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<東京怪談ウェブゲーム あやかし荘>


ビンゴでGO!
●オープニング【0】
 12月中旬のあやかし荘。間もなくクリスマスというこの時期に、忘年会が行われていた。まあクリスマスツリーなんかも置かれていたりするから、もはやごちゃ混ぜなんだろう。
 持ち寄ったり作ったりした料理やお酒を飲み食いし、いい具合に盛り上がってきた頃に今回のメインイベントとも言うべきゲームが始まった。
「第2468回チキチキビンゴゲーム大会〜☆」
 参加者の1人である瀬名雫が進行役を務め、ビンゴゲームを行うのである。なお、回数については気にしないように。
「みんなー、ビンゴカードは作ってきたかなー? 作ってない人は今すぐ作ってねー♪」
 と雫が言うと、参加者たちは用意してきたビンゴカードを一斉に取り出した。そう、今回はビンゴカード自作なのである。
 本来は数字の配置にルールがあるのだが、今回は1から75までの好きな数字を5×5マスに自由に配置していいことになっている。ただし、中央のマスはフリーなので最初から空いている状態だ。
 見れば雫はもちろん、あやかし荘管理人の因幡恵美や嬉璃もビンゴカードを持っている。三下忠雄は忘れていたのか、慌てて今作っている所であった。
「縦・横・斜め、どこか4つ並べばリーチ、1列揃ったらビンゴのコールを忘れないでねっ」
 雫が参加者たちに念を押した。
「ビンゴ成立したら賞品の抽選くじを引いて獲得賞品決定だよ。1回成立した人はもうビンゴ成立しても賞品はもらえないけど、ゲームが終了した時にもっともマスが開いてた人はもう1度賞品の抽選くじが引けるから、最後までちゃんとチェックしてね」
 なるほど、運がよければ2回賞品がもらえる訳か。無論、賞品がもらえずに終わる者も居るだろうが。
 数字の抽選はよくあるビンゴ抽選器を使用する。ぐるっと回せば数字の書かれた玉が出てくるあれだ。
 さあ、楽しいビンゴゲームの始まりだっ!

●参加者たち【1】
「零ちゃん、武彦さん、カードちゃんとある?」
 割烹着姿のシュライン・エマが草間零と草間武彦に各々確かめた。事務所で作ってきたのを、よもや忘れてはいないだろうかと。零はともかく、草間ならあり得る話だし。
「はい、ちゃんとここに」
 零がポケットから折り畳んだビンゴカードを取り出して見せる。はい、零はオーケー。
「俺もある」
 すっとビンゴカードを見せる草間。こちらも問題なしで、シュラインがほっとした表情を見せた。
「よかったわ。じゃ、三下くんが作ってるうちに空き缶や空き瓶片付けてくるわね」
 と言ってシュラインは立ち上がり、テーブルの上の整理を始める。その様子を見てぽつりと草間がつぶやいた。
「いつもながら、よく動くよな……あいつは」
 ここに来てから草間が見ているだけでも、ちょこちょことシュラインは動いていた。料理や飲み物を並べたりはもちろん、差し入れで自作のきな粉と餡子のロールケーキや手羽先スペアリブを持ってきていたかと思うと、あやかし荘に来てからも生ハム使ってサラダを作っていた。草間でなくとも、たいしたものだと言いたくなる。
「……本式だな」
 隣から草間のビンゴカードを覗き込み、黎迅胤が意外そうに言った。迅胤は草間興信所を訪れていた時に、一緒にこのパーティに誘われたのである。
「一応はな」
 ニヤッと笑う草間。どういう意味かというと、実はビンゴカードの数字の並びは本来規則があったりする。1列目には1から15、2列目には16から30……というように15刻みの範囲で数字が並んでいるのである。市販のビンゴカードを手にする機会があれば、ぜひ確かめてもらいたい。
 で、草間のビンゴカードはその規則に乗っ取って作られていたので、迅胤は『本式だ』と言ったのである。
「もっと適当に作るかと思っていたんだが」
「お前、俺のこと誤解してるだろ?」
 迅胤の言葉に草間が苦笑した。と、零が草間にわくわくした様子で尋ねてきた。
「賞品って何なんでしょうね」
「俺に聞かれてもな。ここの奴らに聞いたらどうだ?」
 ごもっとも。さっそく質問先を恵美に変える零であった。
「賞品は何ですか?」
「え? それは……」
 恵美が嬉璃を見た。どうやら賞品担当は嬉璃であるらしく。
「ふふふ、当たってからのお楽しみぢゃ」
 しかし嬉璃はもったいぶって教えてくれない。だがそのやり取りを何気なく見ていた迅胤は見逃さなかった。嬉璃の後ろに、あの本があることを。
(あれを使ったか)
 その本の名は『素人でも安全な裏取引通販』、先日迅胤が嬉璃へ送ったものである。思わず迅胤は苦笑い。
 確実に言えるのは、賞品に妙な代物が混じっているということだろう。
「出来ましたぁっ!!」
 大声出す三下。ようやく三下のビンゴカードが完成した。
「よーっし、それじゃあビンゴゲームの始まり始まり〜☆」
 雫がゲームの開始を宣言する。シュラインがパタパタと戻ってきて、割烹着姿のまま正座してビンゴカードを手に持った。
「それでは記念すべき最初の数字は〜」
 雫がビンゴ抽選器に手をかけて、ゆっくりと回し始めた。

●レッツ・ビンゴ!【2】
 ころころころ……と、転がって出てきた数字は17。皆一斉に自らのビンゴカードをチェックした。
「えっと……あ、あったわ」
「ありました」
 あったと口にしたのはシュラインと恵美の2人だけ。やっぱり最初から全員が数字あるというのはないようだ。
「どんどん行くよ〜♪」
 続けてビンゴ抽選器を回してゆく雫。次の数字は9、その次が21だ。最短ならここでリーチが出る可能性もあるが当然ながらそれはなく、普通に抽選は続いてゆく。
 4つ目の数字は20、5つ目が5。まだリーチもない。3つ並んでいるのは雫に嬉璃、そして意外にも三下であった。ちなみにもっともマスが開いているのは恵美で、中央のフリーを含めて4つである。
 そんな中、やや不機嫌なのが1人。草間だ。
「武彦さんどうしたの?」
 シュラインは草間が憮然とした表情になってきていることに気付いて声をかけた。
「まだ1つもない」
 そう、これまでの5つの数字のどれもが草間のビンゴカードにはなかった。
「ビンゴはまだ始まったばかりだ」
 と迅胤が草間に言う。草間は無言で頷いただけだった。
「さあ、リーチはいつ出るのかな〜?」
 数字の抽選は続く。そして15個目の数字に29が出た時だ。シュラインが宣言した。
「リーチだわ」
 シュラインのビンゴカードの縦3列目に4つチェックがついていた。
「はーい、初リーチ出ました〜! 次でビンゴになっちゃうのかな?」
 雫がビンゴ抽選器を回した。16個目は66。シュラインからビンゴのコールは……ない。新たなリーチの声もなかった。
「雫よ、どんどん続けるのぢゃ!」
 嬉璃が雫に抽選を促した。17個目の数字は30。嬉璃が宣言した。
「リーチぢゃ!」
「……あ、僕もです」
 少し遅れて三下がおずおずと手を上げる。おやおや順調ではないか、あの三下が。
「零ちゃんどう?」
 シュラインが零に尋ねた。
「ぱたっと止まってますねえ」
「武彦さんは?」
「聞くな」
 どうやら2人とも芳しくないようで。では18個目の抽選へ。
「次は33で〜す!」
 雫が出てきた玉を手に取った。ビンゴコールはなく、新たなリーチもない。さあ、どんどん行こう。
「あら、またリーチね」
 19個目は2。ここでシュラインが2つ目のリーチとなる。今度は左上から右下にかけての斜めのラインだ。
「あっ、あたしもリーチだよっ☆」
 雫にもリーチ発生。ラインはシュラインと同様だった。
「リーチぢゃ!」
「ようやくリーチです」
 20個目は31。ビンゴ成立はまだなく、嬉璃が2つ目のリーチ、恵美もリーチとなった。これでまだリーチにも届いていないのは、シュライン、草間、迅胤の3人。
「ふう……リーチだ」
 23個目は71。ここで迅胤もリーチとなる。が、シュラインが3つ目、雫も2つ目、嬉璃もその前に3つ目のリーチとなっていた。
 そして抽選は進んで30個目。出た数字は45。ここに至って草間も初のリーチとなった。
「リ……」
「ビンゴ〜ッ!!」
 しかし、草間のリーチの声を掻き消すように雫がビンゴを宣言した。ビンゴカードを高らかと掲げて。左上から右下にかけてのラインであった。
 パチパチと拍手の起こる中、雫が賞品の抽選くじを引いた。
「ええっと、チョコレート詰め合わせ? やったぁ☆」
 とても喜ぶ雫。やはり女の子は甘い物が好きらしい。
「普通の物ぢゃな……つまらぬ」
 ぼそりと嬉璃がつぶやいた。ちょっと待て、普通でない物があるんだな、あるんですね?
「やっとリーチになったのにな」
 迅胤がぽむと草間の肩を叩いた。草間は何も答えなかった。しかしその慰めの言葉をかけた迅胤に、次の31個目でビンゴが成立したのが何とも皮肉で。数字は23であった。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか」
 物騒なことを言いながら賞品の抽選くじを引く迅胤。
「数学記号携帯ストラップ……何だ?」
 迅胤が首を傾げる。すると嬉璃が得意げに言った。
「冬美原でしか売ってない物を、どうにか入手出来たのぢゃ。貴重ぢゃぞ」
 貴重……なのかなあ?

●楽しい時間【3】
 それからもビンゴの抽選は続き、全員が何かしら賞品を手に入れるまで終わらなかった。
 恵美が37個目、三下が41個目、シュラインが42個目、嬉璃が49個目、草間が50個目、最後に零が54個目でビンゴ成立となった。
 手に入れた賞品は、草間が栄養ドリンク1ダース、恵美が数学記号携帯ストラップ、零が弁当箱、嬉璃が1メートル50センチほどのロープ。そして、悩める者が2人。
「……どこで使うんですか?」
 三下が賞品のゲートボールスティックを手に悩んでいた。そりゃやっぱり、早朝から老人に混じって試合するしかないのでは。
「つけろ……と?」
 シュラインも悩んでいた。目の前にあるのはコスプレ用猫耳。触り心地ふあふあの白い猫耳で、片耳ずつ独立したタイプであった。
「結構似合うんじゃないか?」
 草間がシュラインに無責任なことを言った。
「……これつけて引っ掻いてやろうかしら」
 シュラインは草間をちらっと見て、ぼそっとつぶやいた。そのつぶやきは草間には聞こえない。
「ふーむ、まだ面白い物が残っておるのぢゃが……」
 皆の賞品を見回して嬉璃が言う。猫耳以上がありますか、そうですか。
「それじゃあ最後! 一番マスが開いたのは誰かな〜? フリーも1個で数えてね☆」
 雫が皆に問いかけると、一斉に数を数え出した。その結果、もっともマスが開いていたのは迅胤だったのだが何故か固辞する。そのため次点だった恵美がもう1つ賞品をもらえることとなった。
 恵美の得た賞品はチョコレート詰め合わせ。甘い物に雫同様ほくほく顔である。
「むう、スペアタイヤは出ぬか」
 残念そうに言う嬉璃。……スペアタイヤ? そんなのもらってどうしろというんですか、嬉璃さん。
「これにてビンゴゲーム終了〜☆ また次回をお楽しみにね〜♪」
 最後この雫の挨拶でビンゴゲームも無事終了。一同はまた残りの料理や飲み物に取りかかるのであった。
 大変楽しい時間がそこには流れていた。

【ビンゴでGO! 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま)
     / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員 】
【 1561 / 黎・迅胤(くろづち・しん)
                 / 男 / 31 / 危険便利屋 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全4場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・大変お待たせさせてしまい本当に申し訳ありませんでした。ここにようやくあやかし荘でのビンゴゲームの模様をお届けいたします。もっと大人数でしたらまた違った流れだったのでしょうけど、今回はこのようになりました。
・ところでビンゴの数字と賞品の抽選ですが、実際に1つ1つ抽選しました。なので、こちらでいじくったというようなこともありません。獲得賞品の詳細につきましては、アイテム内容を見ていただければよいかと思います。
・シュライン・エマさん、99度目のご参加ありがとうございます。予想的中、例の通販カタログからの品物も用意していました。残念ながらあまり出ませんでしたけどね。ちなみに猫耳はそのカタログからの品物だったりします。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。