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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


読者プレゼント★当選


★オープニング★

「…わかりました」

そう言い、電話を切ると、見目麗しきアトラス編集部編集長、碇麗香の眉間に皺がよった。
そしてさらに、デスクにて手を額に当て、悩ましげにため息をつく。
いや、本人はただため息をついているだけなのだろうが、周りから見れば憂いを帯びたその表情も美しくみえる。
が。
その麗香の反応に数人の編集員が気づくも、「触らぬ神に祟りなしっ!」との如く、誰も近寄ろうとはしない。

間もなくすると、いつものような状況に陥るわけである。

「ちょっと、三下くん?」

ニッコリと、しかし明らかに作り笑顔で三下忠雄を呼ぶ。
三下は条件反射の如く、「は、はいぃっ」と作業を取りやめ麗香のデスクに駆け寄った。

「先々月号の読者プレゼント企画、覚えてる?」
「はっはいっ。あの…『不思議体験一名様プレゼント』ってヤツ…ですよね」
「そう、それ。当選者を発表し、その当選者にアポは取れたの。
 で、肝心の『不思議体験』を行ってくれる、気功で空中浮遊させるおじいちゃんのアポも取れた。」
「は、はぁ」
三下が相槌を打つ。

「だけど、ね。そのお爺ちゃん、ギックリ腰になっちゃって来られない、って言うのよ」
「は、はぁ。」
「ってなわけで、不思議体験をさせてあげられる人物を今すぐ探してきて頂戴っ。
 当選者がアトラスを訪れるのは明後日。」
「え、な、なんで僕がぁ・・・・」

ギロリ。
麗香の目が光る。

「さささささ探してきますぅぅっっ!!」

ダダダダッ!と三下は外へと猛ダッシュしたのであった。


★救世主★

「とは、言ったものの…」
ダッシュして走り編集室から出て行く三下を見やりながら、麗香は独り言をつぶやく。
「彼が見つけてこれるとも限らないし、ねぇ。…不思議なことが出来て、読者を楽しませ、かつ、すぐに呼べる人…」
ピン!と麗香の頭の中に一人の人物の顔が浮かんだ。

即座に電話の受話器をとり、受話器を首と肩にはさみつつ、アドレス帳を開く。

トゥルルルルル…


電話の相手は、昼食に、とおでんをつまんでいる最中であった。
はふはふと熱いはんぺんを頬張っている途中、電話が鳴る。
胸をドンドンと叩き、熱いはんぺんを無理やり喉に流し込み、急いで電話に出る。
「はい、もしもし」
…出た!と麗香は心の中でガッツポォズ。
そして、自分の名も告げず、いきなりこう切り出す。
「もしもし、未婚の女性ですけれども」

「あぁ、碇さんですかー …ッ!?」
電話の相手は、思わず口走ってしまった言葉の重大さに一秒遅れて気がついた。
電話の先の真っ赤な怒りのオーラが電話越しからでも目に取れる。

「そう、碇よ。ちょっとしたお願いがあるの。今すぐ、いらしてくださるわよね?」
「や、あの、今のはちょっとした間違いでして〜〜」
明らかに涙声である。
「それにそれに、僕、今食事中で今すぐは…」

弁明するも、もう遅い。
スゥーっと息を吸い、もう一度麗香は告げた。

「い ら し て く だ さ る わ よ ね ?」

「…は、はい…」

かくして、うっかりと言葉を滑らせてしまった宇奈月・慎一郎(うなずき・しんいちろう)は渋々アトラス編集部に訪れることになってしまったわけである。


★ご相談★

「と、いうわけで」

アトラス編集部編集長、碇・麗香(いかり・れいか)が、集まった三人の男性、鈴森・鎮(すずもり・しず)、宇奈月・慎一郎(うなずき・しんいちろう)、志羽・翔流(しば・かける)を前に、改めて趣旨を説明する。

「まさか、ボランティアで三人も集まってくれるとは思わなかったわ。感謝するわ」
と、ニッコリ微笑む麗香に、「ボランティアぁ!?」と声を上げたのは翔流。
「なぁ、三下さん、あの時したギャラの交渉はっ?」
麗香の隣で縮こまり、今にも泣き出しそうな三下がフルフルと震えている。
「あ、あの、気孔のお爺ちゃんの分のギャラが回ると思ってたんですが…」
「あたしは、ギャラの話なんてしてなかったわよね?三下くん?」
ギロリと横目で三下をみやる麗香。
「そういうわけで、申し訳ないけど、三下くんのポケットマネーからギャラは貰ってちょうだい」
「ん〜〜、まぁ、三下さんがくれるっていうんなら…」
翔流が三下を見ると「わ、わかりましたぁ」と返事をする。勿論、涙目だ。

「でもさ、なんで体験は明後日なのに、今呼び出されたんだ?俺は暇だったから別にいーけど」
「そうですよ、大切なランチタイムの時間を割いて来ましたのに…」
そう麗香に訴えるのは鎮と慎一郎。
それに対し、麗香が返答する。

「勿論、その不思議体験がかぶらないためよ。そして、不思議体験は時間をずらして個々にやっていただくわ。
 その時間の打ち合わせ。あと、今回の体験者である当選者、和田・音彦(わだ・おとひこ)君の情報を与えておこうと思って。」
麗香はそう言いながら、簡単にプロフィールなどをまとめた書類を三人に手渡す。

和田音彦、16歳学生。平凡な都立高校生。
読者アンケートの内容によると、以前からアトラスを愛読しており、不思議な現象に興味は持っているのだが、自分がそのような現象に体感したことがない。
そのため、アンケートに応募。

「普通の少年…だな」
「アトラスを愛読、という時点で普通じゃない気もしますがねぇ」
翔流のつぶやきに慎一郎がポロリと発言をしてしまい、またも麗香に睨まれる。
「ま、とにかく面白そうじゃん♪俺、頑張るっ!」
ニコニコと、鎮が答えると、麗香もふんわりと笑顔で答えた。
「それじゃあ、明後日、書類に書いてある場所と時間集合で。三下くんが待ってるから、みんな、よろしく頼むわね」

その笑顔に見送られ、三人はアトラス編集部を後にした。


★ご対面 3★

鎮、翔流の『不思議』に大満足な音彦と、案内役の三下が最後に向かった先。
それは、慎一郎の待つ、翔流がいた場所とはまた違った広場。
二人が急いで駆けつけると、慎一郎は優雅にベンチに佇んでいた…
おでんを食しながら。

「す、すみません、お待たせしちゃいましてっ!」
三下がペコペコと謝りながら駆け寄ると、慎一郎ははんぺんを飲み込んでから答える。
「いやいや、大丈夫ですよ。美味しいおでんを食べることも出来ましたし。」
そして、慎一郎が後ろにいた音彦に気づく。
「はじめまして、宇奈月慎一郎と申します。今日はよろしくお願いいたしますね、音彦クン」
柔らかく微笑む慎一郎に、音彦もはにかみながら「よろしくお願いしますっ」とペコペコお辞儀をした。

「さて…音彦くんはクトゥルフ神話はご存知ですか?」
突然の質問に音彦はドギマギしながら答える。
「え、えと…確か、小説世界を元にして作られた、架空の神話…??」
「はい、そうです。流石アトラスの読者さんですね」
ニッコリと慎一郎は答える。
「それでは、僕が見せる『不思議』、存分に楽しんでくださいね♪」

そう言うと、慎一郎はおもむろにカバンからノ−トパソコンを取り出した。
「このパソコンにはたくさんの不思議が詰まってるんですよ〜」
嬉々として話す慎一郎に、興味深深の音彦と三下。

「それでは、クトゥルフ神話、ドリームランドからのお友達を呼びますねっ」
慎一郎はカタカタとキーボードを軽快に叩き、そして叫ぶ。

「いでよ!夜のゴーーーント!!!!!!!!」



ボワワワワワワワワワワワワワワワワワワン!!!




数メートルはあろうかと思われる大きな砂煙が巻き起こる。
そして、その中から徐々に徐々に黒い影が現れる。

「どうやら、成功のようですねぇ〜」
フゥー、と額の汗を拭う慎一郎。そして音彦と三下でその噴煙がおさやむのを待つ。
その間、慎一郎が音彦と三下に説明をする。
「夜のゴーントというのはですね、真っ黒い羽に尻尾、角…蝙蝠のような、龍のような…そんな生物なんですよー」
へぇぇ、と二人が感心している。
そろそろ姿が見え始めた…と思ったら…音彦が、徐々に現れた生物を恐る恐る指差す。

「あ、あの、羽も尻尾も角もついてないみたいなんですがー…」
「へ?」
と、慎一郎と三下が振り返ると、そこにいたのは…

「嗚呼ッ!!!何故っ!?なんで、『夜のゴーンタ』がっ!?」

数メートルはある、ジャンボな気ぐるみ?いや、生物?とにもかくにも、その「夜のゴーンタ」の目つきは非常に険しい。と、いうか明らかに睨んでいる。

「こ、この生物は予定とは違うんですかっ?あ、あの、確かに不思議ですけど…ちょ、ちょっと怖い、です…」
音彦も三下も怯える中、慎一郎は至極幸せそうに言う。
「何を言うんですかっ!こんなにも愛らしくてプリチー♪なのにっ。ゴーンタさんに失礼ですよっ」
そう反論し、擁護する慎一郎であった。が、当のゴーンタは…

「グモモモモモモモモモモモッ!!」

ご機嫌ナナメ、である。
「夜のゴーンタ」という名であるにも関わらず、夕暮れ時に召還されたのが気に食わなかった模様。

ヒョイッ、と指…どころか凹凸のないその手で器用に慎一郎をつかみ上げる。
そして、まるでお手玉かの如く、慎一郎をグルングルンと両の手で回す。

「あ〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜たぁすけてぇ〜〜〜!!」

慎一郎の絶叫が響く中、音彦と三下はオタオタとするばかりである。
そして最後に、ポイッと投げられた慎一郎は、見事に三下にクリーンヒット★した。

満足げにそれを見ると、自力でドリームランドに帰っていく「夜のゴーンタ」。

失神する慎一郎と三下を、音彦は必死で揺さぶった。


★それから数日後★

無事(?)に和田音彦に不思議を体験させることが出来た鎮、翔流、慎一郎の三人は、またしてもアトラス編集部編集長、麗香に呼び出された。
「三人とも、こないだはお疲れ様。助かったわ。」
そうお礼を言う麗香に、
「俺も楽しかったぜ!」
と明るく答える鎮。
「次に会うときにはもっと凄いもん見せたいし、精進しなきゃなっ」
と、嬉々として答えるのは翔流。
そして、なぜか全身包帯グルグル巻きの慎一郎と三下。

「そうそう、音彦くんから手紙が来たから、読み上げるわね。」

『アトラス編集部の皆さん、三下さん、鈴森さん、志羽さん、宇名月さんへ

 先日は大変お世話になりました、和田音彦です。
 皆様には凄く貴重な経験をさせていただいたり、拝見させていただいたり、と
 今までに見たことのない世界を垣間見ることが出来て、とても充実した一日でした。
 鈴森さん、今度は人間の形態でお会いしたいです!
 志羽さん、龍以外にも氷の彫刻は作れるのでしょうか?また見たいです!
 宇奈月さん、お体は大丈夫ですか?本当の夜のゴーントも見たい!とは思いますが
 それよりも宇奈月さんと三下さんのお体が心配です。

 本当に、不思議な体験を皆さんありがとうございました!
 僕、将来は必ずアトラスの記者になりたいと思います!
 そして、これからもアトラス愛読させていただきます!』

そう、満足そうに麗香は手紙を読み上げた。
「本当に、三人ともありがとう。また何かあったときはよろしくね」
ニッコリと笑う麗香に

『アトラス編集部員はやめておいたほうがいい…』

と思う、鎮、慎一郎、翔流プラス三下であった。


★END★


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【2320/鈴森・鎮/男性/497歳/鎌鼬参番手】
【2322/宇奈月・慎一郎/男性/26歳/召喚師 最近ちょっと錬金術師】
【2951/志羽・翔流/男性/18歳/高校生大道芸人】

【NPC/和田・音彦/男性/16歳/夢いっぱいな男子高校生】

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■         ライター通信          ■
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はじめまして!新米ライター、千野千智と申します!
この度はこのような新人にPC様をお預けくださりありがとうございました!!

宇奈月さんの個性が素敵すぎで…大好きですっ!!
クトゥルフ神話、名前程度しか存じてなかったもので、自分なりに調べたりはしたのですが…
PC様のイメージ同様、違っていたら本当に申し訳ありませんっ!!
夜のゴーンタ…必殺技名は『秘技!お手玉落とし!』でお願いします★(ネーミングセンスなさすぎ…)

ちなみに、個別部分が多くなっておりますので、もし気になりましたら
他のお二方の『不思議体験』もぜひご覧くださいませ♪

ご発注、本当にありがとうございました!
よろしければ、またお会いできることを願って…では!!

2005-12-08
千野千智