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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


滅びの歌 〜灰色の呪い、終焉の時より〜


 重く空を覆う冬の雲は、今にも雪を降らせそうで。
 今だ残る木の葉に白い霜が張り付いて、まるで樹氷を思わせる。
 夜明け前。
 明かりの灯る窓。
 黒い乗用車が停まり、二人の男達が慌しくビルの中に入っていく。
 そして、不機嫌を絵に描いたような男‥‥‥草間武彦‥‥‥が彼らを出迎えた。入れ、との彼の言葉は男達との近しい関係を表している。
「まったく、常識を考えろ。どこの誰がこんな時間に予約をいれるんだ?」
「ここの俺だ。文句言うな、緊急で割増料金払うっていってるだろう」
 向かい合って腰を掛けた二人の間に小さな火花が飛ぶ。その台詞を発した依頼主と思しき男たち、その大きい方、彼の名前は野津。
 下の名前は無い。聞いた事が無い。あるのかも知れないが、知ったことでもなかった。
 彼は民間のセキュリティ会社に勤める会社員で表向きは要人警護。しかし本業は海外で誘拐された人間の救出や、必要と折らばクーデターの手伝いまで‥‥‥まあ、そういう荒事を行う会社、というより組織の男だ。ちなみに本社はモナコにあるらしいが。
「報酬は割増料金込みで一千万」
「ちょっと待て。なにをやらせるつもりだ!?」
 彼らのような非合法スレスレ、あるいはそのもののような会社に依頼をするのならば、そんな金額は当たり前、或いは安い物なのかも知れない。ただしここはただの探偵事務所だ。
「テロの阻止をお願いしたい」
「そういう物は警察の仕事だろう。お門違いって物だ」
 草間がそういった時、小さい男のほう、今村が鞄からモニターを取り出してテーブルの上に置いた。
「我々のエージェントでは些か荷が勝ちすぎる依頼のようでして。と、言うのもこのテロ集団は今世間を騒がしている何教原理主義者では無く。魔術師による世界統治を唱える集団なのです」
「は?」
 あまりに現実から遊離した話に戸惑いを隠せない草間だったが、この事務所にたむろしている面子の事を思い出し、頭痛を覚えてこめかみを抑えた。
「恥ずかしい話だが、この話を受けて彼らのアジトを急襲したうちのエージェントは返り討ちにあって全滅したようだ。全員が武装していたにも拘らず」
 必要であれば、国内でも重装備を揃えてのける連中だ。日本の平和神話は崩壊して久しいとは言うがそれでもやはり、アメリカは言うに及ばずヨーロッパ諸国と比べてもその規制能力は群を抜いている。そんな彼らのチームが全滅した、という話である。
「だから、ふざけるのも大概にしろよ。俺はただの探偵だ。お前等がもて余すような事件をどうにかできる訳も無い」
 あきれ果てて、背もたれに体を投げ出す草間。
「まあ‥‥‥話だけでも聞いてくれないか。歌手のAYURIは知っているな?」
「ああ、知ってる‥‥‥って、依頼を受けるとはいってないぞ」
 草間が知っているのもまあ当然と言えば当然の、今や日本のみならず、アメリカやヨーロッパでもミリオンを飛ばす歌姫、それがARURIだ。
 草間のツッコミには動じる事も無く話を続ける野津。
「半年前にあった事故のショックで声が出なくなり、一時期引退も危ぶまれた。だが、明後日TKyドームで復帰ライブを行う事になっている」
「それがどうした」
 そんなライブに興味も無いと言った様子で草間は首を振る。
 一瞬の沈黙の後、うめくように野津は言葉を続けた。
「‥‥‥そこで、五万五千の人間が溶けて消える」
 いきなり核心に話を進める野津。こういう事を冗談で言う男ではない。いや、言える様な台詞でもないだろう。突然張り詰めた空気の中、搾り出すように問う草間。
「どういう‥‥‥ことだ?」
「AYURIと言う人間に強力な呪いをかけた人物がいる。半年の期間はその呪いを完成させるための準備期間だったらしい」
「呪い?」
「ああ、彼女の声を聞いた人間はゆっくりと分子の結合を解かれて、存在ごと消えて失せる。幸いな事にテレビの類は入らないようだが、それでも観客は」
「有り得ないとお思いでしょうが、草間さん。突入部隊の装着していたビデオカメラの映像です」
 野津の言葉が終わらないうちに、今村がそう言ってビデオを再生する。その中には術で攻撃され、次々とブラックアウトする映像が納められていた。トリックを労する必要が野津の背後の組織にあるとも思えない。これだけの術師を集めていることの意味を草間は考える。
「この‥‥‥情報はどこで手に入れた? お前等が依頼されたのか?」
「情報はタレコミだ。テロ集団の中にAYURIの熱狂的なファンがいてな。ライブを中止するように警告のメールを送ってきた。そして、その呪いによるテロを起こそうとしている組織のデータも同時にな。調べていくと情報は真実で、我々はテロ集団の壊滅作戦を実行、見事に失敗というわけだ」
 何か思案顔で草間は目を瞑ってそれを聞いている。
「草間さん、この件請け負ってはいただけませんか? その集団を壊滅というより、呪いをコントロールしている人間を始末すれば、呪いは発動する事無く終息するとの情報です。よって、我々の依頼内容もズバリそれとなります」
 今村のその言葉が終わってしばらく、目を瞑ったまま考え込む草間。
 目を開き、そして。
「もし依頼を受けなかったら、どうなる?」
「ファンの皆様方には申し訳ないがAYURIを始末する。一つの命で五万五千の命が購われるのだとしたら、安い物だろう。もちろん、受けて貰ったとしてもセーフティは掛ける。出来れば我々としても無実のアーティストを手に掛けたくは無い」
 野津がそう言った、その時だった。
 事務所のドアが無造作に開かれて、何人かが中に入ってくる。
 身構える野津、そして今村。だが、草間は苦虫を一万匹位噛み潰したような表情で、彼らを睨み付けていた。
「お前等、聞いていたのか!?」
「草間さん、その依頼‥‥‥‥‥‥‥‥‥!!」

 この後、正体が語られる『終焉の灰色』。
 ある中近東の国家間の戦争において、敵そして味方ごと戦場から消し去ったという伝説。余りの壮絶な威力にその存在は歴史の闇の中に葬り去られ、文献の中に辛うじて残されていただけの、砂の海の中の深淵にあった、一体の少女の木乃伊。
 生体兵器。それが、『終焉』と名づけられた灰色の正体。それが何故、どのような手段でよみがえり、AYURIへの呪いとして使用されたかは、現時点では判らないと言う事だ。
「それを為すだけの魔力を放出する存在だ。量産は不可能だろう。半年のうちにどのような事が行われていたかは不明だが、データとしてそれを持っているとの事。可能であれば内容を確認し、『終焉の灰色』自体を消滅させてくれ。それ自体の可否にかかわらず、その『敵』は総て拘束してほしい。無論状況が状況であるから、生死は問わない」
「こちらが、彼らのアジトです」
 テーブルの上に並べられた写真はTkyドームから程近い街の路地裏にある、昔は雑居ビルであったろう廃ビルで。
 都会の、空虚な空間の中、彼らのアジトがそこにあった。
「魔法装置でビル周辺の空間を歪めていたようですが、我々のチームが排除し、その後新しい物はまだ設置されていないようです。ビルは地上4階、地下1階で、研究に使っていた場所は地下という事です。階段は踊り場がある階段で、突破には注意が必要でしょう。各階部屋数は4つで扉はそれぞれ金属製です。それから、地下に下りる階段室には鍵が掛かっていて、その鍵は居住スペースとしていた4階においてあるようです。普段は2階、3階は使用していなかったと言う証言でしたが、突入チームは2階、そして3階にいたる階段で全滅させられたと映像には記録されています。『敵』のメンバーは4人。『魂の導師』と『蟲使い』、『人喰い』、『水蛇』で、名前が能力を現すらしい、とのことです」
 所謂ブリーフィングが続く、草間興信所。
 今の世に舞い降りた歌姫AYURIにかけられた終焉の呪い。悲劇は起こってしまうのか。惨劇となってしまうのか。
 一条の光は、悪意と灰色の深淵を指し照らす事ができるのか‥‥‥。

[1.作戦]
 回る回る、世界が回る。
 人々の笑顔を載せて、世界が回る。
 ゆっくりと進む、星の生命。無限にも思える時間の元、世界は回る。

 響く歌。
 灰色に染め抜かれる、空間。
 凍りつく総て。

 さらさら、さらさら。崩れ行く、散り行く。
 さらさら、さらさら。散り行く‥‥‥消え行く。

「また、あの夢‥‥‥」
 疲れ果てた表情で、額に手を当てて呟くAYURIこと阿見・由梨。時代の寵児となった彼女を襲った悪夢。それは‥‥‥実の所記憶に無い。何かが起こり、それ以来悪夢しか見ることの無くなった眠りの時。
 だが、それは拒む事も出来ずに、眠りは突如としてやってくる。
 そして、その眠りの時は徐々に短くなってきていた。
 今日などは10分寝たろうか?
 まるで自分の体が砂時計か何かになったような、奇妙な感覚。
 久しぶりに歌える、今日の日。幾つの夜を乗り越えてきたろうか。歌えない自分なんて、生きる存在意義は無い。何を犠牲にしても私は歌う。歌う事でしか、生きてる事を感じられない。
「行こう。私の生きる場所へ」
 飛び起きて、カーテンを力任せに開く由梨。立ち込める雲が広がる空も、今の彼女には希望の光景でしかなかった。
「歌えるんだ。歌える‥‥‥がんばろう」

 場所と時は移り、組織のアジトと思しき廃墟が遠くに見える場所に女子学生が二人。
ササキビ・クミノと篠宮・夜宵であった。もっとも、クミノは篠宮・久実乃と名乗っており、お互いに『篠宮』姓である事から今回は名前で呼び合う事となった。
「敵がまだここにあり続ける理由を予測するに、襲撃を経て未だ在り続ける理由は・術に必要。陽動。そこより強力な防御機構を持たない。など考えられるけれど、夜宵さんはどう考える?」
「術に必要と言うのはあまり考えられないかと。私の過去の経験から言えばですけれど」
 色彩、と呼ばれる力を持つ者は常に一個の存在としてあった。
 今回兵器としてその姿を現した灰色については、兵器という前提が最早予測の範疇を超えていると言うしかなかった。
「それと、私の個人的な意見ですけれど、この地を確保する必要性が無ければ防御機構は必要ない気がいたします」
「魔術的に重要な拠点であれば?」
「確保する必要はあるでしょう」
 言われ視線をビルのほうに向ける久実乃。つられて、夜宵もそちらを見る。
「陽動ということであれば、完全に後手を踏むことになりますわね」
「その場合、速やかに敵を抜いてドームに急行。恐らくはドームが見えるポイントに陣取っているはず。このような廃墟を基地に選んだ事自体敵の偽装能力がそう高くない事を示している気がする。だから、会社の入っているようなビルは避けて考えていいかもしれない」
「それでいて、いても不自然ではないところ」
「そういうことになるわ」
 陽動に引っかかる前提はとりあえず置いて、久実乃は手荷物としてもってあった音響感知装置とサーモグラフィを建物に向け、セットする。
 断熱剤が入っている為か、あまり大した反応は今の所サーモグラフィーにはない。
 対して、音響感知の方は無数に蠢く足音と、その中にかすかに響く振動をいくつか捕らえていた。
文明の利器からその足音が4つである事を辛うじて判断できた。
「このざわめきは‥‥‥蟲?」
 久実乃の台詞を聞いて、途端に顔をゆがめる夜宵。無数の蟲を好きな人間などそう多くは無いので仕方ない所だろう。
「まず、魔術的・物理的にこのビルを孤立させようとおもうけれど」
「異存ありませんが、手段はどのようにお考えですか? 私は闇の力により視覚を奪う事は出来ますが」
 電気のケーブル一つとっても、地下を通っているのでそれを遮断するのは容易な事ではない。そもそも廃ビルである事から電気を使っているかどうか怪しい所でもある訳で。
 誰もその能力を持たないのであれば、孤立させる事はあきらめるしかなかった。
 久実乃の能力では途端に戦い難い事この上ない事態になっていた。もし、会社が準備した消毒された兵器であれば、戦時国際法もテロリストには適用されないのだから、それなりの準備がされたことだろう。だが、相手の能力に対した兵器、それも威力が大きいものであれば火器が召喚される事は間違いない。
 貫徹能力が高い物が召喚されたが最後、周りに被害を及ぼす事間違いなくなってしまう。
「では、闇をもって視界を奪い、奇襲と言う作戦で」
「異存ありませんわ」
 簡単なブリーフィングを終わらせると、路地裏に二人は消えていく。

 そして、ビル内。
 蝋燭の灯る地下の部屋にいる老人と女性。
 ふと、その手をじっと見詰める女性。
「敵が来たようですね」
 まだ、夜宵の能力により、闇がそこを支配した訳ではなかった。
「かなり強力な術者のようです。術の効力が極端に低下しています」
「象は踏まれる蟻の運命など気にしないものだ。体格に見合った物の考え方しか出来ぬのは道理というもの」
「手筈どおりに、導師」
「うむ。もはや術は解いて構わんので急げ、水蛇」
 水蛇と呼ばれた女性は蝋燭の火を吹き消すと、二人は闇の中に消えていく。低い金属音と異臭と水音を少しの間、そこに残して。

[2.終焉に向かう刻(1)]
 正直な所。ラッテ・リ・ソッチラは迷っていた。
 相手も術者であるのであれば、計画に立ち塞がろうという以上戦いは避けられないだろう。歩みを止めて、ドームを見つめる。
「5万人の命‥‥‥直接的な行動に出るとしたら?」
 彼女の能力に探知系の能力は含まれていない。予測どおり直接的な行動を起こさなければ行動自体空振りに終わる可能性もある。
「‥‥‥破壊を隠蔽するとしたら? 最早放たれていると‥‥‥理解すれば‥‥‥」
 灰色と言う力は彼女の知識の外にあるものであろう。悪魔成立した過程を考えれば、それにも頷ける所だ。
 街行く人々の何割かが、ドームの中に吸い込まれていく。
 もし、灰色の力を行使させないのだとしたら、どのような手段があるのか。
「水蛇‥‥‥人喰い‥‥‥蟲使い‥‥‥魂の導師‥‥‥」
 名前からではどの程度の能力を持つのか、今一よく掴めないものがある。水蛇は地下水脈でもあるのであればともかく、水道管を破壊した所で五万人を殺すような破壊能力があるとは思えない。
人喰いは接近戦闘能力は強そうではあるが、集団殺傷はできなそうな感じだ。蟲使いはその統率する昆虫の数による事だろう。ドームを埋め尽くすほどの虫を統率できるのであれば、十分な脅威になるだろう‥‥‥が、それが出来るのであれば、わざわざ危険度の高そうな生体兵器を扱う事も無い。魂の導師は、名前だけ聞けば破壊からは程遠いように思うが。
「もし‥‥‥このドームごと‥‥‥隠蔽したら」
 直接攻撃からは守る事もできるのかもしれない。けれど、別の方向に向ければ意味も無い事になってしまう。
「八方‥‥‥塞がりです‥‥‥か」
 相手も術者であれば自分たちの身を隠す術も持っていることだろう。予測して来た物の、その先はどうなるか読んでいなかったのである。
 その時、彼女の目に飛び込んできた一台の車。そこにはあの、歌姫AYURIの姿があった。
「あの人‥‥‥と共にいれば‥‥‥」
 呟いて、自らに隠蔽の力を行使するラッテ。すると、姿が特に消えた訳ではないのに、彼女に対して誰も反応を示す事は無くなったのである。
 そのまま、車に近づいて降りてくるAYURIとともに会場入りするラッテ。
(‥‥‥このまま何も、起こりませんよう‥‥‥に‥‥‥)

[3.立ち塞がる敵]
 闇の力を持って、ビルの内部を覆い尽くした夜宵。自らの障気によって、サーモグラフィー無しで闇を見通す事の出来る久実乃。
 もっともノクトヴィジョンの方が携行には適しているのであるが、二人とも必要の無いものであるからして意味が無い。もっとも、久実乃の周り半径20mぐらいは薄明るいので、ほぼ、ビル一フロア分位見渡せるのであるが。
「厄介な能力ですわね」
 嫌味の一つも言わなければなにやら気のすまない夜宵は聞こえないように口の中でそう呟く。
 聞こえたのか、視線を一度送ってくる久実乃。
 あら、と思う夜宵であったが、一気に表情か険しくなっていく。
「アテンション!」
 別に夜宵の呟きなど、久実乃にとってはどうでもよかった。人に疎まれるのは最早慣れっことなっていたのだ。だが今警告を発したのは、そう。
「敵襲、ですか!?」
 階段を飛び降りたのか影が一ついきなり現れた。そして、すばやい動きで二人の前にまで、飛んでくる。
「ぐふっ。ふふふふふふふ。これはこれは。美味しそうなおぢょうさま方ではないか。頭からにしようか足からにしようか」
 下賎な笑みを浮かべるのが、薄暗闇のなか見て取れる。その発言からいって、人喰いと見て間違いないだろう。
 そして、その台詞が終わると同時に、窓ガラスが弾け、黒い塊が飛び込んできた!
「飛んで火にいる冬の人、だな」
 黒い塊のように見えたものは総て蟲で。それが、羽ばたいて男の身体を中に浮かせていた。
 見える者には見えるだろう、障気の塊が銀色の軌跡を描いて、未だ宙にあった男の胴目掛けて飛んでいく!
「笑わせるな、小娘っ!!」
 瘴気の奔流が男の体、いや、正確には蟲の尻から発せられるが‥‥‥何せこの数だ。強烈な力となって久実乃の身体を押しつぶしに掛かる。
 だが、その身をまとう障壁がその力を半減させていた。
「御挨拶有難う、小娘」
「おう、ちょうど2対2だ。ここはタイマンといかないか?」
 その台詞を聞いて、蟲使いの方が苦虫を噛み潰した表情で人喰いを見つめる。
「なるほど、ここはお二人だけしかもういらっしゃらないのですね」
 夜宵の言葉に目を白黒させる蟲使い。だが、人喰いの方は眉毛一つ動かす訳でもなく。
「それを知った所で、俺達をどうにかしなければここからは出られない寸法だ。さあ、どうする? まあ別に、タイマンでも、タッグマッチでもかまわないが、能力者同士ならいないほうがやりやすいだろう?」
「その提案、受けた」
 返事をしたのは久実乃であった。自らの強力な能力の巻き添えにしないためにも、離れていたほうがいいとの判断であった。
「貴方がそうおっしゃるのなら、私も構いませんわ」

[4.魂]
 ほとんど密着するような距離で、ラッテはAYURIの後ろを歩いていた。結構舞台裏は人が多く、あまり落ち着いて観察できる環境でもなかった。あくまで隠蔽であって消す訳でもないし、隔絶する訳でもない。
 だが、この距離であれば、魂の存在を感じる事は出来た。
 こう見えても、無いとされる73柱目の悪魔である。人の体の中の魂ぐらいは専門の能力が無くても覗けるのである。
 だが、あまりにも強烈な力に少々眩暈を覚えるラッテ。その脳裏に舞う灰色の色彩。
(色彩の‥‥‥力というのは‥‥‥一体!?)
 原初の混沌に近い、そんな力の波動を感じていた。姿形が固定されているイメージは無い。
(なんて、なんて‥‥‥酷い)
 その力の波動に負けぬよう気を張ってみていると、その灰色の色彩がこのAYURIと言う人間の魂の半分と融合されたような、そんな在り方でそこにあったのだ。
 奇跡のような純粋な魂は、灰色に侵食されてその力を失いかけていた。それを見たラッテはこの計画の真意を知る。
(これは時限爆弾みたいなようなもので‥‥‥魂が力を失った所で‥‥‥兵器となってしまうのでしょう‥‥‥意識する間もなく、力を撒き散らして‥‥‥自らも灰色に飲み込まれ消えて‥‥‥果てる)
 魂の導師。
 その二つ名から言って、この非道を為したのはその人物に間違いないだろう。 
 時限爆弾であるなら、他に直接破壊手段を準備する必要は無い。だけれど、あそこにとどまったと言う事は不測の事態に対応できる体制をとったと言う事なのかもしれない。
(ならば、起こしましょう‥‥‥不測の事態を)
 魂と同化している以上、灰色の力のみを隠蔽するのにはいささか手間が掛かるように思えた。導師が行った儀式、そして中東で発見された事。総てを隠蔽したとしたら?
 だが、あくまでラッテの能力は隠蔽。結果や力を操作できるとは言え、能力には必ず相性と言う物が存在する以上、どう転ぶか判らなかった。
 神と悪魔の相克も純然として存在するのはその為なのである。
(けれど‥‥‥私は‥‥もう、誰も死んでほしく‥‥‥ない。なら、私は‥‥‥?)

[6.VS]
 夜宵の使った闇の力を見て、人喰いは高らかに笑い声を発する。
「いや、これは恐れ入った。黒の眷属か!」
「‥‥‥それがどうかいたしまして!?」
 ふふん、と言った調子で、まるで鼻歌でも歌いかねない様子で人喰いは夜宵を見つめる。
「いやね、俺は食ったヤツの能力をそっくり頂く事が出来るのよ。まあ、消化してクソで出すまでだが」
「下品ですわね」
「気にするな。食っちまえば出るものは一緒だ」
しかし、やりづらいことこの上ない。二人は2階へ移動していたのであるが、半径20mの球体はしっかりと二人をまだ影響下においていたのだ。もちろん人喰いの能力も半分になっているのであろうが‥‥‥見通せる闇など怖くも何とも無い。
 振り翳される爪。コンクリートをも噛み砕く牙。素早い動きを支える肉体。
 まるで野生動物と相対しているような感覚にとらわれる。
「いやあ、弱い者をいたぶるのは楽しいねえ」
 無言の夜宵。繰り出される攻撃に黒髪が幾本か空に舞い、白い肌には擦過傷のような傷が刻み込まれる。紙一重でよけられている訳ではない。要するに遊ばれているのであった。
 切り刻まれた服の間から露になる肌に目を細める人喰い。
「いやあ、だんだん調理が進んでいるねえ。うまそーっ!」
 先程からずっと無言の夜宵。あまりの下劣さに生理的な嫌悪感を抱いているのだろうか。
 普段であれば、精神系の闇はよく効きそうなのであるが、中途半端に効いて見境がなくなられても困る。
(相手が油断しているうちに何か突破口を見つけなければなりませんわ!)

 さて、階下に残った久実乃と蟲使い。
 夜宵を上にやったのもある物を使うためであった。それは殺虫剤。もちろん、人体にも有害だ。
だが、通常毒であれば自分には無効。そして、あいてはおあつらえ向きに蟲使いであった。
 腰につるしてあったガス手榴弾を握るピンを抜いて安全把を握り1、2と数を数えてふわっと宙に投げる。
「なっ!?」
 慌てた様子で蟲使いは命を発して、それを防ぐ盾にしようとする、が。一瞬早くヒューズに火が回ったようだ。白い霧があたりに立ちこめ始めた。
「なんだ!? もしかして発煙殺虫剤か!!」
 軽く咳き込みながら、蟲使いは表情をゆがめる。
 蟲達はぽろぽろと床に落ち腹を見せると、苦しむかのようにもがいていた。
「おのれ小ざかしい!」
「所詮はたかだか蟲、という訳」
 悔しそうに地団太踏んでいる蟲使いであったが、久実乃の表情が一瞬緩んだのを見て小さく鋭い声を発した。そして。
「‥‥‥‥‥‥なーんちゃって」
「な!?」
 生き返ったように蟲が表返ると、すばやい動きで久実乃の身体を上り、そしてところ構わず噛み付き始めたではないか!
「くっ、なっ!?」
「そいつらは魔法生物だ。殺虫剤など効きやしない」
 そして、その攻撃は魔力を帯びているのだろう。噛まれた場所の皮膚が割け、だらだらと血が垂れて来た。そして、それに興奮したのか蟲たちの動きがどんどん活発になっていく。
 だが、同時に障壁の効果により、何かの武器が召喚されて来る。それが久実乃の能力だからだ。
「なん‥‥‥ですって!?」
 召喚された武器はなんと判官筆と呼ばれる中国のいわゆる暗器で、大きさは15センチほどの鉄の棒、その先に鋭い筆状の穂先がついている物であった。
 虫にかまれても、それでさすぐらいのダメージしかないのだろう。
 そして、かまれるごとに召喚されてくる判官筆。
「‥‥‥何の冗談だ?」
 そう、相性の問題と言うものだろう。もし、久実乃が強硬に人喰い相手を望んだのであればその条件を飲んだ可能性は高い。一発一発が重く、物理攻撃がメインの奴であれば、瞬殺もあったことだろう。
(傭兵時代を思い出すわ。上司がいたら、なんて言うかしらね。さて、これじゃあ話にならない。あの能力の行使もしょうかない、かな)

 そして、夜宵はある作戦を立てていた。
 術効力が半分になってしまうのであれば、2倍の力があるものであれば、それは1倍と同じ事ではある。ただ、そんな力を強めるだけの事は出来ないので、何か何か複合的に使っていく事に決めたのであった。
 まず、出来るだけ圧縮した闇の力で視界を奪う。
「何だ? サングラスか!?」
 何か、余裕の様子でそんな台詞が吐けると言う事は、まだ見えると考えて間違いないだろう。
 部屋の中で闇の力が行使できそうな場所を捜す夜宵。瞬間的に窓から差し込む光が作る影に着目する。
 あそこになら『闇沼』が作れるのではないか?
 このメンバーの中では夜宵しかしらないが、彼世鏡事件の時の彼世沼のミニバージョンなイメージであった。体系付けられた術式ではない以上のイメージ能力が成功の大きなカギを握る。
(‥‥‥このお馬鹿さんの性格であれば、そうですわね)
 闇の力で、今まで人喰いに食われた人間たちの幻覚を作り出す夜宵。それは、あくまで、相手のイメージの投影に過ぎない物ではあるが。
『痛いよ。苦しいよぉぉ‥‥‥恨めしい‥‥‥!』
「ふん、幻覚か! 蹴散らしてくれる!!」
 例え相手が幻覚だろうがアンデットだろうがひるみはしない、とばかりに飛び込んでその幻覚に爪を振るおうとする人喰い。
 だが。
「う、うわ!? なんだ‥‥‥これも幻覚かっ!?」
「残念ながら、それは本物ですわ。いつもより小さいですけれど、底無しの闇に飲み込まれて、あの世で今まで殺した人に詫びるが良いですわ」
 先程の幻影が、此方に繋がる沼の力に呼応して、実体化してきていた。その手が、手が、手が、人喰いを沼に引き釣り込もうと身体をつかみ、巻きついていった。
「お、おい。やめてくれ! 助けてくれぇ」
「その台詞、貴方は何度無視したのでしょうね」
 それだけ言うと、夜宵はきびすを返してその場所を後にする。
 そして、響く絶叫。その空間に訪れた、静寂。

 そして、それを行使するに当たって障害になるのは夜宵の存在だった。まさか、巻き添えにして殺してしまう訳にも行かない。障気で彼女の位置を探り出そうとする。
 その間にも、甲高い金属音を立てて、判官筆が何本も召喚されてくる。いいかげん、使おうとは思わなかった。
「久しぶりに上玉の餌だよ、みんな。おなか一杯お食べ」
 勝ち誇った声で、蟲使いは蟲たちに食うように命令を発する。やがて、久実乃の身体は徐々に虫に埋め尽くされていった。
 そして、間断なく召喚される判官筆。
 痛みに耐える訓練はされているので、絶えられない事も無いが、失血が激しいとさすがにショック症状を起こさないとも限らない。
 集中して、夜宵の姿を追った。すると、勝負をつけたのか、階段の方に歩いていくのが見て取れる。
「‥‥‥ふっ。上は、こっちの勝ちで勝負がついたようよ」
「無理も無いな。脳まで筋肉みたいなやつだったが故にやられたんだろう」
 吐き捨てるようにそう言ってから、蟲使いはゆっくりと久実乃に近づいて顎をつかむと、ぐいと上に引き上げた。
「後、7,8年もすればいい女に育ったろうに。残念だよ、お子さま」
「‥‥‥んじゃない?」
 小声でぼそりと何か呟く久実乃。それを聞き取ろうと耳を近づける虫使い。
 瞬間、すうっと大きく息を吸い込んだ!
「あいつが脳筋だったら、あなたは脳に虫わいてるんじゃない?」
 耳元て大声を出され、怯む蟲使い。だが、頭を振って聴力を回復させると、すぐに顔面を紅潮させ、手を大きく振りかぶった。
「このクソ餓鬼が!」
「チェックメイト」
 相手を興奮させてまで図っていたのは夜宵の位置であった。そして弾ける銀の奔流!
「な、こ‥‥‥これは!?」
 胸倉をつかんだ手からさらさらと崩れ落ちていく蟲使い。部屋を埋め尽くした蟲も連鎖的に塵となって散っていった。そどんどんと壁の隙間と言わす上階も塵と変えていく。それだけ、蟲がいた
事を示している。この状態で考えずに使っていたらもしかして巻き添えにしていたかもしれない。
 そして、同じく。響く絶叫。静寂。

[6.最終対決]
 廃ビルから二人が出たとたんに鳴る久実乃の携帯電話。電話の主は非通知であった。
「はい、篠宮」
『どうやら人喰いと蟲使いは無力化したようだな』
「ご明察で。どこから見ておいで? 野津さん』
『ああ、もちろんだ。俺としても5万の死者は後味が悪いもんでね。ところで、導師と水蛇は下水道を通ってドームへと向かった。メールで出てくると思われる場所を送るから急行してくれ』
「どこか判るの?」
『路地裏にあるマンホールは1ヶ所しかない。急げば間に合うだろう。そこの曲がり角を曲がった所に車が止めてある。うちの人間が乗っているからそれでそこへ向かってほしい。あの方面で他人に気づかれる事無く出られるのはそこだけだ』
 さすがに、組織の依頼であった。普通では望むべくも無い後方支援が完璧に行われている。
 その、言葉どおりに車がそこにいて、猛スピードでその車は指示された場所に向かい、二人を降ろすと、ゆっくりとその場を離れていく。
 そして、そのマンホールの所にたどりついた瞬間だった。
「馬鹿な‥‥‥この魔力はビルに来た‥‥‥」
 水蛇と思しき女性が、呆然とそう呟く。あとから現れた老人がそれを見て、小さく首を振った。
「あの二人は死んだか。残念だな」
「残念、ですって!? 今から5万の人を殺そうとしている人がよくもまあそんな口を聞けたもんですわ!」
 ドームのほうからひしひしと感じる気配。それは間違いなく色彩の力であろうことを思わせる気配であった。そのプレッシャーを受け、普段の冷静さがどこかに行ってしまったかのように怒る夜宵。
「夜宵さん。冷静に」
 醒めた視線で二人を見つめる久実乃。どうやら魂の導師は荒事に向いている術式は持っていないように思えた。そして、水蛇はさっきの二人に比べれば数段戦闘能力においては落ちると直感的に感じていた。
「降伏して、生体兵器の呪いを解除するならば命だけは助けてやる」
 その久実乃の言葉を聞いて、楽しくてたまらないように笑い出す導師。どいつもこいつも失礼な連中である。
「色彩の力と言う物はそんなに簡単なものではない。娘、貴様も黒の眷属なら理解できよう。最早崩壊は約束されたも同然!」
「色彩の者として、それを弄ぶ事は許すことができません。大人しく縛についていただきますわ!」
「ふはは、おとなしくつかまるとおも、おのれ卑怯なっ!!」
 夜宵が話している間に何と久実乃が先ほど召喚した判官筆を首筋に突き立てていた。見事なサイレントキルは、久実乃のスキルと、影の多い路地裏の地の利を生かしての夜宵の闇による連携プレイであった。ゆっくりと、崩れ落ちる導師。だがしかし。
 突如として夜宵の携帯がなる。そして。
「水蛇が逃げた!!」

 体を霧に変化させ、その場から退散していた水蛇。彼女はそのままの姿でなんと、AYURIの元に行くと、その体の一部の霧を彼女に吸わせたではないか!
 その様子はもちろん、ラッテはしっかりと見ていたが、意図がつかめない。操ってどうにかしようということなのだろうか。いや、もう、テロは水蛇にはなされようとしているとしか見えないはずであった。
 そんなラッテがいるのは気づけずに、水蛇は一人ごちていた。
『これで魂を取り出して、それを武器にすれば私は天下無敵。世界を支配できるわ。あんな古臭い組織なんかどうだっていいのよ、あははははは』
 それを聞いて、空しさを覚えるラッテ。どうして人間はいつの世でもこうなのだろう、と。
『導師の準備した依代。これさえあれば‥‥‥』
 それを聞いて、ラッテは近くのスタッフのポケットからライターを”隠蔽”。火をつけるがそのライターの火も”隠蔽”。

 安全距離というものがあるのであろう。ライブのはじまる前に、いそいそと外に出てくる水蛇。
『ふ、ふふふ。私の脳細胞は、彼女の血管を巡り、脳に達することでしょう。もはや自我は崩壊しているでしょうから、抵抗なくのっ取れる。そして、爆破がおわったら自分から出てきてくれるはず。楽しみだなあ。あは、あ‥‥‥』
 誰かがサーモグラフィーをこちらに向けているのが見て取れた。
 え、どうして? なぜ‥‥‥!?
 その水蛇の驚きは当然であろうが、それには訳がある。消えるシーンはなんと、二人に仕掛けられていたカメラが捕らえ、そして水蒸気がサーモグラフィーに映る事が判明していたからなのであった。
 故に探索され、出てくるところをつけられたという訳だ。
 こうなったら、実体化して戦うしか!
 油断なく身構える夜宵と久実乃。だが、実体化した瞬間水蛇のズボンのポケットが燃え上がったではないか!
「い、いやっ。依代がっ!!」
 気が動転しているのか、霧化するのには何か前段階が必要なのか、実体のまま、火を消そうとする水蛇。だが、その炎はとどまることを知らず、化繊のセーターに燃え移ると一気に火勢を増して、水蛇を火達磨へ化していた。
「なぜ能力を使わない!」
「つか‥‥ない」
 導師の恨みの炎のように、燃え盛る炎。どんどんと増していく火勢のため、近づくこともできずその体が消し炭となるのを見届けるでもなく、二人はドームへと再び足を向けた‥‥‥その瞬間。
「灰色の力が‥‥‥消えた!?」

 夜宵のその証言と、何かあったら即座に狙撃すると言う条件で静観されるAYURIのライヴコンサート。希代の歌姫の歌声がドームの中に響き渡り、人々は熱狂の渦の中に入っていった。
 しかし、客のテンションが異常なこと以外は、無事に、滞り無く進んで、アンコールも何と3曲も歌ってライヴは終了する。
 灰色の力が消えたのは、いや、正確に言えば隠蔽されたのは、ラッテの能力だった。それも過去に遡って、その能力を発掘される前の遺跡に隠蔽し、そしてさらに遺跡をも彼女の能力を持って隠蔽する。
 よって、ラッテの力と伍して上の力の者が捜索でもしない限り、灰色の力は発見されることはないだろう。
 だが、ラッテがその他と接触しないことを望んだため、夜宵や久実乃にとっては些かしっくりこない終わり方となってしまっていた。
 一応は実行犯がすべて死んだため力を失ったのだろうと言う理由をつけて納得し、そしてその理由をもって成功と判断されたため、二人に500万ずつ報酬が支給された。
 
『歌えるって、幸せです!!』

 テレビから流れてくるAYURIのインタビュー。
 その笑顔を守ったのは、実は三人の女性の力があったことは、今後一切誰にも知られる事はないだろう。一部、興信所の中の武勇伝として語り継がれる以外には。

−FIN−
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
1166/ササキビ・クビノ (ささきび・くびの)/女性/13歳/元企業傭兵・中学生・NC店主
1005/篠宮・夜宵 (しのみや・やよい)/女性/17歳/高校生・黒の色彩の眷族
5980/ラッテ・リ・ソッチラ (らって・り・そっちら)/女性/999歳/存在しない73柱目の悪魔
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■         ライター通信          ■
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 戌野足往です。本日はお買い上げくださいましてまことにありがとうございます。
 ずいぶん変則的なメンバー(笑)でしたので、最初の予定のお話の流れとは若干変わったのですが、まあ予定通りにいっても面白みもないですし、ね。
 皆さん、非常にプレイングやりづらかったらしく大変だったみたいですが、もしよろしければいぬの商品にまた入ってくださいましね。
 それではご指名くださいましてまことにありがとうございました。またのお越しを心よりお待ち申し上げております。