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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


三下の明日はどっちだ!? VSジャックザリッパー!?
 今日も今日とて、三下は不幸の人生をひた走る。

 始まりはある日。
「ああ、困った」
 珍しく、敏腕編集長の碇麗香が困っていた。
 先程入った情報、警察もほとほと手を焼いてる事件がどうにもオカルトチックな雰囲気を醸し出して来たのにも拘らず、部下はほとんど出払い、取材に行ける者は居ない。
 かと言って、麗香本人にも自分の机から離れられない事情もあるし。
 だが、この事件はどうにも第六感を刺激する魅力がある。
 その名も『現代によみがえったジャックザリッパー』。
 ここ数日、東京の至る所で殺人事件が多発しているのだ。
 路地裏で発見される死体は女性ばかり。
 更に臓器を丸々持っていかれたようになって死んでいるのだ。
 犯人の手がかりはほとんど無い。
 そのため、警察の方でも捜査は難航、ほぼ手詰まりと言って良いくらいなのだ。
 それもそのはず、現実的な捜査では手の届かないところに犯人が居るのだから。
 それが犯人の唯一の手がかり。
 犯行に使われる凶器が大型の獣が持つ爪のようなものである事。
 これが判ったからと言って、解決には全く近付かない。
 東京に大型の獣がうろついているわけも無く、更にそんな凶器が何処に転がっているのか見当もつかない。
 現実的にはほぼありえない事件。
「だからこそ、惹かれる!」
 麗香が立ち上がって叫んだ。
「はひぃ!?」
 その隣に来た三下と言う社員の肩を掴んで。
「ちゃんと護衛も頼むから、取材、行ってきて」
「護衛ってなんですかぁ!? 怖いことじゃないんですかぁ!? 嫌ですよぉぉぉぉ!!」
 三下のそんな悲痛な叫びも、麗香の耳には届かなかった。

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「はぁぁ、何で僕がこんな……」
 諦め半分、というかほとんどが諦めのため息は痛々しく東京の街に消えた。
 時は夜。昼とは違う華やかさを見せる日本国首都東京で、哀れな男、三下は二人の男性、一人の女性を連れて歩いていた。
「ホント、皆さん頼みますよぉ」
 後ろを歩く三人に小動物のような目を向け、三下は今日幾十度目かのお願いをした。
 だが、後ろにいる三人、空木崎・辰一(うつぎざき・しんいち)と五代・真(ごだい・まこと)は顔を背けて噴出し、もう一人の神崎・真由香(かんざき・まゆか)は満足そうに微笑んでうなずいた。
「いやぁ、三下クン、よく似合ってるわよぉ」
 真由香は三下の肩をポンポン叩いて自分の作品を褒めるように言った。
 それというのも、三下は今、人生初の女装という行為を行っていたのだ。
 ジャックザリッパーは女性を狙うということで、月刊アトラスの編集長、碇麗香が思いついた『じゃあ三下くんを女にしちゃおう』作戦だが、それに真由香が悪乗りして二人で作り上げた女性となってしまったのだ。
 麗香と真由香の化粧の腕が冴え渡り、服のコーディネートの目が光り、女性の仕草の指導は壮絶を極めた。
 そうして出来た三下・忠子ちゃんは何処からどう見ても女性であった。
 そして、眼鏡を取ればそれなりにイケメンの三下だ。
 眼鏡からコンタクトに取り替えれば、ちょっと背が高めの美女が完成する。
「ううう、何で僕がこんな……」
 この三下の台詞もこれで何度目か。
 その度、辰一と真は噴出し、真由香は満足そうに頷くのだった。

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「それで、三下さんよぉ。どうやって切り裂きジャックを見つけるんだ?」
 真の問いに三下はやっと顔を上げてメモ帳を取り出した。
「あ、えっとですね。まずは現場になった路地の幾つかを回って神崎さんに霊視って言うんですか? そういうのをしてもらいます」
「ふっふ〜ん、まっかせなさい! お姉さんがバッチリ犯人の顔を拝んじゃうから」
 真由香が自身有り気に胸をそらせる。
 強調された部分に顔を染めながら、三下は説明を続けた。
「そ、そそ、それでですね、犯人の情報を得た後は、可能ならば次の犯行ポイントを予測および、先回り。出来なければ……ええと第六感を信じろとのことです」
「それは何ともアバウトな作戦ですね」
 三下の姿にいくらか憐憫をかけながら辰一が苦笑した。自分も女装候補に上がっていたことを後で知り、自分が女装しないで良かったと安心しつつ、三下に同情したのだ。
「次の犯行ポイントが特定出来なかった場合は甚五郎と定吉にも捜索を手伝わせましょう。きっと役に立つはずです」
「よ、よろしくお願いします。そして、犯人に接触したら……ぼ、ぼぼぼ、僕が直撃取材!? そ、そんな、無理じゃないですかぁ!」
 三下がメモ帳を見ながら編集室で仕事に励んでいるだろう麗香に叫んだが当然聞こえるはずも無く、聞こえたとしても逆らえるはずも無い。
 だが、これまで幾人もの女性を殺してきた相手に、今の三下の恰好で、取材。
 死亡フラグはこれでもか! という勢いで屹立している。
「編集長! 僕に死ねっていうんですかぁぁ!」
 うっう、と嗚咽を漏らしながら遂に泣き出してしまった三下を励ますように真が三下の肩を叩いた。
「三下さん、大丈夫だって! アンタが死なないようにするために俺達が付いてるんじゃないか」
「う、うう、でも五代さん……、神崎さんがいるなら僕が女装する必要なかったですよね……?」
「……っう……、それは、その……犯人とのエンカウント率を上げるとか……。まぁとにかく、何とかするから、気ぃ落とすなよ、な」

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 真由香は比較的新めの現場である路地を形成する建物の壁に手を当てて、目を閉じながら念じた。
 彼女の特殊能力の行使である。
 物体が経験した事を逆行して感知することが出来るのだ。
 それによって、この現場で起きた事件の全貌が、彼女に伝わることになる。

 見えてきたのは男性、というよりは男子といった方がしっくりくるような二人組みと、それに対して蛇に睨まれたような女性が一人。
 袋小路に追い詰められ、女性は二人組みを見て酷く怯えていた。
 それもそのはず、二人組みの片方、体つきの良い男子の背後には禍々しいオーラを纏った『何か』が居たのだ。
 両腕と顔を有し、下半身は全く無い。そして右腕が左腕に比べて異常にデカイ。多分、あの右腕で人を殺すのだろう。
 確かに、あの腕なら熊の腕だと間違われてもおかしくない。
 その『何か』は体つきの良い方の男子に取り憑く悪霊のように見えた。
「はっはははは! いいね、いいね、その顔! 面白ぇなぁ、おい!」
 体つきの良い方は高らかに笑うと、背後に居た『何か』を操り、女性の首をつかませ、持ち上げさせた。
 女性は完全に地面から脚を離され、首吊り状態になる。当然、呼吸もし難い。
 それの何が面白いのか、体つきの良い方も、もう一人の痩せ型の眼鏡をかけた男子も笑った。
「あはははは!! 誰も俺らを止められないぜ! これからずっとやりたい放題だ!」
「ふふふ、僕の情報と君の背後霊が居れば、何も恐れることは無いよ!」
 眼鏡の方は懐から手帳を取り出して声高らかに読み上げる。
「次は駅の近くにあるコンビニとビルの間にある路地で! その次は……」
 と、自分達の犯行予定場所を次々と読み上げる。
 体つきの良い方もそれを止めようとはせず、ただ笑い続ける。
 そして、眼鏡の方は5件目の犯行予定場所を読み上げた。
「最後は市内で一番デカいホテルの裏にある路地裏にでもするかな! これを聞いてるヤツが居たら、僕たちを捕まえてみろよぉ!!」
「ははは! お前の親父さんも馬鹿だよなぁ! 捜査の穴なんて普通、人に言っちゃいけないことを、お前が息子だからってペラペラ喋るとはよ!」
「刑事といってもウチの父親はただのハゲオヤジだよ」
 それを聞いて、真由香は口の端をあげた。
「ふふん、おねーさんがすぐに捕まえてあげるわよ、坊や達♪」

 そして真由香は壁から手を放し、なにやら神妙な顔つきの男性三人組に手を振る。
「終わったわよ〜」

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「やっぱり、本物の切り裂きジャックがよみがえったわけじゃないみたいよ。当たり前だけど」
 切り出しは切り裂きジャックを否定することから。
 どうやら他の三人も切り裂きジャックを否定している話をしていたようで、頷いて答えていた。
 真由香の言葉に、『やったぁ、切り裂きジャックじゃないんだぁ!』と一瞬安堵する三下だが、どの道殺人犯に直撃取材を敢行することに違いは無いのですぐに肩を落とした。
 そんな三下を無視して真由香は霊視結果を淡々と告げる。
「犯人は二人組み。眼鏡のヒョロいのと、多少体つきの良い子ね。どっちも高校生、男子って所かな。突然能力を得たみたいね。得意になってやり放題って感じだわ」
「若気の至りも人死にを出してしまうと許しがたいですね」
「というか、許せねえな。悪ガキにゃちょっとお仕置きが必要だぜ」
「お、穏やかにいきましょうよぉ」
 弱気な三下はやはり放っておき、真由香の説明に耳を傾ける。
「可視の霊体を使って殺してるらしいわね。確かに右腕が熊みたいだったわ。使役者は体つきが良い方。眼鏡の方は情報収集役らしいわ。手帳に警察の捜査網の粗がメモってあるらしいわね」
「そ、そんな情報何処から……?」
「父親が刑事らしいわよ。そこから聞き出したみたいね」
「捜査機密を漏らす刑事、か。日本の警察も堕ちたもんだな」
 真は嘲るようにため息をついたが、真由香に諭される。
「まぁまぁ、日本の警察の闇に憂う前に、まずは目前の事件の解決♪ ご丁寧に色々情報くっちゃべってくれたから、大体解ってきたわよ。次の犯行ポイント。三下クン?」
「は、はい?」
「この現場は新しい方から数えて何番目?」
「え、ええと、4番目ですかね。はい、間違いありません。4番目です」
 三下の回答を得て真由香は満足そうに笑む。
「ドンピシャね。5番目までの犯行ポイントを高らかに宣言するなんて、犯人もやっぱりまだまだ子供ね〜」
 自分が異能力を手にし、警察にも捕まらない事を過信し、天狗になった結果だろう。
 捕まえられるなら捕まえてみろという意味で、声高らかに予定している犯行現場を叫んだらしい。
「お手柄だぜ、神崎さん!」
「やりましたね!」
 その言葉を聞いて、そこにいる全員は顔を見合わせて笑った。……まぁ、三下は笑うよりも泣いていたが。

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 そんなわけで、一行は移動して別の路地裏へ。
 近くに来た時、向こうから女性の悲鳴が。
 駆けつけてみると獲物を前に『どういたぶってやろうか』と構える偽ジャックの二人組み。真由香に確認しても間違いないらしい。
「さぁ、出番だぜ、三下さん」
「頑張ってね、三下クン!」
「危なくなったらすぐに行きますから!」
 と、護衛の人たちに見送られる三下。
 怯えながらも
「あ、あの〜」
 と声をかける。
「あ? なんだ、テメ」
「コイツの連れかな?」
 三下を確認する二人組み。確かに体つきが良い男子とヒョロい眼鏡の男子の二人組み。
「え、ええと、げ、げげっげげ、月刊アトラスの、みみみ、三下というものですがががが」
 三下、顎がガチガチいってうまく喋れない様子。
「なんだぁ? 雑誌の記者? っは! 取材でもしに来たってか?」
 体つきの良い方は三下に近付き睨みつける。
「良い根性してんな、姉ちゃん」
 姉ちゃんという呼ばれ方をして、自分が女装していることを再認した三下。
「い、いいい、いえ! 決してこの恰好が馴染んでいたわけでは……っ!」
「はぁ?」
 意味不明な回答を得て疑問符を浮かべる体つきの良い方。だが、そんな事も彼の緩い頭からはすぐ抜ける。
「なぁ、コイツも殺っちゃった方がいいんじゃね?」
 体つきの良い方は眼鏡のヒョロい方に意見を仰ぐ。
 すると、眼鏡の方は
「そうだね。僕たちを見られたら生かして帰す訳にはいかないでしょ」
「ひぃぃぃ! やっぱりぃぃぃ!!」
 取材の暇なし。
 そして体つきの良い方の後ろに待機していた霊体がその巨腕を振り上げて三下に襲い掛かろうとしたのだが……!!
「ひぃぃ!」
 三下気絶! 戦闘不能!
 しかしその腕は三下を捉える事は無かった。
「な、なんだぁ!?」
 腕は硬い甲羅に阻まれ、その進行を止めていた。
「危ない危ない。神崎さん、三下さんを連れて下がっていてください。ここは僕と五代さんが」
 腕を阻んだのは玄武を宿した甚五郎の甲羅。
 甲羅は完全に腕をガードし、傷一つ付いていない。
「任しときな! いくぜ殺人犯のガキども! お仕置きをたっぷりしてやるぜ!」
 真は脚力を強化し、一瞬で体つきの良い方の首を掴んだ。
「っぐ! くそぉ!!」
 体つきの良い方は咄嗟に自分の身体を強化し、真を突き放す。
 それと共に、霊体を再び自分の後ろに戻し、両者は間合いを開けて対峙した。
「なんなんだよ! こんなの聞いてないぞ!」
 激昂する体つきの良い方。
 だが、その怒りを向ける先は目の前にいる。
「お前らもぶっ殺してやる!!」
「っは! やれるモンならやってみな!!」
「いきますよ!」

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「三下クンってば……おもい〜!!」
 戦闘が始まってしまった現場から気絶した三下を引っ張って遠ざかる真由香。
「これじゃあ護ってもらうどころの話じゃないわね」
 何とか被害の及びそうに無い場所までたどり着くと、再び戦場に戻る。
「ええ、と。……あ、いた!」
 今回の被害者の女性を発見し、戦闘のとばっちりを喰らわないように近づく。
 女性はぐったりと横たわり、まるで動く気配が無い。
「お〜い、生きてるぅ?」
 真由香が呼びかけると女性は『ううぅん』と唸った。どうやら息はあるらしい。
「大丈夫みたいね。さて、この娘も安全なところに連れて行かない……と?」
 ふと見ると、そこには眼鏡の方が隠れるように立っていた。
「ちょっと、そこの眼鏡クン?」
「な!? お前もあいつらの仲間か!?」
 眼鏡は驚いてあとずさった。
 臨戦態勢を取らないところを見ると、この眼鏡は非戦闘員であるらしい。
 だが、今回の一連の事件に関わっている人間であることに間違いは無い。
「よぅし、おねーさんが相手してあげるから、こっちいらっしゃい」
 真由香が挑発するが、眼鏡はやはり立ち向かおうとしない。
「ぼ、ぼぼ、暴力反対!」
「何を言うかな。自分で暴力ふるって人を殺したくせに」
「それは違う! 殺したのはアイツで、僕は……」
「命令してたのは君でしょうが。どっちだって変わらないわよ」
「う、うう、うるさい!!」
 インテリに見えて、どうにも頭が悪いらしい。
 真由香は呆れてため息をつくと、すばやく眼鏡に近付き、首の後ろ辺りを思い切り手刀で殴った。
 眼鏡は『ヴッ!』と蛙が鳴くような声を出すと、その場に倒れた。
「これでよし、と」
 真由香がそう呟いた瞬間、建物の壁に体つきが良い方がぶつかり失神した。
「うわ、五代クンってば強いのね」
 そしてその次の瞬間には稲妻が落ち、辰一が霊体を消し去っていた。
「空木崎クンもすごいわねぇ」
 それを見て真由香が開発するパワードスーツに雷撃発生装置をつけよう! と思い立ったかどうかは定かではない。
 そして、三人は拳をコツンと合わせて勝利の合図とした。

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「えと、そんな感じです」
「そんな感じ、だぁ?」
 後日、月刊アトラス編集部での話だ。
 三下はどうにかこうにか取材した内容を記事にしたのだが、それは麗香の逆鱗を嫌というほどなぞる事しか出来なかった。
「肝心の取材はほとんど出来ず、記事もほとんど護衛の三人から聞いた話。更に犯人は捕まってしまって話題性も右肩下がり。しかもこの記事も使い物にならないくらい面白くない」
 そう言って麗香が三下をバッサリ斬り捨てるのも編集部では見慣れた光景だ。
 その後、すぐにシュレッダーが起動するのもお決まりである。
「ああああ! 僕の原稿がぁ……」
「もう、この記事はいいわ。サンシタくんには次の取材に当たってもらうから」
「次って……?」
「そうね、とびきり遣り甲斐のある怖いヤツにしようかしら」
「や、やめてくださいぃぃぃぃ!」
 三下の受難は続く。

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「いやぁ、三下さんも辛い立場だなぁ。碇編集長も容赦ないなぁ」
「まぁ、碇さんも仕事ですし、三下さんには可哀想ですが、仕方ないというしか……」
「三下クン、がんばれ♪」
 遠巻きに見ていた護衛三人は、今回は三下を麗香から守ることはしなかったとさ。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【2029 / 空木崎・辰一 (うつぎざき・しんいち) / 男性 / 28歳 / 溜息坂神社宮司 】

【1335 / 五代・真 (ごだい・まこと) / 男性 / 20歳 / バックパッカー 】

【5787 / 神崎・真由香 (かんざき・まゆか) / 女性 / 24歳 / 研究員 】



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■         ライター通信          ■
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 神崎 真由香様、依頼に参加してくださって本当にありがとうございます! ピコかめでございます。
 初めての仕事なんで、色々と至らぬ点がありましょうが、生暖かい目で見てくれるととてもありがたいです。(ぉ
 紅一点お姉さん! 紅一点お姉さん!!(何
 豊満ボディをもっと動かしてみたかったですよぅ!!(危
 もっと色気が出るようなシナリオも作ってみたいですね! ドキッ! 水着だらけのなんたらとか!(ぉ
 もしその時が来たらよろしくお願いしますね。