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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


第三次道案内



*オープニング*

師走。

師匠さえ走る忙しい月である、という諸説もあるが、
草間武彦は、新年早々あてもなく新宿界隈を歩いていた。
草間零に
「大掃除をしますから、ちょっと外に出ていてください♪」
と、ニッコリと言われてしまったのである。

『あぁ、こういう時に何か事件でも起きて、颯爽と解決できれば怪奇探偵じゃなく、
 普通の探偵としてかっこいいんだろうなぁ』

そんなことを考えつつ咥えタバコで町を歩いていると、とある光景が目に映った。

ブロンドの金髪外人女性が、何やら小さな男に向かってわめいている。
いや、違う。
小さいのは男の方じゃない。外人女性の方が大柄なのだ。
そして、よくよく見てみると…

「あの絡まれているの、三下じゃないか??」

困り顔で、必死に身振り手振りで何かを伝えようとしている。
今にも泣きそうだ。
見知った顔に、武彦は「仕方ないな…」といった表情で二人に近づいた。
近づいた草間に気がついた三下が『助けが!』と安堵の表情を浮かべる。
そして、大柄な金髪女性も振り向いた。

「ちょっと、助けてくださいよ、草間さぁ〜ん」
「いったいどうしたって言うんだ?」
「この女の人に道を尋ねられたんですけど、全然話が通じなくてぇ」

金髪女性は、今度は草間に尋ねてきた。

「How do you go to the HEAVEN ??」


『またか…』
草間は、あからさまにため息をついた…。



*栗原 真純の道案内*

その日、父親のぎっくり腰のために正式に甘味処『ゑびす』の店長を任された経歴を持つ、看板娘兼店長、栗原・真純(くりはら・ますみ)は年末の買出しに都心へと出向いていた。
買い物の途中、ふと大の男二人と、大柄な女性がワァワァと話し合っている姿をみかけた。

「この年末に、何か事件かしら?」
と、興味本位で遠くからその様子をしっかりと見ると、その大の男のうちの一人は、三下忠雄であった。
そして、三下の方も、真純に気がつき、涙目で真純に向かって手を振った。
「真純さぁ〜〜〜ん!いい所にぃぃ〜〜!」
あまりにも大きな声で三下が叫んだため、周りの一般人まで真純の方を振り向く。
甘味処『ゑびす』にて、人の視線には慣れている真純だが、仕事場以外、しかもあのような涙声で名前を呼ばれたら恥ずかしいったらありゃしない。
そんなこんなで、顔をやや赤く染めつつ、仕方なく真純は三下の元へ小走りに近寄った。

「お久しぶりです、三下さん…と?」
律儀に三下に挨拶をし、そして見慣れぬ男性と大柄な女性を見上げる。
「あ、えっと、こちらは草間興信所の探偵さんで、別名怪奇探偵の草間武彦さんと〜」
「わざわざ『怪奇』とかつけるなっ。」
「ホントのことなんですから、仕方ないじゃないですかぁ〜。それと…」
「ハロゥ〜!オー!ジャッパニーーズ、ビューティフルガール!!」
「一応、ウェンディ・ウエハラさんという名前は判断できました」
三下が弱々しげに応える。身長180センチはゆうに超えているであろうウェンディは、
「オー、ビューティフォー!プリティー!キューツッ!」
と、陽気に真純の頭を撫でる。きっと、真純の方が実は年上なことには気づいてはいないだろう。
ウェンディに頭を撫でられ、愛想(苦笑い)を振りまきつつも、
「で、どうしたんですか?」
と三下に事情を聞く。
「や、あの、僕には何がなんだかサッパリ・・・」
「あぁ、この件に関しては俺が説明しよう」
と、草間が口を開いた。

草間興信所近辺でここ最近「天国に行くにはどうしたらいいの?」と草間を頼って訪ねてくる幽霊が増えているらしい。
この、外国人女性もその一人…つまり、幽霊なわけである。

「で、だ。彼女は日本に留学して来ていたのだが、飲食店のジャンボラーメンを制限時間内に食べたらタダ!を実践している途中に…」
「喉、詰まらせちゃって、そのまま…」
草間の言葉を引き継ぐように、三下が応える。
『本当にいるんだ、そんな人…』
真純はやや心の中で苦笑しつつ、草間の話の続きに耳を傾けた。
「彼女の話を聞いてわかった成仏方法なんだが…」

「ジャッパニーズフーヅ、ベリーオイシー!!!モットモット、タベタカターー!!」

ウェンディがうっとりとした表情かつオーバーリアクションで叫んだ。
あまりの大声に、またも周りの視線が集まる。

三下も草間もあまり気にしてないようだが、一般人的感覚をちゃぁんと持ち合わせている真純には、いかんせん道の真ん中で怪しげな男二人とでっかい女性が喚いているのは不自然に感じられる。
「そ、そういうことだったんですね…」
苦笑しつつ、ようやく話を飲み込めた真純は、ポン、と手を叩く。

「なら、ちょうど夕食の支度もしなきゃならないところだったし、よかったら…美味しいかどうかわからないけど、あたしの手料理でよければご馳走するわ。
 どう?ウェンディさん?」
真純はウェンディを見上げて微笑む。
ウェンディは、相変わらずニコニコとしている。
そこに、「この真純お嬢さんが、美味し〜い日本の料理、作ってくれるってよ!」と草間がかなりスローテンポな日本語でウェンディに伝える。
すると、ようやく話を理解したウェンディが「オーー!!サンキューベリマッチーネー!!」と、真純の手を取り豪快にシェイクハンドした。
「イタタタタタッ!!腕痛めたらご飯作れなくなっちゃうってば!!」
「オゥ!ソーリィネーーー!!」
相変わらずニコニコしているウェンディ。あまりの陽気さに、とても幽霊とは思えない。
「とりあえず、晩御飯の食材を買わなくちゃね……」
そう言いつつ、真純は鞄の中をゴソゴソと探る。
「あ、あった。これ、『甘味処ゑびす』の…まぁ、名刺みたいなものね。買い物もすぐに終わると思うし、一時間後にこの名刺の地図の場所に来てくれる?」
ニコニコとその名刺を受け取るウェンディ。
しばらく地図を眺めた後、「オーケーオーケー!!」と力強い返事が返ってくる。
『本当に大丈夫かしら?』と若干心配に思いつつも、ここからそうわかりにくい場所ではないため、真純ひとまず夕食の買い物に出かけることにした。
電話番号も載っていることだし、なんとかなるだろう。
「ちなみに、ウェンディさん。絶対食べたいものとか、ある?」
そう聞く真純に、
「ジャッパニーズフーーーズッ!」
と、ニコニコと大声で応えるウェンディ。
その答えに、『一番献立を考えにくい答えね』と苦笑しつつも、真純は「オーケーよ」と親指と人差し指ででわっかを作りつつ、答えた。



*突撃!栗原家の晩御飯*


指定の時間。先についていたのは意外にもウェンディだった。
いや、正式に言えば、ウェンディ『達』。

「…で、ウェンディさんはともかく、なんで三下さんと草間さんもいるわけ?」

ちゃっかりとついてきている三下と草間の姿に真純はため息をつく。
「俺は、ウェンディの通訳だから」
「僕は、ウェンディさんの道案内で…」
「ミンナデ、イーティング!オイシ、タノシイネー!!」
相も変わらず陽気なウェンディに、「そうそう」と頷く男性二人。
「ま、まぁいいわ。ウェンディさんはともかく、三下さんと草間さんは今度ゑびすの方にちゃんとお金払って食べに来てよね?それが条件。」
コクコク、と頷く二人の男性を見、三人を玄関から居間へ通した。

「オゥッ!トラディショナルジャパニーズハウスネー!!!ステキヨーー!!!」
ウェンディが真純の家の内部をキョロキョロと見回す。
「お褒めいただき、ありがとう♪」
マンションやらのほうが圧倒的に多い昨今、今時珍しい和作りの家にウェンディは興味深深だ。
真純も、思わずニッコリと微笑む。
「ほらほら、人の家なんだからキョロキョロするな。三下も!」
三下も、自分の住むあやかし荘との部屋の広さの違いにキョロキョロと見回していた。
住み慣れた自分の家だけれど、他の人の目には珍しく、またウェンディには気に入ってもらえたようで真純はなんだか上機嫌になりつつ、三人用に座布団を持ってくる。
「畳の部屋だからちょっと寒いかもしれないけど…どうか、くつろいで待っていてね」
ニッコリと微笑む真純の笑顔に、三人とも子供のように「はーい♪」と返事をする。

「それじゃあ、ご飯作るわねっ」と真純は袖を捲り上げつつ居間を後にした。
パタン、と障子を閉めると、途端に
「オー!ツボー!カケジクー!ビューリフォー!!」
「おい、あんま触るなって!!三下、何か壊したら全部おまえ持ちだからなっ」
「えぇっ、なんでですかぁぁ〜」

真純は、相変わらず賑やかな光景が繰り広げられているであろう居間を想像しつつ、クスリと笑い台所に向かった。


「さ・て・と。せっかくだから美味しいものを食べて成仏してもらいたいし…やっぱりここはあたしの得意な料理で勝負☆でしょう♪」
鼻歌混じり、かつ楽しげに、真純はスーパーで買ってきた食材をテーブルに広げた。

ジャガイモ、人参、玉ねぎ、豚肉、インゲン、大根に、豆腐に、ワカメその他、調味料…

「流石に日本懐石なんて手の込んだものは急には作れないし…やっぱり、日本の家庭の味がいいわよねっ。何より、気取らないで食べられるし♪」
真純は、そう独り言を言いつつテーブルに並べた食材をすばやく下ごしらえする。
レシピなどを広げることもなく、手際よく、そして効率よく料理を進められるのだから、いかに真純が普段から料理に親しんでいるかが窺える。

本日の夕食は、肉じゃが、ふろふき大根、豆腐とワカメのお味噌汁に、炊き立てのツヤツヤご飯。
シンプルながらも、『これぞ日本の食卓!!』といえるラインナップであろう。
さらに、肉じゃがに入れる人参は花の形に切る、など見た目にもこだわった。

すべての料理が完成し、最後にお味噌汁の味をチェック。

「できたっと☆」

真純は出来上がった料理らを、一人分ずつお盆に載せ、居間へと向かった。
障子の向こうからは相変わらずウェンディ達が楽しげに談笑(じゃれあう?)声が聞こえる。

「お待たせ〜」と真純がお盆を持って登場すると、三人の視線は料理に釘付けになる。

「オォゥ、ジャッパニーズトラディショナルディナー!!」
「若いのに、煮物か…感心だな」
「ああ、美味しそう…」
よだれをたらしそうな勢いな男性二名に、
「これはウェンディさんのぶんよ。二人のは台所にあるから、各自運んで」
喜んでっ!とばかりに台所へ向かう草間と三下。ウェンディに「ちょっと待ってね」と言いつつ、真純自身も自分の分のお盆を取りに行った。

こうして、真純の手料理の乗ったお盆を前に、ウェンディ、三下、草間の3人が手を合わせる。そしていっせいに
『いただきまーすっ!』と元気よく声を上げる。
「召し上がれ♪」と真純は極上の笑顔で三人の、主にウェンディの表情を見やる。

「ンンンンン・・・・・デェリシャスッ!!!」
ほくほくとした肉じゃがを頬張り、飲み込み、ウェンディは真純に向かってニッコニコと笑顔を向ける。
「ありがとう♪」
その言葉を聞き、ようやく真純も箸を動かした。
「ああ、このふろふき大根、どこか懐かしい味がする…」
三下が美味しそうにふろふき大根を頬張る。
「あら?三下さんのご実家もお味噌、手作りだったの?」
「え?や、記憶はないですが…って、この味噌、手作りなんですか?真純さんの??」
「え?えぇ、そうよ。どう?気に入ってくれたかしら?」
ニッコリ微笑む真純に、ひたすら『凄いですー!!』を連発する三下。
草間も味噌汁をすすりつつ、「あぁ、やっぱり日本人は味噌汁だよな…」と味を堪能する。
ウェンディも、美味しさのためか食も進み、あっという間に間食してしまった。
「デリシャース!ジャパニーズフーヅ、ヤパリ、サイコー!!」
と、満足気だ。
「おかわりもあるけれど…出来れば、腹八分目にしておいてね?」
そういう真純に
「そりゃそうだな。食べ過ぎて幽霊になって、さらに食べ過ぎたら何になるかわからないもんな」
と、草間がツッコミを入れる。
違うわよー、とケラケラと笑いながら、三人が食事を終えた頃合を見計らって、真純はまたもや台所に移動した。

三人が顔を見合わせる中、台所から戻ってきた真純の手には…

『おまたせー♪』

そこには、ほかほかと湯気を立てるお汁粉が4つ。

「オー!!ジャパニーズスィーツ!!!ダイスキー!!」
ウェンディは目を更に輝かせた。
「ゑびすの特製お汁粉よ。デザートに、召し上がれ♪」

こうして再度、栗原家の居間にて『いただきまーす!』の声が響き渡ったのだった。



*エンディング*


食事を終え、軽く談笑した後、真純達四人は真純の家の玄関先に出てきた。
「いやー、今日はご馳走になっちゃって悪いなぁ」
「本当ですよぉ。ありがとうございます、真純さん」
そういう草間と三下に
「今日は、ウェンディーさんのために作ったんですからねっ?今度来た時は材料代くらい払ってもらいますからねっ」
と、真純が釘を刺す。

当のウェンディはといえば…
さっきまでのニコニコ顔はどこへやら。
切ない表情で三人を見ていた。その表情に気づいた真純は
「あ、あのっ、あんまり口に合わなかった?そうだったら、ごめんなさい…」
と、少しばかり視線を落とす。すると、ガバッと大柄なウェンディが真純の体を包み込んだ。

「ジャパニーズビューティフルガール。アタシの、ラストディナー、
 サイコーダタヨ。サンキュー、ベリーマッチ……マスミ。」

今までの陽気なニコニコ顔とはまったく違う、とても穏やかな表情を浮かべるウェンディーに、真純もホッと胸をなでおろす。
そして、真純を抱きしめながらも、徐々に光り輝いていくウェンディーの体。

「あたしも、美味しいって言ってくれて…幸せそうな表情が見れて嬉しかったよ。ありがとう、ウェンディーさん。料理の力って、凄いね。」
真純も光るウェンディーの体を抱き返しながら応える。

「ジャパン、サイコーヨ!!マスミー、センキュー&グッバァーーイ!!」

陽気な声と共に、ウェンディの体は天へと昇った。
真純と草間、三下は、いつまでも空を見上げていた。



後日。
草間と三下が揃ってゑびす堂にやってきた。
「いらっしゃいませ♪」
と、極上の笑顔で真純が迎える。
「あらホントに来てくれたんだ☆どーぞ、座って座って♪」

男二人が、甘味処に。

こないだの約束を果たしに来たのであったが、他の常連客からは『真純ちゃんを狙う新たなライバルめっ!!!』と痛い視線を投げかけられていたのを真純は知ってかしらずか、二人のテーブルにオーダーされた商品を運んだ。




「おまたせいたしました!お汁粉、三人前です♪」




*END*




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【2356/栗原・真純/女性/22歳/甘味処『ゑびす』店長】

【NPC/ウェンディ・上原/女性/21歳/アメリカ人留学生兼幽霊】

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■         ライター通信          ■
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はじめまして!新米ライター、千野千智と申します!
この度はこのような新人に大事なPC様をお預けくださりありがとうございました!!

ワタクシ個人が甘いもの大好き!和洋中なんでもいけるぜ!なもので、
真純さんの設定にトキメキつつお話を書かせていただきましたですっ♪
ウェンディーも、そして千野も大満足でございました!!

本当に、素敵なプレイングをありがとうございました!
真澄さんの可愛らしいイメージを壊していないか心配しつつ…
少しでも楽しんでいただけたならば幸いです♪

ご発注、本当にありがとうございました!
よろしければ、またお会いできることを願って…では!!


2006-01-06
千野千智