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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


■悪魔の指紋−研究室−■

「へえ、これ全部あんた一人で育ててるのか?」
 この研究室に訪れたときには、まるきりやる気を出していなかった草間武彦だが、値段もいいし、前回お世話になったこともあり、その礼も兼ねて、碇麗香からの依頼である「今話題の美味しい魚の養殖所」の取材をひとりで引き受けたことを、今は後悔していなかった。
 何故ならその手には、その研究所からもらった、新鮮な魚と作りたての燻製が山ほど入った袋があるからだ。
 零がさぞかし喜ぶだろう。
 それに、この量だと親しい奴らにおすそ分けしてもかなりあるし、当分は様々な種類の魚料理が楽しめるだろうなあ。
 そんな内心の武彦に、「どうかしましたか?」と案内係を引き受けた、「Aブロック」の担当である安達(あだち)という若い研究員が振り返る。
「いや、別に。しっかしすごいな。季節ごとの魚をそのまんま新鮮そのものの状態に養殖してるなんて。相当な設備なんだろ?」
「ええ、ぼくの家が全面的に協力していますから」
「というと?」
 安達の家は、当主こそこの若い青年であるが、彼ひとりに遺された遺産が相当な額だと一時期騒がれたほどの財閥だったらしい。
「小学生の頃から、生物の研究は大好きだったんです」
 にこりともしない安達は、そう言って、無表情に武彦を見返した。



 ぱしゃ、

 地下には不思議な光景が広がっていた。
 草間とかいう探偵が帰って行ったから、ようやくこの場所に。
 いつもの場所に、来ることができたというのに。

 ひとり たりない

 ひいふう、と檻の中を数えていた安達は、いらだたしそうに爪を噛む。
「どこに、いったんだ。まだ『未完成』なのに」
 不思議な光景───自然界にある森そのもの、しかも夜の風景をそのまま再現したかのような。
 その中の湖を、白衣を着た服がぬれるのもかまわずに、安達は進む。
「キヨナリ! どこに行った! キヨナリ!」
 薬を、飲ませすぎたのか?
 いや、薬の量は間違っていない。ちゃんと「ひとりひとりに見合ったデータ」によって投与しているのだから。
「外に出てでもいたら、大事だ───」
 ぶつぶつとつぶやきながら……安達は、地下を。
 徘徊し続ける。



「はあ? んなもん、俺が知るか。俺は強い霊力なんざ持ってないしな。そっちで誰かが落書きでもしたんじゃないのか?」
 武彦が朝っぱらから、パジャマ姿のままで携帯電話に向かって、ふああとあくびをする。
 その言葉を聴いて、電話の相手はなにやら怒鳴りつけたりまくしたてたりしたようだ。武彦の首がすくむのを見て、思わず、朝食の用意をしていた零も身をすくませる。
「ああ、分かったよ。とにかくその、なんだ。ブツを送ってくれ。あー分かってるって、ちゃんと解決までするから、そうがなりたてるなよ」
 まったく、とつぶやいて武彦は言うだけ言ってプツッと切った電話を見下ろす。
「相変わらず、すごい剣幕ですね、麗香さん」
 電話から漏れた声を聞いていた零が、苦笑する。
「たってなあ……俺ホントに、あの昨日の研究所で妙な気配なんか感じなかったぞ? 取材から帰ってその足で土産までもってってやったってのに、あいつ」
 そう言っているうちに、FAXが送られてくる。パソコンのほうにも、とりこまれた「ブツ」がメールで送られてきた。
 それは、赤い文字の書かれた、昨日武彦が撮ったばかりの研究所の写真の何枚かだ。
 どれも、赤い文字、同じ筆跡に見える。

 タスケテ
 クスリキライ
 ボクハボク

 かろうじて読めるのは、そんな言葉だ。
 そこへ、唐突に興信所のブザーが鳴った。
 出てみると、警察である。
「ここの主は草間武彦さん。あなたで間違いありませんか?」
 急にそんなことを訪ねられ、「ああ、はい」とねぼけたようにこたえると、つい、と警察官のひとりが身体をどかした。
 それで、武彦の瞳に写ったのだ───興信所の扉の前、そこに、水の軌跡をつけて全身びしょぬれで倒れている、患者のような服を着た、ひとりの───すっかり髪の毛を剃った、高校生くらいの少年の遺体が。
「この少年に、心当たりは?」
 まったく、ない。
 そうこたえる武彦は、それから何時間も朝食抜きで、
 警察官達にアリバイを話さなければならなくなり。
「最近この辺で、受験生ばかりが行方不明になっています。この少年はその一人だと思われます。この少年が、あなたとかかわりがあるようだと詮索してしまいましたが、どうやら違うようですね。失礼しました」
 すっかり参ってしまった武彦は、二つの事件を解決しよう、と、草間家の安泰のために心に決めたのだった。
 つまり、

 麗香のもとへ届けたはずのまともな写真に、いつの間にか赤い文字が心霊写真のように入っていたこと。
 そして、最近この一帯で多発しているという行方不明の少年少女たちの行方探し。

 そのために、武彦は協力者を至急、朝食を食べつつ、募ったのだった。



■黒い骨■

「……やな感じね」
 シュライン・エマはくさり気味の武彦を前に、真剣な様子だ。
 テーブルの上には、例の赤い文字が入った写真そのもの、そして武彦が研究所からもらってきた、まだ一匹も使っていない魚の燻製が包みに入っている。
「やはり妥当な線ですと、その研究所が怪しいということになりましょうねぇ」
 この写真───いつの間にか赤い文字が浮き出ていたことといい。
 零からお茶をもらい、「どうも」と折り目正しくお辞儀をしたのは、一色千鳥(いっしき ちどり)。その隣で腕組みをしているのは、近所でも行方不明者が出ていると噂になっているという、由良皐月(ゆら さつき)である。
 彼女は興信所に入る前、少年が亡くなっていたという場所───たくさんの花束が供えられてあったからすぐに分かった───に黙祷してきた。ふつふつと湧き上がる怒りを、抑えている。まだ、今は。
「その死んじゃった子とか行方不明の受験生達の共通点……というか希望進路だとか気になるな」
 そう言った途端、興信所のブザーが鳴った。零が開けると、羽角悠宇(はすみ ゆう)と初瀬日和(はつせ ひより)がそろってやってきた。聞くと、それぞれに家を出たのだが途中、一緒になったのだという。
「こんにちは。学校の父兄面談で親が集まった際に母が行方不明事件の噂を聞いてきて、自分にもやがて受験があるからと随分心配されて……。それ絡みで草間さんが災難だったと伺ったので……気になって来ました」
 とは。席を勧められて礼を言い、座る日和。
「学校で受験生の行方不明事件が噂になっているので気になっていたら、草間さんが容疑者扱いされたっていうからさ」
 こちらは、悠宇。
 そしてもうひとり、パソコンを操る武彦の隣でモニタに映し出される裏情報を見ている、菊坂静(きっさか しずか)。今回の事件、受験生が被害者だというのなら、塾や学力調査の研究所施設でモニター経験で接点はないのかと目をつけたのだ。いちいち行くのは時間のロスだと武彦に言われ、なんの伝手だか分からないが電話一本で、武彦のパソコンにこうして裏情報が流れ出ているというわけである。
 その間に詳しいいきさつを、日和と悠宇にシュラインが話して聞かせる。
 皐月が武彦を振り返る。
「髪の毛を剃って患者服なら実験云々も想像しちゃうから体質なんかも知りたいけど、それは無理? この文字と行方不明者、特に死んだ子の筆跡も照合頼めない?」
「となるとまた警察に連絡とらにゃならんわけだが……」
 武彦がごちる。相当、昨日の朝の出来事で警察嫌いになっているらしい。
「昨日までは容疑者だったものね」
 苦笑いするシュラインに、「昨日の朝まで、だ」と妙なところを誇張する武彦。
「菊坂さん、何か分かりましたか?」
 日和がたずねると、静はマウスをスクロールしながら「うん」と微笑んだ。なにやらつかめたらしい。
「写真に浮かび上がった言葉が気になるんです……ここ、クスリってあるでしょう」
 日和は写真に目を戻す。
「私も小さい頃はよくお世話になりましたけど、たとえ必要でも薬は嫌な物ですし、物によっては意識レベルが下がったり……それこそ『自分が自分でなくなる様な』作用の物もありますから。興信所の前で亡くなってた方の身体に、何か薬の痕跡の様な物は残っていなかったでしょうか? 検査にかからないような高度な物ならすり抜ける可能性も高いですけど……。注射痕とか、なにか『自然でない』痕跡はなかったでしょうか」
 ───人の手が加わったものは、痕跡を残さないことはないのですから。
 そんな彼女に、改めて「強いな」と思う悠宇。こんなところを見ていても、分かる。本当は日和は、悠宇よりもはるかに芯が強いのだ。
 頭は日和のことを考えつつも、自分も考えを述べる。
「坊主頭で患者服って……なんか人体実験みたいで嫌な感じだ。
 行方不明事件の該当者は受験生なら、塾や学校で長期欠席してる奴の情報が集められると思う。同じ塾に通っていた、何か特殊な講義を受けた、まったく共通点がないとは思えないからそこから手繰っていけるはずだし。それと……草間さんが研究所に出かけた後に例の遺体が見つかったわけだろ? その研究所が無関係のはずはないから、その背景も調べたら何か出てくると思う。大きな研究所を維持するには経費もかかる、となると資金の流れを追うことでそこに強い影響力をもつ者も特定できるし、その背景を調べる事で研究所を隠れ蓑に何をしているかも探れるんじゃないか? 何か海がらみじゃないかって気はするんだけど……写真の文字『タスケテ』がひっかかるんだ。誰かが助けを求めてる、急がないと、って」
「写真の文字、誰が何で書いたのかなとも思うんだけど……血なのかなって」
 気になる部分だけをプリントアウトしながら、静。
「書いたのが亡くなった人じゃないのなら助けを求める人はまだ一人以上いるってことだよね……一見したらまるで研究所で人体実験されてるみたいに見えるけど……あ、草間さん。被害者の名前と死因は結局分かってるの?」
「ん? ああ。名前は米倉雅也(よねくらまさなり)、5月21日生まれの18歳。神聖都学園高等部三年生。死因は窒息死」
 ほぼ記憶を棒読みにする武彦のくさりようもなかなかのものだが、死因の部分で全員が静まり返った。
「窒息死? 呼吸が出来なくなって……っていう? 溺死とは違うのか?」
 びしょぬれになっていたのに窒息死。
 分からなくて、悠宇が言うとおり、溺死のほうがまだ納得できる。
「どちらにしても、少年───雅也くんが濡れていたことと前日の武彦さんの行動から、私もやっぱり研究所が怪しそうだなって思うわ。写真の文字や、所長さんが言っていたという……魚限定じゃなく生物研究が好きっていう言葉が、どうしても人体実験を連想してしまって。亡くなった子、きっと武彦さんが助けてくれるって感じたのだと思うの」
「それで俺のあとをついてきたってことか? でもそれにしても足が遅いな」
「行方不明になった少年少女は、草間さんが取材に行かれた研究所に依って拉致され、実験の為に薬を飲まされて、魚になってしまったと。そう考えてみたら、まだ実験段階であった雅也さんが『窒息』しても、納得できますけれども」
 黙って写真と燻製とを見つめていた千鳥が、そんなことを言った。
 そうか───確かに魚になる前の段階であれば、呼吸方法だけ魚と同じであれば、それはおかしくない。魚は陸で呼吸ができないのだから。
「まあ、何が目的であるのか、それが全く分かりませんが」
 お茶を飲む千鳥に、シュラインが目を向ける。
「ともかく確証掴まなくちゃだし、私は聞き込みをしてみるわ。一色さん、その写真や燻製から何か読み取れるようならお願い」
「もとよりそのつもりで出してもらいましたから」
 うなずく、千鳥。
「聞き込みって、どこに何の? 団体行動とらないと、そんな胡散臭い研究所がバックにあんなら途中で研究所に連れてかれるかもしれないぜ」
 武彦が心配そうに目を向けると、シュラインは、受験生限定理由を調べたいのだと言った。
 下校時間が早い、逆に勉強で帰りが遅い、見学、講習、本屋や店、塾、通学路、薬局等や使用薬関連等行方不明者内共通点有無をご家族や友人等に聞込みを。また足取り途絶えた時間、場所等も確認したい。研究所周辺で門の開閉音や車の音等で研究所出入状態等や所長について等の聞込みも。
「分担したほうが早そうだけど、二組に分かれる?」
 静が言う。
「私も手伝うわ」
 皐月が手を挙げると、まるでそれが合図だったかのように興信所の電話が鳴った。
 武彦が出ると、警察からのようだ。一応被害者扱いしてしまったし、協力したいと武彦のほうから申し出ていたため、何かの連絡をしてきたらしい。
 カチャ、と受話器を置いた武彦は、首をこきこき鳴らしながら言った。
「えっとな。その雅也って少年、死因が分かったすぐあとに『跡形もなく消えた』んだそうだ。こう、砂みたいになって、ざーっと。ついでに写真コピーしたのを送っておいたんだが、筆跡は彼のものとは微妙に違うらしい」
 消えた……?
「なんだか分からないことばかりですね」
 日和の真向かいで、千鳥が手を動かした。
 その間に、静が戻ってくる。
「面白いものを見つけたよ」
「面白いって?」
 千鳥が写真や燻製を「調べて」いる間、皆の視線が静に集まる。
「色々な塾や学校の成績のデータなんだけど、個人的に時間的な差はあっても、ところどころに、学力が異常に上がっている生徒達がいるんだよ。でも多分……そのあとに行方不明になったのかな、それ以降のデータはその生徒達全員に限り、なくなってる」
「……もし想像通りの被害なら、他の被害者達が手遅れになる前に助けたいわね……」
 シュラインの言うことは、もっともだった。
「一色さん、どうしたの? 汗びっしょりだわ」
 皐月が千鳥に気づいたのは、そのときだ。しかし千鳥は落ち着いた様子で瞳を開け、ふう、とため息をついた。
「……大丈夫です。でも、どうやら魚がその少年少女、というわけではなさそうですね。これはただの魚の燻製です、食べても大丈夫ですよ。しかし写真のほうは───」
 そこで彼は、見えたことをそのまま言った。
 まず、月の光のようなものが射す湖の中が見えた。そこにはたくさんの檻があり、鍵すらかかっていない。しかしそれはコンピュータか何かで統制されていたのだろう、何かのはずみでひとつの檻が開き───泳いで湖の上に出ると視界が変わった。夜の森に、まぶしい人工で作られた月が高い天井に浮かぶ。外から───「外部」の人間の声。次第に苦しくなる息も忘れ、駆け出したように視界がどんどん後ろに流れてゆく。

 たすけてくれる そとからのにんげん ぼくを ぼくたちをたすけてくれる きっと

「その思念を感じたときに、ばん、と私の能力を遮断するように何も見えなくなったんです」
「……誰かが邪魔してるのかしら」
 言ったシュラインは、ふと、普段使っていない、狭くはあるが客間のような物置のような部屋に視線を投じた。
 今、───何か、聞こえた……?
 ゆっくりと、シュラインはそちらへ近づいてゆく。耳を、すませた。異様に耳のよいシュラインのその能力ともいうべきものは、意識すればそれなりに近ければ心音すら聞こえる。
「どうした? シュライン」
 武彦のいるほうには。
 皐月、静、日和、悠宇、千鳥、そして零が全員いるはず。
 じゃあ、
 これは、なに───?
「武彦さん」
 向きを変えず、彼女は緊張した声で言った。
「誰か、この中にいるわ」
 心音が、聞こえるの。
 改めて、空気に緊張が走る。そんな……今まで気配すらなかった。物音もなかったのに。
「いるって、いつから」
 思い切ったように、武彦が駆け寄るようにして、その部屋の扉を開けた。

 かしゃん

「「「「「「!」」」」」」
 軽い音をたてて。
 「それ」は、這ってあらわれた。
 それは、

 ───黒い骨。
 黒い、骨だけの……人間。
 理科実験室にある骨だけの人型を、そのまま持ってきたような……けれど、確実に「それ」は生きていた。
「こ、こいついつから」
 シュラインをかばうように立つ武彦だったが、「待って」と背後の彼女にとめられた。
「何か、言ってる」
 何か……とても、小さな声で。
 訴えている。
「武彦さんや零ちゃんが昨日、警察の人によばれていった隙にもぐりこんだらしいわ。でも、動けなかったのだって」
 声は小さすぎて、シュラインにしか聞き取れない。
 どうせなら、声も復元したほうがいいだろうか。
 シュラインは、伝えつづける。
「『でも、わたしももたない。キヨナリはきえたから。かたわれがきえれば、わたしもきえてしまう。もとの、』……え?」
 聞き返した、とき。

 かしゃぁん───!!

 日和が小さく悲鳴をあげる。かばうようにして、悠宇は「それ」を見つめた。
 黒い骨の人間は、
 力尽きたように。
 全員の見守る中、崩れて───砂のようになり、
 消滅した。
「……今の子」
 シュラインが、ぽつりと言った。
「名前を、言ったわ。『もとの、三嶋聖美(みしま きよみ)にもどる。だからしぬんだわ』って」
 何もかもが、分からない。
 その後二手に分かれ、情報収集をすることにした。聞き込みのメンバーは、次のように決まった。
 受験生達方面は、シュラインと皐月、日和。
 危険そうな研究所方面は、能力的にも力的にもと考慮して、静と悠宇、千鳥。
「武彦さん、念のために、詳しい医者や研究者にも連絡を取っておいてちょうだい。何かあり次第迅速に対応可能なよう、手配だけは事前にしておいたほうがいいと思うから」
 出て生きざまのシュラインの台詞に、武彦は「分かった」と、さっきよりはかなり真面目な顔でうなずいたのだった。

 ◇

 けれど。
 数時間後、彼らは。
 否、
 彼ら6人も、また。
 何者かの手によって、
 行方不明になった。



■青い異種細胞■

 何が起こったのだろう。
 確かに研究所に行って、周囲の建物の人間に聞き込みをしていたのに。
 あの時、そう。
 聞き込みを終えて、戻ろうとして一瞬人通りがなくなった。
 そのときに、突然に身体が熱くなり、日射病で倒れる寸前のようになって───そこから先、覚えがない。

 めをあけると、真っ暗だった。
「うわ、縛り上げられてる」
 真っ先に声をあげたのは、悠宇だった。彼の言うとおり、両手両足を縛られていた。けれど肝心の悠宇の様子が見えない。けれども、どうやら「三人とも」同じ場所にはいるようだ。
「袋にでも入れられているみたいですね」
 千鳥の声に、悠宇のほっとする気配。ひとりではないと分かったからだろう。
「菊坂さん、あなたはこの状況を脱する能力か何か、ありますか?」
 千鳥の問いに、周囲の気配を探っていた静は、「残念ながら、ないんです」と、見えないと知りつつかぶりを振った。
「聞き込みでは安達だけ研究所に寝泊りしてるってこと以外、あんまり分からなかったよな」
 悠宇が思い返す。
 日和たちのほうは大丈夫だろうか。身動きしたとき、袋ごとずれたのだろう。悠宇の袋の足元だけ、「濡れた」。
「つめてっ」
 思わず声を上げた悠宇に、千鳥と静がその声のほうを向く。
「なんか水が……水たまりでもあるのかな、足が濡れた」
「水たまり……?」
 静が、重複する。
「もしかしたら、ここは───私が『見た』、あの夜の森かもしれませんね」
 千鳥が、言った。



 それからややもせず、カツカツと靴音が聞こえたかと思うと、6人は袋から投げ出されるように外へと出された。
「やっぱりあんただったのね」
 にらみつける皐月の視線もものともしないような無表情で、白衣の胸に名札をつけた安達が、立っていた。
「女が3人、男が3人。ちょうどいい。受験生以外の実験もやってみたかったからな」
「え?」
 日和があたりを見渡すと、そう遠くないところに悠宇たちを見つけた。
「日和!」
 安堵したような悠宇の顔が、見える。日和も思わず、肩の力を抜いた。
「実験とはなんですか?」
 落ち着いた口調で、千鳥は安達を見つめる。
「お前たちもいずれはこうなる、ということさ」
 そう言うと、近くの木々をより分け、安達はそこに現れたボタンを押した。すると、
 湖の水が、どんどん干上がっていく。
 そこには、たくさんの檻。
 中には、たくさんの───少年と、少女。中には呼吸器を使用している者もいた。まだ実験がそれほど進んでいない証拠、なのだろう。
 日和が、小さく悲鳴を上げた。
「なにをかんがえてるの」
 呆然と、シュラインは「彼ら」を見て、つぶやいた。
 目の前には。
 左右に檻が。
 こちら側は、わりと「普通の少年と少女」がそれぞれ一組ずつ、入っている。しかし足のほうが、「くっついていた」。文字通り、身体そのものが二人で一体化するように。
 向こう側にいくにつれ、「一体化」の進んだ少年少女たちの姿。首まで一体化している者もいる。
 すべて一体化してしまった者も、いた。しかしそういった者は既に、人間の形態ではなく───全身うろこの、怪物(モンスター)のような人魚と化していた。
 それで、分かった。雅也という少年の筆跡と、写真の文字が「微妙にあわなかった」というわけが。
 二人でひとり、なら。「二人のとき」に書いた筆跡なら、写真の文字とぴったりあったはずだ。
 雅也「ひとり」に戻ったため、「微妙にあわない」という現象が生じたのだ。
「ねえ」
 皐月が、怒りを抑えた声でたずねる。
「安達『さん』。あんた財閥だったんだってね。でも『だった』って過去形よね。今は? 家族はどうしていなくなったの? こんなことして何がしたいの?」
 そんな皐月を見下ろして、安達。
「家族もちょうど男が二人、女が二人。だから最初の実験台にした。だがうまくいかずに廃棄処分にした。ぼくはキメラが作りたいんだ。その第一段階として、人魚が作れるかどうか試しているだけだ」
「人を人とも思わないならあんたも人じゃないね安達さん」
 皐月の皮肉にも、安達はちらりと彼女から、歩み寄ってきた奇妙な人影のほうを見ただけだ。
「ああ、でもこいつは失敗作でもマシな能力をいくつか持っていたから廃棄処分にはしなかった。元はぼくの姉とその恋人だった」
 人工の月に照らされた「その人影」を見て、悠宇が歯軋りをした。
 明らかに、それは───人の形を、してはいなかった。否、多少はとどめてはいたものの、背中は曲がり、手足は蛙のようで。顔はどこか、イグアナに似ていた。その肌は全身、濃い青。
「こいつはよく言うことをきく」
 安達に撫でられて、甘えるような奇妙な声を出す、「彼ら」。
「……ぼくたちを、そのひとたちに襲わせたの?」
 静がゆっくりたずねる。幻術の用意をしていたが、「彼ら」がこちらを向いたとたん、身体に電流が走るように痺れた。
「そういうことになるな。ああ、ぼくを攻撃しようとしても無駄だよ、こいつはぼくのボディーガードもかねているからね」
(僕や僕の内の死神は───命がとても愛しくて大切だから穢れないうちに刈り取ろうとするんだけど、この人もそうかもしれないと思ったけど……違ったみたいだ)
 静はいくぶん哀しみを訴える心を、無理に抑え込んだ。
「ふざけんな! 何様よあんた!」
 皐月が怒りに顔を真っ赤にして叫んだが、安達には届かなかった。
 異変に気がついたのは、シュラインだ。
「……『この子』たちの心音と呼吸音が、乱れてきてる。苦しんでるんだわ」
 はっとする。
 そうか。
 完全な人魚ともなれば陸での呼吸も可能なのだろうが、あんな「完全体」になっていない、「なりかけ」の彼らは水での生活が必要なのだ。
 その逆もあるから、呼吸器をしている者もいる。
 同じことを、千鳥も推測したらしい。安達を向き、静かな声で言った。
「湖の水を、元に戻してあげてくださいませんか? あなたのしたいことは、よく分かりましたから」
 安達のしたいこと───異種細胞を持つものを作りたいのだ。
 それはすなわち、
「目的はキメラかよ」
 悠宇の言うとおりだった。両手両足が縛られていなければ、今すぐにでも日和を抱きしめてやりたい。安達を殴りつけてやりたかった。
 安達も自分の大事な実験体がどうかなっては困るのだろう、再び違うボタンを押し、湖の水は元に戻っていった。
「しばらくの間、その姿で名残を惜しむんだな。合体すればどちらの意識もいずれ合成される」
 言い置いて、狂人は去っていった。ただひとり、彼の姉とその恋人だったという、キメラを残して。見張りの、つもりなのだろう。
 その間にと、シュラインたちは暫くの沈黙の後、互いの情報を教えあった。
「栄養剤……学力もアップするけど、かわりに『合成しやすくなる』とかいう薬なんだろうな」
 悠宇が、吐き捨てるように言う。
「でも、こんな状況になったら、情報なんて集めてもあまり意味がないかもしれないわね。武彦さん、気がついてこちらへ向かってくれていればいいのだけど」
 まだ痛ましそうに湖を見つめながら、シュライン。
「それで、」
 日和がようやっと、声を押し出す。
「それで、興信所にいた『女の子』の言っていたことが分かりました……多分この人たちは、合成されはじめてしまったら、陸では長くいられないんだと思います。だから、ひとつだった身体がわかれて……雅也くんも聖美さんも、亡くなってしまったんだと思います」
 あんな、すがたで。
 すると、そんな日和の言葉がきこえたのだろうか。
 檻の中から、声がきこえてきた。頭の中に、直接。
<キヨナリ キヨナリに あったの?>
<キヨナリのオリだけ おれたちチカラあわせてあけてヤッタ みんなのノゾミだった キヨナリ>
「キヨナリ?」
 問い返す皐月に、あ、と千鳥が声を上げた。
「合成だから、二人の名前をくっつけたのでしょう。ほら、雅也くんの『なり』と、聖美さんの『きよ』で、キヨナリ」
 わあ、と、歓声が頭の中を駆け巡る。喜んでいるようだった。
<キヨナリ でられたんだ あのヒトについていけた>
<あなたたち わたしたちを タスケに きてくれたんデショウ?>
 胸が、痛かった。
 けれど、
 意を決したように、6人は視線を合わせた。うなずきあい、それぞれに湖面を見つめる。
「そうよ。あなたたちを、助けにきたの」
 シュラインが、微笑む。
 そう、
 微笑むしかなかった。
 ここまできたら、助けるしかない。
 自分達も助かりたいのなら、彼らも。

 たすけたいから。

 6人の胸の中にあるのは、今はただ、その思いだけだった。



■そして、白になる■

「この森、本物の植物のようです」
 確かめていた千鳥の言葉に、悠宇がうなずいた。
 考えがある、と言われた千鳥たちだったが、彼が何を考えているのか未だに聞いていない。
「でもここ、全部コンピュータで動いてるみたいだよね。水を少しくらいかけても無駄みたいな、すごいコンピュータで」
 しかも、水とは湖のものだけで、大量に使えば「彼ら」の命にも危険が及ぶ。
「シュラインさん、由良さん、菊坂さん、一色さん。
 唄を唄ってください。もちろん、日和も」
 え?という視線が悠宇に集まる。
 こんなときに唄とは、どういうことだろう。
 日和にも、分からないらしい。
<うた わたしたちも うたう>
 湖の中からの声に、悠宇は微笑んだ。
「ああ、唄ってくれよ、みんな」
 ───とにかく、唄えば「助かる」んです。
 ちからのこもった瞳で見つめられ、シュライン、皐月、日和、静、千鳥は「これは何かあるな」と分かった。
 多分───日和絡みで。
「いいわ。何の唄にする?」
 きわめて明るく、シュラインがうなずく。
「希望があるような、そんな優しい唄がいいですよね」
 何も知らない日和が、真顔でそんなことを言う。
「皆にも、聞いてみようよ」
 静もおとなびた微笑みをみせる。
「そうね、皆が唄いたい唄がいいわよ」
 皐月も賛同する。
「唄……ですか。最近の唄はとんと疎くて」
 千鳥の言葉に、こんなときだというのに、ついふきだしてしまう5人である。
<きよしこのよるが イイナ>
<そうだね もうすぐクリスマス だから>
 湖の中からそんな声が次々ときこえてきたので、じゃあそれをみんなで唄おう、ということになった。
「日和、なるべく『ここ』全部に響くように唄えよ」
 言って悠宇は、がんばれよとでもいうふうに肩を軽く叩いた。
「? うん」
 分からずに、日和は口を開いた。
 みんなで、唄い出す。
 目を閉じて、
 この悪夢のような世界に、光がともるようにと祈るようにしながら。
「! 植物が」
 小さな声で驚きの声を途中あげたのは、シュライン。そこには、唄にあわせるようにして急激に成長し、増殖してゆく植物達の姿があった。
 これが恐らく───日和も無意識にしか使えないという、能力。唄で植物を成長させる、能力。
 そういえばこっそりとさっき、悠宇が湖のふちに立って、何かお願いしていた。
 あれは……日和のこの能力を増幅させてくれるように頼んでいたのだろう。
「そうか、これならコンピュータの中まで全部絡まる」
 静も小さな声で、目を輝かせる。よかった───助けられる!

 ギィッ!

 そのとき、
 異変に気づいた「安達のボディーガード」のキメラが襲いかかってきた。
 この中に、静以外まともな戦闘能力を持つ人間はいない。静でさえ、決定的なちからは持っていない。それに、安達のボディーガードとはいえ、もとは被害者だ。殺すわけにはいかない。
 体当たりで、受け止めた。
 ものすごいちからだ。
「日和は唄え!」
 悠宇の言葉に、無我夢中で日和はうなずき、唄い続ける。
 キメラの冷たい肌。
 やすりのような、触れただけで痛い肌。
(ごめんね……)
 ごめんなさい。
 思わずのように、何故かシュラインは「彼ら」に謝っていた。
 同じ思いだったのだろう、幻術を見せて困惑させていた静が、ぽつりとつぶやいた。
「ごめんね」
 5人がかりでも、キメラのちからは容易に押し返せない。
 そのちからが、ふと。
 やわらいだ。
 異形となった瞳がうるみ、
 ぽつりと。
 ちょうど下にあった千鳥の腕に、涙がおちた。
「……言葉が分かるんですか? 私たちの言葉も、通じるのですか?」
 つい、人間に対するように彼はそう問いかけた。
 キメラは、ぱっと5人から離れる。そのまま、どこかへ走ってゆく。
「まさか、安達のところに」
 皐月ははっとしたが、しかしそのときには。
 植物は天井すら覆いつくすほどに、
 人工の月もじりじりと壊れてゆくほどに、
 成長し、増殖していた。



「なんだ、この音?」
 帰りも遅いし、連絡もこないことを不審に思った武彦は、研究所に、医師や研究者達、そして警察を至急集め、責任は俺がとるからと半ば無理に連れてきたのだが───地下からのふいの振動に、下を向いた。
「ほんとにあったぞ、隠し扉の中に研究室があった! ものすごいデータがあるぞ!」
「なんてことだ。こんなデータまで……安達は間違いなく学会からも追放される。いや、死刑になってもおかしくない」
 ついに安達の隠していた研究室が警察の手によって見つかり、データを見た研究者が、同じ立場の者として赦せないものを感じたのだろう、悔しさに目を閉じた。
「おい、それよりこの地下に何かありそうだ」
 武彦の言葉に、警察数人が地下へゆく階段を探す。
 安達の担当である「Aブロック」の、巧妙に隠されたスイッチを見つけると、すぐさま階段が現れた。そこにちょうど、安達があがってくるところだった。
 はっとした安達が階段を駆け下りていくのを、武彦たちは追いかける。
 階段の途中に、いくつもの扉。
 それを開くごとに、唄声と地響きが近づいてくる。
「なんだ、これは───」
 勝手知ったる安達が地下の森へと隠れながら、呆然とつぶやく。
「この植物はどういうことだ、唄か!? お前たち、唄うのをやめろ!」
 湖に駆け寄り、命令する。けれど、誰も聞いていなかった。
「お前たちの何人かが必要とする呼吸器も止めてやるぞ! 唄うのをやめろ!」
 しかしそのときには、まずは安達よりも被害者達を、と、コンピュータ破壊のおかげで檻の壊れた中から、シュラインたちの手引きで警察たちが少年少女たちを、あとから追いかけてきた医師と共に救出する。
「よし、これで最後のひとりだ。安達、逮捕───」
 振り返った警察と、
 武彦たちは、見た。
 湖のふちに呆然と座り込んでいた足立の背中に、「あのキメラ」ががっちりと抱きついたのを。そのまま、
 ───湖の中におちてゆくのを。
「あのひとは人魚じゃなかった」
 皐月の言わんとすることがわかり、唄うのをやめた日和もあわせて全員、急いでかけつける。

 これで いいのだから
 わたしたちは しろに もどるの
 まっしろなころに

 そんな声が、湖の中から、きこえた。
 やがて崩壊する「研究室」から武彦たちは、脱出した。



 結果、安達はキメラにしっかりと抱きしめられながら、湖の底で息絶えていたらしい。
「でも、なんでいきなりキメラの……あのひとはあんなことしたんだろう?」
 それぞれ怪我の手当てをしてもらいながら、病院で、全員から話を聞いた武彦が、そんな悠宇の疑問にこたえた。
「静が幻術を使ったって言っただろう。それが通常悪い幻しか見せないものだったとしたら、『悪い状態の意識』には薬になったんだろうな。目が覚めたんだろう。それこそ、幻によって、悪い幻からな」
 いい幻を見たとしても、結果は同じことだっただろう、という。
「それに、お前らの心と言葉だ。ごめんねなんて思ってくれるやつも、言ってくれるやつもいなかったんだろう。人の心は、心でどんなふうにでも動くから」
「……本当に、……そう、ですね」
 武彦の言葉を聴いて、くるりと背を向けた悠宇が、泣いていることを知っていたから。
 日和は涙ぐむだけで、そっと悠宇の背中に頭をあずけた。
 千鳥は、自分の腕に落ちた、あのキメラの涙のしみを見つめる。
(あの涙は、とてもあたたかかった)
 人の涙と等しく、あたたかかったのだ。
「助けてあげたかった」
 皐月の言葉が、胸につきささる。彼女が怒るように言ったのは、それほどの悔しさ、哀しさがあったため。事実、涙をこぼすまいと、皐月はこらえていた。
「でも、本当には……安達っていう研究者よりもよっぽど『あの人たち』のほうが『人間』だったのね」
 ぽつりと、シュラインが言う。
 最後にひとのあたたかさに触れ、安達を道連れにした「キメラ」。
 それでも、姉として。姉の恋人として。
 弟を、警察に渡すよりはと思ったのかもしれない。
 だから、すっかり異形になり、この世界では生きてはいけない自分達と一緒に───そう思ったのかもしれない。



「そういえば、気のせいかもしれないけれど……研究所から脱出するとき、車椅子の音を聞いた気がするの」
 シュラインの、気になるその台詞もあったが。
 その後、データを保護した研究者達により、被害にあった少年少女たちは徐々に、「元の姿」に戻りつつあるのだという。


 すべて まっしろに
 あのころに
 わたしたちと いっしょに
 かえりましょう───



《完》
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
5696/由良・皐月 (ゆら・さつき)/女性/24歳/家事手伝
5566/菊坂・静 (きっさか・しずか)/男性/15歳/高校生、「気狂い屋」
0086/シュライン・エマ (しゅらいん・えま)/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
3525/羽角・悠宇 (はすみ・ゆう)/男性/16歳/高校生
3524/初瀬・日和 (はつせ・ひより)/女性/16歳/高校生
4471/一色・千鳥 (いっしき・ちどり)/男性/26歳/小料理屋主人
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■         ライター通信          ■
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こんにちは、東圭真喜愛(とうこ まきと)です。
今回、ライターとしてこの物語を書かせていただきました。また、ゆっくりと自分のペースで(皆様に御迷惑のかからない程度に)活動をしていこうと思いますので、長い目で見てやってくださると嬉しいです。また、仕事状況や近況等たまにBBS等に書いたりしていますので、OMC用のHPがこちらからリンクされてもいますので、お暇がありましたら一度覗いてやってくださいねv大したものがあるわけでもないのですが;(笑)

さて今回ですが、「悪魔の指紋」という、一話完結タイプのシリーズものの第二弾です。全部書いてみなければなんのシリーズものか分からないかもしれない、と前回書きましたが、ラストに出てきた「車椅子の音」が次回か、次回でなくともその次にか……関係がわかってくる、かもしれません。
今回は皆様、全員、人体実験ということで一致しておりましたので、筆が進みやすかったです。ただ、安達氏が「聞き込み?面倒なことになる前に連れて来い」な感じで「キメラ」に命令したため、情報部分がほとんど無駄になってしまい、充分にプレイングが生かしきれなかった部分もあるかと思いますが、お許しくださいませ;
また、今回は「■青い異種細胞■」の最初の部分だけ、がグループ別(シュラインさん&皐月さん&日和さん、悠宇さん&千鳥さん&静さん)となっております。大変少ないですが、二種類見ないと多少分かりにくいかもしれませんので、お暇なときにでも是非、もう一つの部分もご覧いただければ、と思いますv

■由良・皐月様:いつもご参加、有り難うございますv 次第に怒りを爆発に持っていく感じ、うまく出せていればいいのですが……。その結果、あんな最期では、きっと怒りを通り越して悔しさで泣きたい気分になるのでは、と考えてあんな台詞を言って頂きましたが、如何でしたでしょうか。
■菊坂・静様:いつもご参加、有り難うございますv 投与もいとわない───ということでしたので、あ、これ使ってみようかなと思ったのですが、かなり文字数(今よりも)オーバーしてしまいそうでしたので、やめました。そのかわり、別の部分でちからを発揮していただきましたけれども、正直安達氏に対しての気持ち、静さん的には色々な意味で、とてもつらかったのではないかと思いますが、如何でしたでしょうか。
■シュライン・エマ様:いつもご参加、有り難うございますv 一番謝らなければ、と思っておりますがどこかといえば、情報収集の部分……です;筋書き的に、この情報収集部分は書いても文字数がだらだら長くなるだけだな、と「黒い骨」を出した部分でお分かりになったかとも思いますが、それでもあれだけ考えてくださったのに、という思いがありまして;本当にすみません。ですが、アフターケア(データをとっておく、研究者や医師たちに連絡をとっておく等)を考えてくださったのは助かりました。でなければ今頃、筋書きにあったもうひとつのラスト(被験者達全員死亡)になっていたでしょうから……。
■羽角・悠宇様:いつもご参加、有り難うございますv 冒頭の部分、ちょっと書いてみたかったなと思ったのですが、うまく流れに結びつかせることができず、書いては消し、書いては消しをして結局省いてしまいました……すみません;日和さんの能力についてご存知だったかどうか、ということがとても心配なのですが、もしご存知でなかったのならすみませんです;けれど知っていて「コンピュータの弱点であるものはこの中だと植物(花粉もあるし)」と、湖の中の子達の能力も借りる機転は、悠宇さんならではのことだったと思います。
■初瀬・日和様:いつもご参加、有り難うございますv 冒頭の部分は、悠宇さんと同じく、です;すみません;今回、恐らく日和さんも考えていなかったであろう能力をフルに使わせていただきましたが、何か問題がありましたら本当にすみません;薬に対しての胸の痛む台詞から、きっと被害者達の気持ちも一番よくわかるだろう、ということで、いつも芯の強い日和さんですが、今回は少しだけ「弱く」描写させて頂きましたが、如何でしたでしょうか。
■一色・千鳥様:いつもご参加、有り難うございますv 今回、写真の文字から「見えた」ものは、お気づきかと思いますが、「キヨナリ」の視点でした。いつも落ち着いている慎重派な一色さんも、今回はどこかで怒りか悔しさを出さないだろうか、とも考えたのですが、なかなか想像ができずに、やっぱり「こんな場合だからこそ」いつもの一色さんなのだろう、と東圭の中での結論になりましたが、如何でしたでしょうか。

「夢」と「命」、そして「愛情」はわたしの全ての作品のテーマと言っても過言ではありません。今回はその全てを入れ込むことが出来て、本当にライター冥利に尽きます。本当にありがとうございます。今回は「色」で章の名前を統一してみました。安達と心中に至った「キメラ」に名前をつけなかったことを最後まで考えていたのですが、名前がないほうがかえって、いかに安達が「生物」というものを蔑ろにしているか、ということが出ると思ったので、可哀相とは思いましたがつけませんでした。ですが結果的には、なんとかハッピーエンドに持っていけて本当によかったです。
次回「悪魔の指紋」第三話目は、年末もしくは来年はじめあたりにUPする予定です。

なにはともあれ、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
これからも魂を込めて頑張って書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>

それでは☆
2005/12/08 Makito Touko