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<東京怪談・PCゲームノベル>


神の剣異聞 Invisible Blade 1 邂逅

 織田義明はなにか違和感を覚えていた。
 平穏の時と、死と隣り合わせの己の宿命。
 今の状態に満足しているわけでもない。
「他の人もそうだろうな」
 と、独り言。
 一人暮らしをしてから数ヶ月。
 先天性神格覚醒者というのは、ある意味呪いである。神秘関係を否定する親に気味悪がられ、見捨てられたのだから。
 このアパートも、天空剣で退魔行をしたときのバイト代とエルハンドの好意により得られたものだ。
 さて、逆の立場の人間と出会えば彼はどう思うだろう?
 神秘の出であり、その能力を嫌って思って逃げた人間と……
「直ぐに起こるかどうかはさておき、惹かれ合うだろうか? 考え方が異なるから敵対するだろうか?」
 義明はそう思った。
 
 
 数日後……

 毎度の事ながら退魔行を任された義明は、戦いの中で一人の少年と出会った。
 戦いが住んだ後……お互いが見る。
 歳はおなじぐらい。
「……」
「……」
「「誰だ?」」
 同時に喋った。
 緊張、相手は非実体の悪霊を何かで斬っている。
「Invisible Blade……?」
 義明が、“彼”の能力〜一部だが〜を見る……。
「見えるのか? あんたこそ…その刀はなんだ?」
 少年が喋る。
 おそらく義明の神格具現剣「水晶」の事だろう。刀身が水晶のように透き通っているためだ。そこから発せられる力は尋常ではない。
 彼が警戒してもおかしくはない……。
  
 この緊張感を打破出来るのは、あなた以外いない。


〈櫻紫桜〉
 櫻紫桜は、いつの間にか不思議な能力を持っていた。其れについて悩む事はあるのかというと、語られる事はなさそうだ。手から刀が出る。それだけでも特異である。あまり実害がないように見えて危険がある能力ではあるが、その代償として厄介なモノを引き寄せる事になった。つまり、妖怪などの類。其れらに〜妖怪やその刀〜恐れおののくものであるが、元から武家かそう言う血筋だったのか、彼が其れに臆する事はなさそうだ。家訓として文武両道を持つ彼は、どちらにも動じない精神を持ってその境界線に生きている。

 とは言っても多少焦る事はある。今がそうだ。帰り道に、厄介な悪霊の群れに出会ってしまった。少し自分の運勢を呪う。確か凶ではないのだが? と。近道して裏通りを歩いていたらこうだった。多少能力を持っていたとして、しっかり刀で退魔する事は出来ない。悪霊にとって、櫻紫桜の特異な体質は何よりのごちそうなのだろう。
「まったく、困ったものです」
 何とか落ち着きを取り戻し、走る紫桜。
 武術でより応戦は可能だが、数が数だ。自分のスタミナと相手の数を把握する。勝てる見込みはない。逃げる事に集中すれば、生き延びる可能性はある。流れを感じ、躱す。
「む? この気配?」
 彼は何かを感じた。
 人の気配。否、人のような気配だ。2つ感じる。1つはかなりの“能力者”。もう1人は……。
「織田さん? 似ているけど違う」
 とにかく走る。
 しかし、転んでしまった。
「っち!」
 受け身をして、回転して起きあがる。悪霊が迫る。
 此処までかと思った瞬間。
 目の前に同じ歳ぐらいの少年が現れ、悪霊を“斬り裂いた”。
 彼は何も持っていない。其れは如何なる神秘なのだろうか?
「あ、ありがとう」
 思わず礼を言う。
「動くな。動かなければ大丈夫」
 と、少年はそのまま他の悪霊群を斬っていく。

「櫻か?」
 と、驚いたような声が聞こえる。
 幾度かあった、剣士にして人の力を超えたモノを持つ織田義明だ。最も櫻が彼の力を見た事はコレがはじめてである。
「……」
 其れは恐怖か、自分の体内に眠る刀が疼く。
「そのままじっとするんだ。此処なら動かなければ安心だ」
 先ほど言った少年と同じ事を言う。
 彼の持つ日本刀は、日本刀の形をした。彼の力の結晶だった。其れは紫桜によく分かった。
 身が震える。恐怖が顔をもたげる。いつもならのんびりしていたり、大抵寝ていたりという、織田義明。今の彼はいつもの彼とは正反対である。
 

 そしてあらかた片付けたあと、先ほどの少年と織田義明が対峙しているのだ。何故そうなるのか彼には何となく分かる。あの義明が持つ力は尋常じゃない。おそらく数割しか力を使ってないにせよ、危険と感じるだろう。自分が持っている刀もそう感じている。しかし、コレは好ましくない戦いだ。
「まってください。争う事はないはずです」
 落ち着いて仲裁に入る櫻紫桜。
 その一言で、織田義明ともう1人の少年は手持ちの武器を収めてくれた。
「あんたがその力を持っている事が気になる」
 そう少年は訊いた。

 何も持っていないのに悪霊を斬った人物は、衣蒼未刀と言う。
 家の事情は少しハナし、織田義明は衣蒼未刀という人物に話をする。櫻も自分の力を少しだけ言った。
「そうか、あんたも何かしら力があるからか」
 衣蒼未刀は納得してくれたようだ。
「好きこのんで持って生まれたわけではない。しかし、コレの力を持って生きていく事を選んだと言う事さ」
 いつの間にか織田義明の雰囲気は櫻紫桜のしるのんびりしたモノになっている。しかし、なにやら儀式を始めていた。
「織田さん、何をしているんです?」
「悪霊をバサバサ消しただろ? だから浄化して数年以上は寄りつかないようにするんだ」
「なるほど」
 納得する櫻。
 最も俺は斬り裂いて放置って言うのが多いんだけどね……と苦笑する義明。
「俺も、手伝います。何かありませんか?」
「そう? ならいくつか霊気を放っている石が残っているから、拾ってきて。青い宝石だから」
「?」
 義明の言葉に、櫻も衣蒼も首を傾げた。
 確かに宝石は見付かる。中には……
「悪霊じゃないでしょうか?」

 とあるファミレスで、食事を取る。
「長谷という退魔一族の依頼か、俺はフリーランスだから」
 衣蒼未刀はそう語る。
「俺は元々こういう力を持つものじゃなかったけど」
 櫻は言う。まだ刀の事を話すのは控えておく。
 分かった事と言えば、力が付いた2人が選んだ道というのは、その力を有効利用しようという事にある。しかし、人を脅かす事はしたくないという事だ。善意とは行かぬがお節介の妖怪退治である。
「お金を貰って仕事できるというのはスゴイです」
 と、櫻は真剣に2人を尊敬する。
「そう言われても、色々悩んだ時期はあったけどね。今の力を有る程度コントロールするには時間が掛かった。暴れ馬をしつけるようなものだったよ」
 義明は苦笑する。
「そうですか」
「俺の場合は血筋故だ。開眼するにはやはり訓練を要した。その代償はかなり高く付いたんだけど」
 似たように話す衣蒼未刀。
「あまり力を追い求めて、破滅するという危険な賭け事は本当するべきじゃないんだけどね」
 義明は苦笑する。
「櫻、君が良いというなら、多少何か教える事が出来るかも知れない」
 と、言った。


 其の後彼ら3人は何事もなかったかのように去るわけだが。
「あそうだ」
 別れ際、3人が同時に言った。
「?」
 少し笑う。
「携帯などの連絡先あればいいよな」
 先ほど携帯の連絡先だけを教えあったのだ。その再確認。
「俺の場合自分の家より長谷神社の方が居る事多いし。何よりうちの道場がある。気が向いたら来て」
 ――其れにあそこにはやたらと面白い生き物が居るし。ということは伏せておき。
「はい」
「ああ」
 と、神秘の世界から表の世界に戻る3人だった。
 
 力は力に惹かれ合うという言葉があるのだが、櫻紫桜の力も磨けば……と言うものである。さて、この咲子の3人はどうなるのだろうか?


2話に

■登場人物
【5453 櫻・紫桜 15 男 高校生】

【NPC 織田・義明 18 男 神聖都学園高等部・天空剣剣士】
【NPC 衣蒼・未刀 17 男 妖怪退治屋(家離反)】

■ライター通信
 滝照直樹です。 “神の剣異聞 Invisible Blade 1 邂逅”に参加して下さりありがとうございます。このシリーズはほのぼの関係もありますが、決まってシリアスと戦闘になるため、スキルアップの可能性が多少あります。2話目の買い物がほのぼのノベルになるでしょう。単に買い物をするだけと言うものですから。
 神の剣本編や、「かわうそ?と愉快な仲間達」を利用すると、義明の事が何となく分かると思います。
 衣蒼未刀君は杜野天音ライターのキャラクターの為、彼の葛藤を体験したい場合「闇風草子」がベストかも知れません(ただし、此方の未刀君の設定に相違はかなりあります)。

 では、コレにて失礼します。

 滝照直樹拝
 20051113執筆