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<白銀の姫・PCクエストノベル>


文月堂奇譚外伝 〜紅の魔剣〜

●古書店にて
「ねぇ、どうしたの?紗霧、紗霧ってば!!」
 パソコンの前に座り椅子に座り目を開けない少女に向かって声をかける。
 少女の名前は佐伯紗霧(さえき・さぎり)彼女を介抱しようとする女性は佐伯隆美(さえき・たかみ)という。
 隆美は「白銀の姫」というネットゲームをしていて急に動かなくなった紗霧の事を心配して介抱に入ったのだった…。
 文月堂というとある古書店での出来事であった…。

●魔剣の噂
 ネットゲーム白銀の姫。
 そのゲーム内の一地方の小さな町で最近噂になっている事があった。
 その地方ではイベントとして、とある伝説の剣が噂になっていたが、それも最近少し様子が違っていた。
 夜な夜な町外れの捨てられた砦に魔力の輝きを帯びた紅き剣を携えた少女が現れると云うのだ。
 真偽はともかく、その事が噂になっていた。
 そしてまた夜が来る…。

 砦の二階にある物見台のあったであろう場所で一人の少女が虚ろな瞳で月を眺める。
「クス……今宵も月の輝きは美しい…」
 そう少女が呟いた後その手にもった一振りの剣が怪しげな光を強めたような気がした…。

●出会い
 日も傾き始めた文月堂にここ最近の噂を聞きつけた二人が訪れていた。
 その噂とは佐伯紗霧(さえき・さぎり)が倒れ、意識が戻らない、という噂であった。
 噂を聞きつけてやってきたのはクラウレス・フィアートと結城二三矢(ゆうき・ふみや)の二人であった。
「さぎりしゃんがこうなったのはいつからなんでちか?」
 その場にいる佐伯隆美(さえき・たかみ)にクラウレスが問う。
「それは……」
 隆美がそのと問いに答えようとしたちょうどその時であった。
「こんにちは、お久しぶりです」
 そういって店の方に来客が来ていた。
「ごめんなさい、ちょっと店の方に行ってきますね、その間紗霧の事をお願いするわ」
 隆美のその言葉に二三矢が横になっている紗霧の方を見ながら答える。
「はい、しっかり俺達が見てますから安心してください」
 ここ数日は心配の為にあまり眠れていないのか、少しふらつきながら隆美は部屋を出て行った。
「たかみしゃんいつもにくらべてげんきないでしゅね…」
「紗霧さんがこういう状態じゃ仕方ないと思うよ、夜ちゃんと眠れてるのかも心配だし…」
 そんな会話をしながら二人は隆美が出て行った扉を見つめるのだった。

 誰も店番をしていなかった文月堂にやって来ていたのは鹿沼・デルフェス(かぬま・−)であった。
「隆美様こんばんは、今日はひょっとしてお店やっていなかったんですか?」
 いつもと違う文月堂の様子に、デルフェスは気にかかるものを覚える。
「ええ、今日はちょっと……、ごめんなさい…」
 いつもの隆美と違い覇気のない様子にデルフェスは気にかかった。
「あの…隆美様、元気がないようですが、何か問題でも……?」
 しばらく隆美は言うべきか言わざるべきか迷っていたが、意を決したように口を開く。
「実は……紗霧が倒れてしまって…」
「倒れて?紗霧様はご病気か何かに掛かられたのですか?」
「いえ、そういう訳では無いみたいなのですが、ただ…原因不明で…」
 そう言って隆美は今までの経緯を簡単にデルフェスに説明をした。
「その症状ならばわたくしにいくつか思い当たる節があります、もしよければ紗霧様の所に行ってもよろしいでしょうか?」
「え、ええ、何かわかるのならばぜひお願いします」
 デルフェスがそこまで話したところで、もう一人文月堂に来客があった。
「あ、こんばんは、ちょっと白銀の姫に関係するかもしれないと云う話を小耳に挟んだもので…」
 そう言ってやってきた青年は小さく頭を下げた。
「少し色々と調べるうちにここのお店で、白銀の姫の影響らしい女の子がいるらしいって話を聞きまして…何かお手伝いできる事がないか?と思ってやってきました」
「そ、そんな噂が結構広がってるんですか…」
 少し隆美がショックを受けたように落ち込む。
 身内だけではなく、外にも広がっているとは思わなかったからである。
「あ、僕は十里楠真雄(とりな・まゆ)といいます」
 自己紹介をした青年に隆美とデルフェスも軽く自己紹介をする。
「でも人手が多いのは嬉しいわ、二人ともこっちへ来て貰える?」
 そう言って隆美はデルフェスと真雄を紗霧の元へと案内した。

「隆美さん、お客さんはデルフェスさんだったんですか?」
 二三矢はデルフェスをつれて戻ってきた隆美を出迎える。
「ええ、それでデルフェスさんが思い当たる節があるからという話だったので来てもらったの」
「そうなのでちか……」
 そう呟くクラウレスを横目に見ながら、モニターの電源を落としてあるパソコンの所にデルフェスは歩いて行った。
「隆美様、紗霧様が使われていたパソコンというのはこのパソコンでよろしいのでしょうか?」
「え、ええ、そうですけど…」
「モニターをつけさせていただいても宜しいでしょうか?」
「ええ、かまわないけど、それが紗霧と何の関係が?」
 判らないといった様子の隆美にデルフェスは答える。
「それはつけて見ればわかります…」
 デルフェスはそういってモニターの電源をつける。
 デルフェスの手によってつけられたパソコンのモニター上には、何かのゲームらしい画面が写っていた。
「やはり白銀の姫…」
 デルフェスの呟きを二三矢は聞き逃さなかった。
「白銀の姫っていうと最近かなり流行っているネットゲーム、ですよね。色々妙な噂はあるって聞きますけど、このゲームが何か?」
「私もこのゲームはそれなりにやって来ているのですが、このゲームは何かしらの力を持った人間に反応するようなのです。それで紗霧様はこのゲームに何らかの理由で心を囚われている状態なのではないかと思います…」
「ゲームに……心を囚われる?」
 呆然とした様子で隆美は聞き返す。
「はい、もしそうならば、ゲームの中で紗霧様の心を捉えている【何か】から紗霧様の心を開放しない限り解決しないと思うのです」
「それはつまりげーむのなかにいってさぎりしゃんをたすけるってことでちか?」
 クラウレスのその言葉にデルフェスは頷く。
「デルフェスさんこのゲームって誰でも出来るんですよね?」
「ええ」
「隆美さん、俺、紗霧さんを助けてきます」
 デルフェスに確認を取った二三矢は隆美にそう告げる。
「わたちもいくでち」
「わたくしも協力させていただきます、ゲームに慣れている人間が一人でも多い方が良いと思いますし」
「ありがとう…紗霧を…よろしくお願いします」
 皆のその言葉に隆美は泣きそうな声でそう言うのだった。
「それから…隆美様、決してあなたまでこのゲームをやらぬよう、お願いいたします」
 隆美にデルフェスはそう一言言って、ゲームにログインしたのであった。

●情報
 白銀の姫ゲーム内、地方都市シュテルカ近辺ではどこか騒然とした雰囲気が漂っていた。
「なんだか予想していたよりも、ずいぶんと騒然としてますね」
 真雄が周囲の様子を見る。
「そうですわね…、わたくしもここまで騒ぎになっているとは思いませんでした…、確かにここ最近少し話題には上っていたのですが…」
 町の様子は普段であれば大きなイベントでもないとないような雰囲気があった。
「とりあえず、俺達はもう少し情報を集めないといけないとですね」
「そうでちね……、こういうときはどうやってあつめるのがいいんでちょうか?」
 あまりゲームなどはしないクラウレスが考え込む。
「こういう時は酒場で情報を集める、と言うのが常道ではあるんだけど」
 二三矢がそう言うとこのゲームに手馴れているデルフェスが意見をまとめる。
「それでは酒場で情報を集める組と、町で話を聞いて回る組に分かれたらどうでしょうか?」
「なるほど、それは効率が良さそうですね」
「それじゃ俺は酒場で話を聞いてみますよ」
 二三矢がそう名乗りをあげるとデルフェスも酒場行きを希望する。
「こういう時はわたくしのような女性である場合のほうが話を聞きやすい事もありますから…」
 それを聞いた真雄が納得したように頷く。
「それじゃ僕とクラウレスで町で話を聞いてくるよ、クラウレスはそれで良いかい?」
「いいでちよ」
「それじゃ一時間後にここでまた再び落ち合うって事でいいかな?」
 二三矢がそう時間を区切る。
「判った、一時間後だね」
 真雄はそう答え頷くとクラウレスと共に歩き出した。

「それじゃ、俺達は酒場へ行きますか、デルフェスさん」
「そうですね、行きましょう」
 二三矢とデルフェスはそう言って歩き出し、町の中にある一軒の酒場【BAR Moon&Desert】という看板の掛かった酒場の前に立っていた。
「月と砂漠、か…ちょっとしゃれてますね」
 二三矢はどこか浮かれたように看板を見ながら呟く。
 やはり事件の最中とはいえ、こういうゲームにはどこか心踊るものがあるのだろう。
「俺のゲームの中でのクラスは吟遊詩人、ファンタジーといえば吟遊詩人と酒場は切り離せないですからね」
 どこか浮かれて酒場に入っていく二三矢を見てデルフェスは笑みを浮かべてその後に続くのであった。

 二人が酒場に入った頃、真雄とクラウレスの二人は町の住人に話を聞いて回っていた。
「まゆさんこのひとたちどこかへんでちよ…、おなじことをなんかいもくりかえしはなしてくれるでしゅし…」
 あまりこういうゲームをやった経験のないクラウレスはそう一人ごちる。
「それは仕方ないだろう、町の人の大半は運営者の設置したキャラクターだから、しゃべる事はは言っているデータのものなんだから…。でもきっとその中に役に立つ事があるはずなんだ、僕達はその欠片を見つけるために聞きまくらないとね」
「そういうことだったのでちか…、わたちはてっきりこのひとたちがおかしくなってしまったんだとおもってしまったでちよ」
 真雄に説明を受けて納得したのかクラウレスも聞き込みを再開する。
「そういう事、だから少々面倒でも頑張らないとね」
 そう言って真雄も再び動き始めた。

 酒場に入った二三矢とデルフェスは情報を教えてもらえるように一人ずつ話しかけ始めた。
「俺達はここら辺で最近噂になっているという砦の少女について話を聞きたいんだけど…」
「ああ?砦の少女って言うとあれか…、また話をするのも面倒くさいんだよな…」
 酒場でくつろいでいた、眼帯をつけた盗賊風の男が二三矢の質問に面倒くさそうに答える。
 多分何回も同じような質問をされてきたのだろう。
「そんな面倒とか言わずに教えてください、知り合いの…俺の…大切と思える人の一大事かもしれないんです」
 二三矢はその盗賊のえりもとを掴み詰め寄る。
「ふーん?まぁ、話しても良いけどよ…」
「本当ですか?」
「だが、無料って訳にゃいかないな。情報は無料って訳にはいかないんだよ」
「お金ですか?いくら欲しいんですか?」
「金?うーんそれもまたつまらない話だなぁ」
 煮え切らない盗賊の様子に二三矢はいらだつ。
「ああ、そうだ、兄ちゃん、そこの一緒に入ってきた色っぽい姉ちゃんと知り合いかい?」
 そう言って盗賊はデルフェスの事を指差す。
「え、ええ…」
「だったらこういうのはどうだい?兄ちゃんは吟遊詩人、それに連れに色っぽい姉ちゃんがいる。兄ちゃんの演奏で、そこの姉ちゃんが舞台で一曲踊りを披露するってのは?」
「え?」
 全く考えてもいなかったこと言われ二三矢は驚く。
 そしてそこへデルフェスがやってきた。
「二三矢様、何かわかりましたか?」
「そ、それが…」
 二三矢は今までの経緯をデルフェスに話す。
「そういう事ならいた仕方ありませんわね…」
 そう言ってデルフェスは持っていた剣を抜く。
「お。おい、俺を切ったら話は聞けないぜ?」
 盗賊は慌てて二三矢の後ろに逃げ込む。
「勘違いなさらないでください。この剣を使った剣舞でもよろしいかしら?と聞こうとしただけですわ」
 盗賊はどこか泡を食ったようにただただ頷くのであった。

 そして、二三矢の演奏とデルフェスの剣の舞の幻想的なひと時が終わった後、盗賊は少しずつ話し始めた。
「あの少女の話が出てきたのはここ最近なんだよ。それまでこの地方に協力な魔剣があるっていう噂はあって、結構それ目当てに冒険者はやってきていたんだが…」
 そう盗賊はきりだした。
「その噂の魔剣がその少女の持っているものかどうかはわからねぇ、ただ、この先の砦に夜な夜な幽霊のように一人の少女が現れるのを俺は見たんだ。ただ、砦にちかずこうとするとなぜかちかずけねぇ、何か特殊な力でも必要なのかもしれないんだがそこまではよくはわからねぇ」
「その少女を見たっていったよな?」
「あ、ああ、砦の見張り台に剣を地面にさしてじっとどこか遠くを見つめて立っているのを見たが…」
「その女の子は白い透けるような肌に赤い瞳に背中まである銀髪じゃなかったか?」
「あ、ああそうだが…、なんで知ってるんだ?」
 不思議そうにしている盗賊だったが、二三矢はデルフェスと小声で話し合う。
「どうやら紗霧さんで間違いないようですね…」
「そのようですね…。やはりその魔剣との間に何かあった、と見るのが良さそうですわね…」
「ええ…」
 不思議そうにしている盗賊に二三矢はもう一度質問をした。
「あなたの知っているのはこれが全てですか?」
「あ、ああ、そうだが…」
「判りました、ありがとうございました、デルフェスさん時間もそろそろですし、戻りましょう」
「そうですね」
 そう言って二人は酒場を後にするのだった。

 集合場所に集まった一行はそれぞれの集めてきた情報を交換し合った。
「わたくちたちがきけたのはそのとりでへのいきかたととりでにでてくるかいぶつのはなしでちた」
「砦には基本的にモンスターと言うのはいないらしいんだ、トラップの類はあるみたいなんだが、行けた人間が殆どいないらしくて、詳しい事はわからないらしい」
 クラウレスと真雄が聞いてきた事をまとめて話すと二三矢とデルフェスも自分達が酒場で着てきた事を話す。
「どうやら私達のにらんだとおり魔剣を持っているのは紗霧様で間違いなさそうです」
「それから砦に行けないっていうのは、多分何かしら特殊な力を持ってる人間でないとと行けない、とかそういう事なんだと思う…」
 二三矢がそう言って砦のあると言われた方向を見つめる。
「とにかく夜になって、その少女が出てくるのを待つしかないわけだから行けるところまで行くとしませんか?」
 真雄のその台詞に一同が頷く。
「そうでちね、とにかくうごくのがいいとおもいまちゅ」
 クラウレスのその一言で一向はゆっくり歩き出すのであった。

●砦と魔剣
 そして日が暮れ、夜の闇が辺りを包み込み砦がもう間近という所まで一向は来ていた
「はなしによるとこのへんからさきへすすめなくなるということでちた…」
 クラウレスは周囲を警戒しながら皆に話す。
「ちょうど一本の杉の樹のあるこの辺りからいけなくなるという話なんですが…」
 そう言って真雄が一歩を踏み出すと一瞬辺りが光を放ちをして何かを通り抜けたように真雄の姿がぼやけた。
「どうやらここがその境界線のようですわね。真雄様は先へ進めたようですが…」
 そう言ってデルフェスも一歩を踏み出す。
 先ほど真雄の時と同じように周囲が光を放ちをしデルフェスの姿がクラウレスと二三矢からはぼやけて見えた。
「それじゃ俺達も進んでみるか」
 クラウレスと一緒に二三矢も一歩を踏み出した。

 無事四人とも境界を越える事が出来たが、二三矢が不思議そうに首をかしげる。
「なんで俺達はここを通る事が出来たんでしょう?」
「きっと、何かしら特殊な力を持っていると進める、とかそう言う事なんだと思うよ」
 楽観視をするように真雄がそう二三矢に説明をする。
 そして通り抜けた事の出来た面々の顔を見て二三矢は頷く。
「きっと、そうなんでしょうね」
 納得した二三矢は再び歩き出す。
「みんな早く先へ進みましょう、目的の砦までもうちょっとですよ」
 二三矢の後を一向は続くのだった。

 砦に入った一向はたいまつをつけて一歩一歩ゆっくりと進んでいった。
 内部にはトラップがいくつか仕掛けられていた様子であったが、どれも発動した後で現在まで稼動するものは残っていない様子であった。
 そして広いホールの様な所までやってくると階段を背に一人の少女が剣を構え一行を出迎えた。
「くす…久しぶりのご来客ね…。あなた達も私を楽しませてくれるためにここまでやってきたの?」
 どこか妖艶な笑みを浮かべるその少女は紛れも泣く紗霧のものであったが、どこかいつもとは違う空気が漂っていた。
「紗霧さん、どうしたんですか?紗霧さん!」
「あら……、誰かと思ったら二三矢さんじゃないですか…、今日はあなたが私の事を楽しませてくれに来たの?」
 その言葉にデルフェスは自分の考えが間違っていたのかもしれないという気持ちになる。
「剣に乗っ取られた、というならば剣の意識がくるはずですわね…どういう事かしら…」
「とにかく…ここは力を温存、というわけにも行かなさそうですね」
 そう言ってクラウレスは自らの力を解放する。
 そこには片手剣を持った青年の姿があった。
「ここは私とデルフェスの二人で彼女の動きを抑えるのが良いと思う。二三矢の力で剣を壊すと言うのは現状がつかめない限りはやめておいた方が良いと思うからな」
「わかりましたわ」
 クラウレスの言葉にデルフェスと二三矢は頷きクラウレスとデルフェスが紗霧に向かって駆けて行った。
 二人の戦士を前にしても紗霧は退くどころかむしろ押している様に見えた。
 そして間を取った二人を前に剣についた赤い地をゆっくりと舐める紗霧の姿があった。
 それを見たクラウレスが依然聞いた話を思い出し叫ぶ。
「紗霧は自分お意識を持っている、ただ剣にそれをコントロールされているだけのようだ」
 クラウレスのその言葉にデルフェスが答える。
「それではあの剣を手放させればいいのですね?」
「ああ、そう言う事だ、やれるか?」
「皆の力を合わせる事が出来れば…」
 そう言ってデルフェスは二三矢の方を見る。
 二三矢はデルフェスに頷き返すのを確認するとクラウレスとデルフェスは再び紗霧向かって駆けた。
 二三矢が炎の矢で紗霧の動きを牽制し、クラウレスとデルフェスが紗霧の隙をついて攻撃する。
 クラウレスの剣が紗霧の持つ剣を撃つたびに黒い気をクラウレスの剣が吸収し、そのたびに一瞬紗霧は苦しそうな、どこか助けを求めるような表情を浮かべる。
 その連携攻撃に徐々に紗霧も余裕をなくし、そしてその手からついに剣が弾き飛ばされた。
 剣が手から離れると同時に紗霧の姿がその場から忽然と消えた。
「紗霧さん!」
 二三矢が紗霧のいた場所に駆け寄った。
「きっと彼女はログアウトしただけですよ、現実世界に戻ったら僕が責任もって彼女の事を治しますから、安心してください」
 真雄のその言葉にほっと二三矢は小さく息を漏らす。
「もんだいはこのけんをどうするかでちね…」
 いつもの姿に戻ったクラウレスが紗霧の手から落とされた禍々しい意匠の凝らされた剣を見ながらそう呟く。
「そうですわね、わたくしは元あった場所に戻すのが良いと思うのですが…
 デルフェスのその言葉に異をはさむものはいなかった。
 そして一向は剣のあったと思われる場所に戻すと一向は現実世界へとログアウトした。

●エピローグ
 ログアウトした一行を待っていたのは、ログインした時と違い所為樹のある表情で横になっている紗霧の姿であった。
「う……、うん…」
 一行が戻ってくるとゆっくりと紗霧が目を覚ます。
「あ、あれ……私…」
「紗霧良かった、目をさましたのね…」
 隆美が目を覚ました紗霧の事を抱きしめる。
「どうやら、上手くいったようですね」
 ほっとしたように真雄が呟く。
「紗霧さんよかった…」
 そう呟いた二三矢の言葉が一行の気持ちを代弁していた。
「そういえばかえってきたらなんかおなかがすいてしまったでち…」
「ちょっと待ってて、みんなが帰ってきたら出そうと思っていたお菓子があるの、持って来るわね」
「あ、隆美様わたくしも手伝います」
 席を離れた隆美の後をデルフェスが追う。
 真雄が一通り様子を見て大丈夫という結論に達した紗霧を二三矢は紗霧を勇気ずける。
「大丈夫、紗霧さんは怖い夢を見ていただけなんだから…、もう大丈夫だから…、ね?」
「はい…」
 その言葉に勇気ずけられたのか紗霧は小さく笑みを浮かべるのであった。


Fin

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■ クラウレス・フィアート
整理番号:4984 性別:男 年齢:102
職業:「生業」奇術師 「本業」暗黒騎士

■ 鹿沼・デルフェス
整理番号:2181 性別:女 年齢:463
職業:アンティークショップ・レンの店員

■ 結城・二三矢
整理番号:1247 性別:男 年齢:15
職業:神聖都学園高等部学生

■ 十里楠・真雄
整理番号:3628 性別:男 年齢:17
職業:闇医者(表では姉の庇護の元プータロー)

≪NPC≫
■ 佐伯・紗霧
職業:高校生兼古本屋

■ 佐伯・隆美
職業:大学生兼古本屋

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■         ライター通信          ■
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 どうもこんにちは、もしくははじめましてライターの藤杜錬です。
 今回の依頼はいかがだったでしょうか?
 もうすぐ終わる白銀の姫ですが、終わるまでに一回くらいはシナリオをと思い今回依頼を出させていただきました。
 シナリオそのものはファンタジーの王道の魔法の剣というものを使わせていただきました。
 裏話をすると長くなるので割愛しますが、紗霧という存在だったから今回の一件はおきたという事件です。
 多分他の誰がもっても今回の一件はおきなかったと思います。
 とにかく皆様お疲れ様でした。
 またもし機会があればよろしくお願いいたします。

2005.12.12.
Written by Ren Fujimori