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<白銀の姫・PCクエストノベル>


Imperfect angel―不完全天使―
〜appearance〜


◆オープニング◆

ひとりぼっちのおうじさま。
びょうきできよわでひとみしり。
いつもおしろでひとりきり。
おともだちは、めいどとほんとしぜんだけ。
そんなつまらないまいにちのなか。




――――――あるひ、おうじさまのめのまえに、ひとりのてんしがあらわれました。




***


「…森が妙に静かだな」


森の中に一歩踏み込んだ冒険者の男が、辺りを警戒しながらぽつりと呟く。
隣に立つ女の冒険者も、少し怯えた様子で男に寄り添う。

辺りはあまりにも静かだ。
モンスターの気配も無ければ、動物の気配も、ましてや鳥の鳴き声なんて欠片も感じられない。
噂では、この森は確か自然が豊かで、様々な動物が見かけられる幻想的なものだと聞いていたのに。


これではまるで…死んだ森ではないか。


おかしいと思いながら、男は気を緩めないように腰に下げた長剣に手をかける。
ぴり、と張り詰めた空気に、一緒にいた女も持っていた杖を握りしめた。







――――――――瞬間。







ざぁっ、と、強い風が吹く。
唐突の強風に二人は同時に反射的に目を閉じる。
そしてすぐに閉じていた瞼を開き…目を丸くした。


ほんの一瞬前には存在しなかったものたち。
自分達を囲むように佇む大量のモンスター。
目は虚ろに濁り、ゆらりゆらりと、静かに波打つように揺れる。


そんなモンスター達の囲いの上空…男達の正面に当たる位置に、『それ』はいた。


スピネルカラーの瞳と、同じ色の肩口までの髪を靡かせた、ジェノサイドエンジェルに良く似た『何か』。
翼には確かに機械が組み込まれているのに、そのしなやかな身体には欠片も機械の存在は見あたらない。
柔らかく白い、滑らかな右腕に描かれた、『Imperfect angel』の刺青。
何よりも異質なのは―――背に存在する、闇のように真っ黒な翼。



まるで堕天使のような女が、二人を見据えながら緩やかに艶やかな唇の両端を持ち上げた。



「…なんだこいつら…!」
「アレ、ジェノサイドエンジェルじゃない…!?」
二人の冒険者は、予想外の登場人物に同時に目を見開く。
その二人の言葉が皮切りになったように、『堕天使』は笑いながら、そっと唇を震わせた。




【――――――ひとりぼっちのおうじさま】




その口からこぼれたのは、歌。
緩やかなそれは、独白にも似て、しかしどこか舌っ足らずに聞こえる。


【いつもいつもひとりぼっち。
 ともだちがほしくても、だれもおしろにきてくれない。
 おうじさまは、いつもひとりぼっち】


「…? あいつ、何を…?」
男が、何をするでもなくただ歌う堕天使に訝しげに眉を寄せる。
変なものでも見るような表情で見ていた男は、不意に隣の女が妙に静かなことに気づき、横を向く。




――――――女は、まるで周りにいるモンスターのように虚ろな瞳で、じっと堕天使を見ていた。




「!!」
ぎょっとした男が女を呼び止めるより早く、女が歩き出す。
持っていた杖は手から離れ、からん、と乾いた音を立てて地を転がった。

【だいじなだいじなおうじさま。いまはねむりつづけるおうじさま。
 わたしのだいじなおうじさまが、おともだちをほしがってる】

女はまるで歌に誘われるように、迷うことなくまっすぐ進んでいく。
モンスターたちは、まるで道を譲るかのように、一斉に女の進行方向から退いた。
「おい!! どうしたんだ!?!?」
男の叫び声にも、女は眉一つ動かさない。
男が慌てて止めようと駆け出すよりも早く、モンスターたちがまるで遮るように立ちふさがり、行く手を阻む。

「くそっ、どけっ!!
 おい! 戻ってこいよ!! おい!!!!」

モンスターは倒しても倒しても次から次へと現れた。
まるで泉のように湧き出てくるモンスターは皆目がうつろで、まるで操られているかのようにゆらゆらと揺れ、時々思い出したように男に武器を振り下ろす。
男が必死に道を作ろうと努力している間に、女は堕天使の目の前に立っていた。




【だからわたしは、おうじさまのおともだちをたくさんたくさんみつけるの。
 めをさましたおうじさま、ともだちがたくさんできてたら…きっと、よろこんでくれるから】




堕天使はゆるりと唇で弧を描くと、そっと女に手を伸ばす。
手が女の頬に触れると同時。
ざあ、と先ほどよりも強い突風が起こり、男の視界を奪う。
反射的に目を閉じた男が、慌てて目を開けた時。








――――――――――そこには、堕天使も女も…モンスターすらも、なにも残っていなかった。









ただ、堕天使の翼からとれてしまったのであろう、一枚の真っ黒な羽根だけを、除いては…。



***





――――――――ところ移って、とある城。





「…そして消えた女は何故か現実世界に戻っていたのですが、女はその日から奇妙な行動をとる、人形のようなイキモノになってしまったのでした。めでたしめでたし、と?」
「……どこがめでたいのよ。
 まったく、存在しない筈のイベントが勝手に発生して、無差別にプレイヤーを襲うなんて…」


読み上げた書物をテーブルに放り出す男。
続けて茶化すように上げられた低い声に、目の前に座った女…モリガンが不機嫌そうに顔を顰めて返す。
そしてすぐに眉間に拳を当てて、苦々しげに呟いた。
それにくっと笑いを返した男は、モリガンににらみつけられてわざとらしく肩を竦める。


「…何が楽しいの?」
「別に?
 悲劇のヒーローぶってあちこちに吹聴してるくだらない話がモリガン様のお耳に届いてよかったな、ってね」


目の前に座る男は、変わった格好をしていた。
ライダースーツに、椅子の背にかけたベルベットコート、同様にロングブーツやグローブまでもが全てレザー素材に漆黒で纏められ、せいぜいところどころに別色のアクセントが入っている程度だ。
髪は翡翠よりも深く美しい、絶妙な色合いの琅稈<ろうかん>色の髪。
顔の上半分はフェイスマウントディスプレイで覆われているため、瞳の色や顔全体までは残念ながら確認できないが、顔の下半分だけでも、整っている方であることぐらいは判別できた。




――――――男の名は、ヒスイ。




とは言っても、当然本名ではない。
それどころか、この姿が本物であるかどうかすら怪しい、謎に包まれた男であった。
本名も、本当の姿も、どんな場所に住んでいるのかも…誰も、知らない。
唯一わかっているのは、超一流のハッカーであるということと…性格がひねくれているということだけ。


整った唇を愉快そうに歪ませ、ヒスイはテーブルに頬杖をつきながらモリガンを見る。
モリガンは益々眉間に皺を寄せると、不意に皺を緩ませて深々と溜息を吐いた。

「……相変わらず嫌味な男ね、あなた」
「お褒めに預かり至極光栄ですよ、女神様」
「やめて頂戴、見え見えのお世辞なんていらないわ」

そう返しながら、クッキーをつまみ、紅茶を飲む。
本来なら一人で三下に用意させたこのクッキーと紅茶で優雅に時間を過ごす予定だったのだが、唐突に現れたこの男…ヒスイのせいで台無しだ。
どこの女神にもつかない代わり、どこの女神にもどんなに頼まれようと手を貸そうとはしない。手を貸すのは、気が向いたときだけ。
その上、時々勝手に現れては、勝手に場を荒らして去っていく。迷惑極まりない男。


……それでも、下手に扱えない理由が、モリガンに…いや、女神達にはあった。






――――――それはひとえに、ヒスイが一流のハッカーであることにある。






ヒスイの能力。
その詳細は不明だが、少なくとも自分達のような…電脳的な世界に深く干渉できる能力を持っているようなのだ。
この世界では自分達の方が確かに力は上。
だが…ヒスイを敵に回せば、おそらくは外…この世界の外であるもとの世界から、何かしら干渉を行ってくる可能性がある。
それがどの程度のものなのか、自分達には予想できないが…少なくとも、いい影響であるわけもなく。
だからと言って、ヒスイは純粋にこの世界を楽しみに来ているだけであり、この世界に何かをする気もない。
それに稀に…本当に稀だが、自分達が困っている問題に興味を抱いて、解決してくれることもある。
この世界を乗っ取ろうとか、もっと悪意があればこちらもそれなりの対応もできるのだが…これでは、無闇にはじき出すわけにもいかないだろう。



つらつらと考えながら顔を顰めていくモリガンを眺め、ヒスイは目を細める。



白銀の姫をかなり初めの方で見つけ、積極的にこの世界を知ろうとしたのは、他ならぬヒスイだ。
この女神達との付き合いも、結構なものになる。
プログラムが意思を持ち、悩み、怒り、笑い…様々な感情を持つ姿を見ているのは、中々に面白いものだ。
『人間』には興味はないが、『意思を持ったプログラム』である『女神』には興味がある。
どうせなら、この世界を作った人間に会ってみたかったが…残念ながら、それは敵わないだろうから諦めておく。
…別にこの世界がどうなろうと知ったことではないが、まだ当分の間、自分はこの世界に出入りをするだろう。
こういったものは、いい暇つぶしになる。


少しだけ残った紅茶をぐっと煽ると、ヒスイはがたりとわざとらしく音を立てて立ち上がった。
その音にはっとしてこちらに視線を向けるモリガンに口端を持ち上げ、椅子の背からコートを取り上げる。
ばさりと大きく翻して羽織ると、モリガンに背を向ける。







「…興味が沸いたら俺が調べて差し上げますよ、モリガンサマ」







「……期待しないで待ってるわ」

楽しそうな声音に呆れ気味に返すと、ヒスイはくっと喉を鳴らして、そのまま立ち去っていった。
その背を見送ってから、モリガンは放り出された書物を手に取る。


「…『Sleeping Beauty』…眠り続ける王子に恋をした、堕天使の物語。
 その堕天使の設定の異常性から、創造主様はイベントとして組み込むのを断念していた。
 ……それどころか、組み込む前の構想段階で消えて行った筈だったのに…それを誰かが見つけて、イベント化して無理矢理挟み込んだ……」


そこまで呟いて、モリガンはらしくもなく、ギリ…と歯軋りを零す。
そのあまりにも苦々しげな表情は、自分の世界を穢された怒りにも似た感情が溢れている。










「――――――いったい、誰がこんなことを…」










彼女の苛立ちに満ちた呟きは―――誰にも届くことなく、風に溶けて消えた。






◆情報収集



 ――――白銀の姫内部・勇者の泉。



「情報、って言ってもなぁ…俺達は最近は森に行ってないし、そういうイベントには興味ないから…」
「そうですか…いえ、わざわざありがとうございました」

 シオン・レ・ハイは、目の前の男に頭を下げて礼を告げると、その場を離れてあらかじめ用意してあった席に戻った。
 そして、難しい顔で手に持った紙を眺める。
 手元にある紙には、びっしりと様々な情報が書かれていた。
 些細な噂から、人伝ではあるが実際に被害にあった人間から聞いた情報まで、ほとんど殴り書き状態で連ねられたそれは、全てシオンが独自で調べたものだ。

 シオンと此度の事件とは、噂で聞いた程度の関係。
 きっかけは所謂『興味本位』レベルの些細なものではあったが、調べていくうちに事件自体をなんとかできないかと思い始めていた。
 セイレーンがどんなものなのか見てみたい、という思いも依然として残ったままではあったが。


「うーん…これでは、特定もできませんねぇ…」


 万年筆でぽりぽりと頭を掻く仕草は少々間抜けではあったが、実際問題、あまりにも情報が少なすぎた。
 被害にあった人間から話が聞ければ一番手っ取り早いのかもしれないが、生憎、この酒場の中には、どうやら被害者はいないようだった。
 机の上に鎮座した兜装備なタレ耳ウサギも、暇をもてあましているように鼻をひくひくと動かす。
 その可愛らしい様子にうっかり幸せな気分に浸りかけていたシオンの背後に、唐突に影が落ちた。



「…あんたか、<Sleeping Beauty>の情報を集めているっていうのは」



 静かに、それでいてどこか沈んだような暗い声に、シオンが驚いて顔を上げる。
 後ろに立っていたのは、一人の青年だった。
 赤茶けたばらばらの短髪に、同じ色の鋭い瞳。剣士の典型のような衣服を身に纏った中で、腰に下げられた藍色の長剣が、やけに強い存在感を放っている。
「そうですが…それが何か?」
 不思議そうに問い返すと、青年はぎゅっと顔を顰めた。
 何か辛いことに耐えるような、泣きそうなのを堪えるような、そんな表情。
 シオンが思わず首を傾げると同時、青年が、苦虫を噛み潰したような顔と声で、静かに呟いた。





「――――俺は、<Sleeping Beauty>イベントの被害者だ」





**



「……では、連れて行かれたのは、あなたとパーティーを組んでいた女性なんですね?」
「ああ。現実では、幼馴染だったヤツだ」


 自分から情報提供を申し出てきた青年から、シオンは様々な情報を聞き出すことができた。
 彼がセイレーンに遭遇したのは、今からほんの数日前。
 幼馴染で仲間である女性と二人で森の中へ探索に赴いた際に、セイレーンの襲撃にあったのだそうだ。
 森の場所も聞き出した。どうやらここからそう離れてはいないようだが、今まで集めた情報を鑑みるに、行っても恐らく何もないだろう。

 セイレーンの外見的特徴も、ある程度は聞き出せた。
 とは言っても、あまりしっかりと見ていられるような状況ではなかったため、曖昧な部分も存在するが。
 うろ覚えではあるが、セイレーンが歌っていた歌の歌詞も少しだけ教えて貰った。


「襲われた後、俺は急いで現実に戻った。
 もしかしたら、あいつがログアウトしているかもしれないと思ったからだ」


 青年はそこでふっと目を伏せると、悔しそうにぎり、と歯軋りを零す。


「……あいつは、確かに現実に戻っていた。
 …けど、あいつは、『あいつ』ではなくなっていたんだ」
「? どういうことですか?」
 奇妙な、というよりは矛盾した言葉に、シオンが眉を寄せる。
 その問いかけに、男は顔の前で組んでいた手に額を乗せた。




「………その日から、そいつは笑わなくなった。
 声をかければ受け答えはするが、それもまるで『プログラム』されているかのように事務的で、淡々としていて…。
 椅子に腰掛けて、丸一日、ただぼんやりと外を眺めて過ごしたり。

 ――――――まるで、人形になったみたいなんだ」




 搾り出すような、震える声。
 その言葉に顔を顰めるシオンをちらりと一瞥して、青年は立ち上がる。

「あれは、絶対にセイレーンに連れ去られたことと関連があると、俺は確信している。
 だから、あの日から頻繁にログインしているんだが…中々、情報が集まらなくてな。
 …一人でも調査をしている人間が増えてくれるなら、大歓迎だ」
「……だから、わざわざ私に?」
 シオンの問いかけに、青年は苦笑混じりの笑みを零した。
 そしてシオンに背を向けると、そのまま緩やかに歩き出す。




「自分で解決するから手を出すな、なんて格好良いことを言えるほど、俺は強くない。
 ―――俺でなくても…事件が解決するなら、それでいいんだ」




 まるで独白するようにぽつりと呟くと、青年はそのまま立ち去っていった。
 その背を見送ったシオンは彼から教えてもらった情報が書かれた紙に視線を落とし、そこに書かれた歌詞に目を留める。


「……『ひとりぼっちのおうじさま』…」

「――――『いつもいつもひとりぼっち。
 ともだちがほしくても、だれもおしろにきてくれない。
 おうじさまは、いつもひとりぼっち』」


 ただ読み上げただけであった歌に、見知らぬ声が続きを紡ぐ。
 驚いて振り返れば、漆黒の無機質なフェイスマウントディスプレイが目の前に移った。
 カツン、と床を蹴るブーツの音。漆黒の、艶のあるレザー素材で纏められた衣装。
 動きに合わせて靡く、ふくらはぎ辺りまである琅稈色の髪。下半分しか見えないながらも、整っていることが見ただけで分かる顔。
 






 ―――――― 一人の男が、そこに立っていた。







「――あれが、例の悲劇のヒーローぶってるヤツか。
 いやぁ、まさに偽善、って感じでいいねぇ、面白い」





 完全に青年を小ばかにした声。くつくつと喉を鳴らす嫌な印象しか与えない音に、シオンは不思議そうに男を見た。

 髪を軽く靡かせて、声の主は勝手に移動しコートの裾を翻してシオンの正面に座る。
 まぁ実際この席はシオンの持ち物ではないのだから、どうこう言えるわけでもないのだが。
 男は通りかかった店員を呼び止めて二、三注文をすると、シオンに向き直る。
 ディスプレイに遮られて見えない筈の目が興味深げに眇められたのが、気配と面白そうにゆがめられた口元からなんとなく想像できた。




「――――――はじめまして、シオン・レ・ハイ様?
 俺はヒスイ。面白さだけを求める、傍観者だよ」





◆第一次接近遭遇

 ヒスイと名乗った男は、それから何を言うでもなく、勝手にシオンが集めた情報が書かれた紙を奪い取って目を通し始めた。
 随分と図々しいが、シオン自身はヒスイが注文した食べ物を奢りだと渡されて、嬉々としてそれを食べているので、問題なし。
 ついでに言うとウサギも新鮮なキャベツを与えられて、それをしょりしょり食べているところだ。
 ざっと目を通すと、ヒスイはくっと喉を鳴らし、ほとんど放り出すも同然のやり方で紙をシオンに返した。



「…ま、素人が集めた情報じゃ、この程度が限度か」



「ふむ。うむふむふんふむっふふむうむふ?
 (訳:むむ。あなたはなにか知ってるのですか?)」
 ヒスイの言葉を聞いて、シオンが口いっぱいに紫色のスパゲティ(結構美味いらしい)を頬張ったまま声を出そうとして、理解不能な音が発せられる。
 ついでとばかりにちょろっとスパゲティが一本飛び出かけたが、すぐにちゅるりとシオンの口の中へ帰っていった。
 唐突な問いかけ…というか珍妙な行動にヒスイは少し驚いたように見える表情(と言っても顔下半分だが)を見せる。
 そして少しの間の後に…ぷっと噴き出し、くくく、と肩を震わせて笑い出した。
 きょとんとするシオンをよそに、ヒスイはひとしきり笑った後に、ディスプレイの下で目の下を拭うような仕草をした後、シオンを見る。


「はは、あんた面白いね。
 俺の言葉に顔顰めない上、口ん中にモノ突っ込んだ状態で大真面目に問いかけてきたのは、あんたが初めてだよ」


 まあ、実際問題まずそういう反応を返す人間自体珍しいわけだが。
 面白そうにこちらを見るヒスイに、シオンは言葉の意味を半分も理解していない中でとりあえず『褒められたらしい』という結果をはじき出したのか、『ふぉーも』、と口にした。
 とりあえず『どうも』と告げたかったらしいのだが、口の中に物を突っ込みっぱなしで言えるわけも無く。
 実に間抜けな返事に、ヒスイはもう一度噴出した。
 また笑い出しそうになるのを堪えながら立ち上がり、ヒスイはポケットに手を突っ込む。
 そして出した握り拳をテーブルに出すと、ゆっくりと開く。
 それと同時に手からこぼれた『なにか』が、かしゃんと硬質な音を奏でた。


 ――――ヒスイの手から現れたのは、『Virus invalidity』と描かれた、小さな漆黒のチップ三枚。


「…これは?」
 シオンがチップのうちに一枚をそっと手にとって目の前で灯りに翳したりひっくり返してみたりしている様子を面白そうに観察した後、ヒスイが口を開く。




「これはウィルスを無効化するチップだ。
 電脳世界関係のウィルスと名のつく・またはウィルス系統の効果を及ぼす全てのものに対しての影響に効果を発揮するものだが、無効化が成功するかどうかはランダム。
 チップの動作に委ねられる部分が強いから、頼り切ってると痛い目見るぜ。
 他にも効果や条件がいくつかあるが――まあ、全部教えても面白みがないから、あとは自分で調べるんだな」




「はあ…それはどうもです…でも、なぜ三つ?」
「さあな? それも自分で考えな」
 ヒスイは不思議そうに手の中にチップを三枚入れて首を傾げるシオンを小ばかにしたように鼻を鳴らすと、そのまま背を向けて歩き出す。





「じゃあ、俺はこれで失礼させてもらうよ。
 …ま、またすぐに会うことになるかもしれないけど」
「え?」


 意味深な発言を残したヒスイにシオンが訝しげに声を上げて振り返るが―――そこには、既にヒスイの姿は無く。
 とりあえず代金は払っておいてくれたようなので、シオンは途中で止まっていた食事を再開した。
 もふもふとスパゲティを掻き込み、口の端に紫色のソースをべったりとくっつけながら、ぼんやりと呟く。



「……それにしても、本当になんだったんでしょうか、あの人」








 ――――――その呟きに答える声は、当然ながら、ない。








◆静穏の森

 ヒスイに奢って貰った紫スパゲティをご機嫌に平らげたシオンは、とある森に来ていた。
 先ほどの赤茶の髪の青年から聞いた森の、一つの村と街道を挟んで隣にある森。
 上手く行けばセイレーンに会えるのではないかと思ったシオンは、まだ襲撃されていない森を訪ねて探索してみようと思ったのだが…。




「うーん…やはりそう簡単にはセイレーンに会うことはできないようですね…」




 困ったようにそうぼやきながら、ぶちりとその辺にあった真っ青なキノコを引っこ抜いた。
 森を訪れたのは確かにセイレーンに会う為だったが、その他にも、貧乏である自身の懐…もとい腹の中を潤すため、平行して食料調達も行っているのだ。
 背に背負った昔懐かし渦模様の風呂敷は既に大分膨れている。
 通り道で見つけた食べれそうな気がした植物やキノコを手当たり次第に突っ込んでいった結果だ。
 真っ黒なキノコやら、虹色マーブルの捩じり鉢巻みたいな形したキノコとか、なんか「アホ」という字に似た形に曲がっている草とか。
 ……とりあえず、調達したものが無事に食べられることを祈ろう。


「むむむ…そろそろお腹が空いてきました…」


 腹減るの早。
 そんなツッコミが聞こえてきそうな言葉をぽつりと呟くと、シオンは背負っていた風呂敷を下ろす。
 その中からなんとなく食べれそうな気がするもの…虹色マーブルキノコを取り出すと横に置き、一緒に風呂敷の中に溜めておいた細い木々とある程度太い枝を取り出して重ねる。
 どうやらその場で焼いて食べるつもりらしい。
 更に使っていない紙を取り出すと、火を灯すために力を集中し…。





「きゃああぁぁぁあああっ!!!!」





 ――――――――ようとしたところで、劈くような悲鳴に遮られた。


 あまりの大声にがくりと体勢を崩したシオンだったが、悲鳴がそう離れていないところから聞こえてきたものだと言うことに気づき、慌てて立ち上がる。
 虹色キノコと木々を風呂敷の中に突っ込むと、しっかりと背負い直して走り出した。




 ――――――もしかしたら、『セイレーン』かもしれない、と。




**


 走り出してから、五分も経たないくらいの時間。
 それぐらいで辿り着いたはずだったのに―――そこには、もう誰もいなかった。
 いや、一人だけ残ってはいたが、傷だらけで、ぐったりと倒れ伏しているだけだ。

「だ、大丈夫ですか!?」

 倒れている人を見つけたシオンは、慌てて駆け寄る。
 助け起こすと、それは一人の少女だった。
 藍色の腰辺りまでの長い髪と、少々露出の高い服。
 髪も体も服も汚れと傷でボロボロで、ジャンゴに戻らずに済んでいることが奇跡と言いたくなるほどの惨状だった。
 シオンが声をかけると、少女がふるりと睫毛と瞼を震わせ、ゆるゆると開かれた。
 シオンの姿を確認した少女は、力を振り絞るように唇を動かす。
 あまりにも小さなその音を聞き逃さないようにシオンが耳を少女の口に寄せると、なんとか聞き取ることができた。


「…い、もうと…が…くろ、い、ジェノサイド、エンジェル、に…」
「黒いジェノサイドエンジェル!?」


 それはまさに、自分が探していたセイレーンではないか!
 驚いたシオンをどう思ったのか知らないが、少女は緩やかに小さく頷くと、更に声を発しようと口を動かす。
 慌てて耳を寄せると、苦しそうな吐息混じりの声が、切れ切れに届いた。




「……いもうと、を、助けようと…女のひと、が、ふたり、を、追いかけ……」




「女の人?」
 新たな人物の登場にシオンが訝しげな声を上げると同時。
 ガサガサ、と草むらが大きく揺れた。
 モンスターか!?とシオンが身構えるが、そこから現れたのは、意外な人物だった。






「ごめんなさい。セイレーンと妹さんには逃げられてしまったわ…」






 申し訳なさそうに姿を現した一人の女性と、バッチリ目が合った。
 黒く艶やかな長い髪。真紅を貴重とした衣装に身を包み、髪には蔓が絡みついた青い花の髪飾りをしている。


 ――――シュライン・エマだ。


「…あなたは、どうしてここに…?」
 訝しげな声を発するエマに苦笑しながら、シオンは口を開く。
「悲鳴が聞こえて来ました。
 この子が言っていたセイレーンを追っていった女性というのは、あなたのことだったんですね」
「!! セイレーンのことを知ってるの!?」
 シオンの言葉に、エマは反射的に思い切り詰め寄る。
 エマの思わぬ反応にきょとんとしたシオンだったが、その言葉の意味することをなんとなく悟り、そっと呟く。



「…貴方も、セイレーンについて調べていらっしゃるのですね?」
「『貴方も』、ってことは…そっちも?」



 どうやら、エマは同じようにセイレーンのことを調べていたらしい。
 何が目的かは分からないが、見る限りでは、悪用しようなどとは考えていないだろう。
 お互いに顔を見合わせていると、エマが小さく溜息を吐く。



「…とりあえず、ここから離れましょう。
 近くの村で、この子の治療もしてもらわないといけないし、お互いに事情を話し合う必要もあるみたいだし、ね」



 その言葉に、シオンは否定する理由もなく、小さく頷いた。


**


 近くの村に戻ったエマとシオンは、村の中にある小さな酒場に座り、顔を突き合わせてお互いの事情を話し合っていた。
 ちなみにシオンは、盛大に腹の音を響かせたせいか、苦笑気味なエマによって食事を奢って貰っていた。
 今度は奇妙な形と恐ろしい形相をした魚のフライ定食だ。ところが見た目によらず意外と美味いらしく、シオンは嬉しそうに食べているが。
 ちなみにシオンの背負っていた奇妙な植物一式はほとんどエマの手によって処分された。どうやらほんの一割程度を除いて、全部毒キノコだったらしい。
 シオンは捨てられていくキノコに『あぁもったいない!!』と全力で身悶えしていたが、『命を捨てるつもりなの!?』とエマに叱られ、しゅんとして大人しく諦めた。
 よって、今彼の横に置かれている風呂敷は森の中にいた時の四分の一程度の膨らみにおさまっている。その隣ではウサギが興味深げに鼻をひくひくと動かしていた。


 一通りお互いの事情を話し合ったところで、エマがシオンから渡された情報が連ねられた紙を返す。


「…どうやら、集められた情報はお互いに大差ないみたいね。
 まぁ、シオンさんの方が直接被害者に聞けた分、セイレーン自体に関する情報は多いけど」
「ですね。
 シュラインさんの集めてくださった情報は、地図を探してから照らし合わせた方がよさそうです」
「そうね…」




 二人で集まった情報が書かれた紙をじっと見つめた後、同時に紙を纏めて立ち上がる。





「ここで紙とにらめっこしていても何も進まないわね。
 もう少し情報を集めるために、ジャンゴに戻って、知恵の環に行って調べましょう?」
「そうですね。
 あの女の子も、幸い命に関わる大ケガはしていないようですし、あとはここの人たちにお任せしましょう」
「ええ」







 ――――――そうして二人は同時に立ち上がり、ジャンゴに戻るため酒場を後にしたのだった。







 合流したエマとシオンは、ジャンゴに戻って知恵の環へ向かっていた。
 聞き込みで成果があがらなかった分、少しでもいいから関係した文献がないか探そうと思ったからだ。
 リアルタイムに刻まれていく情報の中に、セイレーンの情報が少しでもいいから入っていればなんとかなるかもしれない。
 そんな思いを抱きながら、エマとシオンは今後のことを話し合いながら知恵の環へ歩みを進めていた。



 暫く歩くと、ようやく知恵の環の入り口が見える。
 二人は少しだけ歩みを早めたところで―――ふと、入り口で話をしている二つの影を見つけた。



 一人は長い銀髪で、黒を基調としたどことなく民族衣装を思わせる衣装と、十字架を模した杖を持っている。
 後姿だからよくは分からないが、シルエットは男性のようだ。
 もう一人は小柄で、どこかおどおどした印象を受ける黒髪の少女―――女神の一人、ネヴァン。

 二人は話を終えたらしく、ネヴァンは男性に手を振ってそそくさとその場を立ち去った。
 その後姿を見送ってから、男性は背後から受ける視線に気づいたのか、ふと後ろを振り返る。




「――――セレスティさん?」
「おや。その声はシュラインさんですか?」




 その人物に見覚えのあるエマが声を上げると、男性の方も面白そうに青色の瞳を眇めて声を上げた。
 青年の名はセレスティ・カーニンガム。
 二人と同様に、此度のセイレーン事件を調べている人物であった。



◆知恵の環―不完全天使

「――まさか、貴方もセイレーンを追っているとは思わなかったわ」
「それは私も一緒ですよ」


 エマの言葉に、セレスティは小さく苦笑を零した。
 二人と同様に知恵の環に用があったらしいセレスティと一緒に中に入った三人。
 まずは落ち着いてお互いの事情を話し合っていたら、どうやら目的が同じらしいことが発覚。
 そしてそのまま一緒にセイレーンに関係する文献がないか探しながら、出来るだけ声を抑えて会話していた。

「しかし、やっぱり情報の書いてある本は中々見つかりませんねぇ…」

 本を食べようとするウサギを必死に止めながら、困ったように背表紙をチェックするシオン。
 そんなシオンに頷きながら、セレスティも困ったように呟いた。



「ええ。ネヴァン嬢に色々と聞いてみたのですが、あまり成果はあがりませんでしたし。
 この世界を一番よく知っている筈の女神にも把握しきれないということは、此処に明確なセイレーンの情報があることは、あまり期待しないほうがいいでしょう。
 せめて、事件の詳細が載っている本でも見つかればいいのですが…」



 その言葉に、エマも神妙な顔つきで頷く。


「そうね。とりあえず、事件に関する詳しい情報だけでも手に入れられれば…」






「――――探すにしても、探し方がそんなんじゃ、調べられる情報もタカが知れてるな」






 別の本に手を伸ばそうとしたエマの後ろから、唐突に現れた腕がエマの手の先の棚の真上にある棚から本を一冊抜き取る。
 驚いて三人が振り返ると、そこには浅黄色の『酒場の使い方』と書かれた本を肩に乗せて楽しそうに…というか意地悪そうに笑う、一人の青年の姿。
 その言葉に顔を顰めたエマが、少し不機嫌そうな声音でその青年の名を呟いた。



「…ヒスイさん…」



 その声に、名を呼ばれた青年――――ヒスイは、皮肉げに口元を歪める。
「くくっ、わざわざ『さん』付けで呼んでくれるなんて、丁寧だねぇ? シュライン殿?」
 へりくだったような言い方の中に多分に含まれたバカにするような響きに、エマが益々眉間に皺を寄せた。
 そんな二人の空気を知ってか知らずか、シオンが嬉しそうに声を上げる。



「ああ、ヒスイさんではありませんか!!
 先ほどはスパゲティを奢っていただいて有難う御座いました!!!」



 エマが顔を顰めているのもなんのその。
 勢いよく近寄り、がしっと両手を掴んで笑う。
 当然と言うかなんというか…そのリアクションは想定していなかったのか、ヒスイも驚いたように動きを止める。
 意外そうなエマの視線を受けても暫くは身動きを取らなかったヒスイは…唐突に、ぶふぅっ、と派手に噴出した。
 驚く三人をよそに、ヒスイは暫くの間肩を震わせ、声を殺して笑い続ける。
 三人の訝しげな視線をものともせず、ひとしきり笑いきったヒスイは、目尻を拭ってシオンを見た。


「ははは…! …シオン、あんたやっぱり面白いよ。
 うん、やっぱり俺の目は間違っちゃいなかった」


「…はぁ…ありがとう、ございます?」
 ヒスイの楽しそうな声に、現状を理解しきれていないシオンが、同じように間抜けな返事を返す。
 それにまたくつくつと面白そうに喉を鳴らすヒスイに、困ったように微笑んだセレスティが口を開く。





「それにしても…さっきの発言はどういう意味ですか?
 まるで、私達の探し方が悪いって言っていらっしゃるようですが…」





 その言葉に、ヒスイはバカにするように鼻を鳴らす。



「どういう意味もなにも、まんまその意味だよ。
 ……なにせ、この程度のものも見分けられないんだからな」



 そう言ったヒスイは、懐から静かに武器を取り出す。
 2本の平行したバーと、その間に渡された握りとなる2本の横木。握りが刃先に対して直角になっていて、刃は一本鋭いものが、カバーを被されていた。
 いわゆる、ジャマダハルという変わった武器だ。
 それを振ってカバーを外すと、ヒスイは持っていた本に刃を向ける。

「なっ!?
 ちょっ、ヒスイさん…っ!!」

 その行動にぎょっとしたエマたちが止めに入る間もなく、ヒスイは問答無用で本の表紙に武器を走らせた。
 ビィッ、と紙が切り裂かれるような音がして、表紙が切り裂かれる。




「な、なんてことを…!!」




 驚いたエマが大急ぎでヒスイから本を奪い取り、表紙を確認した。
 傷の度合いによっては、まだ修復することができるかもしれないと思ったからだ。
 しかしエマは表紙を見て―――大きく目を見開き、硬直した。



「…これは…」



 エマのただならぬ様子に、他の二人も異変を感じたのか彼女の持つ本を後ろから覗き込む。
 そして―――同じように、目を見開いた。





 エマの持っている本は、奇妙な状態になっていた。
 傷つけられた部分の周辺を、まるで壊れたデータが戻ろうとしているかのように虹色に変化する小さな欠片が漂う。
 緩やかに漂う欠片に覆われたその傷の下。
 本来ならば破れた紙片とただのページが見えているはずのそこには――――違う色の、『違う本の表紙』が覗いていた。
 破れた隙間から見える僅かな表紙にあるものを見つけ、エマははっとして目を見開く。






 ――――――スピネルカラーの髪のようなイラストと、漆黒の翼のようなイラストを。






 エマはそれが間違いないと確認すると、その表紙―――本を覆うカバーのその裂け目に手をかけ、一気に引き裂いた。
 ビリィッ!!!と大きな音が響いて、本のカバーがビリビリに引き裂かれた状態で宙を舞う。
 ぎょっとするセレスティとシオンをよそに、ヒスイは面白そうにヒュゥ、と口笛を鳴らし『やるねー』と呟いた。
 他の視線を気にしている余裕すらないのか、エマはまだへばりついているカバーを全て破り、その下にあった表紙を全て露にした。
 その表紙を見て、シオンとセレスティも目を見開く。




「……なるほど。…確かに、私達の探し方じゃ見つかるわけないわね……」




 苦々しげに呟くエマの言葉に、ヒスイは満足そうに笑う。
 その視線の先にあるのは―――エマの持つ、カバーを破り捨てた本。










 ―――――――――『不完全天使』という題名の、『セイレーン』と一人の少年が描かれた絵本だった。









***


おうじさまはてんしがだいすきでした。
てんしもおうじさまがだいすきでした。
ふたりはいつも、どこにいくのもいっしょ。
おうじさまも、てんしも、ひとりぼっちだったから、ひとりぼっちがふたりで、ひとりぼっちじゃなくなりました。
しあわせで、あたたかくて、やさしいひびでした。




――――――けれど、あるひ、おうじさまはびょうきにかかってしまいました。




ねむって、ねむって、ねむりつづけて。
しなないのに、めをさまさない。
いつおきるのかもわからない。
ただただ、しずかにねむりつづけるだけの、ふしぎなびょうき。

てんしはなきました。
おうじさまはめをさましません。
そのきれいなめでてんしをみることも、てんしのなまえをよぶことも、てんしにほほえみかけてくれることも、してくれないのです。
ないて、ないて、なきつづけて。
はるがきて、なつがきて、あきがきて。
ふゆがきたとき、ようやく、てんしはなきやみました。
ないても、おうじさまがめをさましてくれないことに、ようやくきづいたのです。
てんしは、なくのをやめて、おうじさまのすぐそばで、じっとおうじさまのねがおをながめるようになりました。
そうして、またたくさんのじかんがすぎたとき。





てんしは――――おうじさまがいっていたことをおもいだしました。





「ねえ、『―――』。ぼく…『―――』と『―――』だけじゃなくて、もっともっと、たくさんのおともだちがいたら。
 …きっと、いまよりもずっとたのしいんだろうね」



そのことばをおもいだして、てんしはあることをこころにきめました。









――――――おうじさまに、もっともっと、たくさんのおともだちをつくってあげよう。









そうして、てんしは、たくさんのおともだちをさがしにでかけました。
おうじさまがめをさましたとき、たくさんのおともだちがそばにいてくれれば、おうじさまはよろこんでくれる。
そうしんじて、てんしはおともだちをさがしつづけました。
おうじさまのために、ただひたすら、ともだちをさがしつづけて……。



◆謎のかけら。古の城。



「……話は、ここで終わってるみたいね」


 エマは最後のページを読み上げた後、溜息混じりに呟いて本を閉じた。
 それを黙って聞いていたセレスティが、思案顔で口を開く。

「…肝心の王子と天使の名前が掠れて隠されているのが、何かの鍵だと思われるのですが…」
「ええ。たとえ伝承をわざと残しても、名前だけは読まれたくなかったのかもしれないわね。
 こんなんじゃ、ほとんど記号か暗号か、って感じだもの」
 再度本を開いてかすれた上に滲んで字の形自体を判別することすら難しくなっている部分を指でなぞるエマ。
 それを見て、セレスティは隣に座る、面白そうにこちらの様子を見つめているヒスイに目を向けた。



「…ヒスイさん、ここのデータの修復をしていただくことはできますか?」



 ヒスイに関しての情報ならば現時点ではセレスティが一番持っている。
 ヒスイほどの腕前の持ち主なら、この文字のデータを修復することも可能かもしれない。
 そう思ったからこその一言だったのだが――ヒスイは、その言葉を鼻で笑って一蹴した。

「丁重にお断りさせていただくよ。
 そんなことしたら、簡単すぎて面白くないからな」
「なっ…! なんてこと言うのよ!!
 たくさんの人が犠牲になってるのに、『面白くないから』なんてくだらない理由で断るなんて…!!!」





「―――――俺にとっては、お前達の『人を助けたいから』って理由の方がくだらないね」





 ヒスイの言葉に激昂したエマが怒鳴り声を上げるが、静かな声に遮られて、エマは目を見開いて硬直した。
 今までのふざけたような表情が一変、冷たく、刺すような視線がディスプレイ越しからでもはっきりとわかるほどに、一気に声のトーンが下がる。
 驚いたような三人の視線を受けながら、ヒスイは皮肉げに口の端を持ち上げて頬杖をつき、顔を逸らす。


「俺にとって、『面白い』か『面白くない』かは、なによりも最優先すべきことなんだよ。
 俺は他人がどうこうなろうがこれっぽっちも困りはしないしな。
 セイレーンに連れてかれたヤツらがおかしい? 素晴らしい、そっちのが面白いじゃないか。
 『人を助けたい』なんて、所詮偽善者の考えることさ」
「な…っ!!」


 エマが怒りに任せて反論する前に、ヒスイはがたりと大きな音を立てて立ち上がる。
 三人の視線が集まるのも気にせず、ヒスイは静かに背を向けた。





「そういうわけで、俺は必要以上にあんたらに協力する気はこれっぽっちもない。
 俺が面白いと思った時だけ、あんた達に手を貸してやるよ」





 そう言って、ヒスイは歩き出す。
「ヒスイさ…っ」
「無駄よ、シオンさん。
 止めたって止まってくれるような人じゃないわ」
 シオンは止めようと椅子を立ちかけたが、エマに止められて大人しく椅子に戻る。
 そんなやりとりが聞こえていたのだろうか。
 ヒスイはくっと喉を鳴らすと、足を止めて緩く振り返る。





「――――――『歌』は『音』であるとは限らない。
 『灯台下暗し』。宝物は、案外わかりやすい場所に隠してあるモノさ」





「? それはいったい…」
「それ以上は自分で考えるんだな。…じゃあ、俺はこれで」


 訝しげな声を上げるエマの声を遮ると、ヒスイは片手を挙げて軽く振り、今度こそ振り返らずに立ち去っていった。
 その後姿を見送って、エマはがたりと音を立てて立ち上がった。
 シオンとセレスティの視線が集まっているのを確認して、エマは横に避けてあった地図を手に取る。
 ざっと広げると、どこからか取り出したペンを握り、フタをしたまま地図の上をこんこん、と叩く。



「彼には必要以上に頼らないほうがいいわ。蹴られるのがオチだからね。
 ここから先は私達でなんとかしましょう」



 エマの真剣な表情に、セレスティとシオンも真面目な顔をして頷く。
 エマは横に用意してあった自力で調べた資料と、セレスティが持っていた資料を引き寄せる。






「…あくまで私の予想なんだけど、セイレーン…天使は、王子の城からそんなに離れた行動範囲じゃないと思うの。
 あの絵本を読んで、その可能性が強くなったと私は思ってる。
 だから…」






 エマはそう呟きながらペンのフタを外し、資料と照らし合わせながら地図のセイレーン出現地点に×印をつけ始めた。
 全部の地点に×印を付け終わったところで、エマは長い定規を取り出して×印同士を繋いでいく。
 きゅっ、と音を立てて、全ての×印が繋ぎ終わると同時にペンにフタをして横に置き、エマが一点を指差す。
 二人が覗き込んだのを確認して、エマはゆっくりと口を開いた。





「――――――×印を繋いで行った中で、最も線が交わる場所が、一番怪しいと思う」






「……周辺の森がほぼ全て襲われているにも関わらず、わざとらしくこの森の中だけは襲われてませんね」
「では、ここにセイレーンが…?」
 セレスティが納得するように呟き、シオンが二人の顔を見る。
 その動きに、エマがこくりと頷いた。
「その可能性が一番高いと思うわ」
 それを見て、セレスティが唐突に席を立ち上がる。




「セイレーンに関しての資料は見つかりませんでしたが、この森の資料なら探せば見つかりそうですね。
 まだ時間はあることですし、ゆっくり探してみましょう」




 セレスティの言葉に、二人も真剣な表情で頷いて立ち上がった。
 そして一斉に、資料を探すために分かれる。







 ―――――――エマが指差した地点には、『獏の森』と書かれていた。







◆獏の森、降臨



 三人は、調べた森―――獏の森へとやってきていた。
 ちなみにシオンのウサギさんは危ないからと、偶然見つけた知り合いに預けておいた。



 その森は他の場所より閑散としており、何故か町の境目から一歩出て森の中へと入った時点から、既に動物の声どころか、気配すらもしなくなっている。
 明らかなまでの怪しさを醸し出す森に隠す気があるのかと疑いたい気分になりながらも、三人はエマの先導の下、奥へと進んでいく。

 目指す先は――地図で見つけた、事件の場所を伸ばした先が交わる場所。

 歩き続けるうち、セレスティがぴくりと眉を跳ねさせ、不意に立ち止まった。
「…どうしたの?」
 つられて立ち止まった二人から訝しげな視線を向けられて小さく苦笑しながらも、セレスティはふっと表情を引き締める。



「……この辺りから、変な気配を感じます。気をつけてください」



 その言葉に、エマとシオンはぴくりと反応し、同時にきゅっと口を引き結んだ。
 空気が、ぴん、と張り詰める。
 しぃ…んと鎮まったままの空間の中、三人は注意深く周囲を見渡しながら進んでいく。
 しばらくがさがさと草むらを掻き分けて進むと―――不意に、開けた場所に到着した。

 大きく広い円状に、草だけが広がる場所。
 そこには鳥も獣も、欠片も存在しない。

 三人は奇妙に感じながらも、恐らくここが目的地だと直感で感じていた。
 一歩一歩、確かめるように静かに歩く。
 緩やかに、しかししっかりと踏みしめたエマの足が、その円の縁に入り込む。






 ―――――――――足が地面に付いた時には、目の前には森が広がっていた。






「え…?」
 思わず声をあげると同時に、急に真横に気配が現れる。
 振り向くと、同じように呆然とした表情のセレスティとシオンが立っていた。
 その背後には――先ほども見た、薄緑の円。
 慌ててもう一度踏み込むと、やっぱり、また円の外へと足がついた。

「……どうなってるの?」

 エマが呆然と呟くと、セレスティが顎に手を当てて考え込む。
 少しの間を空けてから…すっと、目を細めた。



「おそらく結界の一種でしょう。この円の端と端が繋がっていて、その中には他人は決して踏み込めない。
 …どうやら、ここがセイレーンのアジトだと考えて間違いないでしょう」



 その言葉に、エマとシオンの表情が強張る。
「もしもこの結界に侵入者を探知する力も付加されていたとしたら、何かが襲い掛かってくるのも時間の問題かと」
「そう…それは厄介ね」
 付け足したセレスティの言葉にエマが顔を顰める。
 その様子を見ていたシオンは、ふと自分のポケットに手を突っ込んだ。



「あ、あの!!」



 急に声を上げたシオンに、エマとセレスティが驚いて彼を見る。
 シオンは少し引き攣った顔で笑うと、二人にあるものを差し出した。





 ――――――――――小さい、四センチ四方のチップ。





 二人の手にそのチップを半ば無理矢理握らせるシオン。
 訝しげな視線を受けて、困ったように頬を掻いた。


「えーっと…これは皆さんと合流する前にヒスイさんからいただいたものなんですが」
「「ヒスイさんから?」」


 シオンの言葉に、セレスティは驚いたように、エマは訝しげに顔を歪ませる。
 その二人の対照的な反応に苦笑しながら、シオンは言葉を紡ぐ。



「なんでも、ウィルスを無効化するチップだそうで。まぁきちんと効果が出るかどうかはランダムらしいのですが。
 えっと、持っているだけでも発動する時には自動的に発動するらしんですよね。
 それで、三枚もらったのでお二人にも一枚ずつ渡しておいた方が後々何かの役に立つかもしれないと思いまして…」



 そう言って自分の手元にあったチップを小さく弄ると、セレスティとエマが手の中のチップを見た。
 黒く艶のある小さな塊に、少々の疑念と、少々の胡散臭さを感じながらも、二人はそれを懐にしまう。
「まあ、期待しないで持っておくわ」
「発動してくれるなら、それに越したことはありませんしね」

 その返答に嬉しそうに笑ったシオンだったが―――すぐに、目を大きく見開く。

 少しだけ上に固定されたまま固まったシオンの視線にどうしたのかと二人が問いかけるその前に。
 はらり、はらりと、柔らかに降って来る。






 ――――――――それが黒い羽根だと認識する前に、バサリと大きな音を立てて、背後に気配が現れた。






「セッ…!!」
 セイレーン、と口にする前に、黒い翼が大きく羽ばたく。
 発生した大きな風に、三人は揃って吹き飛ばされた。
 不意を突いた攻撃に、対応するのが遅れてしまったのだ。
 地面に叩きつけられるのと同時に、森からわらわらとまるでウジが湧くかのように、モンスターが現れる。

「…どうやら、私達の推理は大当たりだったみたいね」

 エマの静かな声に、二人は小さく頷く。
 一斉に囲まれて、三人は思わず身構えた。


 …しかし、モンスターはゆらゆらと揺れて取り囲むだけで、攻撃をしかけてはこない。


 今まで手に入れた証言と同じ状況に、三人は体に力を入れる。
 迂闊に手を出せば、このモンスター達に袋叩きにされるだろう。
 かといって、このままではセイレーンに…。




 ――――――――その瞬間、耳に柔らかな旋律が届いた。




 うた。
 柔らかく、優しく、体中に染み渡るような。
 頭の中に響くような、そんな歌。
 歌が好きだ。こんなに綺麗な歌を聞いていると、思わず踊り出してしまいそうになる。
 …まぁその踊りが滅茶苦茶でも、その辺はご愛嬌だろう。
 頭の中が少しずつもやに覆われていくような感覚が訪れる。
 霞んでいく思考の中で存在を主張しているのは、ただ歌が綺麗だという思いと、踊りたいという欲求だけ。



 そう思いながらシオンが一歩踏み出しかけたところで――――ぱちんと、目の前でシャボン玉で弾けるような音と、その映像が目に映った。



 すると、霞みかけていた意識がふっと戻ってくる。
 驚いて目を瞬かせるが、自分の周りにはもうシャボン玉は残っていなかった。
 ふと、ポケットが熱いような気がして視線を落とす。
 ぼんやりと光を放つチップを見て、これが発動しているのだと、なんとなく悟る。
 はっとして横を見ると、同じように懐から淡い光を放ったセレスティの姿が見えて、シオンはほっと息を吐く。



 しかし続いて逆隣を見たところで――――ぎょっと、目を見開いて硬直することになる。



「シュラインさん!?!?」

 驚いて硬直したシオンの代わりに、セレスティが声を上げた。





 ――――エマが、虚ろな瞳で歩き出していたのだ。





 今までの被害者と全く同じ状態。
 虚ろな目で、意思も感じられず、ただ静かに、セイレーンを見つめて歩を進める。
 いけない、と思った。
 止めなければと慌てて一歩踏み出した途端、ざっと、視界を遮るようにモンスターが現れる。


「どいてくださいっ!!」
「シュラインさん! シュラインさんっ!!」

 モンスターを一体倒しても、またすぐに別のモンスターがその隙間を埋めていく。
 どんなに呼びかけても、エマは反応を返さない。懐に入っているチップも、光を放っていなかった。
 発動が失敗したのだろう。完全に、セイレーンの支配下に置かれていた。



 一歩、また一歩と、エマがセイレーンへ近づいていく。
 声を張り上げて呼んでも、彼女は虚ろな瞳のままだ。



 ……とうとう、エマがセイレーンの目の前に辿り着いてしまった。



 セイレーンが嬉しそうに歌い、微笑みながら、黒い翼でエマを包み込む。






「「シュラインさん―――!!!」」






 二人の叫び声も虚しく、エマは目を閉じてセイレーンに包み込まれる。
 完全に黒い翼に包み込まれ、エマの姿が見えなくなった瞬間。




 ―――――――――――ざぁっ、と強い風が吹いた。




 反射的に目を閉じる二人。
 はっとして慌てて目を開いた時―――そこには、なにもいなかった。
 エマも、セイレーンも…モンスターさえも。








 ――――――――――――夢ではないと主張するように、黒い羽根を、たった一枚だけ…残して。









◆虚ろなる人形(ヒトガタ)

 あの後、シオンとセレスティは急いで現実に戻った。
 シオンの聞いた情報が確かならば―――現実に、エマが戻っている可能性があったからだ。

 草間興信所へ向かう途中、合流する。
 そのまま興信所へ辿り着いて中へ入ると、異様な光景が広がっていた。



「…セレスティ…シオン…」



 顔を真っ青にした草間が、扉から入ってきた二人を呆然と振り返る。
 その声が僅かに震えていて、二人は思わず顔を見合わせた。
 息を切らせた様子の二人を見て、草間は眉を寄せる。




「……お前ら、知ってるのか。
 コイツが一体どうしてこうなっているのか…」




 草間の視線の先―――確かに、エマはいた。
 ただ、椅子に座って、ぼんやりと目の前にある書類を見つめているだけの、エマが。


「さっきから、何を言っても『ええ、大丈夫よ』しか返さん。
 かと思えば急に立ち上がって室内を一周し、そのまままた椅子に座る。
 ……まるで、コイツが壊れた自動人形になっちまったみたいだ」
「…………ええ、大丈夫よ」


 苦々しげに煙草を噛み潰す草間に、何故かエマがそう呟く。
 虚ろな視線ととんちんかんな返答に、セレスティとシオンが顔を見合わせる。
 正に、シオンが調べた「現実に戻った人間の様子が普段と違い、おかしくなる」そのものではないか。
 どう説明するべきかと二人が困っていると―――不意に、ぺたり、と背後から間抜けな音がした。


 ばっと音の発信源を振り向いた三人は―――まったく同時に止まる。






 ―――――――――後ろ足だけで立った、二本足の可愛らしいデフォルメ兎。






「なっ…」
「いつのまに…」
「ぁあああ! なんと可愛い兎さんなのでしょう!!」
「お前は黙ってろ!!」
 驚くセレスティと草間に対して一人喜ぶシオン。
 しかし草間に一喝されて、しゅんと肩を落とし、黙り込んだ。
 それを確認してから、草間は兎をにらみつける。



「……貴様、何者だ。何故ここに現れた。依頼なら今はお断りだ」



 静かにそれだけを告げると、兎は面白そうに口を歪ませながら、右前足をぺたりと口に当てた。

『そうぴりぴりすんなよ。
 俺が用があんのはアンタじゃなくて、そこの二人さ』

 楽しそうに告げられた声に、セレスティとシオンは同時に目を見開いた。
 多少電子音に紛れてわかりにくくはあるが、この声は、確かに聞いたことがある声だったのだから。




「その声…ヒスイさん、ですか?」
『正解。意外と早く気づいたな』




 セレスティの返答に満足そうにほくそ笑みながら、兎は前足を組む。


『…アンタ達に面白いプレゼントだ。
 使うかどうかは、アンタ達の判断次第だがな』
「「プレゼント?」」


 二人の不思議そうな声にこれ以上返答はなく、兎は軽く飛び上がると、ぽひゅ、と音を立てて煙を発生させた。
 瞬間、兎の姿は消え、代わりにからん、と音を立てて何かが落ちる。
 煙が晴れてから近づいて拾い上げると、それは一枚のCD−ROMだった。
 それを確認したセレスティが、草間を振り返る。

「草間さん、パソコンをお借りしてよろしいでしょうか」
「…ああ」

 このCDがエマの状態に関係があると気づいたのだろう。
 緊張した面持ちで頷いた草間に礼を告げ、セレスティがCDを入れる。
 中身を立ち上げると、文字の羅列が現れた。
 てっきり嫌がらせを込めて暗号でも使っているのかと思ったが、それはただの日本語。
 訝しげに思いながらも、セレスティが声をかけ、草間が表示されている文字を読み上げる。


「……住所、のようですね」


 どうやらその文字は、東京都内のとある一箇所を指しているらしい。
 セレスティがそう呟くと同時に、シオンが声をあげた。

「まだ、下に何かあるみたいですよ」

 その声に、草間が文章をスクロールさせる。
 そして現れた文章に、草間は驚いて目を見開いた。
 シオンからは死角のそれが何かとセレスティと問いかけると、草間は半信半疑の表情で口を開く。



「……『俺の仮の住居の一つだ。信じるのならば、来てみるといい』」








 ―――――――――――その言葉に、シオンとセレスティは驚きに満ちた表情で顔を見合わせた。








Next Story…?


◆登場人物(この物語に登場した人物の一覧)◆
 【整理番号/名前/性別/年齢/職業】

 【0086/シュライン・エマ/女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
 【1833/セレスティ・カーニンガム/男/725歳/財閥総帥・占い師・水霊使い】
 【3356/シオン・レ・ハイ/男/42歳/びんぼーにん】

 【NPC/ヒスイ/男/??歳(外見年齢二十歳前後)/ハッカー】
 【NPC/ネヴァン/女/??歳(不明)/女神】
 【NPC/草間・武彦/男/30歳/草間興信所所長、探偵】

◆◇入手アイテム情報◇◆
 《ウィルス無効化チップ》
    文字通り持ち主に対するウィルス(白銀の姫内では持ち主に異常を与えるようなもの)攻撃を自動的に無効化する小型チップ。
    が、それは確実ではなく、発動しないこともあるため、頼るのは得策とはいえません。
    回数制限があり、三回使用すると自動的に消滅します。(この世界でのカウント:今回一回発動。残り二回)

◇◇ライター通信◇◇
 お待たせいたしました。白銀の姫クエストノベル第一弾、「Imperfect angel―不完全天使― 〜appearance〜」をお届けします。
 結構自分設定が散りばめられているので、「あれ、ここ違わね?」ってところは…見逃してやって下さい(爆)
 今回はお三方とも単独での御参加ということでしたので、三人でパーティーを組んでいただくことにしました。…いかがでしたでしょうか?
 また、いつものように個別9:共通1の割合で書いてますので、個別シーンが相変わらず多量です(ぇ)
 今回は一人ひとりにバラバラの情報を提供する形になっています。
 行動によって情報にバラツキがあるので、他の人のノベルも見て情報を集めて下さい。
 また、最後のシーンも二方それぞれに個別のシーンを用意しています。他の方のノベルを見て(一部PL情報扱いになりますが)情報を手に入れておくのもいいかと。
 あと、ヒスイは大分ひねくれてるというか…ものすっごい性格悪いですが、どうか大目に見てやって下さいませ…(苦笑)
 さらに知恵の環で立ち去り際に残していった言葉は、今回と次回共通のヒントのようなものになってます。
 まあ、正直な話無理に考えると逆にややこしくなるかもしれないんで、考えなくても問題ないですよ。ええ全然(ぇえ)
 セイレーンの住む古城があるであろう森を見つけることはできましたが、特殊なプログラムとウィルスでジャミングされており、入ったり出たりするには何か別の手段が必要になるようです。
 なにはともあれ、このどれくらい続くかわからないシリーズ、よろしければお付き合いお願い致します(ぺこり)

 シオン様:
    今回のクエストノベルへのご参加、どうも有難う御座いました。
    ギャグ担当ということで(待て)、色々余計な展開付け足してますが…だ、大丈夫でしょうか?(汗)
    衣装は個人的趣味というかぶっちゃけウサギが微妙にツボだったお箸バージョンで(笑)
    序盤はちょっぴりひとりぼっち(笑)ですが、ヒスイに接触した+気にいられたようなのでプレゼントです。
    ぷりてぃウサギは…まぁ、とりあえずノリで。これはヒスイの遊び心の賜物であって、決して彼自身の趣味ではない…筈(爆)
    チップに関してはアイテム情報を御覧下さい。とは言っても白銀の姫内では自動発動タイプなのであまり関係ないかもですが…(をい)
    最後は尻切れトンボっぽくなってますが、ここから先は次回に続く、ということでひとつ(何だよ)

 色々と至らないところもあると思いますが、楽しんでいただけたなら幸いです。
 それでは、またお会いできることを願って。