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<白銀の姫・PCクエストノベル>


呪いに因らぬ不在〜神聖都学園高等部PCルーム

■オープニング

 神聖都学園高等部。
 …現在『白銀の姫』事件の渦中にある大学部とは目と鼻の先――とも言えそうだが、神聖都学園自体がそれなりに広い敷地にある以上、大学部と高等部の差があればその時点であまりそうとも言い切れないかもしれない。ただ、同じ学園である以上色々話が通じ易い場所に居る事だけは間違いない。…それは特に機密の高い理工学系の研究畑相手では簡単には行かないだろうが、少なくともまぁ、何か折り入っての話があるのなら完全な外部より優先的に聞くだけは聞いてもいいよと言う程度の仲ではある筈だ。
 そんな、同じ学園敷地内高等部に幾つかあるPCルームの内、一つ。
 学習用にずらりと設置されている内、隅の筐体に一人、モニタ画面に向かった状態で難しい顔をしている教師が着いていた。水原新一。隣の席の椅子にはノートパソコンが無造作に置かれている。…ちなみにそれは碧摩蓮から成り行きで預っている、件のアリアが出て来たノートパソコンであったりするのだが…アリアが出てきてこの方――普通に起動する事は勿論、記憶媒体の方も全滅で結局、手の出しようがなかったらしい。…少なくとも、普通の人間の範疇で出来る真っ当な方法では。
「無理、か」
 逆探知。ゲーム『白銀の姫』の源になるマシンに正規の方法――即ち、巷で『呪いのゲーム』と言われる由来こと『取り込まれる』――以外で侵入する事が出来るかどうか。水原はそれをハッカー仲間と声掛け合って色々やってみているのだが、どうも幾らやっても無理らしい。
 ゲーム――と言うより異界と言うべきか――が許した正規の方法でなら簡単に『白銀の姫』内世界のアスガルドまで辿り着けるのだが、どの回線をどんな経路で辿ってどのマシンに通じているのか――そこはまったく辿れない。…辿れれば、何処かで経路を遮断しておく手段も考えられるのだが。
 水原は一応、蓮経由でアリアが大学部に乗り込んだ結果を聞いている。…大学部電子工学科研究棟の倉庫に放置されていた『Tir-na-nog Simulator』なるマシンの存在。既に電源も入っておらず何処にも繋がっていない状態の筈なのに稼動中であると言うそれこそが『白銀の姫』のゲームプログラムが置いてあるマシンで異界を発生させている元凶、と超常・怪奇現象と見れば何処にでも湧いて出るIO2の皆さん&『Tir-na-nog Simulator』の管理運営責任者だったと言う本宮秀隆なる助教授から、アリア他同行した有志数名に知らされた…と言う話。随分前のプロジェクト中止以降まったくアクセス不能だったと言うそのマシンが、アリアがその場に居る事でアクセスの許可を受け入れ始めたのではと言う話まで出ているらしい。
 …ともあれ、事態を動かす諸々の切っ掛けになったと言う事で、アリアは暫く大学部から戻らない事になっているらしい。またそれ以上に、彼女自身が『鍵』と思われた節もある。
 助教授でマシンの責任者、と言う男が少し気になった。
 ゲームのメインプログラマーである『創造主』こと浅葱孝太郎が事故死していると言う話は、水原の方でも手に入れていた――と言うより、奇しくもアリアたちが本宮から聞いたのと前後して調べが付いていた。本宮とやらがそれを知っているのも立場上当然と言えるだろう。が――それで、ゲーム内の女神アリアンロッドと現実世界で現れたアリアがそっくりだったからと言って…一般人がすんなり受け入れられるものだろうか。
 水原の考え過ぎと言われればそうだろうが、何故か水原は本宮秀隆と言う男について気になって来ている。何処かで面識があるのか。そうとさえ考えてみる。…が、取り敢えず思い付く当てはない。まぁ、直に姿を見ても話もしていない以上、具体的なところは何とも言いようはないが。
 が、だからと言って――水原は今、『Tir-na-nog Simulator』とやらが置いてある大学部電子工学科研究棟の倉庫とやらに向かい当の本宮に会ってみる気はまったくない。話をすれば聞いてくれるだろう位置には居るが、何と言うか――自分が動いている事を知られない方が良いのではないだろうか、そんな気がしている。
 これもまた根拠の無い変な確信なのだが、水原はその『Tir-na-nog Simulator』とやらの元へ、直接出向かない方がいいとさえ思っている。…本当ならアリアにもすぐ戻れと忠告したいくらい。だが根拠が無い以上――いやもしあったとしても――折角得た重大な手掛かり、アリアは放り出しはしないだろう。それもわかっているから特に言いはしなかった。
 だからと言ってここまで首を突っ込んだ状態では水原の方でも当然今更放り出せないと言う事で、わざわざ同学園内高等部にあるPCルームの一つにこもっている事になる。何処にも繋がっていないとは言え『Tir-na-nog Simulator』が神聖都学園内にある以上一番近くにあるのはどう考えても神聖都学園のイントラネット。大学部の専門研究棟に高等部一般のPCルームとなればそれは上位空間下位空間の差はあるだろうが――同じ系列のイントラネット内になる事は確か。ならばその中から動く方が、何かあった時でも外部からより数段遣り易いと思われる。水原は臨時ではあるが一応この学園の高等科教員でもある訳で、場所も借り易いしその場に居座っても特に不自然は無い。その上、神聖都学園の設備ともなれば私立の巨大複合学園だけあってかなり充実している。置いてあるマシンも、一般用のような最低ラインのものからしてそれなりにスペックが高めだ。…ハッカーの視点からしても、下手なマシンより使い易い。
 …それに、万が一大学部の方で何か起きたなら、外部から向かうより高等部に居た方が直接でも向かい易い。
 どれも気休め程度の理由だが、異界が――超常・怪奇現象が絡むとなれば、ある意味、気休め程度の配慮でも莫迦に出来ないとも言える。
 思いつつ、水原は滅多に他には見せぬ鋭い目で画面に向かっていた。正規の方法以外での『白銀の姫』への侵入を試みる事と平行して、先程から続けている神聖都学園内イントラネットの分析と把握。…『Tir-na-nog Simulator』の置かれているだろう位置関係からすれば外部との接触に使っている可能性が一番高いと思われる回線。直接ケーブルやセンサーで繋がっていなくとも、近場に大容量の高速回線があればまずそこに目を付け何らかの形で利用していそうなものだ。超常の世界ともなればどんな手段を使って何をしているかわからない。即ち、直接接続されてなかろうと介入している可能性はある。だからこそ――ひとまず神聖都のイントラネット内でそんな痕跡は無いか、探すだけ探している。現時点では痕跡はまったく見えない。本当に『Tir-na-nog Simulator』がここの回線を使っているかもわからない。が、僅かでも痕跡が見付かり、そして何か事が起きたら全部――出来なくとも要所の大部分を極力安全に落として緊急避難させられるところまで持って行くくらいの心積もりで当たっている。
 水原はマシンに向かったら最後、画面以外は目に入っていない。
 キーボードの上を縦横無尽に指が走っている。

 …その、後ろ。
 何処から現れたのか、黒衣の幼い姿の少年が――いきなり、何も無い中空から降り立った。
 水原の背後、殆ど音も無く小学校中学年程度の人物一人分の質量が増えている。
 瞬間的に、場の空気が冷えていた。

 どうも貴方の元には、『白銀の姫』の情報がより多く集まっているようですね――?

 直後――囁くように、すぐ横から聞こえた。
 反射的に瞠目した水原が振り返ったそこには、幼い年の頃に似合わぬ冷たい美貌。
 現れた少年は、酷く優しい微笑みを見せていて。

 …その少年、ダリアを直に知る者ならばわかっていただろう――彼が優しく微笑む時は、最大級の危険信号と。



 暫し後。
 神聖都学園高等部に幾つかあるPCルームの内、一つ。
 …当然『白銀の姫』についての用件でそこに顔を出してはみたのだが、今この時間この場所に居座っている筈の人物――水原新一の姿が何故か見えない。ただ、学習用にずらりと設置されている筐体の隅、そこの二つだけつい今し方まで誰かが使っていたように電源がつけっぱなしな事に気が付いた。なのにそこには誰も居ない。…水原の姿は何処にも無かった。
 この時間、水原には受け持ちの授業も無かった筈。そして彼の場合『白銀の姫』に取り込まれて失踪したと言う事も無い。水原はアリアに聞いて既に異界アスガルドへと何度か出入りしている。…とは言え、彼の場合不意に取り込まれない為の予防策&経路を辿る為事実上ゲートを出入りしているだけでアスガルドの中でプレイヤーらしい行動を取ってはいないのだが。
 その上に、電源の入っているモニタ画面に映し出されているのは「頁が見付かりません」の警告頁では無く使用前状況な当の『白銀の姫』のログイン画面。それが表示されているのが一台、それから真黒の背景に何かのプログラムソースらしきものがずらりと羅列されている画面状態の物が一台。
 更には――水原が便所や軽食、喫煙等の為中座している訳では無いと思える決定的な理由も残されていた。

 ――…水原の物であるベージュのコートが床に落とされたまま放置されている。幾ら元からよれよれのコートである上、清掃も行き届いているPCルームであってもさすがにコートを床に放ったらかしにしてはおかない。普段の水原の場合、近場にある空いた椅子もしくは机の上に置くか、自分の使用している椅子の背に引っ掛けておくのが常だ。…少なくとも落としたなら拾っておくに決まっている。どれ程他の事に没頭していようと、自主的に中座するようなら中座しようとしたその時点でその程度すぐに気付く筈。
 更には――碧摩蓮から、延いてはアリアからの預り物になる壊れたノートパソコンまで、消えていた。
 …そもそも、使用者不在ならばPCルームの鍵は掛かっていて当然のもので。

 何か、起きた。…それも、直前に水原がしていたと思しき事、無くなっている物から考えても――『白銀の姫』に絡む事で。
 そう判断して間違いない状況だった。


■様子伺い〜神聖都学園大学部電子工学科研究棟・倉庫

 …『白銀の姫』のプログラムが載っているマシンが神聖都学園大学部電子工学科のものだと判明した。マシンの名称は『Tir-na-nog Simulator』。…妖精王であり海神になるマナナーン・マク・リールの支配するケルトの異界――それを示す『常若の国』の名を冠したコンピュータに、模擬的に内部世界を構築する実験――か。『異界』となれば死後の世界とも同一視されるのは何も珍しくない事。『アヴァロン』もまたケルトに於いて――と言うよりこちらはそれらを下敷きにしたブリテンの伝説、アーサー王の物語に於いて――同じ『異界』に含まれる。…王妃との不義を働いた反逆者である甥との戦いの末、物語の最後。勝利はしたが深手を追ったアーサー王を湖の貴婦人たちがアヴァロン島に運ぶ。そしてその後、イングランドの――ブリテンの危急の際には甦る、と伝えられて、アーサー王の物語は終わる。…事前の状況ではどう考えても瀕死――死なないのがおかしい状態でアヴァロンに送られてありながら、死んだとは明言されていない。
 後への夢と希望だけが残る形で、王の出番は終わりになる。過去の王は生きてもおらず死んでもいないまま、ただ『林檎』の名を冠する島で永劫に安らぎを得る訳で。…これは、伝説の英雄に明確な『死』だけは許されない。そうとも言い換えられるのか。
 …当然ながら今挙げたのは、私たちの目の前にある『白銀の姫』――この『異界アスガルド』の事ではなく『神話及び伝説上の概念であるケルトの異界』の事。
 神聖都学園大学部の電子工学科にあるマシン。…ケルトの異界。そんな名前をわざわざ付けた理由がふと気になった。ただ世界構築の実験だと言うならこの場所が日本である以上、常世――ニライカナイに普陀落渡海、徐福伝説迷ひ家等々似た概念の異界は数え上げればぼちぼちある。なのにいちいちアイルランドの『島のケルト』から取るとは教育施設での実験設備に付けられた名としては軽く引っ掛かる。…まぁ、初めからゲーム『白銀の姫』の構想ありきでそれが前提とされていた――のなら一応は自然か。
 様々聞いた話から、彼女――シュライン・エマは色々思考を巡らせている。
 曰く浅葱孝太郎の死亡と同時期からこのマシンによる世界構築の実験は中止になっていたと言う。理由は――アクセスが不能になった為。そして浅葱孝太郎の死を境にしてずっとアクセス不能だったそのコンピュータが、アリアたちが大学部侵入と言う大胆な行動に出たその時――アリアがそのマシンの前に姿を見せたその時――何故か唐突にアクセス可能になったと言う話。因果関係は謎のままだが、アリアがゲーム『白銀の姫』内に存在するキャラクター・女神アリアンロッドのコピーであると言う事もあった為、単純にマシンへのアクセスが可能になった事以上に、彼女の存在自体が今の事態を打開する鍵と思われた節もある。
 その為アリアは大学部の方から暫く帰らない事になっている…らしい。
 碧摩蓮からその旨連絡を貰っている。
 ただ。
 事前に様々話を聞いた中の一人――水原新一の反応だけは、シュラインにとって引っ掛かって然るべきものだった。それは『Tir-na-nog Simulator』自体とその実験の責任者と言える助教授――本宮秀隆と言う名の人物に対しての反応。本宮秀隆。聞いたアリアの反応からすると悪い人とは思えない――と言うか電子工学科の研究畑にいる助教授でアリアが一応ながらも好印象を抱けるような反応、となると逆に色々と物分かりが良過ぎるのではと言う気はするが、それは自分たちのように『こちらの世界』に触れる機会があった人間であるならそれ程気にするような事ではないとも思える。聞く限りではこの本宮秀隆、IO2のあしらい方に妙に慣れてた印象もあり。…ひょっとするとIO2の開発部等に携わってた過去があるとか。それだったら自然だと思うのだけれど。
 事前確認した本宮の履歴からして、元々、IO2からそのくらいの話は持ち込まれていてもおかしくない人材。そんな気はした。コンピュータに関しては天才と言って差し支えなく、現在の一般社会のそんな人間にしては――と言ってしまっては偏見かもしれないが、オカルトアレルギーでも無い。むしろ神秘系の事柄にさえも興味を持ち、専門分野に活かしているらしい。
 専門分野――人工知能研究。
 そこに神秘系の理も活用して取り組んでいるとなれば、氏の研究は――少なくとも技術的な意味合いではIO2の方向性とも然程逸れない筈なのだから。
 けれど。
 同時に別の危惧も頭に浮かぶ。…明確な根拠は無いとは言っていた。いたが――それにしては妙に確信のあり過ぎる水原の反応。反応とだけ言うよりもう、本宮秀隆と言うこの助教授の事を警戒していると言って良い。その事と――人工知能についての造詣、一瞬とは言え被造物であるアリアの方で創造主と見間違えた程の相似。浅葱孝太郎とプログラムの組み方が似ているからでは、と言う話を出していたらしいが、そうなれば――実はシステムいじれてたんじゃないだろうかとも思えてくる。マシンがアクセス不能だと言っていた当初の事など――責任者である彼の立場ならどうとでもなりそうにも思える。そしてアクセス不能と言うのは表向きの嘘で――本当は土台土壌整え中で生まれたNPCの自我――知能変化を観察していたのでは…と。
 …まだ顔も合わせていない現時点でそこまで考えてしまうのはさすがに行き過ぎか。
 そんな事をつらつら考えながら、神聖都学園大学部電子工学科研究棟に向かう。…内情が教えられている大学の事務の人なのだかIO2の人なのだか――もしくは両方兼ねている人なのだかはわからないが、その人がシュラインを連れ研究棟内を進んでいる。時折空気が揺らぎ別の景色が壁と重なる。女神の城の壁にある微細な彫刻と同じ、古めかしくも美しい彫刻が施された壁が現れる。元に戻る。…ここまで来れば一発だ。大学部が確実にジャンゴと重なる――それもこの研究棟が、女神の城と重なると言う事なのだろう。そして当の『Tir-na-nog Simulator』に近付けば近付く程、相互世界の侵食が深まってもいる。…ここまではっきり見る事が出来るのだから。
 …神聖都学園大学部の事務受付窓口で電子工学科の本宮秀隆助教授に用がある旨、そして用向きはアリアの件でと出す。その二つが『白銀の姫』関係用一般向けパスとして碧摩蓮のところに予め流してある。ただ、今来たシュラインの場合はそれはパスと言うだけでなく実際に目的そのものでもあり。彼女はひとまずアリアの様子を訊ねに来たのだから。
 そんな訳で御案内しますと言われて、今に至る訳なのだが。
 暫く屋内を案内され、着いたところは倉庫の一つ。部屋の周辺にはIO2の皆さんが待機。で、案内されるまま倉庫の中へ入ると――まず見慣れた方々が居た。
 鮫のオジ様に山猫嬢――もとい、鬼鮫とヴィルトカッツェ。
 …事前情報としてアリアに聞いてはいたが、ばりばりに実戦向けなトップエージェント様方である。
 何故機械類に詳しい職員じゃないのか小首を傾げつつも、シュラインは彼ら二人に深々ぺこり。…お勤め御苦労様です。御丁寧にそうされて、鬼鮫からは鷹揚な反応、ヴィルトカッツェからは言葉少なながら丁寧に会釈が返る。そこで――シュラインさんですね、と別の声が聞こえてきた。アリアの声。こちらもまた、スカートを抓んでぺこりと優雅に御挨拶。更にやや遅れ、ああシュライン・エマさんでしたっけ、と眼鏡を掛けた不精髭の――見慣れない男性からも声がかかる。こちらが本宮助教授です、とアリアに紹介され、本宮は初めまして、と来客――シュラインに微笑んで見せていた。
 …この人が、本宮さん。
 水原さんが警戒している当の相手。実際に当人に言いはしなかったが本心ではアリアにここに近付くなとさえ言いたかったとも漏らしていた程警戒している――それ程の?
 ともあれ、その事前情報故の警戒は微塵も出さずに、本宮に挨拶を返す。
 シュラインの第一印象では――特に警戒の必要がありそうな程危険な感じは無い。それはそう簡単に言える事でも無いが、もし何かこの人が原因で万一の事があったとしても――鬼鮫やヴィルトカッツェと言った直接的な危機には頼れる面子が同席している以上、アリアちゃんが危険、と言う意味のみにおいては然程心配は無さそうな気がするが。それにアリア当人も物理的な直接的な意味で考えるならコピーとは言え『白銀の姫』の『女神』になる。…圧倒的に強くて当然だ。ひょっとすると鬼鮫やヴィルトカッツェより強いだけは強い。
 とは言え、本宮にはプログラミングのスキルがある以上――水原の警戒の意味はそちらでか。でも、だったらどうしてアリアにまでこの場を避けるよう言いたかったのか。…何かシステム面から影響を与えられる可能性があるから? だがそれなら――殊、『白銀の姫』に関する限り、現実世界に於いての距離的な違いはあまり関係無いような気がするのだけれど。プログラムから創り出された存在、ならば近くに居ようと遠くに居ようと影響は与えられてしまいそうなものだろう。
 挨拶もそこそこに、本宮は再び『Tir-na-nog Simulator』の端末に戻っている。当然と言うべきか何と言うべきか、そんな態度。用件は――アリア君の様子でも見に来たのかな、と軽い口調でシュラインに問う。モニタ画面から目を離さないままのそんな科白に、それもそうなんですが、こちらでは現在どのような変化を『白銀の姫』に施したのか確認もしたくてとシュライン。ああそれは勿論穴を塞いでるんだけど、とあっさり本宮。…つまりはクロウ・クルーハがジャンゴを破壊したそこでプログラムが破綻し不正終了にならないよう、命令系統にある不正終了の源――演算終了の結果その先が構成されない中途半端なプログラム、つまり穴を探しては塞ぎ一応の応急手当をしている、と言ったところで。
 但し、簡単に穴を塞ぐと言っても『白銀の姫』のソースコードとなると膨大な量になる。ついでにメインプログラマーの浅葱孝太郎が居ない為、具体的に何処がどうなっているのかを事前にいちいち調べる必要も出てくる。プログラムの組み方が酷似していると言う本宮でも、超能力のようにすべて浅葱孝太郎の遣り方をコピー出来る訳ではない。事務的なシステムプログラムならまだともかく、ゲームプログラムとなれば尚更だ。…だから、穴を塞ぐだけでも完了するまでには相当の時間が掛かる。そう説明された。
 …それらはこれからの『白銀の姫』内での行動の支障を考えて訊いた事。シュラインはそれとなく他の面子にも同じ質問を振ってみたが――アリアやヴィルトカッツェも本宮の言った事を肯定。更には他に外部の有志の方がソースコードを解析して下さっていますし、とまで続けた。また、元プロジェクトメンバーだった数名の院生も、寝耳に水も良いところの信じられない『白銀の姫』の状況を聞いて驚嘆しつつも――プログラムの穴を塞ぐ程度なら何とかしようはあるだろう、と手伝いに入っているらしい。
 IO2の方では何もしていないんですか、とシュラインはここぞとばかりに続けて訊いてみるが――元々人手が足りない上に本宮助教授が良い顔をしませんので、とあっさりヴィルトカッツェ。それに、不正終了を止める事までならここにいらっしゃる方や外部の有志の方々で何とかなりそうですから、取り敢えず今の時点ではそちらに全面的におまかせしておきますとの事。
 …彼女曰く、自分たちのような実戦向けエージェントがここに居るのは何だかんだ言っても現実世界のジャンゴに当たるここが最後の砦のようなので、万一の時の為に身軽で一番強い駒を置いて警戒しておこう、とそう言う理由があるらしい。…確かに、他の有象無象に対応する為IO2のおまわりさんな黒服エージェントが学園外で動いているのをシュラインは偶然ながら知っている。
 そこまで話したところで、アリアが皆さんには本当に御世話になっています、と倉庫内に居る皆に改めて頭を下げた。いやいや君が来たから色々動けるようになった気もするし僕の立場だと一蓮托生だしねとキーボードを叩きながら軽く声を掛ける本宮。仕事ですからと淡々と告げるヴィルトカッツェ。鬼鮫は無言…彼の場合どうやらこの場に大人しく居なければならない事自体が不満であるらしい。
 シュラインはそんなアリアに、特に変わった事はない? と優しく訊いてみる。変わった事…ですか? と小首を傾げ考える仕草。…体調に何か変化はあるか。音からも確認してみる。特に――以前会った時から変化は無いようだ。ただ、創造主の死を乗り越えて、少しは心が強くなったとは言えそうか。
 シュラインの質問に、何処かきょとんとした顔をするアリア。無いなら良いんだけど、と笑って見せるシュライン。そこで初めて、アリアは自分が心配されていた事に気付く――気付けるだけの情緒が芽生えている。そして――大丈夫です、私は世界を守る為にもこんなところで挫けてはいられませんから、とこちらも強い笑顔を見せるアリア。
 と。
 そのタイミングで――本宮の声がした。
 浅葱君が居れば楽なんだけどそれはさすがに望めないしね、と溜息混じりに呟きながらぱたぱたキーボードを叩いている。浅葱君。彼が居れば。さりげなく出されたその名と科白にびくっとするアリア。…気付いていないのかわざとなのか、本宮は素知らぬ顔で端末を操ったままでいる。
 が。
 …承知の上で言っている。
 浅葱の名で再び顔を曇らせ僅か俯いてしまったアリアを元気付けつつも、暫くこの場に居てわかった。アリアが浅葱の名――創造主の名に反応する事を承知の上で本宮はその名を口に出していると。ただ厳しい人であるのかそれとも何か悪意があるのか、どんな思惑があるのかは知らないが――とにかく、意識してわざと創造主の名前を出した上で、それとなくアリアの反応を見ている事だけは確かだった。

 …水原さんの警戒の理由。アリアちゃんに忠告したかった理由。
 それは――単純にこの人と言う存在自体に近付かない方がいい――そう言う事なのかもしれない。


■不在の補填――Cynical Hermit

 少し後、神聖都学園大学部電子工学科研究棟の倉庫からシュライン・エマは辞している。別れ際、システムに心柔らかくね、とそう残しアリアをひと撫でして来はしたのだが――それでも、不安はまだ残る。アリアが『Tir-na-nog Simulator』の元に行った――即ち、『Tir-na-nog Simulator』にアクセス可能になって以後の事だが、ソースコードがネット内に殆ど流出してしまっている事も聞いた。
 解析の為、外部の人でコピーをもらっている人が居る事も知っている。知ってはいるが――だからと言って外部で協力してくれているそんな人たちが、簡単にネット内のような誰でも見れる外の世界に漏らしてしまうような事はないだろう、と思ってもいる。そこは最低限の信用だろう。…ここで言う外部協力者は、大抵の場合で草間興信所でもお馴染みの人たちになるのだからシュラインにしてみればどんな人柄かも知っている。
 だから、そこについても――本宮秀隆がまた、引っ掛かった。
 この本宮が、ソースコードを流したのではないか?
 …さすがにまだ言い切る気はないが、少なくとも――彼にも、可能ではある。

 考えながらシュラインは蓮に電話連絡。神聖都学園大学部に行ってアリアの様子を見て来た旨。一応、体調や様子は大丈夫そうである事。不安要素は水原さんが言っていた事くらいで――と、そこまで言うと、その水原だけどさ、と蓮の声が少し変化した。
 曰く、PCルームに残された様子からしてただの中座では有り得ない状態で姿が見えないと言う。ならば『白銀の姫』の中へ取り込まれたか――と思いきや、そうでもなく――現実世界に於けるファナティックドルイドの被召喚体の一つことダリアの存在が現れたのでは――水原は彼に攫われたのでは、と言う話になっている、らしい。
 ダリアの存在がその場に居た事を嗅覚の面で看破したのが玖渚士狼――元々、水原とは連絡を取っていた相手らしい。朔夜・ラインフォードとも同行していたその大学生が、現在彼らを匂いで追ってみているとセレスティ・カーニンガムから蓮の元に連絡があったとか。そして当のセレスティはPCルームの方で留守番――と言うか水原がしていた中継基地の代理をイオ・ヴリコラカスと共に務めているらしい。
 そこまで聞いて、シュラインはひとまず当のPCルームに顔を出してみる事にする。
 大学部から外へ行く途中と言うここ――現在地から考えれば、近いので。



 更に暫し後。
 シュラインが新たにPCルームに合流した時、PCルームには事前に聞いたセレスティとイオのみならず綾和泉汐耶も来訪していた。曰く、セレスティから蓮への連絡があった後のタイミングで合流したらしい。この汐耶は草間興信所と、瀬名雫とその一味御用達のネットカフェに立ち寄った際、現時点で『白銀の姫』について調査している面子の内では水原が一番信頼度の高い情報を持っているらしい、と聞いた為にここまで来たと言う。製作サイドに直接当たるべきか否か――そこを見極める為もあり。
 が、そうしたら肝心の水原があまり穏やかでは無さそうな状態で不在になっていると言う事で――ひとまず捜索の手助けをする事にしたところ。そこでシュラインがPCルームに訪れた。汐耶側の情報ではシュラインが大学部アリアの様子を伺いに行っているのは草間興信所で確認済みだったので、どうだったのか様子を訊いてもみていた。アリアはひとまず変わりなかったよう。助教授の本宮については――水原さんが警戒していた理由が薄々わかる気がする、とシュライン。でもだからこそ、直接会ってもいない水原が何故この相手を警戒出来たのか――その事こそが、引っ掛かるとも言える。
 …水原の不在に話が戻る。
 知識や応用能力から考えて状況的に誘拐?犯必要そうでは、とシュライン。少なくとも命の点だけは無事な可能性が高いのではと。それは私も思います、とセレスティ。それから、この場所があまり乱れていなかった事――そして士狼君が嗅覚で後を追えているようでもありますので、水原さんは少なくとも自分で歩いているとも思えるんですよ、とも続ける。
 そこまで確認し合って、シュラインはこれから『白銀の姫』側の各イベントや主要NPCの居場所等と対応する現実世界の各地点にこれから行ってみる旨言い出す。水原を連れて行った相手――ダリアは『白銀の姫』に関して何か考えがあって水原を連れ回している可能性があるのではと思うから。それと――ネット上に何かしら水原からのメッセージが無いかも確認する事を提案。
 と。
 ポーン、と軽快な音がしてPCがメールの到着を告げた。『白銀の姫』のログイン画面が表示されていた方の筐体。四人は四人ともはっとする。この状態でメールが来たとなれば――水原か。思い、音と同時にアクティブ状態に表示されたメールボックスを見るが――そこにあった送り主の名は『Ivory』。
 それを見て、牙黄さんですね、と汐耶がぽつり。はい、とイオも頷く。が、そうなんですか? そうなの? とこちらはちょっとびっくりしたようにセレスティとシュライン。汐耶は頷き、丁香紫さんから『Cernunnos』――これはゴーストネットで『呪いのゲームとして』の『白銀の姫』の記事を一番初めに書き込んだ人なんですが――の調査を牙黄さんにお願いしたと伺いましたので、と続ける。…とは言え、汐耶も汐耶でこの牙黄が水原とまで連絡を取っているとは知らなかったのだが。
 イオは承知だったらしいけれど。
 届いたメールのタイトルは――≪"Cernunnos"に関し、緊急≫
 その場に居る皆は顔を見合わせた。
 水原は不在。
 緊急。
 相手は牙黄。
 汐耶もイオも『Cernunnos』に関し牙黄が何を頼まれているか事情を知っている。
 …そして、メールボックスに鍵が掛かっていない。誰でも中を見る事は可能。それは文面が暗号化されていたら無理だろうが…開けるだけ開けてみる価値はある。
 誰からともなく、小さく頷き合う。
 メールを開いた。
 と、飛び込んできたのは暗号では無く素直な日本語文面。書かれていたのは――『Cernunnos』の名を持つ相手について。その相手についての警告。ゴーストネットの記事のこの名前から辿ったところでは単に何処にでもあるネットカフェチェーン店の一つからで特に問題はなかったように思えたが――『Ivory』こと牙黄の方で『Cernunnos』と言うこの名に微かな心当たりがあった為、そちらの側面からも念の為に探ってみたと言う。すると出て来たのが――凄まじく性質の悪いハッカー。そのハッカーが使う名は『Cernunnos』一つではなく『Puppeteer』やら『Cynical Hermit』やらと数があり、その正体は完全に不明。このハッカーは今挙げた以上に様々な名前を使いこなす。何処にでも入り込む。そしてまったくと言って良い程痕跡を残さない。様々な側面からアプローチを掛け、様々に他者を操り愉しんでいる。
 そのハッカーの存在が確認出来たのはもう二十年以上も前から。故に、個人であるのなら今となっては相当の年齢に達している事が想像出来ると言う。それでも変わらない。落ち着く気配もない。まるで善悪もわからない子供が好き勝手思う存分遊んでいるような傍迷惑な愉快犯ぶりはそのまま。だからこそ余計に、このハッカーは正体不明になっているとも言える。…やっている仕業からして、技術は神技的に極上、但し性格的には幼過ぎるくらいの子供にしか思えない――それが二十年以上も続くとなれば、個人では無く組織か何かの仕業なのかもしれない。ネット内の一部ではそんな風に囁かれてさえいる。
 ただ、五年前たった一度だけ、『Cynical Hermit』の名でこのハッカーの正体が割れそうになった時がある。あるが…その時も、不覚を取ったのは何かのっぴきならない事情でもあった為だけであるのか、少しふらふらと誤魔化し時間稼ぎしていたかと思ったら――結局、その名の如く追跡を嘲笑い、何でもなかったように恐るべき神業で忽然と消えてしまったと言う。
 調べる中でそこまで至り、牙黄は改めてゴーストネットに書き込みがあった『Cernunnos』を見直して――そちらの、あまりに無難過ぎる何でもない調査結果に、逆に寒気がするような意図を感じたと言う。『白銀の姫』を取り巻く現状を考えれば、これはわざわざ他愛も無い怪談の形に託し『白銀の姫』の存在を、呪いのゲームとしてのその名を知らしめる為書き込んだ――そうとしか思えなかったと。
 経験上、この手の勘は当たる。
 …ゴーストネットに書き込んだ『Cernunnos』とハッカーの『Cernunnos』、両方は同一人物だと牙黄は断定していた。そして――鍵かもしれない、だが、だからと言って無策でこちらを追いかけるのは危険だとも。
 貴方は初めからこれを知っていたのか、だから避けたのか、これを知っていたならば何故皆に何も言わなかった、いやそもそも貴方こそがこの『Cernunnos』ではないでしょうね――メールの中ではそんな詰問が並べられている。
 そこまで確認した、直後。
 見計らったようにまた別のメールが届いた。…今度の送り主は『Ice』。
 メールのタイトルは。
 ――≪Fw: Remember "Cynical Hermit"!≫
「…『Ice』って遠山さんの筈なんですけど。今は水原さんに言われて外で動いてる筈なんですが――」
 そちらのメールから今牙黄さんのメールで見た名前が出ますか?
 訝しげにイオが呟く。
 この『Ice』は水原新一の弟子に当たる高校生、遠山重史のハンドルネーム。そう知っていたイオがメールを開いたのだが――書かれていたのはそのタイトルだけで、メール本文の内容は転送元の送り主やら日時やらの転送時に付け加えられるデータが残っているだけでそれ以上は真っ白。空メール。
 ちなみにそのデータ部分、『From: Deus, To: Ice』とは書いてあったのだが。つまりこのメールの大元の送り主は『Deus』と言うハンドルネームの何者かだと。
「敢えて転送、なのに中身は空…?」
 汐耶もまた訝しげに呟く。
 シュラインもセレスティも、頭に浮かんだ疑問は同様。

 ――≪"Cynical Hermit"を思い出せ≫
 このタイトルだけのメールに、何の意味がある?


■接点

「…その『Cynical Hermit』が、つまり『Cernunnos』と同一人物で――『白銀の姫』の件をゴーストネットで一番初めに書いたのもその『Cernunnos』、そして水原さんがその『Cernunnos』である可能性――があるって事ですか?」
 ですがあの方二十代後半だったと思いますから…二十年以上前からそこまでやれるような現役ハッカーだったなんて無茶な気がするんですが。
 違うと思いながらも一応口に出してみる汐耶。と、どうでしょう、とセレスティが考える風の顔をしている。
「痕跡を残さない、神業のように消える…その辺りはちょうど水原さんの十八番になりますが」
 何処にでも入り込む、と言う辺りは――よくわかりませんけれど。
 水原さん、あんまり愉快犯な性格の方にも見えませんしね。
「この事、水原さんが居なくなった事と――関係あるのかしら」
 困惑気味に、シュライン。
 もしそうなら――水原もまた、注意しなければならない相手になってしまう気がするから。不在である事自体に意図がある可能性も考えておいていいだろう。誘拐?犯――と言うかセレスティ及び玖渚士狼&朔夜・ラインフォード曰くダリアらしい――とは共犯関係、そこまでは行かないにしても利害関係がある程度一致する関係である可能性もある。
 …ただそうは思っても、彼が絡んだ過去の事件を考えれば――他ならない水原がこの『白銀の姫』によって現在起きているような性質の事件に手を貸している可能性は無さそうな気はする。…そもそも『Ice』こと遠山重史から転送メールが届いている時点で――水原がこう言った事件を起こす側に立つ事を徹底的に厭う遠山重史が彼に手を貸している時点で、水原は事件の原因側には居ないだろう。少なくともこの空メールのタイトルが原因でそれが疑われる位置にも居ない筈だ。
 そうは思うが――ならばこの妙な情報の絡まり方は何だ。
 と、そこで汐耶が口を開く。
「ここに来る前ネットカフェで――これも丁香紫さんに伺った話なんですが、ゴーストネットで記事の投稿者名に『Cernunnos』の名を見た途端、水原さんやる気無くした――正体辿る気無くしたって」
 それで、この『Cernunnos』の調査を牙黄さんに頼む事にしたと言うお話だったんですよ。
「そうなんですか」
「…ええ」
「…水原さん、このメールボックスには敢えて鍵を掛けずに開けっ放しのままにしておいたように思えるのですが。文面を暗号にする事をメール相手に頼んですらいません。『白銀の姫』に絡むこんな場合で、彼のする事ですから――暗号化くらいさせておきそうなものだと思えるのに」
 まるで、私たち――ここに居るだろう者に見られる事が前提のように思えるのですが、どうでしょう?
 そうなれば、届いたメールから、今までの情報から――何か導き出せと言う事になる?
 自分に確認するように呟きながら、セレスティ。
 …水原新一宛て。『Cynical Hermit』。その名を思い出せとのタイトルだけ書かれた空メール。『Cernunnos』。牙黄からのメール。『Cernunnos』が水原当人ではないだろうなと厳しく詰問する文面まで。ゴーストネットの初めの書き込み。『Cernunnos』の名を見た途端水原はやる気を無くした――それは反射的に避けたと言う事か――無意識の内に忌避した――警戒していた訳、か?
 …水原が、根拠が無いながらも何故か確信を持って気にしていた――警戒していた相手。
 ふと浮かんだ名前を、シュラインは思わず、呟いた。
「…本宮氏…?」
 本宮氏が『Cynical Hermit』…?

 と。

「…なんで部外者がここまで多いのかな? ここって高等部だったよね?」
 唐突に、軽い声が降ってきた。記憶に無い声――それは、シュライン以外にとって、だが。PCルーム内に居た四人は一気にその声の主を注目する。不精髭に眼鏡の男。その見た目からそれなりに年を食っているようには見えるが、重くないその動きからして、悪戯そうに光る怜悧なその瞳からして、隠された元々の顔立ちからして――よくよく見れば、まだ大学生とも思える程に、若い。
「強いて言うならそっちの子は初等部の学章付けてるみたいだけど…それ以外の人たちは学生って感じでも先生って感じでもないよね。そうなると――やっぱりここで当たりか」
 納得したように頷き、その不精髭に眼鏡の男は――当然のように眼鏡を外した。
 まるで変装でも解くように。
 それだけで印象ががらりと変わった、気がした。
 唯一その相手と面識のできていたシュラインが、漸くその相手の名を呼ぶ。
「…本宮助教授」
 …大学部電子工学科研究棟の倉庫に居た筈の貴方が、何故そこに居る。
 その事自体が、すぐに呼べなかった――驚いた理由。シュラインが呼んだその名に、セレスティや汐耶にイオ――他の面子も少し驚いた。何故なら、彼当人が現れる直前にもその名はシュラインの口から漏れている。…『Cynical Hermit』の正体ではと思い付いた相手。言われ、皆もまた可能性は無くもないと思ったところ。そこまで導き出されたその時に――そこに現れるか。
 呼ばれ、本宮はもう一度頷く。
「シュラインさんでしたね。そうなると、この場所だ、って事により確信が増す――貴方は『アリア君の事をよく知っている人』になるから」
 つまりは、貴方がここに居ると言う事は――貴方と同じく『白銀の姫』について調べている者がここに居る――もしくは居た事にもなりそうだから。
「…実はここのところ、折を見て学園内を探していたんですよ。なるべく『Tir-na-nog Simulator』の近くになる場所で…PCの置いてある場所を。…どうも、『僕から全然見えない人が居る』んでね。この『白銀の姫』に関する外部の動き方…何処かで誰かが大局的な位置で音頭を取ってるんじゃないかって思えるんだけど…その誰かの顔が僕には全然見えてこない。でも不自然じゃないんだよ。ごくごく自然に居ない。でも誰か黒幕みたいな人が居ると考えた方が――色々と腑に落ちるんだ。だけど、いざ探ってみても誰も何も出てこない」
 で、そこまで隠れられるとね、余計に――気になって。
 ひょっとして、以前からの知り合いじゃないかって気までしてくるから。
 五年前に知り合った――僕にとてもよく似ていたあの子なんじゃないか、ってね。
「…五年前?」
「そう。その時にね、僕の使っていた名前の一つを譲ったんだ。とっても相応しい名前をね。で、その時の子くらいしか――ここまで隠れられるような子は僕には思い付かない」
 結構色んな奴を知ってるけどね。ここまで地味に繊細なのはなかなか居ない。経路をクラッシュさせてどさくさで逃げたり、すぐバレるような擬装しか出来ない奴ばっかり。
「…」
 五年前。
 それは――牙黄からのメールの中にあった、『Cynical Hermit』の正体が割れ掛けたと言うその時期と合致する。
 本宮はそこまで話すと、PCルームの中に入って来た。皆の居る場所――水原の使用していた筐体の見える位置にまで回ってくる。…制止は出来ない――制止する為の、説得力のある理由が俄かに見付からない。
 制止した方が良いと思うのに。
「――本宮助教授と仰いましたよね」
 皆が思ったその時、セレスティが声を上げる。…咄嗟に制止の意味も込めたのだが、効いたかどうか。
「君がその――『見えない方』を探すのはどのような理由からなのでしょう?」
「気になるからですよ。知り合いかもしれないんですからね」
「気になるから、ですか。…ですが君は『白銀の姫』のプログラム修復の為――お忙しい身なのでしょう。そんな本当に居るかどうかもわからない相手を探しているような余裕があるのですか」
「これもまた『白銀の姫』と関係ありますよ。…外部から見て――つまりは僕の方とは違った角度から一番詳しく『白銀の姫』を見ているブレインがこの子だと思いますからね…と。それは建前で」
 言いながら本宮はひょいと筐体――メールが表示されていた画面を覗き込む――覗き込もうとする。その刹那セレスティがメールボックス自体を閉じようと操作を試みた。けれど殆ど同時、すかさず本宮の手ががっちりとセレスティの手を押さえて止めている。…遠慮のまったく無い行動。メールボックスは――結局、閉じられていない。
 そしてそのまま――転送されたタイトルだけの空メールを確認し、本宮は嬉しそうににっこり微笑む。
「当たりみたいだ。ここに『Cynical Hermit』が居たんだね」
「いったい、何を仰っているのです」
「…て事は、貴方じゃない、か。それともわかっていてしらばっくれてるんでしょうかね――まぁどちらでも良いですが。こんなところに『Deus』の名前が――『Deus』からこんなに親切な形で警告が来るくらいの間柄なら、あの子は『機械仕掛けの神様』の子飼いって事になるんだろうし。だったらすぐに候補は絞れるからね。…たまには自分の足も使ってみるもんだ」
「…親切?」
 訝しげに、汐耶。
 と、本宮はそれを聞き皮肉げに口の端を上げて見せた。
「それは親切でしょう? わざわざ直通じゃなく無関係の別人を経由させて、誰より大嫌いな相手が絡んでる事を教えてあげてるんですから。それも最低限の言葉だけを使って余計な事は書かずにね。『Cynical Hermit』、この名前だけ出せば全部わかる。その上に思い出せと命令形。ならば気付かぬ訳がない」
 ――『この名前だけはあの子にとって、僕と自分と両方を指す』。
 あっさりと言ってのける本宮のその科白に、シュラインは目を細めた。
「じゃ、やっぱり貴方が――」
「その通り。僕があの子の前に『Cynical Hermit』を名乗っていた者ですよ」



「…その反応って事は、やっぱり大方察してるみたいだよね?」
 再びあっさりとそう告げ、本宮はセレスティが筐体の前から退かしていた椅子に近付き、悠然と腰掛け足を組む。…当然のような仕草で、その場に居座る。
「残念ながら僕の力で作り出せた訳じゃないけど――今の『白銀の姫』の事、知ってた事も利用してた事も認めるよ。あれだけの奇蹟を知ってしまったら放置できる訳がないからね」
 そのままで、本宮はその場に居る四人に向け、続ける。
「アリアンロッド、ネヴァン、マッハ、モリガン、ルチルア――ゼルバーン、クロウ・クルーハ。…知った時には震えたよ。基本的な性格は浅葱君が設定したものだったけど、それだけでは到底有り得ないだけの知能を情緒を身に付けていた。本来の『Tir-na-nog Simulator』程度の演算能力ではこなせる訳が無い程の精密さと繊細さを持ってね。そう、もう人間と見紛う程の」
 指折りNPCの名前を――それも特に個性ある自我を持ったNPCの名前を挙げ、嬉しそうに続ける本宮。その姿を見、シュラインが口を開く。ややきつい口調になってしまったのは――仕方無いだろう。
「だったら、アリアちゃんが来るまでアクセス不能だったと言うのも――」
「半分嘘で半分本当。…IO2が来るまでは――僕だけは普通にシステムにさわれていたよ。『Tir-na-nog Simulator』は僕が一人で居る時は抵抗しなかった。誰か他の人が一緒に居ると、アクセスを拒絶した。あれだけの人数が同席している中でアクセスを許したのは、アリア君が来てからが初めて」
 そう、そのアリア君にも驚いたな。姿を見ただけでも驚いたのに――事情を聞いたらもうね。アリアンロッドがそこまでする――そこまで出来るとは思わなかったから。それに、こちらの世界に来たあのアリア君をよく観察させてもらえばね、既に彼女はアリアンロッドとも違うんだ。環境の違いなのかな? 存在する場所に対するアドバンテージがあるか…主導権を持っているかいないかの違いもあるかもしれない――とにかく、明らかに違う形に成長してる。…アリア君に会いに来る人たちの――多分、貴方たちのおかげなんだろうね、きっと。
 そこまで独白し、有難う――と、何の衒いも無く、本当に嬉しそうにあっさりと礼を言ってくる本宮。
 さすがに、面食らった。
 無策で追いかけるのは危険だ――正体を辿ればそこまで言われる程の『性質の悪いハッカー』とやらが、ここまであっさり事件への関与を認めた上で――そう来るか。
「じゃあ、あれは…」
 アリアちゃんの心に刺さるような言葉をわざと聞かせていたその理由は。
 思わず上げられたシュラインの声。…先程大学部に行った時。『白銀の姫』のプログラムをどうしているか、まだ仮面を剥がす前の本宮助教授に聞いた時――その後。浅葱君が居ればなと、アリアにわざと聞かせるような言い方でこれ見よがしにぼやいて見せていた。…アリアも浅葱の名にびくりと怯えたような反応を見せていた。
 本宮は苦笑する。
「優しい優しい貴方たちじゃ、どうせ彼女に負の感情を教えてあげるつもりはないでしょ?」
 だからわざと意地悪してた訳。
 世の中聖人君子ばっかりじゃないからね。このくらいならちくちくやっても許容範囲かなって程度だけ敢えて僕がやってみてただけだよ。浅葱君の死は彼女にとって相当重い試練になる。でもそれにも耐えられそうなんだから――あの子は凄いよ。
 育て甲斐がある。
「…」
「それが、理由ですか」
 ぽつりと汐耶。
 …アリアのような、NPCの自我とその成長を見たい。それが、『白銀の姫』の事を知っていながら止めようとはしなかった、それどころか利用した理由か。
「それ以外の何があると思うのかな? …ああ、IO2みたいにもっとそれっぽい御大層な大義名分掲げないと駄目かな? もしくは虚無の境界みたいに世界の破壊の為にとでも言った方が説得力あるように聞こえる?」
 何でもないように本宮はそこまであっさり言う。
 …それらの存在まで、承知か。
「僕は可愛い可愛いあの子たちを本当の意味で『生きられるようにして』あげたい、それだけしか考えてないんだけどね?」
 ま、とにかくそんな訳で、僕の出来る程度――開発者権限でのログインと確率の操作だけ、暗躍…とも言えない程度の簡単な介入だけ、やらせてもらってたんだけどね。
「…ならば、今わざわざ我々にそれらの事を明かしているのはどう言う理由でなのでしょう?」
 君がこの事件を起こした元凶――少なくとも元凶になる一つの要因だと言うのなら――我々が君を放置できるとお思いですか。
 NPCに生まれた自我を育てる、そこまではまぁ良いでしょう。ですがその経過で――人間をゲームの中に取り込んでしまう事を許し、現実世界へゲーム内の世界を浸食させる事すら許してしまった――そこを看過出来る程我々はお人好しではありませんが。世界が壊れては日常生活に支障が出ますし、我々の身内も――直接迷惑を被ってしまっているんですよ。
 セレスティの厳しいその言葉に、本宮は静かに頷く。
「でしょうね。…見逃してもらおうなんてそこまで甘い考えはないですよ――ただ、ここで貴方たちに言うのなら少しの猶予は頂けると思いましてね。…力関係からしてラスボスとまでは言えませんが、一応僕が悪役だったって教えた方が皆さんにも都合はいいでしょうから交換条件みたいなもんです。って言ってもIO2の連中にいきなりそれバラしたら殆ど状況わかってない癖に先走って僕の身柄押さえに来るでしょうからそれは困る訳で」
 そうなったら今後の対策の立てようがなくなりますから。
「…だからこそ『Cynical Hermit』を密かに探してた訳なんですけどね。…この子が首突っ込んでるとなれば――他の連中に話すより余程気心知れてる相手ですから、こちらも打ち明け話はし易い。それにあの子は僕をとことん嫌ってる――つまりとことん嫌えるくらい僕の事を知ってるから、その事が逆に皆さんに対する信用にも繋がると思いましたしね。あの子の性格からして――あの子の周りに居る人たちなら、ある程度融通が利いてくれそうだと思っただけですよ」
「…では、君は今は――この騒ぎを止める側に回るつもりだと?」
 セレスティの声に猜疑が混じる。…それは当然。
 が、本宮はそれも気にせずまた当然のように頷いた。
「ま、そんなもんですね――このままだとじきにクロウ・クルーハが取り返しの付かない事をするだろうから、まずはそれを止めなきゃならないと思ってますよ」
 いや、クロウ・クルーハと言うより――黒崎潤って言った方が通りが良いかもしれませんね? 前回の不正終了前過去世界の最期の瞬間クロウに憑かれた最後の勇者の名前なんですが。
 今は…クロウに憑かれたと言うよりもう融合して同化してしまってるんですけどね。
「――!?」
「――な」
 …『クロウ・クルーハ=黒崎潤の可能性』。
 実際、イオ以外のこの場に来訪した三人は少し前にアスガルドでそんな話もしてはいたのだが――今、それだけでは済まない聞き捨てならない事まで本宮は言わなかったか。
「――…前回の不正終了前、クロウに…憑かれた?」
 茫然と呟くシュライン。
 にも拘らず、本宮は相変わらず平然と肯定している。
「うん。当時、実際の演算処理過程直接見てたんだけど、クロウが自発的に行動して黒崎君のデータに融合掛けててね。何を思ってかは想像に頼るしかないが――『自分自身のままではどうにもならない』と判断した事があったんだろうね。それで最後の瞬間、自分の前に最後まで立ちはだかっていた勇者と融合した。プログラムの通りに攻撃し殺そうとする代わりにね。そして次の世界――今のアスガルドでは融合したそのままで存在する事が叶ってる」
「じゃあ――」
 黒崎くんの様子が、ずっと何処かおかしかったのは。
 その身に――その意識に、クロウ・クルーハが融合していたからなのか。
「…どうも、貴方たちにも心当たりはあるみたいだね。だったら僕が言いたい事も察してくれそうだけど」
 僕が今ここに来て貴方たちに打ち明けた本当の理由は、そこだ。
「何を思ってかは想像に頼るしかないが――今のアスガルドでの黒崎君の――クロウの行動を逐一見ていれば、その想像は容易に出来るんだよ」
 …つまりは自我が生まれて結果、信じられないくらいイイ子ちゃんになってるって事だ。
 自分の存在が悪として造られた事自体に、怒ってる。でも、怒っているのに――目の前の、今にも自分に止めを刺そうとしていた勇者すら殺さなかった。
 そして――創造主を、自分の親を――浅葱君を憎む事を選んだ。
 見付けたら多分殺しに行くだろうね。クロウなら目的の為に力の行使は厭わない。
 …ただ、元々の性格設定からの行動予測が――女神や他のNPCと違ってクロウの場合は特に難しい。黒崎君と融合した事が関係してるのかもしれない。…行動予測がし切れないんだ。
「どう出てくるかわからないからその為に一応、確率操作して安全弁も作っといたんだけど、それで効くかどうかは出たとこ勝負にするしかないからね」
 本来の邪竜の巫女がその役目を放棄している――って言うかクロウ自身に騙されて誤魔化されてしまっている以上、その巫女としての役目は別の誰かに託すしかないから。さすがに完全に同一の存在を別に作れはしないけど、ただの冒険者のデータでも…性質を邪竜の巫女にかなり近付ける事は可能でね。やるだけやってみてはある。
 ゲームシステムに則る限り、邪竜の信用を得られ、その上で邪竜に物申せるのは邪竜の巫女だけだから。
「…そんな事まで」
「真咲誠名――真咲さん、って言う人ね。商人風の男装してて、ショットガン持ってるボーイッシュな女の子。取り込まれてる冒険者の中で一番やり易かったから確率いじってそう設定させてもらった。好都合な事に行動からしてただ遊びに来てるって風でも無かったし、それで冒険者の立場ならクロウの行動を黙って見過ごしはしないでしょ。中々、こう言ったまともじゃない事柄に詳しそうな子でもあるみたいだしね。…出来そうだったらこちらの意図を教えた上で合流して動いてやってもらいたいんだけど」
 黒崎君の名に反応するって事は、貴方たちは今のアスガルドにも行ってるんだよね?
「…本当に、本気なんですね」
「僕はいつでも本気だよ。IO2が来る事を許したのだって――『Tir-na-nog Simulator』が壊されたら元も子も無くなるのはわかってるから、守ってもらおうと思っただけだし。…僕個人ではこう言った場面で役に立ちそうな拠点防衛能力は全然無いし、当然戦闘能力も無い。大学の助教授なんて立場では荒事向けな人海戦術なんか使えないからね」
 それに、ゲームプログラム自体の不正終了の方――穴は取り敢えず現在進行形で皆で塞いでるけど、これもそろそろ本人叩き起こしてやらせた方がずっと効率良いとも思えて来たし。だから『Tir-na-nog Simulator』の方から――アリア君のところから離れてみたってのもあるんだけど。
「…え?」
「いや、向こうには――『Tir-na-nog Simulator』の方にはアリア君とか協力してくれてる子たちがちゃんと残ってるし、アスガルド側との繋ぎならここからでも貴方たちでも付けられる。アヴァロンの王墓内にセーブポイント設定してある『記録の碑石』も渡しておけるし、入ったらすぐ飛んで欲しいんだ」
 ――んで、浅葱君を叩き起こしてくれれば、今以上に動きようはある。
「…ってあのそれ」
「うん。浅葱君は実はアスガルドの中に居る。今のところアリア君に教える気は無いけどね」
「…アヴァロンの王墓――浅葱君」
 セレスティの確認するような呟きに、本宮は頷いた。
「多分…IO2の連中が言ってた核霊ってのになるんじゃないかって思いますよ。…アスガルドの中に居るのに、浅葱君だけは殆どプログラム中のデータの形では存在してませんでしたから。魂だけって奴なのかもしれない」
 だから、余計危ないと思いまして。
 ――核霊が殺されたら、消されたら、その異界は壊れるんでしょう?
 だから僕も、今更ぶっちゃけてお恐れながらと貴方がたの前に出て来た訳で。
 異界の核霊とやらになる『創造主様』をクロウに殺させてしまったら全部が全部台無しになる事は簡単に予測が付くから。ここまで育った可愛いあの子たちの自我も何もかも。
 そして同時に、今異界が壊れたら取り込まれた人間は不正終了を待つまでも無く取り込まれたまま消滅する。現実世界への浸食だってどうなるかわからない。それは浸食が止まって丸く収まる可能性もあるでしょうが――その逆、取り返しが付かなくなる可能性だってある。
 …『こちらの世界』ではわからないのが『向こうの世界』の理なんですから。
 なら、僕と貴方がたの利害は当面、一致するでしょう?

「ブリテンならぬアスガルドの危機に折角甦ってくれてる『アーサー王』を殺させる訳には行かない――皆さん、そうは思われませんかね?」

【呪いに因らぬ不在〜神聖都学園高等部PCルーム 了】


×××××××××××××××××××××××××××
    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
×××××××××××××××××××××××××××

 ■整理番号/PC名
 性別/年齢/職業

 ■1449/綾和泉・汐耶(あやいずみ・せきや)
 女/23歳/都立図書館司書

 ■4146/玖渚・士狼(くなぎさ・しろう)
 男/18歳/大学生/バーテンダー

 ■2109/朔夜・ラインフォード(さくや・-)
 男/19歳/大学生・雑誌モデル

 ■0086/シュライン・エマ
 女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

 ■1883/セレスティ・カーニンガム
 男/725歳/財閥総帥・占い師・水霊使い

 ※表記は発注の順番になってます

×××××××××××××××××××××××××××

 …以下、公式外の登場NPC

■於、オープニングから
 ■水原・新一(Aqua/...Cynical Hermit)
 ■ダリア

■於、神聖都学園
 ■イオ・ヴリコラカス
 ■本宮・秀隆(Cernunnos/Puppeteer/...Cynical Hermit)

■於、草間興信所(=綾和泉汐耶様個別部分に登場)
 ■鬼・凋叶棕
 ■エル・レイ
 ■更科・麻姫
 ■真咲・御言

■於、ネットカフェ(=綾和泉汐耶様個別部分に登場)
 ■香坂・瑪瑙
 ■双葉・時生
 ■店長
 ■鬼・丁香紫

■於、ネット経由&名前だけ
 ■遠山・重史(Ice)
 ■牙黄(Ivory)
 ■Deus/未登録。水原新一の職業説明欄に記載の『元教え子の社長』当人。=『機械仕掛けの神様』。
 ■真咲・誠名/邪竜の巫女のコピー的能力設定がされてしまった冒険者。本宮秀隆の干渉が原因と判明。
 ■幻・美都/三下忠雄にくっ付いてって女神モリガンの勇者中。名前が引き合いに出されただけ。

 …場面毎記載。無駄に多くなりました…。

×××××××××××××××××××××××××××
          ライター通信
×××××××××××××××××××××××××××

 皆様、発注有難う御座いました。
 今回は…時期を考えた結果、少々先に想定していた事まで詰め込んでしまいましたので…文字数がまた(汗)只事では無くなっている気がします。…なのでライター通信は極力省略の方向で…。
 取り敢えず、某様にプレイングで本宮側本格的に突付いて頂けた事もあり(実は今回のOPではダリア側だけしか突付いて頂けないかと思っていたので嬉しい誤算でした)、次回募集相当分で手前で広げた風呂敷分だけは何とか畳めそうなところまで持って来れました。
 上手くやれば期間内にまともに決着出来るかもしれません(おい)
 て言うかその辺り考えたら思いっ切り『続く』になってしまいました。何だか当方の発言の信用出来なさ振りがどうしようもないくらいに露呈しております(汗)

 今回は玖渚士狼様と朔夜・ラインフォード様が全面共通、他の方が共通と個別のある形になっております。…宜しければそれら個別部分含め皆様の分を見て頂けますと、今回の筋はまた違った形に見る事ができるかと思われます。

 少なくとも対価分は楽しんで頂けていれば幸い。
 お気が向かれましたら、次回も宜しくお願い致します(礼)

 …ちなみに、次回(上手く行けば当方の決着編)の舞台は現実世界とアスガルドの両面になると。
 そちらのOPその他用意はできるだけ早くする予定です。

 深海残月 拝