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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


虚構世界


 盆に載せた食器がかちゃかちゃと無機質な音を立てる。はあ、と君江は溜息をついた。こうやって娘の部屋に食事を運ぶようになってどれくらい経つだろう。
いや、正確には「部屋の前」だ。部屋の中にすら入れてもらえないのだから。
娘であるあかりは部屋に閉じこもり、昼夜を逆転させてインターネットに興じているらしい。ここ半年ほどは彼女の顔すら見ていない。君江が娘の部屋に行くのはこうして食事を運ぶ時と、食器を下げる時だけだ。ドアの前に置いてやった食事は残さず平らげられているし、部屋の中には確かに人の気配がする。君江が確認できるあかりの痕跡はその程度でしかない。
 「ごはん、置いとくね」
 返事がないであろうことを知りつつ、律儀に声をかけてドアの前に盆を置く。春江はふと顔を上げた。ドアの向こうは妙に静かだ。
 部屋から出ているのだろうか。一瞬そう考えたが、君江はすぐに自分でその可能性を打ち消す。あかりが部屋から出てくれば分かるはずだ。いつ外の世界に出てくるか、四六時中耳をそばだてているのだから。
 嫌な予感がした。
 ドアに耳を押し当てる。こちらとあちらを隔てる板の向こうからは何も聞こえてこない。次に君江はノブをつかんだ。常に施錠され、あまつさえ開かないように内側から家具で押さえられているドアはどういうわけか簡単に開いた。
 あかりはいなかった。 
 代わりに、家具とパソコンと、耳の痛むような静寂だけが残されていた。  



 「――で」
 草間は組んだ脚をゆっくりとほどいた。「娘さんは見つからず、警察にも相手にされず、ここに来たってわけですか」
 「はい」
 依頼人である武山君江はハンカチで目を押さえた。年齢は四十くらいであろうか。涙で剥がれ落ちた化粧の下の肌の荒れ具合が憔悴を雄弁に物語る。草間は居心地悪そうに首の辺りを手でさすった。
 依頼の内容は人探し。興信所としてはポピュラーな案件だ。しかしここは草間興信所。普通の人探しの依頼など来るはずもない。
 「昼食の時は確かに部屋にいたんです。でも夕食を持って行った時にはいなくなっていて・・・・・・。窓から外に出たような跡もなくて。神隠しにでもあったんじゃないかって」
 君江はそこでいったん言葉を切り、小さく鼻をすすり上げた。「なのに・・・・・・あかりは消えたのに、あの子のホームページだけは毎日何度も更新がされているんです」
 まるで娘がネットの世界にでも住んでいるようだと言って依頼人は青ざめる。やれやれ、と草間は内心で息をついた。また怪奇事件か。とするなら、あいつらの手を借りる必要がありそうだ。
 「二十日間、もらえますか」
 やがて草間は口を開いた。「仲間に連絡して協力を仰がなきゃいけませんので・・・・・・二十日あれば何とかなると思います」



 「とっても仲のいいご家族だったんですよ。あかりちゃんはいつもお母さんと一緒にいて」
 「あかりちゃん? 明るい子よ。あたしたちにもきちんと挨拶してくれるし。ただ、ものすごく負けず嫌いのところがあったわね。お兄ちゃんと喧嘩したときなんかすごかった。怒鳴り合う声がうちまで聞こえたもの」
 「たまには喧嘩もするけど、お兄ちゃんとあかりちゃんは仲良しだったわよ。お兄ちゃんは学校で軟式テニスをやってて、休みの日にはテニスコートを予約して一緒に練習に出かけてたみたい」
 「お兄ちゃんは軟式テニスで国体に出られるんじゃないかって言われてるくらいの選手なんですよ。あかりちゃんもその影響で小さい頃からソフトテニスをやってて。中学生になってからはソフトテニス部に入って、“いつかお兄ちゃんに勝つんだ”って張り切ってましたねえ」
 「なのに、どうして引きこもりなんか。あんなにいい子だったのに」
 それが、近所の人たちが言う武山あかりと武山家についての印象だった。
 日の短いこの季節。おやつの時間でもすでに太陽の光は黄昏を帯びている。弱々しい光を浴びながら大型のバイクに細い体をもたせかけ、聞き込みの結果をまとめた手帳を読み返しながら女はヘルメットを手に取った。しあわせそうな家庭。仲のいい母子。兄・春樹によくなついた妹・あかりは明るくて元気な女子中学生。手帳にまとめた情報からはその程度のことしか読み取れない。
 しかしこれで依頼人には本当に娘がいるらしいことは分かった。依頼人には娘はいない、もしくはすでに亡くしていて、娘の存在を望むあまり錯乱してネットの中に娘の存在を求めているのではないか。そんな推測もあったが、近所の人々が頻繁にあかりの姿を見かけている以上“依頼人には今は娘はいない”という線はなくなったと考えてよいだろう。
 手帳の記述を追う長い指がある箇所でふっと止まる。“兄と妹、不仲?”という行の右側へと指を滑らせた。
 “あかり、今年の春先から春樹を避けていた様子”
 “春樹、「あかりが怖くて話しかけられない」とぼやく”
 無難な情報の中で、唯一引っかかるのがこの話だった。
 しかしこの情報がどう関係しているのか現時点では分からない。女はヘルメットをかぶり、キーを回してエンジンをスタートさせた。目指すは依頼人宅。フルフェイスの奥で理知的な青い瞳が光を放つ。



 八畳の居間に通して座布団を出したものの、君江は猜疑と不安の眼差しでシュライン・エマという女性を見た。黒い髪に、薄く色のついた眼鏡の下の切れ長の青い瞳。長身ときりりとした顔立ちは「凛々しい」という形容がよく似合う。しかし君江が興信所を訪れた際、この女性は他の所員から頼まれてパソコンで入力作業をしていたはずだ。事務員なのではないかという印象を払拭できない。
 君江の予想は当たらずとも遠からじだ。シュラインは事務員として草間興信所に勤めている。しかし調査員として白羽の矢を立てられることもしばしば。それは彼女が調査員としても優秀であることの証明に他ならなかった。
 「娘さんのお名前はあかりさんで、十四歳、中学二年生。他にご家族は、旦那さんと、ご長男の春樹くん十六歳、高校一年生ということでよろしいですか」
 シュラインは冷静な口調で言いながら淡々と資料をめくる。君江は「はい」とだけ答えた。  
 「いくつか確認しておきたいことがあるのですが」
 シュラインは遠視用の眼鏡を外し、君江を見た。「あかりさんのお部屋の様子はどうでしたか? 何者かが侵入した、または家具が動かされていたような形跡は」
 「ドアの前に置いてあった椅子やテーブルは倒れていましたが、他は特に。あかりだけがふっといなくなってしまったような感じで・・・・・・」
 「それなんですが、本当にあかりさんは部屋の外には出ていないんでしょうか」
 今度はシュラインが猜疑の目を君江に向ける番だった。訝しげに眉を寄せた表情がクールな顔立ちに溜息が出るほど似合っている。
 「君江さんはずっと家の中で座っているわけじゃありませんよね。家事をなさったり、買い物に出かけることもあるでしょう? 四六時中あかりさんの様子に注意しているのは難しいんじゃありませんか?」
 「家事は全部俺がやってます。もちろん買い物も」
 君江の隣に座った少年が口を挟む。シュラインはちらりと目を動かした。あかりの兄の春樹であろう。
 「お母さんはあかりのことが気がかりで何も手につかないから、代わりに俺が掃除も洗濯も飯作りもやってるんです。そのために部活もやめました。早く帰って飯作らなきゃいけないから」
 「なるほど」 
 シュラインは小さく鼻を鳴らした。どうやら“平穏な家庭”というわけではなさそうである。
 「ところで、君江さんのパソコンスキルはどの程度でしょう?」
 「は?」
 シュラインの意図をはかりかねたのだろう、君江は少々間の抜けた声を出した。
 「パソコンをどのくらい扱えるのですか、とお聞きしております」
 「はあ・・・・・・。大したことはできません。電源のオンオフと、ホームページの閲覧くらいしか・・・・・・文字もろくに打てない状態で」
 「そうですか。それではホームページの更新などは難しいでしょうね」
 はあ、と首をかしげる君江の前でシュラインは考え込む。あかりを想うあまり錯乱した君江が夜にホームページを更新し、あかりの存在を擬装しているのではないかという推測もないではなかったが、この線も外していいかも知れない。
 「それでは、単刀直入に伺いますが」
 シュラインは改めて姿勢を正し、まっすぐに君江を見詰めた。
 「あかりさんが引きこもった原因は何ですか?」
 君江の肩が怯えたように震え、顔が石膏のようにこわばる。
 「それは」
 と口を開いたのは春樹だ。「お母さんの口から言わせないでください。あかりのサイトを見れば分かります。部屋に案内しますから、二階にどうぞ」
 「そうね」
 シュラインはちらりと壁の時計を見やる。針が指し示すのは午後四時半すぎ。今回の調査でコンビを組むことになっているはずの調査員で、春樹と同じ高校の同級生だという梧・北斗(あおぎり・ほくと)は何をしているのか。四時にここで合流すると約束していたのに。
 彼のことだ。いつ来るか分からない。合流してからのつもりだったのだが、シュラインは予定を変更して先にあかりの部屋を見てみることにした。
 家の作りは平凡だった。外観は和風寄りの住宅。二階建てで、一階に八畳がひとつと六畳の部屋がふたつ、二階には六畳の広さのフローリングが二部屋。二階の二部屋は兄と妹がひとつずつ使っているという。
 「ご主人はあかりさんのことについて何か?」
 「あの人は家庭には無関心な人ですから」
 君江は悲しそうに笑った。「あかりが引きこもりになってから特に。長期出張と言ってしょっちゅう遠くに出かけてます。本当に出張かどうかは分かりませんけどね」
 三人が一列になって狭い階段を昇ると正面に一部屋、窮屈に右側に折れる廊下の突き当たりにもうひとつの部屋があった。廊下の奥があかりの部屋だ。シュラインは黙ってドアを開けた。
 シンプルな部屋だった。黒やグレーといった暗い色を基調に揃えられた家具のせいか、統一感がある。南向きの窓際に寄せたベッドに、床に敷いたグレーのじゅうたん。ベッドの足元には学習机が置かれている。机とセットになっているはずの椅子がないことを不審に思って目を走らせる。少し離れたところに机の椅子と折りたたみ式のテーブル、子供の背丈ほどの本棚がコミックを散乱させて無言で転がっていた。かつてこの部屋への侵入を拒んでいた物であろう。それ以外は特に変わった物もないし、変わった様子も見受けられない。そして、ノート型のパソコンが床の上にぽつりと放置されていた。 
 「このパソコンはあかりさん専用の物ですか?」
 とシュラインが尋ねた。
 「はい。以前、夫が仕事で使っていた物が古くなったのであかりに・・・・・・茶の間には家族共用のパソコンがあります」
 「そこから娘さんのホームページを閲覧しているわけですね。娘さんのホームページのURLをご存じなのはなぜです?」
 「あの子が教えてくれたんです」
 君江の声がかすかに震える。シュラインは君江から静かに視線を逸らした。君江のやつれた肩は震え、くまのできた目からは涙が溢れ出していた。
 「引きこもる前は・・・・・・あかりがホームページを開設した頃は仲がよかったんです。ホームページ作ったからお母さんたちも見てねって言って、茶の間のパソコンにブックマークしてくれて。だから家族みんなで見てました」
 君江の代わりに春樹がぽつりぽつりと話し始めた。
 あかりはひどく負けず嫌いな性格を除けばごく普通の女の子だった。軟式テニス部の練習に励み、ボールコントロールもスピードも優れていて、選手として有望だと顧問の教師もほめていた。もちろん勉強だってきちんとしている。成績は目立って良いわけではないが、まあ無難なところだった。
 今年の春先のある休日、あかりは春樹と連れ立ってコートに出かけ、兄にボロ負けして帰って来た。それ以来あかりの口数は極端に減った。ちょうど、年明けに友人に聞いたというコミュニティに登録してホームページの運営にも慣れた頃でもあった。
 そのあたりからあかりは変わり始めたのだ。
 一日の大半をネットに注ぎ込み、夜更かしのせいで寝坊することもしばしば。次第にネットをするために部活を欠席して早く帰ってくるようになり、休日も一日中部屋にこもってネットに興じる。情緒不安定になって君江や春樹を罵り、家族の目の前で手首を切ったことも幾度かあったほどだ。次第に部屋から出てこなくなり、食事ができたからと呼びに行けば「部屋に入るな」と怒鳴る。迂闊に部屋のドアを開ければ物を投げつけることもあった。そして半年前の梅雨入りの頃、家具でドアをふさぎ、完全に部屋にこもってしまったのである。
 シュラインは君江と春樹の許可を得てパソコンの電源を入れた。すぐにインターネットに接続。春樹の指示に従ってブックマークの中からあかりのホームページを探し、表示させる。あかりのサイト「TAKERU's track」のスキンは黒地に涼しげな青の線が流れる無地のものだった。レイアウトにも絵文字やカラフルなアイコンはなく、いわゆる「女の子的な可愛らしさ」を感じさせない。今日のアクセス数はすでに千に届こうとしている。ずいぶんにぎわっているようだ。
 「結構メジャーなコミュニティなんですよ、ここ。あかりは一日千五百近くのアクセスを稼いでるけど、それでもランキング5位くらいなんです」
 春樹はやや皮肉っぽく笑った。「トップランカーは毎日何度も記事を更新して、記事への感想コメント――何十件も寄せられるんですよ――にひとつひとつレスをつけて、チャットやメッセの相手もせっせとしてるみたいです。そうしなきゃランキングトップになんかいられませんから」
 「そんなことをしていたら一日が終わってしまうじゃない」
 「そうでしょうね。だから、トップランカーはこのコミュニティの中に住んでるんじゃないかって噂する人もいます。じゃなきゃこんなにネットばっかできないでしょ」
 「コミュニティに住んでる、か」
 シュラインは顎に指を当てて液晶画面に目を戻す。
 コミュニティサイトにはつきものの「アバター」なる着せ替えCG人形も用意されていた。あかりのアバターは肩に届くあたりまで伸ばした茶髪、茶系統でまとめたハイネックにジャケット、スラックスという姿だった。ハンドルネームは「タケル」。
 「あかりちゃんは男の子として登録していたの?」
 「はい。ホームページの記事の一人称も“ぼく”で通してて。チャットでも男の子のふりをして遊んるんだって言ってました」
 「そう。まあ、コミュニティやオンラインゲームで別の性別のキャラを演じるのはそう珍しいことじゃないけれど」
 「TAKERU's track」には日記・雑記・掲示板のコンテンツが用意されている。主体は日記のようだ。“Diary”という部分をクリックすると“日常。”という日記が表示された。ほぼ毎日更新されているようだし、まずはこれから閲覧するのが無難であろう。今日もすでに更新がされている。テキストのほかに、テニスの用具やコートの風景の写真なども一緒に掲載されている。中にはこの部屋を写したものもあった。


2005.5.19 先輩に・・・
 一年生が入部してきた。
 ぼくにとって初めての後輩。
 うまく教えられるかな(-“-;)
 今日は雨だったから筋トレだけで終わり。
 早く外で思いっきりボール打ちたいなぁ☆


2005.9.22 試験終了!
 定期試験終わった━━━(゚∀゚)━━━!!!!
 やっと部活解禁。(注:試験期間中は部活禁止)
 体がなまってないか心配だったけど、サーブもよく入った。
 先生にも誉められた。新人戦に一番手で出してくれるってvv


2005.11.8 邪魔(笑)
 引退した先輩が遊びに来た。
 高校の推薦入試を控えてて大変なんだって。
 それなら家でおとなしく勉強してろよって感じ。
 誰も呼んでないんだから(≧∀≦)



 平凡な日記である。シュラインは君江を振り返って尋ねた。
 「あかりさんは、更新は常にこの部屋のこのパソコンで? 一階の共用パソコンは使わなかったんですか」
 「はい。みんなの見てる前で更新するのは恥ずかしいって言って」
 次にシュラインはハードディスクに記録されたフォルダを開いた。画像フォルダには日記で使われた写真がおさめられている。次にメールの履歴を確認。「タケル」の名でやり取りしているメールがぎっしり詰まっていた。
 このサイトはあかりが運営していると見てほぼ間違いなかろう。もしかしたら別人のサイトなのではないかという思いもないではなかったが、その疑いもこれで消えたことになる。
 サイトに戻り、雑記コンテンツの調査に入る。内容は写真とテキストを交えた軟式テニスのトレーニングや豆知識等。しかし更新頻度は低いし、手がかりになりそうなことは見当たらない。掲示板には仲間からのカキコミが盛んになされている。画面をスクロールさせるシュラインの手がはたと止まった。
 “元気出してください”
 “嫌いになんかならないよ”
 “どっちでもタケルさんが好きです”
 といったタイトルや内容のスレッドが今年の三月あたりから急に目立ち始めているのだ。何かあったのだろうか。
 そこでシュラインはふっと目を上げる。
 三月。つまり、春先。兄妹の仲が険悪になり始めた時期と一致する。
 「春樹、っていったっけ」
 シュラインは春樹を振り返った。「あんた、妹と仲が悪くなったそうね? 昔は仲良しだったっていうじゃない。どうして急に?」
 春樹の唇がかすかに震える。
 「・・・・・・ここを見てください。そのほうが早いと思います」
 春樹は答える代わりにマウスを取り、サイトの上端に表示されたドアのマークをクリックした。“秘め事。”という別の日記が表示される。隠しコンテンツのようだ。
 「やめて!」
 と甲高い叫び声を上げたのは君江だった。やめて、見ないでと髪を振り乱して繰り返す彼女にシュラインは顔を歪める。春樹が後ろから君江を抑え、シュラインに目配せした。
 シュラインは黙って“秘め事。”にポインタを合わせた。読まなければいけなかった。



2005.3.15 隠し事。
 みんなに言わなきゃいけないことがある。
 
 ・・・ぼくはみんなに嘘をついてる。
 
 言っていいのかな。
 言ったら嫌われるんじゃないのかな。


2005.3.20 本当の姿
 言ってしまおうと思う。
 ぼくを嫌いになる人もいると思う。
 「キモイ」と言う人もいると思う。
 だから・・・知りたい人だけ読んでほしい。
 
 ・・・

 ぼくは女だ。

 タケルなんて名前は嘘っぱち。
 リアルのぼくは、女。
 ぼくのこと嫌いになった?


2005.4.1 ありがとう
 みんな、ぼくの本当の姿を知ってもここに来てくれるんだね。
 ありがとう。
 受け入れてもらえないと思ってた。
 リアルでこんなこと言ったら絶対受け入れてもらえないよね。
 やっぱりここは居心地がいい。


2005.5.2 不要なもの
 また手首を切った。
 こんな体、いらないのに。
 女の体なんか・・・
 
 女としてなんか、生きたくない。
 こんな体、傷つけてやる。
 限界まで傷つけてやる。
 ぼくはこんな体なんかいらないんだ。


2005.5.9 理由
 ぼくが男として登録したのは、男に生まれたかったから。
 「女の子は世界一になれないの」。
 いつか、漫画でそんな台詞を読んだ。

 本当にその通りだった。

 ぼくは・・・お兄ちゃんにテニスで勝ったことがない。
 歳の差や経験のせいかと思ったけど、お兄ちゃんは「女が勝てるわけないだろ」って笑った。

 男子テニス部の子とも対戦したけど、勝てなかった。
 相手は二年の四番手。
 
 ・・・ぼくは一番手なのに。

 勝てなかった。
 相手のボールはすごく速くて、重かった。
 小学生の頃は、腕相撲をしたってドッジボールをしたって男子に勝てたのに。

 男と女の違いって、こういうことなんだな。
 女は男に勝てないんだね。


2005.5.23 恨み、憎しみ
 ぼくはどうして女なんだろう。
 どうしてお母さんはぼくを男に生んでくれなかったんだろう。
 どうしてお兄ちゃんは男で、ぼくは女じゃないんだろう。

 お母さんなんか大嫌いだ。
 お母さんが憎い。
 お兄ちゃんも大嫌い。
 ぼくは一生お母さんとお兄ちゃんを憎み続けるだろう。


2005.6.15 
 今日、ぼくは部屋に立てこもった。
 ここから一歩も出る気はない。
 外の世界では女でいなきゃいけないから。
 この世界の中でなら男でいられる。



 そして、日記に対しては友人たちのコメントが寄せられていた。



 “男でいいんだよヾ(@^▽^@)ノ”
 “関係ないじゃん。ネットでは男なんだから。あたしたちはネットのタケルさんを好きになったんだもん”
 “ずっとこの世界にいればいいと思います(^0^)Y”
 “女が嫌ならこっちで男として暮らしなよ(o'-^)b”



 すっかり陽は落ちて、窓の外には闇と冷気が忍び寄り始めていた。
 「引きこもりの原因はこれですね」
 シュラインは静かに君江を振り返った。涙を流し、子供がいやいやをするように首を左右に往復させながら後ずさる君江の姿は痛々しくすらある。
 ひどく負けず嫌いだったというあかり。そんな彼女にとって、努力してもどうにもならないことがあると突きつけられることは何よりもむごい仕打ちだったのかも知れない。
 「そうです」
 君江に代わって答えるのは春樹だ。しかしその顔は不自然に歪み、血色は失せている。
 「俺のせいでもあるんです。“女が男に勝てるわけないだろ”なんて言ったから・・・・・・」
 「それは――」
 シュラインが口を開きかけた時だった。
 ゆらり、とディスプレイの中で何かが揺らめいた。
 それはまるで陽炎のようで、濃密な力場が発生したかのようにも見えた。
 シュラインは激しく舌打ちした。退魔師の北斗は何をしている。秀でた能力は多々あれど、人外のものを相手にするスキルを持たないシュラインではどうなるか分からない。
 突如として激しいハウリングが耳をつんざいた。シュラインはたまらずに両耳をふさぐ。人間の神経を限界まで締め付ける高音に吐き気すら覚える。油断すれば意識ごと持っていかれそうだ。
 とろりとした陽炎は揺らめきながら天井にまで伸びる。徐々に黒色を帯び、頭らしきものをいくつか形成する。そのうちいちばん大きな頭にゆっくりと目が開かれた。燃えるような真紅の目だった。ただ、焦点は合っていないようだ。爛々とした目が虚ろに空をさまよっている。頭と目以外の部分はカルス(未分化細胞芽)のようにどろどろとしてほとんど形になっていない。しかしその姿はひどく脆弱だった。
 「いやあぁぁぁぁぁ!」
 と悲鳴を上げたのは君江だった。両手で顔を覆い、涙をぼろぼろ流しながらその場に膝をつく。本体らしき大きな影は悲鳴に反応して目を動かした。しかし焦点はまだ定まらない。目はほとんど見えておらず、音に反応しているのだろうとシュラインは察した。とするならそれほど能力の高い魔ではないようだ。
 「あかり・・・・・・あかり・・・・・・来ないで・・・・・・許して・・・・・・」
 焦点が合った。大きな影がぎょろりと君江を睨みつける。爛々と光る目に燃えるのは激しい憎悪。しかしどこか悲しげな色に見えるのは気のせいだろうか。
 「あんたが武山あかり?」
 凛とした声で呼びかけるが、影はシュラインには目もくれずに君江と春樹に飛び掛った。本体から枝分かれしている小さな影もそれに追従する。君江の悲鳴。春樹が咄嗟に君江に覆いかぶさる。シュラインは反射的に床を蹴って飛び出した。
 そのときだった。
 すさまじい咆哮が鼓膜を貫いた。轟音とともに耳元を銀色の風がかすめる。見覚えのある銀狼の式神が牙をむいて影に飛びかかった。
 「よかった、出てきてくれたぁ」
 開け放たれたドア口でへなへなと座り込むのは式神・璃狗(りく)の主、北斗だった。見知った顔を見つけて春樹が目を丸くする。
 「何やってるのよ、遅いわよ!」
 まさか感謝より先に叱責されるとは思わなかったのだろう、北斗は「ひえっ」と声を上げて身を縮めた。シュラインの怒りも分からないでもない。北斗との約束は四時だったのに、もはや時刻は六時に迫っているのだ。
 「遅れてわりー。事情は後で話すから」
 北斗は肩をすくめてぺろりと舌を出した。「今日の昼、春樹に頼んであの子のサイトも隅々まで見せてもらった。男の子のふりをしてたんだろ。サイトの内容とこの状態と・・・・・・ま、事情は大体呑みこめたよ」
 影に怯える君江の姿をちらりと見ながら北斗は言い、危ないから下がっているようにと続ける。しかしシュラインは北斗を制して黒い影を顎で示した。北斗は目を丸くした。小さな影はあらかた片付けたようだが、肝心の本体に璃狗の攻撃がまったく通用しない。咆哮で相手を縛りつけてその隙に牙と爪で襲い掛かるというのが璃狗の攻撃方法なのだが、影は璃狗の声にびくともしないばかりか爪も牙も素通りしてしまう。この影はあかりなのだから消すわけにはいかないが、せめて押さえ込む程度のことはしなければこちらが危うい。北斗が次の命令を逡巡するより早く、璃狗はシュンと音を立てて左の腕輪の中に吸い込まれていた。
 「おい璃狗! 出て来い! 戻って来いって! こら、璃狗ーっ!」
 懸命に呼びかけるが、腕輪はうんともすんとも言わない。
 「ピンチじゃないってことじゃない? “自分でなんとかできるだろ”って言いたいのよ、璃狗は」
 シュラインは自嘲気味の笑いを漏らす。北斗が璃狗を呼び出せるのは「絶体絶命のピンチ」の時だけだ。
 しかし次の瞬間、シュラインは自らの発した言葉にはっとした。
 「ピンチじゃない・・・・・・璃狗の攻撃が効かない、ってことは」
 シュラインの頭脳がフルスピードで回転を始める。顎に当てた長い指がかすかに震え、感情のたかぶりを物語る。
 「多分・・・・・・あの子、まだ人間なのよ」
 「何?」
 「あの子は完全に魔になったわけじゃない。カルスみたいなもの。人間から魔になる途中の段階。だからあんなに不完全な形で・・・・・・だとしたら、まだ少し人間の部分が残ってるんじゃ」
 だから璃狗の攻撃も効かないのだというシュラインの言葉に北斗はあっと声を上げる。しかし、今のあかりは完全に人間というわけでもない。人間でも、魔でもない。人間と魔の分岐点。まだ救いようがあるが、危険でもある。未分化細胞芽なら、ちょっとした刺激で人間にも魔にもなってしまう。
 ――・・・・・・う・・・・・・し・・・・・・
 二人はどちらからともなく顔を見合わせた。低い声が聞こえた。地の底から響いてくるような声だった。シュラインでも北斗でも、もちろん君江や春樹でもない。壁際に追い詰められた君江、君江をかばう春樹。その二人の前でゆらゆらとたゆとう影の声だと分かった。
 ――どうして・・・・・・ぼくを女に生んだの?
 ――どうして男に生んでくれなかったの?
 ――どうしてお兄ちゃんだけ男なの?
 ――男に生んでほしかったのに!
 「おい、おまえ!」
 激昂して怒鳴ったのは北斗であった。「いい加減にしろよ! それが親に対する態度か! 家族にどんだけ心配かけてると思ってんだ!」
 しかし影は北斗には目もくれず、じりじりと君江に迫る。やはり影の認識能力はそれほど高くないようだ。君江や春樹の声にだけ反応しているらしい。
 ――ぼくは男に生まれたかったんだ!
 ――お母さんがぼくを男に生んでくれさえすれば・・・・・・
 ――ぼくがこうなったのも、ひきこもりになったのも、全部お母さんのせいだ!
 ――全部お母さんが悪いんだ!
 「あぁぁああああぁぁぁぁ!」
 君江は甲高い声を上げて両手で頭を抱えた。「ごめんなさい、ごめんなさいあかり!ごめんなさい!」
 あなたを苦しめたのはあたしのせい、ごめんね、どうしてあげることもできない。髪を振り乱し、涙と鼻水を撒き散らしながら君江はその言葉だけを繰り返す。影の胴体からまた別の芽が発生し、揺らめきながら徐々に数と大きさを増していく。
 シュラインはぎりっと歯を鳴らした。
 「勝手なこと言ってるんじゃないわよ!」
 と君江が鋭く叫んだ。
 いや、君江ではない。君江の声を真似たシュラインだ。ヴォイスコントロールに秀でたシュラインの力である。それはもはや声帯模写の域に達しており、「真似た」などというレベルではなかった。
 影がぐるりと首を向けた。やはり家族の声に反応しているのだ。目がよくないのは好都合である。シュラインは激昂したふりをしてまくし立てた。
 「女だから、女だからって聞いてて腹が立つ。頑張ってる女性に対して失礼じゃない? “女だからしょうがない”って自分に言い訳してるだけでしょ。あんたなんかその程度の人間。こっちの世界に戻って来てもやっていけるわけがない! 一生そこにいていじけてればいいわ!」
 影の目が大きく揺れる。同時に激しい高音が室内を貫いた。「うあっ」と北斗が声を上げて膝を折る。それほど凄絶な音だった。影の胴体からぼこぼこと瘤のようなものが発生し、ゆっくりと異形の姿となる。
 ――そうだ。タケルはこっちの世界の人間だ。
 ――連れ戻したりなんかさせない。
 ――タケルは一生こっちにいるんだ、俺たちと一緒にな!
 瘤のひとつひとつがぐわんぐわんという低周波音とともに叫び、どろどろとした手を伸ばして本体の影を取り込もうとする。これがこのコミュニティに巣食う者の正体か。こいつらがネットの世界にあかりを引き込んだのだ。
 「くそっ、こいつらは本体と違って完全に魔物だな」
 だからさっきは璃狗が出て来たんだ、と北斗は耳をふさぎながら激しい舌打ちをする。あかりの影が瘤たちの触手に呑みこまれる。鳴り響く高音が激しさを増し、窓ガラスが真っ白になって砕け散った。天井の蛍光灯が破裂してガラスの粒子が降り注ぐ。鼓膜がびりびりと震える不快な感覚に顔を歪める。しかしシュラインは思った。神経を文字通りに逆撫でするこの高音はあかりの悲鳴だと。
 「そうよ。そのまま取り込まれてしまいなさい。一生そっちにいればいい」
 シュラインはきっと顔を上げ、瘤たちの中に埋まりつつあるあかりを睨みつける。
 「でもね、あんたみたいなどうしようもない娘でも待ってる人がいる。お母さんはあんたのせいでこんなふうになったの、それでもあんたに帰って来てほしいって思ってるのよ。じゃなきゃわざわざ興信所には来ない。お兄ちゃんだって、国体に出られるくらい優秀な選手だったのに部活を辞めてまでお母さんの代わりに家事をしてる! それもこれも全部あんたのせいよ!」
 シュラインは糾弾の手を緩めない。影の動きが止まる。
 「そうだ。そうだよ」
 北斗も懸命に呼びかける。自分の声は影に届かないと知っていても言わずにはいられなかった。
 「すぐには無理かもしんねーけど、戻って来て、外に出てみろよ! そりゃ辛い事もある、でも楽しいことも沢山あるんだ! 少しずつでいいから前に進まなきゃ! おまえにはこんなにいい家族がついててくれるんだぜ、何もこわかねえよ!」
 影の目がかすかに震えたように見えたのは気のせいだろうか。揺らぎを見越してシュラインは一気に畳み掛けた。
 「本当は助けてほしいんでしょ? 戻って来たいんでしょ? ネットの世界にずっといたいなら、どうしてドアの鍵を開けて行ったの? お母さんやお兄さんに気付いて欲しかったからでしょ? 助けて欲しかったからでしょ?」
 高音が限界域まで達した。耐え切れなくなったシュラインは両手で耳をふさいで膝を折る。影の本体と瘤の壮絶な戦いが始まった。先程まで押しつぶされる一方であった本体が徐々に勢いを盛り返し、瘤を斥けている。しかし瘤も瘤だ。ぼこぼこと分裂し、そのひとつひとつがざわざわと成長し、触手のようなものを伸ばしながら本体に襲い掛かる。本体が悲鳴を上げた。すさまじい高周波音だった。北斗が床に転がって悲鳴を上げる。シュラインも口を開くことすらままならない。
 「おばさん、いいのかよ!」
 頭を締め上げる高音の中で北斗は君江に怒鳴った。そうでもしなければ声も届かぬほど影の悲鳴は激しかった。
 「このままじゃあかりちゃんが呑みこまれちまうぞ! そしたらもう絶対戻ってこねえ! 二度と会えねえんだ、それてもいいのか!」
 君江の目が大きく揺れ、充血した瞳を濡れた膜が覆う。君江は声を上げてその場に泣き崩れた。北斗が叱咤して彼女を助け起こす。北斗に支えられ、君江はふらふらと影の前に進み出た。
 「あかり」
 君江はぼろぼろと涙をこぼし、影の前に両膝をついた。影の動きが止まる。虚ろな視線が君江に注がれた。
 「ごめんなさい・・・・・・私にはどうしようもないし、あなたが私と仲良くする気がないのもわかってる」
 飛び出そうとした北斗をシュラインが制した。見守るようにと目配せする。
 「それでも、私」
 君江は影の前で涙を流して泣きじゃくった。「あなたに会いたい・・・・・・」
 「俺も」
 春樹が初めて涙を見せた。「戻って来てくれ・・・・・・お願いだ」
 ――一瞬、薄氷のような静寂が室内を満たした。
 しかし次の瞬間にはその薄氷は粉々に砕かれていた。かつてない大音声が土台から家を揺さぶる。影の本体にとりついた瘤が悲鳴を上げ、ぼろぼろと崩れ落ち、消える。本体は狂ったような高周波音を発しながら激しく体をよじらせる。
 そして、人間離れした高音は徐々に人間の少女の悲鳴へと変わった。
 はっとして顔を上げたシュラインの目を白い光が射抜く。咄嗟に顔の前で両腕を交差させる。君江と春樹が何事か叫ぶのが聞こえた。激しい閃光に包まれて、シュラインも北斗も何も分からなくなった。



 シュラインはふっと目を開いた。
 体の下が固く、冷たい。頬を撫でる風の温度が夜の訪れを告げていた。
 ゆっくりと体を起こす。見覚えのあるベッド、机、本棚、散乱したコミック。依頼人の所に来ていたのだということをようやく思い出した。
 かたわらに倒れている北斗を揺り起こす。北斗は軽く呻いて目を覚ました。
 「あ・・・・・・れ?」
 北斗は目をしぱしぱさせながら部屋の中を見回した。「夢・・・・・・?」
 「そうでもないみたいよ」
 シュラインは自分の左側を顎で示した。サッシだけが残された窓ガラスと、飛び散った蛍光灯のかけらと――互いをかばい合うようにして倒れている君江に春樹、そして二人に抱かれた格好になって目を閉じている一人の少女の姿があった。
 それはまさしく、依頼を受けた時に写真で見たあかりであった。あかりの頬には赤みが差し、一筋の涙が光っていた。



 「まったく、死ぬかと思った」
 武山家を後にし、愛車の大型自動二輪の前でシュラインは息をついた。
 「たまたま助かったからいいものの・・・・・・。遅刻にもほどがあるわ。仕事を何だと思ってるの?」
 「あー・・・・・・それに関しては言い訳できないっす、ハイ」
 彼にしては珍しく、北斗は敬語を使って縮こまってしまう。シュラインは腕を組んで北斗を見下ろした。
 「さっき、“遅れた事情は後で話す”って言ってたわね。話してもらえる?」
 「えぇと」
 北斗は両の人差し指の先をちょんちょんと合わせながら上目遣いにシュラインを見る。「時間をね、勘違いしてたんです」
 「は?」
 シュラインはやや素っ頓狂な声を出した。
 「いや、あのですね、“16時に依頼者宅”合流ってメールくれたっしょ? それをですね、“6時”と読み間違えちまったんすよ。行の文字数の関係で“1”と“6”が文末と文頭に別れてたから。朝の6時のわけねえし、これは多分夜の6時のことだろうなぁと・・・・・・」
 はあ、とシュラインはひときわ大きな溜息をついた。
 「ほんとに、この子はもう・・・・・・」
 「“子”ってこたぁねえだろ。もう十七歳なんだ、ガキ扱いするな」
 と北斗は口を尖らせる。シュラインはもう一度大きく息をついた。それは精神的・肉体的、その他もろもろの疲労が一気に噴出したサインであった。  (了)





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 /  PC名  / 性別 /年齢 / 職業】
 0086   シュライン・エマ        女性  26歳  翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
 5698   梧・北斗(あおぎり・ほくと) 男性  17歳  退魔師兼高校生




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■         ライター通信          ■
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シュライン・エマさま


お初にお目にかかります。宮本ぽちと申す者です。
このたびはご注文いただきましてまことにありがとうございます。

ご指摘いただいた部分に関しましては、思わず「なるほど」と唸ってしまいました。
とはいえ、すでに公開してご注文を受けたオープニングを大きく書き換えるわけにもいかず、作中で補う形をとりましたことをお許しください。

エマさまのような女性は憧れですので、書いていて楽しく、同時に、書かせていただいたことを光栄に思っております。
字数だけなら短編小説並になってしまいましたが、最後までご覧くだされば幸いです。

今回ご参加いただいたこと、またお会いできることになったこと、大変嬉しく思っております。
現在鋭意作業中ですので、次の商品はどうかもうしばしお待ちくださいませ。


宮本ぽち 拝