コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談・PCゲームノベル>


All seasons 【遊園地デート??】



■オープニング■


 「遊園地に行きたいっ!」
 夢幻館の大広間、そこに入ってくるなり、桐生 暁はそう言った。
 「は?遊園地・・・?」
 「そー!遊園地!行きたいっ!」
 あまりに唐突なその申し出に、夢幻館一同はただ顔を見合わせている。
 「でも、遊園地か〜!あたし、行きたいかも!」
 片桐 もなが最初にそう言った。
 「んじゃ、俺も行く。」
 「それでは俺はカメラ係として同行いたしましょう。」
 それに続いて、神崎 魅琴、沖坂 奏都が次々と名乗りを上げる。
 「それじゃぁ俺は待機組みと言う事で・・・」
 「なに言ってんのよっ!冬弥ちゃんいないとつまんないでしょ〜!」
 「なに言ってんの!冬弥ちゃんいないとつまんないじゃんっ!!」
 もなと暁の声が合わさる。
 「だから、大体からして何でいちいち俺がついて行かないといけねぇんだ!」
 「だって・・これは・・・」
 「Wデートだから、ねぇ☆」
 暁ともなが顔を見合わせて、ついでに手も合わせる。
 「だぶる・・でーと・・・??」
 「そそ。俺と冬弥ちゃんと・・・」
 「あたしと奏都ちゃん。」
 「おいちょっと待てや、普通そこは俺っていくだろ〜!?」
 魅琴が思わず口を挟む。
 「なんで魅琴ちゃんとデートしなくちゃなんないのよ〜!キモイなぁ〜。」
 ・・・もなも、言う時は結構言う。
 しかもぐっさりと心をえぐるような直球で・・・。
 「カメラ係とデートしてどうすんだっ!」
 「でも、キモイもんはキモイのっ!」
 もなはそう言うと、その話題をペイっと捨てた。
 ・・・とにかく、もうそれ以上考えたくもないらしい・・・。
 「それでは・・遊園地の扉へご案内しましょう。」
 奏都はそう言うと、すっと戸棚からカメラを取り出した。
 デジカメ・・しかも最新のものだ。
 その隣からはビデオカメラ・・・。
 「さ、冬弥さん、行きますよ。」
 「え!?なんで・・・」
 問答無用で奏都が梶原 冬弥の首根っこを掴んでずりずりと引きずっていく・・・。
 「お気をつけて〜。」
 夢宮 美麗と夢宮 麗夜が優雅にお茶を飲みながら手を振った。
 その顔にはでかでかと“あ〜、やられキャラじゃなくて良かった〜”と描かれている・・・。


□ボート勝負は☆賭け事☆デス□


 奏都に引きつられて、一つの扉の前にやって来た。
 無論他の扉とどこが違うのかはまったく解らない。
 けれど・・奏都が遊園地の扉と言ったのなら、これは遊園地の扉で間違いないのだ。
 「んじゃ、開けるよ〜!」
 もながそう言って、扉を思い切り押し開けた。
 光り輝く扉の向こうに躊躇せずに入る。
 パァっと目の前が輝いたのはほんの一瞬で、目を開ければそこは遊園地だった。
 「お、流石奏都だな。」
 「・・・俺が間違えてしまったら、大変でしょう・・?」
 彼以外に、誰も館の全てを把握している者はいないのだから・・・。
 「確かに。」
 「ほら、もなちゃん!遊園地遊園地!」
 「本当だ〜!!遊園地だぁ〜!」
 キャッキャとはしゃぎながら、走って行く。
 ・・・これでもどちらも高校生だ。
 「んじゃぁまずは、ボートから!ほら、丁度あそこにあるし!」
 暁はそう言うと、すぐ目の前のボート乗り場を指差した。
 可愛い可愛いスワンボートが鎮座ましましている。
 そしてその隣には普通の白いボート・・・。
 ・・・ボート・・・。
 「俺と冬弥ちゃんと、魅琴ちゃんともなちゃんね!」
 「俺はこちらから皆さんを撮ってますよ。」
 にっこりとそう微笑むと、奏都はカメラを構えた。
 ・・・今から構えても、どうしようもないではないか・・。
 「さぁ、2手に別れて乗って乗って!」
 「な〜、これも勝負すんのか〜?」
 魅琴の言葉に、当然でしょ?と言う視線を投げかける。
 「ほら、冬弥ちゃん早く乗って乗って!」
 ボートの前でたたらを踏んでいる冬弥の背中をドンと押す。
 冬弥が前につんのめり、勢いで湖に落ちそうになるが何とか耐える。
 「テンメェ・・・あきぃっ!!」
 「トロトロしてるのが悪いんでしょ〜!」
 もう、うっさいよ〜!と、小声で付け加える。
 「もなちゃん、魅琴ちゃん、用意良い〜?」
 「あ〜、こっちは問題ねぇ。けど・・・何賭けんだよ?」
 「ん〜・・それはやっぱぁ・・・」
 暁の視線がチラリと冬弥に注がれる。
 ・・・タラリ・・・
 嫌な汗が背を滑る。
 「魅琴ちゃん達が勝ったら、俺が冬弥ちゃんのものになる!んで、俺が勝ったら冬弥ちゃんが俺のものになる!」
 「ココの間だけの話かよっ!!」
 冬弥がそう言って、自分と暁を交互に指し示す。
 「魅琴ともなは微塵も関係ねーじゃねーかよっ!!」
 「おっしゃぁ、その勝負乗った!」
 「テメェも乗んな魅琴ぉっ!!」
 「それじゃぁ、用意・・・」
 「勝手に勝負を進行するなぁっ!!!!!」
 「ドン!」
 「おいこら、ちょっと人の話を・・・」
 シャコシャコと猛スピードでボートを漕ぐもなと魅琴。
 「ほらほら、冬弥ちゃん!ちゃんとやんないと負けちゃうよ〜!」
 「くっそ・・・引き分けを目指せ!」
 シャコシャコシャコ・・・・・
 冬弥の目の色が変わり、途端にキビキビと動き始める。
 暁はソレを確認すると、ゆっくりと辺りを見渡した。
 奏都の姿を視界の端に止めた時・・・ふっとオールを手放した。
 ブンブンと手を振る。
 「やっほ〜奏都さーん、俺の勇姿撮ってくれてる〜?」
 「手を休めるなぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」


■ストローは当然☆2本☆デス■


 「あ〜・・腕がいてぇ・・・」
 ボートから降りた後で、魅琴と冬弥はそう言うと二の腕を押さえてため息をついた。
 「も〜、二人とも歳なんだから〜!」
 「「真面目にやらなかったお前らに言われたくないっ!」」
 魅琴と冬弥の声がピタリと合わさる。
 「んじゃぁ、仕方ないな〜。あそこにカフェあるから、あそこに入ろ〜!」
 「あ〜!本当だ〜!い〜ねっ!行こっ!」
 もながそう言って、パタパタとそちらに走り出す。
 今日もツインテールはぶんぶん軽快に空を切っている。
 「ほら!早く早く〜!」
 もながカフェの前で立ち止まって手を振っている。
 なんだか普通の女の子っぽくてほんの少し和む。
 これがいつもはロケラン持って走っているとは・・・誰も思うまい。
 黙っていればそれなりに可愛いのに・・・(見た目は小学生のようだが・・・)。


 「なに頼む〜??」
 もながメニューを見ながら、小首をかしげる。
 「そーだな〜。パフェ食べたいv」
 「「パフェ〜!?」」
 今度は冬弥ともなの声が合わさる。
 が、そのトーンはかなり違っていた。
 もなの瞳は輝き、冬弥はえ〜っとでも言いたげに眉をひそめている。
 「なんでパフェなんて・・・。」
 「消費する分摂らなきゃ倒れちゃうでしょー。」
 「・・・ハイハイ、ソーデスネー。」
 まるで信じてませんと言うように、冬弥があさっての方向を見ながら頷く。
 「夏のアッツイ日に運動してスポドリ飲まないのと一緒だよ!?」
 「・・・おい、待て!その例えと今の状況はかなり違う気がするんだが・・・?」
 「どこがよ〜!」
 「別にパフェ食べなくても命に危険はないだろう!?」
 ・・・そんな細かいとこまで突っ込まないでほしい。
 「ま、別に甘いモンじゃなくってもいんだけどやっぱ好きだからv」
 「それでは俺はコーヒーにします。」
 奏都はそう言うと、パタンとメニューを畳んだ。
 「じゃ、俺はカフェオレ。」
 魅琴がそう言って、メニューを冬弥にまわす。
 目の前では暁ともながメニューを一緒に見ながらあれこれ相談している。
 「つーか、俺は何にしようか・・・」
 「んじゃ、冬弥ちゃんは飲み物頼んでよー!」
 「あ〜?」
 「俺も一緒に飲むからー!」
 「お前も飲むのか?」
 「うん。なんで?」
 「いや・・・んじゃ、ココアにするか。」
 冬弥はそう言うと、メニューを暁の目の前に差し出した。
 「ほら、これ。飲めるだろう?」
 そう言って左手で1つの写真を指し示す。
 結構大きなコップに入ったココアだった。
 アイスココアらしく、ココアの中には透明な氷がいくつか浮かんでいる。
 「うん。」
 「んじゃ、これな。お前らのパフェはどーすんだ?」
 「あたしがイチゴパフェで、暁ちゃんがデラックスイチゴパフェスペシャルにする事にしたの!」
 「・・・デラ・・・?」
 「デラックスイチゴパフェスペシャルっ!」
 「・・・なんでそんなコテコテそうなの食うんだよ・・・」
 「俺、甘いもの好きだから☆」
 「・・・そこか、そこなのか・・・!?」
 冬弥は大きなため息をつくと、テーブルの上に置かれていた呼び出しボタンを押した。
 すぐにウエイトレスがパタパタと走ってくる。
 「コーヒー一つと、カフェオレ一つと、アイスココア一つと、イチゴパフェ一つと、デ・・・デラックスイチゴパフェスペシャルを一つ。」
 「はい、畏まりました。コーヒーの方は、ホットでしょうか、アイスでしょうか?」
 「ホットで。」
 「ミルクとお砂糖は・・・」
 「いりません。ブラックで。」
 「はい、畏まりました。それでは少々お待ちくださいませ。」
 ウエイトレスはそう言って丁寧にお辞儀をすると、キッチンの方へ消えて行った。
 「え〜、奏都さんってブラックだったんだ〜?」
 「えぇ。甘いものはあまり得意じゃないんですよ。もちろん、嫌いではないのですが・・・。」
 「なんだ暁、知らなかったのか?」
 魅琴はそう言うと、チラリと冬弥の方を見て、何かを言いかけて・・・口を閉ざした。
 「でね、あたしは超甘党なのっ!」
 もながそう言って、ニコニコと微笑むが・・・ソレは知っている。
 魅琴がなおも何かを言いたげに冬弥をチラチラ見ては、ニヤニヤしている。
 「お前は甘いな。」
 「るっせー。」
 「え?!なになに・・・?冬弥ちゃんって甘いの?」
 「しょっぺぇよっ!」
 「ヤラレキャラですからね〜。」
 奏都はそう言うと、優雅に微笑んだ。
 ・・・ちなみに、今の冬弥の心境は“痛い”だろう・・・。
 それからしばらくしてすぐに、ウエイトレスがお盆に色々乗せてやって来た。
 「ホットコーヒーのお客様、カフェオレのお客様、ホットココアのお客様・・・」
 そう言いながら、それぞれの目の前に注文通りの品を置いて行く。
 「イチゴパフェのお客様・・・デラックスイチゴパフェスペシャルのお客様・・以上でご注文はおそろいでしょうか?」
 「おい、暁。なんだその、世にも恐ろしい物体は。」
 「へ?デラックスイチゴパフェスペシャルだけど?」
 そう言うと、スプーンを構えてニコニコと微笑んだ。
 「なんだその器・・・バケツか・・・?」
 魅琴が目をぱちくりしながら言う。
 そのくらい、デラックス(略)スペシャルは大きかったのだ。
 「もなちゃんと一緒に食べるんだもんね〜!」
 「ね〜!」
 ・・・ね〜!ではない!
 どんだけカロリー消費したらそれだけ摂取しなくてはならないのだ・・・。
 「あ・・あの、以上でご注文はおそろいでしょうか?」
 「あぁ。あ・・そうだ、ストローもう1本もらえるか?アイツがコレ飲みたいって言うもんで・・・」
 冬弥はそう言うと、暁を指した後にココアを指し示した。
 「あ、はい。それじゃぁ今すぐに取ってまいりますね。」
 ウエイトレスはそう言うと、トテトテと走って行った。
 「え〜、俺別に冬弥ちゃんの使ったストローでも良かったのに〜。」
 「馬鹿言え。」
 「あの、お客様。どうぞお使いください。」
 にっこりと微笑みながらウエイトレスが持って来たものは、ストローだった。
 「それでは、ごゆっくり・・・。」
 飲み口は2つ。
 そして下は1つ。
 ・・・カップル用ストロー・・・。
 「ありゃりゃ・・俺達ってもしかして・・・」
 「恋人同士に見られてますね、完全に。」
 奏都はあっさりとそう言うと、コーヒーを一口飲んだ。


□キメ☆キメ☆ショットデス□


 なんだかすっごく疲れてる感じのする冬弥を先頭に、カフェから出てきたのはそれから1時間後だった。
 なにしろデラックス(略)スペシャルが大きすぎて、食べるのに時間がかかったからだ。
 「それじゃ、次はどこ行く〜?」
 「ジェットコースターでしょ!ほら、水ん中に最後落ちるヤツあんじゃん!アレ乗ろ♪」
 「パフェ食った後にか!?」
 「パフェは別腹なの〜!」
 もながわけのわからないことを言って、キャッキャとはしゃぐ。
 ジェットコースターとパフェと別腹。なんとも奇妙な取り合わせだ。
 「所々カメラあるから、ナイスショットでお願いしますv」
 「おいおい・・・。」
 「ほら、レッツラ☆ゴーゴー♪」
 もながそう言って駆け出す。
 アレだけしこたまパフェを食べたと言うのに、その動きは軽快だ。
 やはり糖分を摂取したのが良かったのだろうか・・・?


 「ほらほら、冬弥ちゃん!一番前に乗ろう!」
 「・・・言っておくが、コレに乗りたいと言ったのはオマエだからな!?後で気分悪くなったとか言って俺のせいに・・」
 「しませんってば!後ろが詰まってんだからは・や・く!」
 「わぁったよ。」
 渋々と言った感じで、冬弥が乗り込む。
 一列目が暁、冬弥
 二列目がもな、魅琴
 三列目が奏都
 ゆっくりとジェットコースターが動き出し、ぐるぐると同じ場所を回った後でほんの少しだけ下に落ちる。
 パシャっと、音が響く。
 「冬弥ちゃん、今のところちゃんとポーズとった〜?」
 「あんな突然でとれるかっ!」
 ジェットコースターはすごい勢いで様々な場所を走りぬけ・・・ジリジリ高い所へ上がって行く。
 「んじゃ、冬弥ちゃん!ここからポーズとっとけば?ほら、もうすぐ落ちるし。」
 「阿呆!こんなとこからポーズなんてとれっかよ!」
 「ほらほら・・・今に落ち・・・」
 ガクンと、地面がなくなる。
 目の前に遊園地の風景が広がり・・・凄まじいスピードで降下する・・・。
 これは思っていたよりもずいぶん速い・・・!!!
 カシャ
 と言う音を聞いたと思ったのもつかの間、水しぶきで目の前が染まった。
 一列目に乗っていた暁と冬弥は大被害を受ける。
 この寒いのに・・・。
 「つっめて〜!」
 「つめた〜!!」


 「写真が出来上がってるよ〜!暁ちゃん、冬弥ちゃん!」
 ジェットコースターを降りてすぐのところ、幾つか並んだ画面の1つに一行の姿があった。
 まずは1枚目の写真・・・。
 みなそっぽを向いている。
 あれだけ急だったのだから仕方がない。
 「それで・・・次のヤツは・・・?」
 暁が画面を眺める。
 一列目、笑顔で手を振る暁。しかし微妙に顔が引きつっている・・・。
 その隣、冬弥は完全に顔が引きつっている・・・。
 そしてその後ろ、もなと魅琴は完全に遊んでいる・・・。
 にこにこしながらピースをして、さらに舌まで出している。
 ・・噛まなくて良かったと言う思いでいっぱいになる・・・。
 そして最後・・奏都は・・・。
 「奏都ちゃん、超普通の顔だね。」
 「っつーか真顔だな。」
 「仕方ありませんよ。とりあえず、落ちるところでポーズを決めようと思っていたのですが・・・あれだけの落ちでは・・・。」
 ケロリとそう言うと、ため息をついた。
 結構な長さを落ち、さらにスピードも結構なものだったと言うのに・・・。
 じゃぁ、貴方はどれだけの高さからどれだけのスピードで落ちれば満足なのですか!?と、聞きたくなる。
 「奏都ちゃんってさぁ、神経通ってる・・・?」
 「なにをおっしゃるやら。」
 もなの言い方も単刀直入すぎて駄目だが・・・。


■お化け屋敷はドキ☆ドキ☆デス■


 「次は・・・やぁっぱ、定番のお化け屋敷でしょ〜!」
 暁はそう言うと、背後に聳える怪しげな洋館を指し示した。
 茶色いレンガには蔦が蔓延り、さらに崩れかけている。
 これは演出なのか、それともリアルにヤバメなのか・・・切実に聞きたくなってくる。
 「それじゃぁ、あたしと奏都ちゃんと、暁ちゃんと冬弥ちゃんでいーんじゃない?」
 「ちょっと待てや。俺はなんだ?」
 「あまり1。」
 「そんな言葉で片付けようとするなっ!」
 魅琴はそう言うと、もなの頭をゴスリと殴った。
 「なにすんのよ〜!レディーは粗野に扱っちゃいけないのよ〜!」
 「もっとメリハリのついた体になってからそう言え!大体からしてお前は幼児たい・・・」
 もなの目が、ジトリと据わる。
 「・・・じゃぁいーわよ。あたしは一人で行くから、魅琴ちゃんは奏都ちゃんと行きなさいよ。」
 もなはそう言うと、ツンと顔を背け、一人で入って行ってしまった。
 それを見送る暁の肘を、冬弥がつつく。
 「んじゃぁ、俺らも早いところ入るぞ。」
 「え?魅琴ちゃん達はどうするの?」
 「どうせ奏都に無理やり入れられるっつーの。とにかく、とばっちりが来ないうちに早く。」
 冬弥はそう言うと、暁の腕を引っ張ってお化け屋敷の中に入って行った。
 そこは歩くタイプのお化け屋敷で、青白い電灯がぽつぽつとあるだけだ。
 数歩先は真っ暗で、何も見えない。
 「こりゃ、ちょっと暗すぎだな。」
 「う〜ん・・・確かに・・・。」
 うかうかしていると、冬弥の姿まで見失ってしまいそうだ・・。
 「足元気をつけろよ。」
 「そんなこと言ったって・・・」
 見えないのだから仕方がない。
 普通のお化け屋敷なら、もう少し客の事を考えて明るくしてあるようなものだが・・・。
 「ったく、ほら、つかまっとけよ。」
 青白い光に照らされて、冬弥の腕が仄かに見える。
 「ありがとう。」
 暁は手を素直に掴むと、辺りを見渡した。
 時折、低い呻き声がするより他は何も見えないし、何も聞こえない。
 ・・・これはお化け屋敷・・・?なのだろうか・・・?
 「あれ?壁だ。」
 冬弥はそう言うと、暁の方を向いた。
 「途中で分かれ道なんてなかったよね・・・?って事は・・・ちょっと冬弥ちゃん良い?」
 暁はそう言うと、壁を探り始めた。
 すーっと壁を手でなぞり・・・
 「ここだ。」
 そう言うと、壁を一気に向こう側に押した。
 「カラクリ扉だったのか。」
 「みたいだね。先に進もう。」
 開いた扉の先はそれなりに明るいところだった。
 電灯が赤い分、部屋の中が赤く光り輝いている。
 そこは赤い絨毯の敷いてある廊下だった。右に、左に、幾つもの扉がある。
 「うわぁ、なんか夢幻館みたいだね・・・」
 「言うな。考えねぇようにしてたんだから・・・」
 コツコツと歩いていると、突然右側の扉がガタリと開き、中から骸骨の腕が伸びてきた。
 一瞬驚いた暁だったが、次の瞬間には瞳がランランと光り輝いていた。
 ・・・チャンスだ!
 「キャー!!冬弥ちゃん、お化けー!」
 少々棒読みになってしまっているのは致し方のない事として・・・。
 暁は冬弥に抱きついた。
 「・・・だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
 ワンテンポ遅れて、冬弥が叫ぶ。
 ・・・その叫びに一番驚いたのは、暁だった・・・。


□☆キスプリ☆は思い出デス□


 「まじ、超ビックリした〜・・・」
 「悪りぃ。」
 心臓を押さえながら出てきた暁と、なんだかとっても疲れた顔をしながら出てきた冬弥を、走って出迎える。
 「あれ?そんなに怖かった??」
 小首を傾げながらそうきくもなの手を取る。
 「聞いてよもなちゃ〜ん・・・。冬弥ちゃんったら、かくかくしかじかで・・・」
 「冬弥ちゃん・・・なぁにお化け屋敷の味方してんのよ。」
 「いや、別にそう言うわけでは・・・」
 弁解をする冬弥の後ろから誰かが走ってきて・・・冬弥に抱きつく。
 ・・・魅琴だ。
 その表情はやや固い。
 「冬弥〜!」
 「なんだよ、キモイなぁ。」
 冬弥はそう言うと、魅琴の頭をぐいぐいと押しのける。
 なんだか誰かさんを思い出させるその言葉に、思わずハンカチを出したくなる。
 「奏都のヤロー、中でずっと百物語語ってんだぞ!?しかも、真顔で・・・。」
 「・・・そりゃぁ、こえぇな。」
 同情したのか、冬弥はそれ以上魅琴を引き離そうとはしなかった。
 基本的に奏都の声は平坦で・・丁度モールス信号のような感じだった。
 「おやおや、そんなに怖かったですか?」
 「おめぇが言うからこえーんだよ!」
 「これがあたしだったら良かったのにね〜!」
 もながそう言ってツインテールをぶんぶんさせるが・・・。
 「もなの場合は、実体験を淡々と述べそうだよな。」
 魅琴がポツリと言い放つ。
 「特にロケラン関係か?」
 冬弥の問いに、誰も答えるものはいなかった。
 そんなの・・・答えてしまって、挙句もなが肯定してしまったら・・・。
 怖い。とてつもなく怖い。
 お化け屋敷なんかよりも、絶対そっちの方が・・・。
 「や・・やめようよ冬弥ちゃん、もう。」
 暁はそう言うと、視線をさまよわせた。
 「あれ?ゲーセンがある。」
 「あ?」
 「ほら、あそこ・・・あ、プリまであんじゃん!」
 暁はそう言うと、すっと斜め右を指差した。
 遊園地に来た記念に、プリクラとは、なんとも今風の考えだ。
 「プリクラ撮ろっか〜!」
 「い〜ね、暁ちゃん、撮ろ、撮ろっ!」
 もながそう言って、暁のすそを引っ張る。
 「おいおい・・・。」
 「若者って良いですね〜。」
 奏都が、はしゃぐ2人の後姿を見ながらそう言うが、貴方だって見た目は高校生くらいではないか・・・。
 お金を入れて、明るさを調節して・・・。
 「背景どうする?」
 「星があるよ、もなちゃんwあ・・ハートもある!」
 「んじゃ、星と・・・ハート!!あと・・・オレンジの背景で良い?」
 オレンジの背景だと、顔色がとても綺麗に写るのだ。
 決定ボタンを押して、もなと暁はカメラを見つめた。
 まずはにっこりと微笑んで一枚。
 パシャリ
 星空の下での微笑みだ。
 次はハートの背景。
 「もなちゃん、キスプリ撮ろっか〜!」
 「うん!」
 もなはにっこりと微笑むと、そっと目をつぶった。
 パシャリ
 そして最後はオレンジの背景。
 2人は画面に近づくと、ピースをした。
 パシャリ
 「それじゃぁ、ラクガキタ〜イム!」
 2人はラクガキの場所に移動すると、色々とプリクラに書き込み始めた。
 星空のプリクラの右斜め下には今日の日付を。
 オレンジのプリクラには暁ともなの名前を。
 そしてハートのプリクラには・・・。
 ラクガキをし終えると、プリクラの取り出し口に回る。
 そして出てきたプリクラを持って・・・冬弥達の所に走った。
 「ね〜!冬弥ちゃん!もなちゃんとキスプリ☆撮っちゃった〜!」
 やけに明るい声を出しながら、暁はそう言うと、にこにこと微笑んだ。
 冬弥が思わず飲んでいたものを噴出す。
 「・・・とーやちゃん、キタナイ・・・。」
 「だぁっ、キスプリってなんだ、キスプリって、大体からして・・・」
 「え?なぁに?冬弥ちゃんもしたいの〜?んじゃ、いこ〜!」
 「ちょっ・・まっ・・テメェ、人の話を・・・。」
 暁はプリクラをもなに渡すと、冬弥の手を掴んでプリクラの機械に入った。
 コインを入れて、明るさを調節して・・・。
 「背景はどうする?」
 「あんなぁ、俺は・・・」
 「そう?んじゃぁ、ピンクの背景と、ハートの背景と、教会の背景ね。」
 「って、勝手に・・・」
 「ほらほら、早くしないとシャッター下りちゃうよ〜?」
 暁の言葉に、観念したように冬弥がカメラ目線になる。
 パシャリ
 「も〜!なんで笑わないのっ!?」
 「わ〜ったよ。次は笑ってやるから。」
 盛大なため息をつきながらも、冬弥はカメラを見つめながら穏やかに微笑んだ。
 パシャリ
 「・・・冬弥ちゃん、今の笑顔キモ・・・」
 「テメェが笑えっつったんだろがよ〜!!!」
 「ハイハイ、俺が悪かったって・・・あ、そーだ冬弥ちゃん。次のプリ、ちょっと目つぶって。」
 「なんでだよ。」
 「いーから、早くっ!」
 次の背景は教会だ。
 「ったく、しゃぁねぇなぁ。でも、変なことすんなよ?」
 「解ってますって!ほらほら!」
 しぶしぶ、冬弥が目をつぶる。
 ・・・・ニヤリ。
 暁は微笑むと、顔を近づけた・・・。
 ・・・チュッ
 パシャ
 「shgbjsgゥイだgなに!?!!?!?!?!?!」
 「冬弥ちゃん・・・文字化けしすぎだから。」
 「な・・・ななななな・・・」
 冬弥がほっぺたを押さえながらワナワナする。
 「キスプリ☆もなちゃんとだけなんて、不公平じゃない〜!」
 「不公平とか・・・!!」
 顔を真っ赤にした冬弥が、そう叫んで・・・
 「あれ?冬弥ちゃん?冬弥ちゃん!?」
 バタリ
 気絶してしまった・・・。
 「え!?嘘・・ちょっ・・・奏都さ〜ん!!!」


■見えないところにラブ☆ラブ☆写真デス■


 夢幻館からの帰り道。
 暁はニコニコしながら携帯を見つめていた。
 画面の下に並ぶ、今日撮ったプリクラ達・・・。
 もなと撮ったもの、冬弥と撮ったもの・・・。
 けれど“アノ”プリクラだけはそこにはなかった。
 「あんなん、人に見せるもんでもないしね〜。」
 暁はそう呟くと、携帯を裏返し・・バッテリーを取った。
 バッテリーの下には一枚のプリクラ。
 教会の背景をバックに、冬弥と撮ったキスプリだ。
 ふっと微笑むと・・暁は一度だけ夢幻館を振り返った・・・。


 【おまけ】

 魅琴「たかがほっぺにチューくらいで、倒れてんじゃねー!!」
 冬弥「るっせー!」
 もな「でも本当、冬弥ちゃんって暁ちゃんには甘いよね〜。」
 魅琴「んで、いつからココアなんて飲むようになったんだ〜?冬弥ちゃん〜?」
 冬弥「冬弥ちゃんって呼ぶな!」
 もな「あたしが前にココア飲んでだら、頭痛くなるよな、甘すぎてとかって言ってたのに〜!」
 魅琴「どうしてかな〜??」
 冬弥「・・・るっせー!!!」
 もな「本当、冬弥ちゃんは面白いなぁっ☆」



     〈END〉


 □■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
 ■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
 □■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】


  4782/桐生 暁/男性/17歳/学生アルバイト/トランスメンバー/劇団員


  NPC/梶原 冬弥/男性/19歳/夢の世界の案内人兼ボディーガード
  NPC/片桐 もな/女性/16歳/現実世界の案内人兼ガンナー
  NPC/神崎 魅琴/男性/19歳/夢幻館の雇われボディーガード
  NPC/沖坂 奏都/男性/23歳/夢幻館の支配人

 □■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
 ■         ライター通信          ■
 □■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

  この度は『All seasons』にご参加いただきましてまことに有難う御座いました。
  そして、いつもいつもお世話になっております。(ペコリ)
 

  さて、如何でしたでしょうか?
  今回はなぜかシーンごとの題がデス調になっておりますが・・・。
  Wデートと言うより、暁様と冬弥のデート+その他大勢のようになっておりますが・・。
  プリクラはそれぞれ半分にして各自が持っておりますが、冬弥は引き出しの奥にしまいこんでいる事でしょう。
  それでも、きっと捨ててはいないと思いますよw
  

  それでは、またどこかでお逢いいたしましたらよろしくお願いいたします。