?」
うかがうように、その手がぐいとゆりかごの端を床にくっつくほどさげる。
ぱっ、
手を離すと、ゆりかごは嵐の海に振り落とされたようにがたがたと大きな音を立てた。
中の───赤ん坊は、どうなっているだろうか。
「ねえ、」
くすくす。
初めて、唄っていた声の主が、わらった。
「なかないの?」
ナカナイノ───?
月に照らされた床には、
───夥しいほどの数の、人形達。
◇
「また誘拐事件? 多いわね」
碇麗香は、新聞記事を読んで、やるせないため息をついた。
そんな上司に気づいたのは、いつも彼女の顔色をうかがっている三下だ。
「またですか? 多すぎますよ、確かもう十人はこえてるんじゃ───」
「24人よ。しかも今回、『足跡』を残していったらしいわ」
「え!? だってその犯人、まったく指紋も目撃者も残さず、親のいる家からでも誘拐するっていう凄腕なのに!?」
ぱしん。
三下の額に、麗香のボールペンが飛ぶ。
「『だから』、よ。わざと『足跡』を残したの。誘拐された子の子供部屋のベッドの上に紙が置いてあって。一言、『ひっくりかえしちゃうよ?』って」
ひっくりかえす───?
額を撫でながら、三下は考える。
何の痕跡も残さない小学生以下の子供から赤ん坊だけを狙った大量誘拐。
まるで、子供の口調の「足跡」。
誘拐された子供の死体等は、幸いまだ一人もあがっていないとはいっても───不気味なことには、かわりはない。
そこで、ふと気づく。
「なんで麗香さん、そんなことまで知ってるんです?」
「『草間さん』のところの零ちゃんがね、よく遊んであげていた近所の子が最後に誘拐されて。泣きつかれたのよ」
武彦に───泣きつかれた。
零のためなら、なんでもする武彦のことだ、想像できなくはない。大方、哀しむ零のためになんとかしてやりたいと、麗香のところだけでなく、あちこちにあたっているのだろう。
「多分、今までのことを総合して考えると、攻撃系でないとしても相当の能力者って考えるのが妥当だと思うけれど、ね。痕跡を何も残さないところとか。
ということで、依頼発令、お願いね。三下くん」
「は、はい……」
一気に入ってきた情報に頭がついていかず、三下はぼんやりと返事をした。
■カサネ■
あわれと。
思うんだね、このこたちを。
ねえ、
ほねのかたまりになったら。
もっとあわれと、
きみたちは、思う───?
あ・ほら
カサネがみえるよ───。
◇
「どうしたんだ? みんな、ぼうっとして。話の途中だぞ?」
不思議そうな草間武彦の問いに、集まった4人ははっと我に返った。
今の───「声」は、頭の中に届いた「声」は───他の仲間にも聞こえていたのだろうか?
一色・千鳥(いっしき・ちどり)、由良・皐月(ゆら・さつき)、神宮路・馨麗(じんぐうじ・きょうり)、シュライン・エマは互いにちらりと視線を交わす。その動作だけで、確認は充分だった。
「そう、ですね───どこまで話したんでしたか」
「ええと……武彦さんがお借りしてきた、『足跡』のことよね」
「そうそう。『ひっくり返す』の推測を立ててたんだわ確か」
「きょーりは足跡っていうから、ホンモノの足跡だと思ったですよ」
頭の中に流れてきた言葉については、武彦には知らせないほうがいいだろう。零の沈み込む姿に心底参って、ろくに食事もとっていなさそうな、目の下にくままで作っている武彦を見て、全員が同じ思いを抱いたようだった。
改めて、武彦が借りてこられた「誘拐犯ののこしていった、初めての足跡」である紙を見る。
ひっくりかえしちゃうよ?
確かにそこには、そう書いてある。
子供の筆跡───に、見える。けれど、怒ったふうでも苛々しているふうでも、ない。
「千鳥さんとシュラインさんは、なにか調べてきたって言ってたですよね?」
馨麗のその言葉に、紙を手にとってじっくりと見ていた千鳥と、書いてある言葉について考え込んでいたシュラインは、それぞれにうなずく。
「赤ん坊が攫われている、というお話は私のお店で耳にしたことはあります。結構な数になっていますしね。攫われた赤ん坊、そして周囲の事柄で年齢以外の共通点、攫われた家々に関しての法則性はないかとネットや伝手などで調べてきたのですが」
千鳥の話では、共通点に関しては年齢以外には特になかった。また、家々に関しても、特に法則性は見受けられなかったのだ、ということである。
「じゃあなんで、こんな事件がそもそも起こりだしたんだろ?」
この話を聞いたとき、真っ先に、「ああもう、頼むから老人子供怪我人病人の類には優しくしてよ誰か知らないけどさぁ!」と叫んだ皐月だったが、今はいくぶん無理矢理に自分を落ち着かせているようだった。
「うぅん、私も一色さんと似たようなことを調べてはきたのだけれども」
シュラインが調べたのは、次のこと。
被害のあった家に、近頃何か購入した、子供部屋の物や増えていたもの、誘拐時刻や居場所等、何らかの共通点がないかの確認。
また、年齢や順序、位置的なものに法則性が見受けられないか。
この2点だったのだが、やはり千鳥と同じく、手がかりという手がかりはなかった。
「まるで犯人像が浮かんでこないな」
お手上げだ、というふうに武彦は、危うく唇まで焦がしそうになるほど短くなった煙草に気付き、既に山と詰まれた煙草の吸殻にひとつ、加えた。
「はんにんぞうというなら、きょーり、ちょっと心当たりみたいのあるですよ」
挙手をして、まだ幼い、ともすれば誘拐の対象にも充分なり得る6歳の馨麗である。
「痕跡は……見つけてみろと言ってるのか、それとも関わるなって言ってるのか、どちらかはわかりませんけど、人形に子供の霊が憑いて悪さをしてるんだと思うですよ。小さい子供や赤子を攫うという事は、仲間を増やそうとしてるんじゃないでしょうか?」
「人形?」
皐月が、まったく考えていなかった方向の推測を聞いて思わず聞き返す。はい、と馨麗はうなずいた。
「人形……ヒトガタには悪い物が入らないよう、職人さんが魂を込めるです。でも魂のない器には悪い物が入り込んで悪さをするです」
「なるほどなあ」
武彦は、ちらりと腕時計を見る。敏感に、シュラインが気付く。
「そろそろ零ちゃん、戻ってくる頃かしら」
「だな、いつもどおりなら」
零はあの事件があった後、毎日のように自分の足を使って誘拐事件を解決しようとしている。
無理だと分かっているから。
危険の可能性がないと分かっているからこそ、武彦はそれを許していた。
そんな兄妹を見ていると、だからこそ皆がついていくのだということがよく分かる、と千鳥は思うのだ。
「零さんの親しくしていたお子さんが最後の犠牲者だったのよね? その時刻が午後4時、それから毎日3時間かけて探してるの?」
皐月の問いに、「ああ」と武彦は眉間を押し揉む。
現在時刻は、夜の7時になるところだった。
零が帰ってくる前に、と、紙から情報を出来る限り読み取っていた千鳥が、それをようやくテーブルの上に戻して全員を見やる。
「紙から読み取って、分かったことは多少ながらあります。馨麗さん、あなたの推測も半分ほど当たっていましたよ」
「半分?」
分からない、というふうに小首をかしげた馨麗を含め、千鳥は全員に説明した。
「書いたのは、子供の手に見えました。妙な黒い影のようなものも多少見えましたから、それが馨麗さんの仰っていた『悪い霊』なのかもしれません。それに───ゆりかごと、山のような様々な人形、寒そうな廃墟のようなお屋敷が見えましたね」
「その屋敷の場所、分からない?」
身を乗り出すシュラインに、
「引きずり込まれなければ、恐らく分かると思います」
と、千鳥。
「ひっくり返すって、ベッドを? 紙を? 立場を? 生を? ストレートにベッドとして今までの子供達も寝床をひっくり返された? ゆりかごが見えたなら、それをひっくり返す?」
懸命に考えていた皐月だが、「駄目だわかんない。私こういう探偵じみたこと、苦手なのよねぇ」と頭を抱える。
「とはいえなんとかしなきゃ……そもそも犯人の意図が見えないってどうなの」
「それなんだけれど」
シュラインが、腕組みをし、テーブルに再度置かれた「足跡」を見つめる。
「私も色々考えていたの。子供部屋にあったり子供に関係のありそうなものといったら砂時計、ヤジロベイ、鏡にお人形。中には水槽がある場合もあるのかもしれないし、ひっくりかえされて変化があるのは砂時計や水槽等かしら、って。または……おもちゃ箱、かとも。けれどね、なんだかハッキリしているようなことは、
ヒントを出してきたってことは相手にはある意味ゲームなのかもって」
ゲーム。
子供が、ゲームをしている、のだとしたら。
だとしたら、
事件に共通点がないのも、法則性がないのも分かる気がする。
「今回だけ『足跡』を残しているのも気になるんですがね。子供がゲームですか……まさかお人形遊びをするつもりで連れて行っているわけではないでしょうねぇ……」
千鳥がつぶやいたとき、折を見たように零が帰ってきた。
「ただいま帰りました。
あ───」
疲れたように帰ってきた零は、そこに見知った顔を何人も見つけて、兄が助っ人を呼んだのだとさとり、ほっとしたように肩の力を抜いた。
シュラインが立ち上がり、零を支えるようにしてソファに座らせる。
「大丈夫? 零ちゃん。新しくお茶を淹れるところだけれど、飲む?」
「あ、はい、いただきます」
すぐにうつむいてしまう零が顔を上げてこたえるのを見届けて、シュラインは微笑みをひとつおくって台所へ行く。そこからでもこの狭い興信所では、会話を続けるには充分だった。
「草間さんのこの興信所から、その、最後に誘拐された子のお家は近いんでしたよね?」
馨麗が、零と武彦とを見比べる。零がうなずくのを見て、
「千鳥さんに、そのお家から情報を読み取ってもらってから解決する、ではだめですか? もしかしたらきょーり、囮って形でお役に立てるかもです」
「今のところの『最後に誘拐された家』に千鳥さんが行くのなら、私は、最初に事件のあったお宅やその周辺で子供か道具に関して何かあったのか、その点を調べてみたいわ」
シュラインが言ったので、そこからは役割分担をして調査しよう、ということになった。
決まったのは、
最初に事件があった家に行くのは、シュラインと馨麗。
最後の事件にあった家に行くのは、千鳥と皐月。
「赤ん坊は大人と違って体力も抵抗力もありませんから、出来うる限り早くに見つけ出さなければ、と思います」
千鳥のその言葉から、一時間以内に情報を可能な限り集め、再び興信所で合流しようということになった。
興信所を出たところで、二手に分かれる前にシュラインが口を開く。
「『足跡』の意味について考えているときに、カサネがどうのって聞こえたのよね。どういうことかしら」
「何かを重ねる? カサネがみえる、って最後に聞こえたから───何かを重ねたのが見える? なんかしっくりこないなぁ」
「かさねって、いろいろ漢字があるですよ。当てはまる意味のものを考えてみるといいかもしれないです」
「カサネ、ですか───重ね、嵩ね、笠ね、瘡ね、暈ね……人の名前やあだ名かもしれませんね」
皐月と馨麗、千鳥もしばし考えていたが、情報集めをしながらにしよう、ということで時間優先にしたのだった。
■オボシメセ■
みて・ほら。
オボシメセがかたまるみたいに、
カサネのほねも、
あのすみに。
かたまって・いくよ───。
◇
また、だ。
頭の中に、声が伝わってきた。
最初に事件があったという家を麗香にも連絡をとってつきとめ、今からでもお邪魔できるようにしておいてもらったシュラインと馨麗は、向かうタクシーの中で顔を見合わせた。
「……『これ』も、帰ってからね」
「そうですね、でもきになります。おぼしめせがかたまるなんて、聞いたこともない言葉ですよ。学校でならうですか?」
まだ学校に行っていない馨麗に、ううん、とかぶりを振っておいて、シュラインは停まったタクシーの運転手に領収書をもらって馨麗と共に降りた。
車の音を聞きつけたのか、すぐに、一人の中年男性が家から出てくる。
「突然お邪魔してすみません。麗香さんにお話を通していただいている、草間興信所のシュラインと、こちらはお手伝いをしてくれている神宮路さんと申します。早速ですが中を」
「ええ、時間が。そうですよね、これは誘拐事件なんですよね。そうだ、そう……優太(ゆうた)が死んだあの事件とは違うから……ああ、どうぞ入ってください。今、紅茶をお淹れします」
シュラインの言葉をひったくって、せわしなく男性の瞳があちこちを見る。よく見ると、扉を開けるしぐさも、歩くときにも落ち着きのない人物だった。
「死んだ……?」
入りながら馨麗がたずねると、男性は「あそこに、」と入り口から見える真正面の壁にたくさんはりつけてある家族写真を指差す。
「あそこにいるのが、私の、亡くなった家内と、息子の優太です」
確かにたくさんの家族写真は、さながら外国映画に出てくる家庭にあるように、幸せそうなものばかり貼られてあった。異常なものは一切、感じられない。
けれど───何かが、引っかかる。
「それでは、この誘拐事件で攫われたのは、この写真の男の子と一緒に写っている女の子、ということですか?」
シュラインは、じっくりとその女の子、そして「死んだ」という女性と男の子を見つめる。
「ええ、ええ。家内はずいぶん前に、病気で。息子は家内の言葉をよくくりかえしては娘と遊んでいました。イトス、カサネ、オボシメセ。ええ、言葉遊びが好きな家内でしたから、造語もいくらかありまして」
「待って、ええと……神凪(しんなぎ)さん。もう少し詳しくお話を───」
「ああ、ああ! そうですね。娘の優美(ゆうみ)が攫われたのは、優太が庭で、優美の人形を悪戯で隠してしまおうと穴を掘っていて、そう、アオダイショウに噛まれて死んだんです。それから優太の葬式の翌日に、優美はいなくなりました」
シュラインの言葉の意味を、理解しようという姿勢も見受けられない。どうやらこの男性、事件続きで疲れているのか、人とうまく会話のコミュニケーションが取ることができないようだった。
やがて紅茶が出されたが、二人とも次々と沸いてくる情報に飲む気分にもなれない。
「アオダイショウって、蛇のアオダイショウですか?」
馨麗がたずねると、男性はうなずく。
「ええ、ええ。ええ、そうですとも。この辺はアオダイショウがよく出るんです」
「神凪さん、奥様のお名前とあなたのお名前を、教えていただけますか?」
ゆっくりとたずねると、男性は妻の名前を「ミツメ」、自分の名を「ヤサ」と。
言ったのだった。
■イトス■
きっかり一時間後の夜8:30に興信所で合流したシュライン、馨麗と千鳥、皐月は互いの情報を交換しあった。
「繋がった……」
つながる部分を、みつけた。
やはり、法則はあったのだ。
「ミツメ」という人物と、「言葉遊び」。
恐らく、誘拐された子供達は言葉遊びを「ミツメ」という人物に教わっていたに違いない。攫われた赤ん坊も、恐らくは街中で接触したか、それか家族内の誰かが「言葉遊び」を教わっていたか、だ。
「シュラインさんと馨麗さんの情報では、でもミツメっていう女性はとうの昔に亡くなってるんでしょ?」
皐月が何気なく興信所の電話を見る。武彦に頼んで伝手をたどり、その人物を見つけてもらったほうが早いような。そんな気がしたのだ。
「そうね。武彦さんの伝手で───神凪さんのところのご夫婦の『本当のお名前』を教えてもらえないかしら」
同じ思いだったのか、シュラインがちらりと、武彦と零とを交互に見る。
「ああ、やってみる。しかし変わった言葉遊びだな。文章業でもやってたのかね、その奥さんは」
立ち上がりながら、武彦は腰をのばす。
千鳥は、何か異変があったらすぐに「連れ戻して」もらえるよう、馨麗についていてもらって紙から「屋敷」の場所を探り始めた。
シュラインはその間に、簡単な夜食を作る。皐月も手伝おうと向かったとき、ガチャリと荒っぽく受話器を置く音がきこえ、足を止めた。武彦が、深いため息をついたところだった。
「駄目だ。これも犯人の能力でやってるんだと思うんだが、『何故か』どのルートからも───戸籍から何から、神凪夫婦の名前『だけ』が『分からなくなってる』らしい。クソ!」
ひらり、と、そんな荒れた空気をただすように、千鳥が紙をテーブルの上に戻した。
それほどに疲労は見られない。馨麗の助けも幸い、いらなかったようだ。
「相手に余裕が見られますね。それほど深く探らなくても、屋敷までの道のりが見えました」
今から向かいますか?
千鳥の言葉に、シュラインは、簡単なおにぎりを作ってテーブルに置き、ラップをかける。自分達のぶんは皐月が手伝ってタッパーに入れ、お茶を水筒に入れた。
武彦は、じっと動かず、不機嫌そうに腕組みをしていまだに電話を睨みつけている。
苦笑して、シュラインはその肩をぽん、と軽くたたいた。
だいじょうぶよ、と声をかける。
「私達が、必ず解決するから。そんな顔をしていつまでも電話見つめていても、零ちゃんが心配するだけ───」
よ、という語尾はシュラインの唇からかき消された。
みつめていても。
自分が今言ったことばを、頭の中でくりかえしてみる。
「ミツメ───みつめ、る?」
はっとしたように、皐月が彼女を振り返った。
「みつめるって、目で見つめるから。もしかして───『瞳』のことかも」
神凪瞳。それが、妻の名前だとしたら。
千鳥も、ソファから腰を浮かせる。
「『ヤサ』───そのご夫婦のお子さん達には、両方に『優しい』という漢字がついていたんでしたよね。でしたら、ご主人の名前は漢字で『優』、でしょうか。読み方はたくさんあるので特定できませんけれど」
馨麗が、目を輝かせた。
「きょーりたちが聞いた、『ロック』の鍵っていう言葉遊びともつながってる気がするです!」
分からないのは、カサネ、オボシメセ。
神凪氏が言っていたもう一つの「イトス」も気になるが、とりあえずは頭の中に流れてきた、この二つの言葉だ。
「行きながら考えましょう。武彦さん、タクシーの経費は多分、警察が充分なお礼で払ってくれると思うわ」
お金とはいかないけれどね、とシュラインは、草間兄妹に向けて、安心させるように微笑んでみせた。
◇
くる・ね
くるんだね、ぼくのもとに。
ああ、せっかくカサネで綺麗に輝いてるオボシメセのようなほねのかたまりは、
こわさないでね。
だってぼくは、このこたちを、イトスしてるんだから。
■パラパティス■
「出てきたわね、『イトス』」
タクシーを降りて領収書ももらったシュラインが、屋敷を見上げる。
運転手の話だと、こんな山奥に立てた屋敷の存在は、ついぞ知らなかった、という。
本当の持ち主は誰だったのか。それはあとでも調べられる。
今は、一刻の猶予もない。子供達がどうなっているのか───心配だ。犯人が、子供で、ゲーム感覚なのだとしたら、尚更のこと。
「きょーり、ちょっと思ったですが」
屋敷の扉には、鍵がかかっていない。蔦が屋敷をびっしりと覆い隠すようにしていたのでそれには苦労したのだが、ギィ、と音を立てた扉から入りながら、馨麗が皆をみあげる。
「いとす、だから『いと』ってばかり考えてたですよ、でも『イトスしてる』って、そのこたちに何かしているか、思いを抱いてるってことですよね? で、後者のほうだとしたら、です。愛情の『愛』の字って、いとしい、とも読むですよ」
「愛しい───愛する───イトス。しっくりくるけれど、だとしたらなんで骨のかたまりとか出てくるんだろう?」
皐月の疑問に、何故だかぞわっとシュラインの肌があわ立った。
「まさか───子供達って、既に殺されてる、とかじゃ」
千鳥以外の二人が、驚いたようにシュラインを振り返る。
「どーしてですか!?」
「まだゲームなんて始めてないわよ? 少なくとも私達とは」
「いえ、始まっていたんですよ。犯人の中では、恐らく」
千鳥が、慎重な面持ちで月の光、蔦の隙間からのそれに照らされた床を踏みしめる。一箇所だけ音が違う場所を見つけ、かがみこむ。ちょっと手をあてただけで、待っていたように、ぼこりと音がして、くりぬかれたように穴があき、地下への階段があらわれた。
「もしかして、それって……『足跡』を残したときからってこと?」
皐月の問いに、「多分そうね」とシュラインがなんとも複雑な顔をする。
「この、階段……おりるですか? なんか、かびくさくてたまらないです」
「降りましょう。少なくとも馨麗さん、あなたを囮にせずにはすみましたから」
千鳥にさとされ、こくん、とうなずいた馨麗を合図に、4人は階段を慎重に降りてゆく。
「言葉遊びの達人なら、『ひっくりかえしちゃうよ?』っていう一文も多分、何かの言葉にかかってたんだわ」
シュラインの声が、ひそめていても、洞窟の中のような空間に響き渡る。
「麗香さんから聞いた、そして草間さんからも調べていただいた中からの鍵になりそうな言葉・単語といえば、誘拐に関することですから───」
千鳥が、考える。
誘拐、足跡、子供、子供部屋。
「24人……?」
いつものように、皐月の勘がその文字を彼女の脳内に浮かび上がらせた。
「あっ!」
馨麗が、分かった、というふうに声を上げる。
シュラインが、目を瞠る。
「24人───そうか、どうしてそんなに半端な人数で『足跡』を残したのかも、考えなくちゃいけなかったんだわ。24、を『ひっくりかえしたら』───」
「42。しに。しにん……」
考え込むようにしばし足の動きがゆっくりになっていた千鳥が、つぶやく。
しん、と静まり返った中、黙々と進んでゆくと、やがて足のつま先が壁に突き当たった。
合図にしたように、壁が向こう側に開いてゆく。
そこは、
「やっと、きたね。
まってたよ」
地下であるはずなのに、
皓々と月の光の恩恵を浴びた───広い広い、
子供部屋、
だった。
◇
冷たい、大理石の床に、ゆりかごをいくつか置いて。
その一つの傍らに、少年は立っていた。
シュラインと馨麗が見た、写真の少年───そのものの姿で。
「優太、くんね」
シュラインの言葉に、少年はわざわざこたえる真似はしない。ゆるやかに、無邪気な微笑みをおくっただけだ。
「悪い瘴気にすっかり操られてしまっています───」
小さな声で、千鳥が仲間に情報をおくる。
おそらく、そこらに漂っていた「子供好き」な瘴気と、運悪く波長があってしまったのだろう、と。
「その、身体は、つくったですか?」
あえぐような馨麗の問いにも、優太はこたえない。
「綺麗に作ったものね」
やるせない気持ちで、皐月はそうため息をついた。
今、自分達がいる部屋の中央、その大半は月の光で明らかになっている。だが、右側部分の暗がりに、何があるかを確かめるのが、少々こわかった。
「きみたち、まちがえちゃったからね。ゲームはまちがえたら、ペナルティがあるものだから」
だから、
ほねに したんだよ
優太が片手をあげる。
ぱっと右側部分、暗がりだったところにも月の光が広がり、吐き気がするようなほどの数の様々な人形が、ばらばらにされていた。
その傍らには、無造作に、ゆりかごやベッドから放り出された───24人きっかりの、子供や赤ん坊達。
駆け寄った馨麗と皐月が、全員の脈や呼吸、心音を確認する。
大丈夫───弱ってはいるものの、生きている!
「ほっとするのは、まだ、はやいよ」
優太は、言う。
だって・まだ こたえをといて・ないから ね
「こたえ───?」
鸚鵡返しのシュラインに、優太はうなずく。
「そう。ぼくのママがつくった、おしえてくれた、ことばあそびのことば。
みっつだけ、こたえてみてよ。ヒントは一個ずつ、あげるからさ」
「正解したら、全員、子供達は無事に帰してもらえるのですか?」
千鳥が、確認する。優太は千鳥を向いて、小首をかしげて笑みを濃くした。
「もちろん。そうじゃなきゃあ、もとからゲームにならないもの」
優太の言う言葉遊びの言葉、とはやはり、「カサネ」、「オボシメセ」、「イトス」だった。
「イトス」については、馨麗が不安そうにしていたものの、「きっと大丈夫だから」と3人にうなずかれたり背中を撫でられたりされて勇気付けられ、挙手をした。
「はい! 神宮路馨麗、こたえるです! 『イトス』は、『愛する』または『愛しい』っていう意味です!」
優太の瞳が、見開かれる。
「すごいね、ヒントもまだいってないのに。じゃあほかの二つのどちらかには、ボーナスとしてふたつ、ヒントをあげるよ」
次は「カサネ」だよ、と促してくる。
ヒントは、「光るもの」だった。
「ん───」
考えていたシュラインが、ふと思い当たる。昔翻訳したものの中に、引用してくれと言われて使った漢字の意味をその時、興味深くて調べたことがあったのだ。
「もしかしたら、だけれど。あれかも」
仲間内での相談は禁じられていなかったので、シュラインは3人に伝えてみる。
「分担して調べに行く前、興信所を出たところで一色さんが、言っていたでしょう。色々、『カサネ』に対して。あれを今、思い出して昔の経験から出てきた単語なんだけれど」
それは、「暈」という漢字。
意味は「光の環」である。よく使われるのは、「月に暈がかかる」などだ、と彼女は言った。しみじみと、翻訳業をやってきてよかった、と思う。
「『光の環』がみえる、『光の環』のほねも───うん、あってると思う」
皐月の勘を信じて、シュラインが優太に向き直る。
「『カサネ』は『光の環』の『暈』じゃないかしら」
こくり、と優太はうなずく。
「あたり。じゃあ、さいごのでヒントはふたつ、だね」
「『オボシメセ』ですか……一番取っ掛かりが難しいのですが」
千鳥の言うとおりである。
そのまま変換してみれば、本などでも使われることのある「思し召せ」だ。恐らくそれにかかる何か、なのだろうが───。
「ヒント、ひとつめ」
優太は、見透かしているタイミングだ。
「おまじないだよ、それ」
「おまじないですか?」
馨麗が、今まで頭の中に伝わってきた、優太の言葉と照らし合わせてみる。
「それと、大ヒント。どうやらきみたちは、ぼくがかくしておいたパパとママの名前も、あてちゃったみたいだからサービス。
『オボシメセ』と、ぼくがそのためにつかう『かたまる』はいっぱんてきなことばじゃ、ないよ。だから、『かたまる』とは結びつけてかんがえなくて、いいよ」
優太は、一番近くにある傍らのゆりかごから、手を放さないままだ。わずかに揺らし始めているのが気にかかるが、そのためには早くこたえを間違わずに、導き出さなければならない。
「皐月さん、あなたの勘。今、自信が持てますか?」
突然千鳥に視線を向けられて、皐月は目をしばたたく。すぐに、うなずいた。この場この状況で大いに自慢は出来ないが、土壇場には強いほうだと自覚している。
それに対して自分もうなずいた千鳥は自分の考えを言って彼女からOKサインをもらい、更に全員の確認をとってから、軽く右手を挙げた。
「私がこたえます。『オボシメセ』がおまじないなら、『祈り』、『願い』でしょうか」
祈りがかたまる、願いがかたまる。「思い」がかたまる。別に言葉にしても、特別変な響きではない。それだけ強く祈ったり願ったりする、ということなのだろう。
そこからきた、千鳥の推測だった。
ふ、と優太は含み笑いをして。
ゆりかごのはしを、ぐっと床までさげた。
あ、と全員が息を呑む。不正解───だったのだろうか? まさか!
「これねえ、どんなにゆらしても、『これ』をとらなくちゃおちないように、なってるんだ」
もう片方の手で、優太はゆりかごの中にがっちりと覆われていたらしいカバーを、とった。
「ママ。ぼく、まけちゃったよ。だからぼくも、もうママのところに、いかなくちゃね」
ゆるやかに。
ゆるやかに、優太の全身から、黒い靄のようなものがすっかりと出て行くのが素人目にも見える。
恐らくあれが、優太にとりついていた「子供好き」な悪い瘴気だったのだろう。
「優太くん。あなた、とりつかれているの知っていて、このゲームで正解者がいたら自分を解放してくれるよう、瘴気に頼んでいたの?」
シュラインが、優しくたずねる。
ふふ、と笑う優太は。
けれど、ないていた。
「これねえ、」
ゆりかごをもつてが、
「ぼくの」
はなれた。
これ ぼくの
ほね なんだ
ほねの・かたまり・なん・だ───………
つくられた優太の身体は、砂のように月光に吸い込まれてゆく。ゆりかごからはじかれた優太の骨が。
美しいとまで思わせてしまう、虹色に光った、骨にはとてもみえない、母親からの恩恵を一身に受けた骨のかたまりが。
ばらばらと、部屋の中に散ってゆく。
<ぼく、パラパティスにいくんだ。ママもそこに、いるから>
「パラパティスって?」
皐月が、半分以上消えかけている、笑った顔で泣いている優太にといかける。彼女にしてはいつになく、やさしい声で。
<てんごく。パラダイス、パラパティス。ママはしっゅぱんっていうものしてなかったけど、本をたくさんたくさんかいていたから。そこにでてくるんだ、とってもしあわせな、てんごく>
それとね、と優太の声がつづく。
<優美に、かわいそうなパパに。
つたえて、ほしいんだ>
ぼくはね───………
◇
馨麗の緋皇を使って子供達を治療し、いくぶん元気にさせたあと、4人は警察に連絡を取り、ことの顛末をすべて話して聞かせた。
信じられないといった感じの警察たちだったが、それでもまだそこに残っていた優太の骨から何か言葉をいただいたのだろう、驚いたりこわがったりしながらも最後には納得した。
◇
翌日。
零が、戻ってきた、仲の良い子供のお見舞いに行っている頃に。
4人は、優太からの伝言を伝えるために。
そして、今年3歳だという優美を見舞うために、花束やお菓子などを持って家をたずねた。
神凪氏───本名は「優」と書いて、「すぐる」と読むことが判明していた───に抱き上げられて、ぶつぶつとつぶやくように家族写真を見せられていた優美は、開きっぱなしの扉に現れた彼らに気付き、ぱっと顔を明るくした。
「おにーちゃんとおねーちゃんたち、こんにちは!」
たん、と父親の腕から降りて、元気よく、一番年の近い馨麗に抱きついた。
「ああ、ああ。お客さんなんだね。そうか、そうか。優美のお友達かい? ああ、ああそれなら、紅茶をいれてあげなくちゃいけないね」
どうやら、シュラインと馨麗がつい昨日に訪れたばかりなのに、覚えていないようだ。
「きにしないでね、パパは、ママがいなくなったときから、ごびょうきなの」
「ええ、大丈夫よ。今日は優美ちゃんと優美ちゃんのパパに、優太くんから伝言をつたえにきたのよ」
優美のことばに微笑んで、シュラインが花束を渡す。
「おにいちゃんから、でんごん!? わあ、すてき! でもゆうみ、ずーっとおにいちゃんといっしょにいたきがするの。なんでかな?」
馨麗が、泣きそうになるのをこらえた。シュラインが彼女と、千鳥と皐月の顔を見て、それぞれにうなずいたのを合図に、再び優美と、そして紅茶を人数分淹れてきた優とに顔を向ける。
優太の声で、
言った。
「『優美。優美のだいじなお人形は、ぐみの木の下に、ビニール袋に入れて隠してあるよ。いっぱい意地悪なことして、ごめんね』
『パパ。ぼくはいつも、パパや優美のそばにいるから。もちろん、ママと一緒にね』」
紅茶ごと、お盆が落ちるのを千鳥が受け止める。
一瞬、
優の瞳が正気の色を取り戻したように、見えた。
「優太……? 瞳もいるのか。そうか、そうだな。約束した。確かに……いつも家族一緒に、と。そうだよな、瞳」
きょとん、としていた優美だが、やがて、こうたずねてきた。
「おにいちゃんは、どこにいるの? そばにいるの? みえないの」
皐月が、その頭を撫でる。
「パラパティスに、いるんだって。優美ちゃん知ってる? パラパティスって」
「うん! おにいちゃんにきいたことあるもの、ママのいるてんごくのこと!」
「お利口ですね、優美ちゃんは。でも、優美ちゃんのそばにも、パパのそばにも、いつでも、ママも優太くんも、いるんですよ」
「わあ、それって、ゆうみやパパのこと、ママやおにいちゃんたちが、とってもとってもだいすきってことね! ゆうみもパパも、ママとおにいちゃんのこと、とってもとってもだいすきだもの! とってもとってもとってもよ!」
ぱあっと顔を輝かせる優美は。
それから、様々なことを、4人に話してきかせた。
冬はこれからだけれども、
確かにこの家には、
もう、寒さなどやってこないだろう。
そんな確信を、誰もが、持っていた。
あのね、おにいちゃんはね、とってもとっても、おりこうだったの。きんじょでも、とーってもほめられていたのよ。
それでね、ほんとうはとってもとってもやさしいの。
ママのはなしも、よく、してくれていたの。ママのことばあそびもたくさんたくさん、おそわったわ。
それでね、
それでね───………
《完》
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
4471/一色・千鳥 (いっしき・ちどり)/男性/26歳/小料理屋主人
5696/由良・皐月 (ゆら・さつき)/女性/24歳/家事手伝
4575/神宮路・馨麗 (じんぐうじ・きょうり)/女性/6歳/次期巫女長
0086/シュライン・エマ (しゅらいん・えま)/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、東圭真喜愛(とうこ まきと)です。
今回、ライターとしてこの物語を書かせていただきました。また、ゆっくりと自分のペースで(皆様に御迷惑のかからない程度に)活動をしていこうと思いますので、長い目で見てやってくださると嬉しいです。また、仕事状況や近況等たまにBBS等に書いたりしていますので、OMC用のHPがこちらからリンクされてもいますので、お暇がありましたら一度覗いてやってくださいねv大したものがあるわけでもないのですが;(笑)
さて今回ですが、「悪魔の指紋」という、一話完結タイプのシリーズものにしてみました。何のシリーズかは、すべて終わってみないと分からない……かも、しれません。
一番失敗したかな、ということは、皆さんも既にお分かりかと思いますが、わたしのサンプルの書き方です(汗)。
いえ、一箇所だけなのですけども……一番肝心なところといいますか。
もっと「24人」を強調して書けばよかったな、と反省しております; 半端な数だし、ひっくり返せば「42」で縁起悪い数だし、と安易に考えていたのですが……そうですよね、普通は「物」を考えますよね; うう、今後精進致しますのでなにとぞご容赦くださいませ……。また、充分にプレイングが生かしきれなかった部分もあるかと思いますが、そちらも寛容なお心でご容赦くだされば幸いでございます;
また、今回は「■オボシメセ■」がグループ別(シュラインさん&馨麗さん、千鳥さん&皐月さん)となっております。大変少ないですが、二種類見ないと多少分かりにくいかもしれませんので、お暇なときにでも是非、もう一つの部分もご覧いただければ、と思いますv
■一色・千鳥様:いつもご参加、有り難うございますv 今回はいつにも増して千鳥さんの能力に頼ってしまいました。そのぶん、PL様にしか分からなかったOPの部分、「ゆりかご」も出すことができましたので、とても感謝しております。いつも慎重に行くタイプの千鳥さんは、今回の「こたえを言う場面」では本当はもっともっといろいろと考えてからこたえると思ったのですが、勘が物凄く頼りになる皐月さんがいらしてくださったので、こんな感じになりました。
■由良・皐月様:いつもご参加、有り難うございますv おかん風味(?)なら、最後こんな場合なら実際は、いつも叱り飛ばしたりはしていても優しく接することもあるのでは、と思いまして、優太の最期ではあんなふうになりました。こたえを吟味する大役をして頂きましたが、多分絶対皐月さんは土壇場に強いだろうという確信があったのが理由です。が……実のところはいかがでしたでしょうか。今回「ひっくりかえす」で一番的を射ていたのは皐月さんかな、とも思いました(生を、立場を、ときた時点で)。
■神宮路・馨麗様:初のご参加、有り難うございますv これはまた、物語が膨らむPC様がいらっしゃった、と思って実際に「囮になる場面」を想定していたのですが、書き進めていたら別の方向に滑っていってしまいました……力量不足ですみません;そ、それと勝手ながら緋皇さんの「治療」を使わせていただきました、重ねてすみません;また、ほかにも違う部分などありましたら、遠慮なく仰ってくださいね。今後もしまたご縁がありましたときの参考にさせていただきます。恐らく優美にとって、一番年が近かったので「おねえさん」と思っているかもしれません。
■シュライン・エマ様:いつもご参加、有り難うございますv 最初の家を調べる、という部分がなければ、この物語は進めなかったといっても過言ではありませんでしたので、感謝しております。子供部屋にあるものをいろいろと考えてくださったのに、オチがこんなもので申し訳ないです;優太の最期の言葉は、シュラインさんの声帯模写があったので、神凪氏も一瞬ではありましたけれど「元に戻ることができた」のです。もしかしたら、あれを機に少しずつよくなっているのかもしれません。
「夢」と「命」、そして「愛情」はわたしの全ての作品のテーマと言っても過言ではありません。今回はその全てを入れ込むことが出来て、本当にライター冥利に尽きます。本当にありがとうございます。東圭にしては珍しく「意味のわからない章の名前」でしたが、たまにはこんな言葉遊びもいいかなと。いえ、もっと簡単な、一般的な言葉遊びでも、と思ったのですが、それだと面白くなりそうになかったので(東圭の力量では、ですが;)……でも結果、なんとかハッピーエンドに持っていけてよかったなあ、と思います。興信所のタクシー等の経費も恐らくは警察の方々が感謝状とかいろいろとくれることでしょう(多分、ですが。多分……)。
次回「悪魔の指紋」第二話目は、近々、受難シリーズと前後してUPする予定です。
なにはともあれ、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
これからも魂を込めて頑張って書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>
それでは☆
2005/11/21 Makito Touko
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