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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


 初体験 〜初めての共同作業〜

「むぅ 遅い」
 疎らにポスターの貼ってある街角掲示板の前で一人の女性が立っている。
「いくらなんでも遅すぎるなぁ… 何かあったのかな」
 待ち合わせしている相手のことを考え、心配になってきた。
 と、そこへ大きな袋を引きずるようにして運んでくる女性が見えてきた。
「? え? 何あの荷物…」
 待っていた女性はその女性を見て困惑している。
 彼女の様子から歩いてくる女性は待ち合わせの相手なのだろう。
 しかし待っている女性は軽装、待たせた女性は重装だ。この違いはなんだろう?
「…ご、めん……なさい 遅、くなり…ました…」
 少し息を切らせて女性が掲示板の前で止まった。
「真璃さん…どれ、くらい…待ち…ました?」
 待っていた女性、真璃は相手の荷物の大きさに驚きながらにっこり笑って答えた。
「ん〜 た〜〜〜っくさん♪」
「すっ…すい、ません…」
 誰が見てもわかるくらいシュンとなってしまった女性の頭に真璃はポンッと手を乗せる。
「気にしない気にしない。私は気にしてないからさ」
 ゆっくりと手を動かして頭を撫でてあげる。
「瞳さんこそ どしたの? そんな…大荷物で」
 瞳が持っている荷物を見て軽く苦笑しながら一応質問してみる。
「え…っと……清掃に使いそう、なもの…を」
 予想通りの答えだったのか真璃はクスクスと笑いだした。
「瞳さん ボランティアとはいえ清掃道具くらい貸してくれるよ?」
「………ぇ?」
 瞳の動きが一瞬止まる。
「言わなかった私も悪いけど、まさかそんな大荷物で来るなんて思わなかったよ。ごめんね?」
 顔の前で手を合わせて真璃が謝る。
「…いえ 気に、しないで…くださ…い」
 悪いことをして見つかった子供のような顔で、それでもすごく申し訳なさそうな顔で誤ってくる真璃がおかしかったのか瞳は軽く笑った。
「うん、ありがと」
 少し恥ずかしくなったのか目線をはずして真璃が鼻の頭をかく。
「ところでどこかで着替えるの?」
「? …どうし…て……です、か?」
 自分の格好を見下ろして瞳が頭の上に?マークを浮かべている。
 まぁ見下ろしても胸が邪魔でほとんど見えないようだが。
「その服で清掃するの?もっと汚れてもいい服とかのほうがいいと思うんだけど…」
 そう言う真璃の格好は白いタンクトップにデニムのショートパンツだ。
 スタイルがいいせいか妙にショートパンツがピチピチだ。そのわりにタンクトップはゆったりしてる。
 瞳はというといつもと同じ、黒と赤の服だ。どう見ても清掃するような格好ではない。
「…ぁ……道具の、ことで…忘れて…ました…」
 瞳が『しまった』というような顔をする。
「あらら まぁ一応エプロンは貸してくれるから大丈夫…かな?」
 真璃は時間を確認しながら言う。
「そろそろ行こ」
 瞳が持ってきた荷物を持ち真璃が歩き出す。
 瞳は何か言おうとしたが薄く微笑しただけで何も言わずに真璃の後についていった。



「よろしくおねがいします」
「…よろし、く…おねがい……します」
 二人で挨拶をしてエプロンと掃除道具を受け取る。
 エプロンはだいぶ小さく感じられた。二人は胸が大きいためにだいぶエプロンが小さく見える。
「と、とにかく がんばろうね」
 真璃が瞳の顔を覗き込む。
「は…い がんば、り…ます」
 瞳は可愛く小さく拳を握ってみせる。
 そして二人の最初の共同作業。団地清掃のボランティアが始まった。


 他の人たちと会話しながらしばらく清掃していると、子供たちが学校から帰ってきて参加した。
 当然場の雰囲気はガラリと変わる。
「おねーちゃんたちだーれ?」
 つぶら…とは言いがたいイタズラめいた目をして聞いてくる。
 普段はいない二人に興味津々といった感じだ。
「私たちはお掃除の手伝いに来てるんだよ。名前は真璃っていうんだ。」
 真璃は膝を折り子供の目線に合わせて慣れたように応対する。
「そっちのお姉ちゃんは?」
 瞳が別の子に質問される。
「ぇ…と 私、も真璃さんと…同じです… 瞳…といいま、す」
 優しく微笑む。子供は頬を染めてそっぽを向いてしまう。
「ほらほら! みんな掃除掃除!」
 その様子を楽しそうに見ていた真璃が子供たちに掃除道具を渡す。
 たくさんいた子供たちはそれぞれに走っていく。一人で、二人で、数人でグループを作って。中には掃除する気がなさそうな子もいる。
 その中で3人の男の子が瞳と真璃のところに留まった。
「あれ?君たちは皆と一緒に行かないの?」
「うん。僕たちはおねーちゃんたちと一緒にやる〜」
 3人は目をキラキラさせている。
「早くいこーよー」
 二人が真璃と瞳の手を掴む。
「あ、は…はい。いきま……しょう」
 瞳は引っ張られるようにしながら歩き出す。

 隅のほうな上に一番汚れているためか他の人たちが掃除しないような所を瞳たちは掃除していた。
「うわぁ…汚いね…」
 真璃が少しあきれながら言った。
「皆ここにはあまりこないし」
 子供の一人がつまらなそうに言う。
「うん、なーんにも無いしね」
 二人目の子供は興味なさそうに言う。
「だよね。ここ来るくらいなら階段公園に行くよなー」
 三人目の子供は掃除なんかやめて遊びたそうに言う。
「…階段、公園??」
 瞳がききなれない名前に反応した。
「団地のすぐ近くにあるんだけどさ。小さいくせに階段ばっかりなんだ。あの公園」
「ふ〜ん。なんか足に優しくない公園だね」
 真璃は掃除の手を止めずに会話に参加する。
「でもさ、足腰鍛えるんだと思えば」
 笑いながら言う。
「なんだよそれー」
「疲れるだけじゃんか」
「嫌だよ、そんなの」
 子供たちが口々に言う。
「あはは」
 真璃はそれを聞いて楽しそうに笑う。
 そんな真璃を見て瞳も微笑を浮かべる。

 そうやって楽しく掃除をしていると子供たちがなにやら小声で相談をしている。
 その顔は何かを思いついた顔をしており、楽しそうだ。
 瞳と真璃はそれに気づいていない。
 そんな瞳の後ろに子供たちがそろりそろりと近づいていく。
 そして真璃にアドバイスされながら必死に掃除をしている瞳のスカートをめくる。
「…うわー すっごいねー」
「…え?」
 一瞬何が起こっているのかわからない瞳。
「こーゆーのが大人ってのかなぁ」
 まじまじと見られている。
「…ぇ………ぁ?」
「ちょ、ちょっと君たち何してんの!」
 真璃が慌てて子供たちに走りよる。
 その時別の子供が止めようとしたのか真璃の服を掴んだ。
 服を引っ張られ、俗に言う『ポロリ』が起こった。
「わぁっ!?」
 真璃は慌てるが既に遅い。
「………」
 なぜか瞳までソレに釘付けになっている。
 それに気づいた真璃は顔を赤くしながら急いで手で隠す。
「瞳さん そんなに…見ないでよ」
 普段とは違い少しもじもじしながら小声で言う。
「あっ …す、すいま…せん」
 瞳は慌てて顔をそらす。
 お互い顔を赤くしながら目をあわせない二人に子供たちが
「それなら瞳ねーちゃんも見せてあげればいーじゃんか」
 頭の後ろに手を回し何故か真面目な顔で言う。
「あ、そう…です、ね… …………ぇ」
 一瞬納得しかけて固まる。
「な、何言ってるのよ!?」
 真璃は驚いて隠していた手をどけてしまった。
「うわわわっ」
 再び慌てて隠し、服を直しだす。
「と、とにかく! 掃除しなきゃ掃除!」
 顔を真っ赤にして掃除道具を手に取る。
「ちぇ〜 つまんないの」
 子供たちはつまらなそうに掃除に戻っていく。
 戻りながらも大人顔負けに真璃と瞳の身体を評価している。いったいいくつだあの子らは
「…もぅ まいっちゃったね」
 真璃がまだ少し顔を赤くしながら言う。
「…は…い」
 瞳はまだ顔が赤い。
「あはは… 恥ずかしいね」
 服を直すフリをして顔が赤いことをごまかそうとする。
「真璃…さん… 可愛、い…かったです」
 瞳は頬を染めながら微笑み
「いきま、しょう…」
 歩き出す。
「うん」
 真璃は瞳の言葉に真っ赤になりつつ瞳の横に並び歩き出した。


 数時間後、団地はすっかり綺麗になっていた。
 あの後も子供たちにからかわれながら順調に清掃を続けた。
 瞳は真璃にところどころアドバイスされながら終了間際にはずいぶんと色々上達していた。
「ふー 終わった終わった」
 真璃が両手を天に伸ばしのびをする。
「綺麗、に…なりま…したね」
 瞳が辺りを見回し嬉しそうに微笑む。
 そんな瞳を見て真璃も微笑む。
「二人とも、本当にありがとう。おかげで早く終わったわ」
 団地の奥様たちが二人にお礼を言いに来た。
「とんでもない。私たちこそ手伝えてよかったです」
 真璃が瞳に笑いかけてから答える。
「そういってもらえると嬉しいわ。子供たちも二人のおかげでちゃんとしてくれたし」
「やっぱねーちゃんたち胸でっけーなー」
 子供が自分の母親と瞳たちを比べる。
「こ、こらっ!? なんてこと言うの!」
 母親が驚いて子供に怒り出す。
「いででででで!!」
 耳を引っ張られ子供が涙目になる。
「あ… その…気に、しないで…いいで、す…から」
 その様子を見て瞳が母親に言う。
「そ、そう? ならいいんだけれど… ごめんなさいね?」
 母親は耳から手を離し、瞳たちにお辞儀してから去っていった。
「私たちも帰ろうか」
「はい…」
 二人で歩き出したその時
「きゃっ」
 瞳が何かに躓いて転びそうになった。
「あっ っとと」
 それを見事に真璃が抱きとめた。
「大丈夫?」
「…あり、がとう…ござい…ます……」
 二人ともお互いの瞳に吸い込まれるように見詰め合う。
 しばらくして示し合わせたようにお互い顔を赤くし、目をそらす。
「た、立てる?」
「は、い…」
 その後はしばらく無言…
 そろそろ日が沈む。
「…帰ろっか。今日は私が手料理をご馳走するよ」
 夕日のせいか顔は赤いままだが、真璃は瞳に手を差し出した。
「ほ…んと…です、か? 嬉し…いで、す」
 瞳は嬉しそうに、そっとその手を握る。
「ホントホント! よーし、美味しいものつくるぞー」
 真璃はその手をギュッと握り、目をキラキラさせる。
「じゃあ帰りにスーパーに寄ろう。買い物買い物。瞳さんの好きなものいっぱーーーい作ってあげる!!」
 子供のようにも見える真璃に瞳は微笑みを浮かべる。
 そのまま二人は手を繋いで歩き出す。
 その手は緋に染まる。まるで二人を繋ぐ糸のように…


---END---