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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


猫だらけ

 草間が朝起きると、悲鳴が聞こえた。
 周りに猫猫猫……
 猫がいっぱいなのだ。
「また箱の仕業かー!」
「にゃー!!」
 と叫んだとたん、猫が一気に反応して、草間に飛びかかった。
「ぎゃー!」

 猫が草間に懐いてしまったらしい。またも草間興信所は生き物の占領下になってしまった。
 零と言えば、猫の可愛らしさにメロメロのようだが、流石にこの数に驚いている、
「どうしましょう? 兄さん」
「どうしようにも里親探すしかないだろう…… 見ろよ、血統書付きっぽいのも……」
「飼い猫さんかも知れませね」
「むむ」
 色々手を尽くせば、里親や元の飼い主がやってくるだろう。たまり場にしている連中も何かボランティアで動いてくれるだろうか。

「兄さん、何か臭います」
「む……昨日酒を飲んだからな、取れなかったか?」
 と、身体の匂いを嗅ぐ草間
「お酒じゃなく香水みたいな……」
「俺がそんな洒落たモノをつけると思うか?」
「思いません。もやしの醤油和えを突いて、安物のお酒をチビチビ飲んでいる兄さんしか想像できません」 
 そうハッキリ言われると、返答に困る。
 其れは後々追求するとして、猫が此の匂いに引きつけられているというのは確かなようだ。
「箱だ。箱が埋もれてないか? 何か手がかりがあるかも知れない」
「匂いに箱に、猫さん……何か関係あるのでしょうか?」
「モノを埋め尽くすのは箱の専売特許だ。ぎゃー! 猫は大人しくしてやが……いてて!!」

 と、そろそろ人が来るであろう。仕事どころではないようだ。


〈床抜けないのが不思議だ〉
 我輩は、鳩である。名前は白・且羽時(しょばと)。
 何処かの名台詞を引用してみたものの、私の仕事は野良猫や普通の鳩のように気ままとは行かナイ。夏の日差しのキツい日々、冬の雪野が降る寒い町並みを必死に飛び回り、伝言する事が私の仕事なのダヨ。しかし、仕事の終わりのビールと、熱燗は格別でアル。
 おっと、閑話休題。
 そもそも、私が此処にいるのは寒い冬に凍えたわけではナイ。一寸寒いかなあとか羽を休めようかなあと思っただけでありマス。丁度草間興信所が開いているではアリマセンカ。少し一休みして、草間零ちゃんに何か食べさせて頂こうって思ったわけでシテ……。
 ふむ、なんとなくそこら中がモフモフしてて暖かイ。稀用いコレこそ、地獄の中の天国。よく見ると、にゃーとかふぎゃーとかごろごろ〜っと猫の鳴き声がするのだが、はて? ふむ、猫か……全く猫というのハ……。

「って、ネコォ――!!」

 色々頭の中で物語を作っていたようだが、犠牲者第X号、白且羽時。哀れ猫の餌になる。
「ならない!」
 猫に生まれる前にすぐさま人間の姿になる。
「ナマモノが、窓から入ってくるな」
 猫まみれの草間武彦が言った。頭に猫、肩に猫、威厳もなにもない。
「心安まる憩いの場が猫どもの占領地に! 何か手伝う事はないか?」
「憩いの場というのは問題あるが大いにある。手伝え。里親探しとか、原因とか」
「それなら任せロ! ……ぎゃーよ、寄りつくなぁ! 私は食べてもウマクナイデス、オネガイシマス」
 ガクガク震える白。
「頼りになるのか?」
 多分なる。草間より。
「あらやだ、暖房要らずで、助かるかしら? フクフクと柔らかいし♪」
 そんな感想を告げる草間興信所真の主とも言える、シュライン・エマさん。おそらく一番大人しい猫を抱っこしている。
 興信所の中はまるでラッシュアワー。猫のラッシュアワーである。入り口からも窓からも猫が出入りしている。しまいにはネズミを捕まえて見せびらかす猫も居た。つまり、「褒めて」か「偉いだろ?」と。
「確かに臭うわね? どうしたの? 昨日の事とか話して欲しいわ」
 と、シュラインは草間の匂いを嗅いでみた。確かに何かしら香水のようなモノがある。
「普通の飲み屋だったよ。それ以外には……ああ、たしか……」
 と、言いかける前に、殺人ブザーが鳴る。
「あ、今行きます」
 と、零ちゃんがドアを開ける。
「ただいまとんでもない事になってまして……え? 違うのですか?」
「わあ、猫さんがいっぱいですねぇ」
|Д`*) ぬこー!
 大曽根千春と例のナマモノ。
「草間さん宅猫でいっぱいと聞きまして、少しお力になればと」
 セレスティ・カーニンガムがやって来た。
 天然メイドと、ナマモノ2匹とブルジョアがボランティアのためにやって来たのだ。
「ああ、敷地の広いのと、ナマモノに扱い慣れている奴と、餌が来た。何とかなる」
 草間はさりげに酷い事を言っている。
「餌って誰!?」
 白がキョロキョロする。
|Д゚) 白、貴様
「がーん! だから食べないデクダサイ」
 隅の方で蹲って、猫じゃらしを振る白。猫が集まって遊ぶ。

 猫の品種というモノは突然変異が多いと聞く。その中で色々なモノが生まれた。ミックスはノラとしても、アメリカンショートヘアー、ペルシャ、アビシニアン、三毛、ロシアンブルー、マンチカン等々。山猫が此処にいない分幸いだろう。居れば大問題である。一番被害に遭うのは白であろうが。人の姿をしても、鳩というのは変わらない。草間は匂いの元凶を思い出そうとしているが、こうも猫まみれになっていると集中できないようだ。ウンウン唸っているモノの、猫が邪魔である。
「マタタビと思うのですが」
「マタタビだと腰が砕けて本当に絨毯が出来ているわよ?」
「未だ酔ってないとかあります?」
「まあ、匂いがそれほどキツいわけでもないから……中にエキスがあれば……」
 と、セレスティとシュライン、零は考えて居るものの、
「猫さん可愛いですねぇ……きゃぁ! スカートの中に入らないでくださぁい」
 と、猫の世話をして居るようでしていないメイドの高校生大曽根千春。
 白はと言うと、人型になっても怖がって、隅の方でがたがた震えている。
「とりあえず、服を借りて分析してみましょう」
 と、匂いの付いている服を一着だけ掛ける。
「あたしの服にも付いてないかしら?」
 と、不安になるシュライン。
 微かに匂いがすると思ったが、しなかった。
「箱の所為ですか?」
「箱っぽいよね……でも、開けてからドバッとならないかしら?」
 そう、箱の所為と考えるのは、いつも箱を開けた瞬間に、興信所を占領されるからだ。未だにアレの出所と、店などが分からないのである。
 暫くすると、一部の猫たちは、草間を中心に腰砕けになってきた。酔っ払っているようである。
「やはりマタタビっぽいですねぇ」
 セレスは言った。
「今朝の騒動は一体?」
 疑問に思うシュライン。短時間でこれだけいっぱい居るというのがおかしいのだ。
「其処はやはり、猫さんに訊いてみた方がいいですねぇ。通訳できる人いますか?」
 と、クソ大まじめに言うメイド高校生。
「それなら私が! 怖いけどガンバリマス……」
|Д゚) 餌がんばれ
「餌じゃなーい!」


 酔っ払った猫たちを一定位置に纏めておいておき、世話を千春に任せる。まだ、ほろ酔い状態の猫には白に事情聴取させてみた。セレスの方は一度服に付いている匂いの分析をするため戻っている。其れは実のところついでであり、猫用の臨時敷地の確保、あとコネを用いて里親探しの下準備をするようだ。
 セレス曰く、
「全部引き取りたいですが、なにぶん私のところには、ウサギを飼っていますから、猫に怯えるかも知れません」
 と。
 つまり、彼は言っているのはアフロウサギである。それはなかなか可愛いウサギさんだ。しかし、其れを言うなら、シュラインも飼っている。草間興信所には饅頭うさぎの「すぴ」がゲージで飼っているし、彼女にもアフロウサギがいる。また水龍やらなにやら居ているし、草間興信所のウサギさんがピンチである。宇宙ヒヨコとか、無線機のようなウサギさんとか、結構色々。一寸した動物園である。まあ、しっかり躾ておけば喰われる事はないだろう。
|Д゚) ←コレは居候? ペットに非ず。
「かわうそ?さぁん」
 千春がナマモノを呼ぶ。
|Д゚) ? 何か?
「この猫さん達賢いですよぉ〜。トイレも覚えているんですよ〜」
 千春は感心している。
|Д゚) ほほう。何処かの餌とは大違い
「猫と比べるなぁ! 私は高貴な鳩だ!」
「にゃー!」
 草間興信所にいる不思議猫が怒る。
「ぎゃー、焔様怒らないで! オネガイシマス! ゴメンナサイ!」
 人型になっても所詮は狩られキャラ、白且羽時であった。

「はやり草間の匂いに引きつけられてやってきたとか言っているゾ。戸締まりしっかりシロ」
 白が言う。
「む、いつも誰かが壊しているんだ。鍵など要らん」
 言い訳にならない言い訳。
「で、先ほどの続きだけど……武彦さん」
「あ、ブザーで途切れたな。普通の飲み屋で飲んでいたら、隣の奴がうっかり酒を零してしまってな。クリーニング代とその場の飲み代を奢ってくれたって言う事でチャラにしたんだが……」
 猫に遊ばれながらも昨日の事を思い出す草間。さほどラッキーだったのかかなり飲んでいたのかも知れない。
「あのね……。喧嘩しなかったから良いけど。ではその隣の人のお酒なのかしら? その場所分かる?」
 溜息をついたシュライン。まあ、喧嘩など大事が無しになったので酒がこぼれた云々は良しとしようと、其の後が問題なのだ。つまり、今だ。
「ああ、しかし移動屋台みたいなものだからな。あるかどうか」
 と言う会話をしているのだが、箱が見付からない。
 暫くして……、
「あ、箱さんがありましたぁ。でも開いてないですよ?」
 千春が見つける。箱。
“おいどんの所為にするのは心外ですたい”
 と、言っている様に思える箱。しっかり、蓋がされている。
「だからってな、お前の所為でいつもこうなっているんだ!」
 と、何故か言い返す草間。
 周りの視線が冷たい。一寸猫に囲まれているのが幸せだと思う。ふかふかで暖かいし。
「武彦さん、変」
「……そう聞こえたんだ」
「流石草間さんです」
 いつの間にか戻ったセレスは拍手している。其れはもう感嘆している。
「少量ながら、マタタビがあったようです。箱と会話できる草間さんなら多分、物の怪関係の酒場なのでしょうね」
 セレスが推測してみる。
「流石怪奇探偵ダ」
 白。
|Д゚) うむ 怪奇探偵
「草間さん素敵ですねぇ」
 例のヤツと千春。
「武彦さん、帰昔線後から色々スキルアップしてない?」
 にこやかなシュラインさん
「俺をそんな目で見るなぁ! 俺は怪奇探偵って言われたくないんだ! ハードボイルドで格好いい奴でいたいんだ!」
 時既に遅し。既に怪奇探偵として数年活躍しているのだから払拭するのは不可能だ。其れにねこに懐かれている分あまり迫力がない。周りでニャンニャンゴロゴロ鳴かれると力が抜けるもの。


 箱の中身は御都合もいい加減にしろと、猫の運動も可能なゲージ数点であった。信じられないだろうが、何もない空間から出てきたようなものである。縦に長く、段差があってそこで飛び越えたり爪研ぎ出来たりという素敵アイテムである。中に猫たちを入れてから、別のゲージにて、写真を撮る。里親探しや迷い猫の手がかりとして撮っている。シュラインの案である。
「コレだけ居ると、草間さんに懐いていない猫さんが居るはずですよね?」
 セレスが周りを見る。
 元がマタタビエキス込みの酒で“酔ってきた”猫たちなのだ。我に返れば、流石猫。草間に見向きもしない奴もいる。しかし、本当に草間に懐いて居るものとか、他の人達に懐いていたりする猫もいるのは必定であった。只、例外としては白であり、アレにはやはり人型でも“餌”として認識されている。
「ぎゃー噛みつかないデー!」
「だめよー。彼を食べたらお腹壊しちゃうわよ」
「にゃー」
 白にしがみついて噛み付く、猫たちを抱っこするシュライン。
 流石猫と行った所ね。と感心するわけだが、妖怪類も平気なのかしらと疑問に思う。多分、ナマモノ扱いされているのだろうと納得しておく。


 猫の世話を、零と千春と白に任せ、大人組は草間とともに飲み屋を探す。移動タイプの屋台なためにどこでやっているかは探さないと行けないだろう。口コミ、そうした管轄への聞き込み等々をやって、数日後にはその場所を見つけた。草間に酒を零した人物に出会えた。全員集まってその人物と会話する。
 その人物は、猫に餌をやっていたのだが。
「ああ、あの時の。旦那、先日はすみませんにゃ」
 ――にゃ?
 全員固まる。にゃ発言に固まる。
「にゃ? って口癖かしら?」
「え? ああ、あっしは化け猫でして。人間があの屋台にいるとは思いもよらんかったですにゃ」
「まて、俺は普通の……」
「流石草間さんですね」
 セレスは変に納得している。
「武彦さん、諦めたらいいわ。怪奇探偵の二つ名は名誉な事よ?」
「ダメだ。只偶然だ」
 拗ねる草間。
「旦那、この通りは野良猫通りですにゃ? そうそう猫の酒盛りに」
「うわー もう聞きたくない」
 と、言う訳らしい。
 つまり、少しだけその化け猫はマタタビカクテルを零して、そのまま意気揚々と帰った訳だったのだ。更に極めつけは、普通なら人間が来られない場所なのに、猫たちに一寸だけ人気が出来たと言う事だろう。何という不運。猫好きには幸運だろう……が不運としておこう。
 と言うわけで、白はこの化け猫の「にゃ」だけで怖がって電柱に隠れて震えている。
「私はオイシクナイデス。だから食べないデクダサイ」

 事情が飲み込めた後で、後の仕事は楽な方である。
 野良猫の方は里親探し、そして、飼い猫のような猫は飼い主探しに明け暮れる草間達であった。
 幸いゲージがあるため、セレスティの屋敷に一寸したキャットショップみたいになったという。
 草間興信所はどんどん謎な世界になるのはいつもの事で……。
「平和でいいのかしら?」
「良いわけ無い!」
「可愛い猫さんですねぇ きゃぁ」
「だから猫で遊ぶな! 大曽根! 飼い主を捜せ! ああ! 白! 此処の人と連絡取れないのか! 震えるな! 猫がおもしろがるだろ! セレス何故数匹しか持って行かない! しかも血統書付きっぽいのばかり! 普通のノラ持って行け!」
 ただ働きに近い状態の草間さん。お礼に何かもらえるときもあるのだが、大抵は猫の缶詰に消える。草間の怒号と猫の鳴き声はいつも続く。猫に囲まれながら……。
「旦那! 飲みに行こうにゃ!」
「うるせ! お前もてつだえぇ!」
 呑み友だちに、化け猫が増えたし……怪奇探偵の明日はどっち?

|Д゚) ふふふ

■登場人物
【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0170 大曽根・千春 17 女 メイドな高校生】
【3843 白・且羽時 17 男 伝書鳩】
【1883 セレスティ・カーニンガム 725 男 財閥総帥・占い師・水霊使い】


■ライター通信
滝照直樹です。『猫だらけ』に参加ありがとうございます。
マタタビは薬っぽい匂いがするようですが、妖怪が飲む酒のようですので、少し変わっていました。今回は箱の所為でなかったようです。どんどん不思議ランドとなる草間興信所。どうなるのでしょうか?

ではまたの機会に。
20051115著