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<PCあけましておめでとうノベル・2006>


超時空温泉と初日の出と
------<オープニング>----------------------------------------------
 ――トリニティ学園パトモス軍学校特殊機甲科
「翠乃原、今年のクリスマスはどうだった?」
「‥‥余計なお世話です。沖田教官」
 サングラスの男と翠乃原咲子の会話は一瞬沈黙した。再び沖田政宗が口を開く。
「‥‥訓練生の件だが、年末年始に連絡は取れないか?」
「はぁ? 学校は休みですが‥‥何か考えているのですか?」
「‥‥温泉旅館に行って初日の出を見ようと思っている」
 青い帽子とツナギ姿の細い男の背中を見つめていた女は感嘆の声で応える。
「いいですね☆ 今年の反省と来年の抱負を語るのですね。教官らしい考えです。それで、どこの温泉旅館へ?」
 長身の男はスッとチラシをデスクへ落とす。それは断崖絶壁に建てられた旅館が描かれたものだ。赤茶のクセっ毛をポニーテールに纏めた女は表情を戦慄かせた。
「こ、この旅館は‥‥噂では不可解な磁場が発生していると言われている所ではありませんか!? しかもファンタズマが管理を任されているとか‥‥サーバントや異世界の者が召喚された等とも聞いています。‥‥訓練のつもりですか?」
「‥‥初日の出がよく見えるらしい」
 再び室内は沈黙に包まれた――――。

●召喚される者たち
 ――あれ? あれれッ!?
 四方神結は混乱していた。
 マフラーを首に巻いている少女は、ペタンと腰を落としたまま、腰ほどまで伸びた黒髪を左右に揺らし、不安気に周囲を見渡す。辺り一帯を覆うのは太い木々と枯葉の散乱した土の大地だ。木陰から見える冬の空はどんよりとしており、小鳥の囀り以外は何も聞えはしない。
「‥‥山の中? なんで、どうして? えぇッ!?」
 確か数刻前まで、結は趣味の神社巡りをしていた筈。しかし、師走を迎えて人通りは少なかったものの、こんな山奥に赴いた記憶はない。それに、外出着に身を包んでいるものの、スカートで訪れる場所ではない。曝け出された素足に冷たさを感じ、少女はゆっくりと立ち上がってスカートを叩いた。
 ――ガサ‥‥。
 木々の擦れる音か、それとも枯木を踏んだ音か、耳に飛び込んだ音に結は慌てて腰を捻る。愛らしい風貌は戦慄を浮かべ、黒い円らな瞳が不安と恐怖に彩られてゆく。
(‥‥クマ、かな? いても可笑しくないけど‥‥ッ!?)
 少女は瞳を大きく見開いた。木陰から現れたのはサングラスの男だ。細身を青いツナギに包んでおり、同色の帽子を被っている姿は、さながら工場の作業員である。結の頭はパニクリながら様々な計算を始めた。
(‥‥どうしてこんな山奥に作業服の男の人が‥‥ッ! まさか山に殺した死体を埋めに来たとか? 手に持っているのって‥‥ナイフじゃ‥‥え? えぇッ!?)
「‥‥見たのか?」
「み、見ていませんッ! 私、知らない内に、ここに来ていて‥‥」
 男が一歩近付くと少女は一歩退く。サングラスに怯えた表情の結が映る。
「‥‥知らない内にだと? そんな事がある訳ないだろう? 何を怯えている? 見たんだな?」
「だ、だから、見てなんていませんッ! 私だって‥‥きゃあぁッ!」
 後退る震えた足は地を滑り、少女は悲鳴と共に体勢を崩した。刹那、男は結に飛び掛かって馬乗りになると、鋭利な刃を向ける。互いの荒い息だけが静寂の山中に響く。
「‥‥可愛そうだが、死んでもらうしかないな。‥‥学生か、ただ殺すには惜しい」
 ――えっ? な、何を言って‥‥ッ
「いやあぁぁッ!! こんな山奥で襲われて殺されちゃうなんてえぇぇぇッ!!」
「‥‥おい」
 ほえ? 腰を屈め、両手で頭を庇ったまま蹲る結は、男の声により、女子高生の逞しい想像力から解放された。サングラスに映る少女は涙を浮かべて見上げており、男は困惑の表情を見せる。
「‥‥勝手に想像するのは構わんが、話を聞いてくれると助かるのだがな。まあいい、直ぐ近くが我々の宿泊している温泉宿だ。ついて来い」
「おんせんやど‥‥ですか?」
「‥‥安心しろ。襲ったりも殺したりもしない‥‥おまえと近い年齢の訓練生達を指導する沖田だ」
 サングラスの男は告げると背中を向け、そのまま山を歩いてゆく。結は沖田政宗の言葉に顔を真っ赤に染めあげ、慌てて駆け出した。
「あ、あのッ、どこまで私、口に出していたんですか?」

●結の事情
「‥‥異世界、ですか? 召喚って? 普通の温泉旅館にしか‥‥わっ、この女(ひと)羽根が生えていますッ」
 結は沖田の説明を受けながら、かなんへと足を踏み入れた。どこから見ても和風の旅館なのだが、廊下で交差した和服を纏ったファンタズマを指差し、素っ頓狂な声をあげた。サングラスの男は苦笑する。
「ファンタズマを見て今更驚くのがいい証拠だ。ここは不可解な磁場が発生していて、異世界の者が迷い込むとの情報もあった。‥‥正直、本当に召喚されて来るとは思わなかったが‥‥」
 少女は様々なこの世界の話を聞いた。神魔戦線により、多くの命が戦火と共に消えた後、神と魔と人が共存を果たしたパトモスと呼ばれる日本。神帝軍が下した裁きと、それに抵抗した魔属と人類。世界の殆どは現在も神属が納めており、沖田達は次なる戦争に備えて訓練を続ける軍学校の教官と訓練生である事。日本各地が大戦の傷痕を多く残しており、復興が急がれているが芳しくない事実。いずれも結の世界と確かに異なる日本の姿だった。
「神様や天使が敵だったなんて‥‥信じられません」
「‥‥敵、か。そうだな、我々が傲慢なのか、それとも神が傲慢なのか‥‥。いずれにしろ、我々は生きている。ならば間違った支配に抵抗する力があるなら、神にでも刃向かうだろう」
「‥‥力、ですか」
 結は沖田を見上げ、胸元に手を当てる。疎ましさを覚えていた退魔の力が少女にもあるのだ。
「さて、我々は明日の朝まで旅館に滞在するが、四方神はどうする?」
「‥‥この山の磁場で迷い込んだのでしたら、ここから離れない方が良いと思います。‥‥今年も父親が仕事で出張先から戻れず、正月は一人で過ごすことになっていましたし‥‥。あの、迷惑と思いますが、ご一緒させて頂いて、構いませんか?」
 後の方になるに連れ、結の声は小さくなると、上目遣いで訊ねていた。真面目な性格の彼女は、迷惑を承知で頼んで見たのだ。サングラスの男は不安と寂しさに彩られた少女の瞳を映し、口元に僅かな微笑みを浮かべる。
「‥‥良い判断だ。ここから離れるべきではないだろう。気にするな。一人や二人増えても問題はない。‥‥着いたぞ。ここが女子の部屋だ。翠乃原、いるか」
 沖田は同僚の教官に結を預けると、そのまま立ち去って行った。翠乃原咲子の話によると、これから大広間で反省会を兼ねた夕食会が行われるらしい。
「えっと‥‥取り敢えず迷子になった訳あり娘と言うことで参加させて頂きます」

●露天風呂にて
 夕食会を終え、暫しの自由時間の後、結は露天風呂に赴いた。女湯と混浴の二種類があるようだが、流石に異世界とはいえ、柔肌を男子に晒すには抵抗がある年齢だ。長い黒髪をアップに纏め上げ、少女は女湯の戸を開く。素肌に外気が触れ、タオルで覆った肢体をプルリと震わせ、湯気の発ち込める場所へ足早に駆けた。瞳に映るは大きな岩に囲まれた天然の湯船だ。思わず感嘆の声が漏れる。
「うわ〜♪ 本格的☆ もしかすると一番風呂かな?」
 腰を落として桶に湯を汲むと、肩に流す。静寂の中に滴る音が優雅な旋律を奏でると共に、外気に晒された身体が熱を帯びた。熱過ぎる事なく冷たくもない絶好の湯加減だ。ワクワクする気持ちを抑えながら、透き通った水面に波紋を描き、ゆっくりと湯に浸かってゆく。ほんのりと身体が桜色に上気し、心地良い吐息を洩らした。
「ふぅ〜、気持ちいい〜☆ まさか大好きな温泉に入れるなんて思わなかった♪」
 滑らかな岩に背中を預け、外の景色に視線を流す。空には数多の星が輝き、小波がリズムを刻む水平線が月明かりに浮かんでいる。再び瞳は天空を見上げると、微笑みが次第に消えた。のぼせたのか、虚ろな表情のまま、星空を見つめる。
「‥‥でも、何で呼ばれたのかなぁ? 曰く有り気な神社でも周ったのかなぁ?」
 世の理に偶然はない。あるのは必然だ。不可解な磁場が発生したとしても、召喚されたのなら何か理由がある筈。結は瞳を閉じ、考え込んでいた。刹那、脳裏に閃光が疾り、少女はピクンと肩を跳ね上げた。咄嗟に立ち上がり、雫の滴る胸元を庇いながら視線を流す。
「‥‥だれ、ですか? いま、誰か私を呼んだの?」
 眼下に海が見える。結は何となく呼んだ声らしきものが海辺から発せられたように感じた。周囲を見渡すと天然の階段が映る。踏み外したら大変な事になりそうだが、今は浴衣を纏う時間ももどかしく感じ、少女は肢体をバスタオルで覆った姿のまま、眼下へ延びた岩の階段を軽やかに駆け降りた。

●サーバントとの戦い
 ――素足で砂浜に踏み込むなど、真夏にあっても真冬の夜にはそうあるものではない。
 冷気を伴う潮風に上気した肌は熱を奪われ、晒された素肌が寒さを感じる中、解けた黒髪を舞い揺らしながら結は叫んだ。
「誰ですか? 私をここに呼んだんでしょ? 姿を見せて下さいッ」
 だが、闇に響くのは小波の音ばかり。気の所為だったのか? ピクンと身体を震わせ、改めて自分の身なりを見つめると、少女は咄嗟の行動に後悔の色を浮かばせる。
「‥‥風邪ひいたら大変‥‥温泉入り直そうかな?」
 クルリと踵を返す中、背後で砂を這うような音が近付く感じを覚えた。ゆっくりと顔を向けてゆく結。月明かりに浮かび上がったのは、大きな亀のような化物だ。見るからに強固そうな甲羅を持っており、頭部には獰猛そうな牙が覗え、手足はヒレ状ではなく爪の生えた四本足で、蜥蜴のような鋭い眼光が結を捉えている。
「‥‥が、がめ‥‥」
 少女は思わず口から零れた言葉を呑み込み、胸元に手を当てて軽く深呼吸を繰り返すと、しっかりと亀の化物を見据えて向き直る。
「あなたが私を呼んだのですか? あの、わた‥‥あれ? あの‥‥」
 結が訊ねる中、亀の化物は頭と手足を甲羅の中へ引っ込めた。戸惑う少女が覗き込もうとした刹那、化物は砂飛沫をあげて高速回転すると、そのまま突進して来る。
「うそッ!? ち、ちょっと待ッ‥‥きゃんッ」
 慌てて砂を蹴り、尻餅を着いたものの結は洗礼を躱した。
「やん‥‥バスタオルに砂が‥‥って、また来るの!?」
 通り過ぎた甲羅の円盤は体勢を整えると、再び少女を捉えて突撃を試みる。結は腰をあげ、身構えると瞳を研ぎ澄ます。
「‥‥戦うしかないのかな。『魂鎮め』ッ!!」
 結は呪文と共に両手を頭上から勢い良く前に翳した。手中から半透明の球体が放たれ、巨大亀に命中する。彼女の退魔術だ。この封印術で化物の動きを制限できる。しかし――――。
「えッ? 効かない!? きゃッ」
 再び洗礼を叩き込もうと突進した甲羅の円盤を辛うじて避ける結。バスタオルの一部が巻き込まれ、細切れになって舞い散った。まともに受けたら怪我では済まない。少女の頬に汗が伝う。
「どうすれば良いの? こんな格好でやられるのはお断りよ!」
『誰だッ! そこでサーバントと戦っているのはッ!?』
 聞いた事のある男の声が飛び込む。視線を向けると走って来る沖田の姿が映った。
「沖田さん? 危険ですッ! 来ないで下さいッ!!」
「‥‥四方神だと? こんな格好で何をしているッ!! 早く逃げろッ!!」
 男は一瞬我が目を疑った。月明かりに浮かぶのは、2mもの亀型サーバントと対峙するバスタオルを巻いただけの少女だったからだ。しかも彼女は魔属ではない。沖田は怒鳴るように声をあげる。
「サーバントは通常の武器では倒せない! 逃げろッ!!」
「‥‥逃げませんッ! だって、私には力があるからッ! 『魂裂きの矢』!!」
 回転する甲羅を捉え左腕を前方へ向け、右手に粒子と共に一本の矢を出現させた。黒髪とバスタオルの端が潮風に舞う中、結は左手に弓を模ると、半透明の矢をあてがう。それはまるで魔皇の魔皇殻のように映ったのかもしれない。沖田が見守る中、矢が放たれた。
「あぁッ、やっぱり甲羅に弾き飛ばされちゃうッ! 来るッ」
 戦闘は結の防戦一方で続いた。微妙に軌道修正する甲羅の円盤を躱す度にバスタオルの端が散り、少女の息も次第にあがってゆく。もはや全力で逃げる事も敵わないだろう。
「四方神ッ! 敵の動きをよく見ろ!」
「ハァハァ‥‥よく、見てますッ‥‥来るッ!」
「そこだッ! 躱したらサーバントの動きを見ろ!! 必ず躱せよ!」
「‥‥躱してからの動き? はいッ!」
 何度目かの円盤が砂飛沫をあげて少女へ突っ込んだ。結は身構えて軌道を読む。早過ぎれば追撃、遅れればバスタオルは鮮血に染まるだろう。タイミングを掴むと砂を蹴ってバックステップ!
「躱せた! ‥‥ッ!? やんッ!」
 柔肌が血に染まる事は辛うじて防いだが、既にバスタオルはボロボロだ。激しい動きに結び目が解け、慌てて布切れで身を庇う。刹那、響き渡ったのは沖田の怒号だ。
「バカモノ!! 敵を見ろッ! サーバントは通り過ぎた後、同じ場所で回転を続ける。おまえを捉えようとしているのだ。意味が分かるか!? 捉えられねば回転はいずれ止む!」
「‥‥そうかッ! 分かりましたッ沖田教官ッ!」
 結は長い黒髪を舞い揺らし、砂浜を左右に大きく駆け回った。
「規則的になるな! 動きを予測されるぞ!」
「はいッ! 教官ッ!!」
 息が乱れ、足が縺れそうになっても動きを止める訳にはいかない。小刻みに揺れる視界の中、サーバントの回転が緩やかに変調し、爬虫類のような眼光を捉えた。沖田の叫びと共に少女が弓を模る。
「そこだ! 放てッ!!」
「当ってッ! 『魂裂きの矢』!!」
 結の足元にハラリと布切れが落ちる中、青白い閃光を放つ矢はサーバントの頭部へ吸い込まれ貫いた。やがて巨体は鮮血を吹き上げ、ゆっくりと砂浜に崩れたのである。少女の顔に安堵の色が挿す。
「ハァハァ、やった‥‥やりました! 沖田教‥‥きゃッ」
 笑顔を向けた結の顔を覆ったのは、沖田が放り投げたロングコートだ。浴衣姿の背中を向け、男が口を開く。
「さっさと戻れ、風邪をひくぞ」
「え? ‥‥ひゃッ!?」
 落ち着きを取り戻すと潮風が肢体を撫でる感じを覚え、ゆっくりと視線を落とす。結は顔を真っ赤に染め上げ、コートで露となった肌を覆い隠した。上目遣いで沖田の背中を見つめて頬を染める。
「‥‥み、見たんですか?」
「‥‥こんな明かりの無い夜に何が見える。四方神‥‥よくやった」
 労いの言葉を告げ、沖田の影は見えなくなった。結はコートをキュッと握り締める。
「ありがとうございます‥‥沖田、教官」

●今年の抱負を胸に
 ――2006年1月1日AM。
「いっひひひ、それじゃ、行くぜ!」
 幾瀬楼は二カッと笑みを見せると、前方に手を翳し、魔の刻印を輝かせた。腰ほどまで伸びた黒髪が舞い踊る中、手に装着されたのは爪型魔皇殻『セーフガードマスタリー』だ。彼女は尚も力を解放し、翳した先に円形状の障壁を模らせた。それをゆっくりと移動させ、地面に下ろす。
「さ、乗った乗った♪」
「わあ☆ えいッ」
 誰もが躊躇する中、早春の雛菊 未亜が軽く緑髪を舞わせてピョンと障壁に乗る。慌てたのはサバランだが、魔法の一種と納得したものの恐る恐る足を踏み入れ、次に結が続いた。残るはトリニティ学園の面々だが‥‥。やはりオリジナル魔皇殻には一抹の不安が残る。
「本当に大丈夫なの?」
「ここからでも初日の出はよく見える筈ですけど」
「いいじゃん♪ より高い方が眺めも良いぜ? ほら、星渡、てめぇが先に乗らなくてどうすんだよ!」
 仕方なく不安気に学が上がる。月代千沙夜、シンクレア、追って綺堂章仁、九条縁と続き、残ったのは沖田と咲子、そして、霧生勇、ジャスミン・ウィタードだ。初老の男が小刻みに震える金髪ソバージュの少女に青い瞳を向ける。
「なんだ怖いのか? 背中に乗るかね?」
「けっ、結構ですわ! きゃッ、ちょっと、こら、セクハラ親父!」
 灰色髪の男は軽々とジャスミンを肩車して、喚き捲る少女が頭上で暴れる中、そのまま微笑みながら障壁に上がった。仕方がない。二人の教官も後に続いた。全員乗ったのを確認すると、桜はゆっくりと翳した手を天空へと掲げてゆく。
「行っくぜーッ! そーらッ高い高ーい♪」
 魔皇の手の動きと共に障壁が舞い上がった。未亜は楽しそうに満面の笑みを浮かべるが、サバランはあまりの高さにピッタリとしがみ付いて離れる気配がない。暴れていたジャスミンは勇の灰色の髪を思いっきり掴んで「落としたら承知しませんわよ!」と震える声を洩らしていた。
「お、初日の出だぜ!!」
 水平線の彼方から、太陽が浮かんで来る。次第に輝きを増してゆき、放射される陽光が闇を照らし出す。頃合を見て、サングラスの男が口を開く。
「さあ、今年の抱負だ!! 皆、それぞれの胸に刻めッ!!」
 手を組む者もいれば、掌を合わせる者もいる。昇ってゆく朝日に向けて瞳を閉じた。
 刹那、異世界人の身体から光の粒子が舞い出す。それぞれが瞳を開き、別れの瞬間を感じた。
「シンクレアさん、一緒にお料理できて、未亜、とても楽しかったよ☆」
「私も楽しかったわ♪ 向こうでも美味しい料理を作ってよね☆」
「うんッ! 未亜、頑張るよ☆」
 緑の髪をふわりふわりと舞い揺らし、端整な風貌に涙を潤ませながら、千沙夜達にもお別れを告げてゆく。そんな中、結は沖田に身体を向ける。
「‥‥あの、沖田きょう‥‥じゃなかった」
「‥‥四方神、短い間だったが、おまえは俺の指示を聞き、俺を教官と呼んでくれた。おまえは俺の生徒だ。これからもな」
「‥‥沖田、教官。ありがとうございました! 変じゃありませんか?」
 TVや映画で見た敬礼を見せ、少女は微笑んで見せた。サングラスの男も合わせて応える。
「頑張れよ、四方神結」
「はい☆ 教官♪」
 粒子が瞬く間に泡の如く舞いあがると、そのまま異世界人は消失した。
 きっとそれぞれの世界で暮らしてゆく事だろう――――。


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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛★PCあけましておめでとうノベル2006★┗━┛
【整理番号(ウェブID)/PC名/性別/年齢/職業】
【w3a525maoh/九条・縁/男/25歳/特殊機甲科14クラス訓練生】
【w3a548maoh/月代・千沙夜/女/30歳/特殊機甲科13クラス教官】
【w3a548ouma/シンクレア/女/23歳/特殊機甲科13クラス教官】
【w3g589maoh/幾瀬・楼/女/24歳/特殊機甲科13クラス教官】
【w3k917maoh/霧生・勇/男/61歳/特殊機甲科13クラス教官】
【3941/四方神・結/女性/17歳/学生兼退魔師】
【1055/早春の雛菊 未亜/女性/12歳/癒し手】

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■         ライター通信          ■
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 明けましておめでとうござ‥‥と言える時期ではありませんね(^^;
 今年も宜しくお願い致します。お久し振りです☆切磋巧実です。
 この度は発注頂き、誠に有り難うございました☆ 値上げしておりますのに、沢山参加して頂き、嬉しい限りです。
 さて、いかがでしたでしょうか? アクスの皆様も普段以上に描かせて頂いたつもりです。切磋的には、異世界人も召喚され、おかげさまで物語の幅も広まったと思います。‥‥と言いますか、広がり過ぎてバランス調整させて頂きました。つまり他のノベルに登場していたりする場合もあります。よろしければチェックしてみて下さいね。
 参加ありがとうございます☆ まさかここで出会えるとは思いませんでした。今回は退魔術演出が通常(?)と異なっていますが、それはそれ、異世界と解釈して下さい。
 沖田を選んで頂けるとは、有り難うございました☆
 因みに送還後は神社で倒れていたり‥‥。洋服着ましたか? 浴衣のまんまだと異世界も物ですから、きっと大変な姿で倒れていますよ(汗)。
 あと、この出来事は送還と共に忘れてゆきます。夢くらいの記憶となるでしょう。
 楽しんで頂ければ幸いです。よかったら感想お聞かせ下さいね。
 それでは、また出会える事を祈って☆