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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


失われたギメル 【後編】

  吾妻邸は異様な空気に包まれていた。
 使用人達が畏怖の念を抱く主、吾妻の機嫌がすこぶる悪いからだ。
 否、それとは別の「何か」のせいで、屋敷中の雰囲気が悪くなっている。
「御厨」
 呼び鈴が鳴らされ、心臓が止まるかと思うほど驚いた執事・御厨は慌てて書斎へ向かう。
「失礼致します」
 ノックをして扉を開けるが、中にいる主と目を合わせることが出来ない。
「――何用で呼ばれたか…わかっているな?」
 イエスともノーとも答えられない。
 足が震えだす。
「怯えずとも、今まで尽くしてきてくれたお前をどうこうするということはない。それより正直に答えるんだ」
 ゆっくりと一歩一歩、御厨の方へ近づいてくると同時に、御厨の震えもドンドン酷くなっていく。
 いっそ逃げ出してしまいたい。
 主が近づいてくるたびに「何か」も近づいてきているのを肌で感じる。
 主の側にいる「何か」が。
「妻の指輪が昨日寝室の宝石箱を見たらなくなっていた。不思議な事だ。いつなくなったのかわからない。お前は指輪の行方を知っているか?」
「ゆ…指輪…は、奥様の、葬儀後に…忽然と……」
 なくなっていた、と口にしたかったが、それ以上何もいえなかった。
 この屋敷に仕える誰が盗ったわけでもない。何故なくなったのかわからないのだ。
 早く、早く説明しなければ。そう焦る御厨だが全く言葉にならない。
「嗚呼――…屋敷の者が盗んだ訳でも、弔問客が盗んだ訳でもないことはわかっているよ。お前は…指輪を探す為に人を雇ったね?」
 御厨はゆっくりと頷いた。
「街の興信所の人間か…なかなか面白い人脈を持っているようだ」
 主のその言葉に御厨は驚愕する。
 何もかもばれている。
「――そして指輪も見つかった。これで今日の満月に間に合う。」
「…間に、合う……?」
 あの指輪を売りに出す気でいたのだろうか?否、業者と連絡を取った形跡はない。
 葬儀後からずっとこの書斎に閉じこもっていたのだから。
 そして電話を嫌う主が、この部屋から出ずに外と連絡を取り合う手段はない。
 そして何故満月である必要があるのか。
「お前が仕事を依頼した奴ら…なかなかにいい素材だ。そのへんの雑魚を百並べるよりも、奴ら数人いれば十分だ」
 何に、とは聞けなかった。
 瞬時に感じたのだ。
 主は彼らを「何か」に使おうとしている。


「奴らに、指輪を持ってくるよう連絡を取りなさい」


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■First

  いろいろと考えている間に丸一日が過ぎた。
 御厨から指輪を持って屋敷に来るよう連絡が入ったからだ。
 指輪が見つかった事がやはりばれている。
 テーブルに置かれた指輪を眺めていると、興信所のドアをノックする音がする。
「草間さん、十ヶ崎です」
 一瞬、御厨が尋ねてきたのかと思い驚いた草間だったが、相手が前回の協力者の一人、十ヶ崎・正(じゅうがさき・ただし)とわかり、安堵してしまった。
「ああ…開いてるからどーぞ」
「失礼します……御厨さんから連絡があったんですか」
「既に監視されているなら堂々と渡しに行きゃいいんだろうがなぁ…」
「吾妻氏の動向も気になる以上…渡しに行ってもそうすんなりと帰してくれそうもないですしね」
 仕事の都合でそちらに行けないから取りに来てくれと言えば済む事なのだろうが、それでもそれが最善の道なのか判断しかねる。
 『何か』がある。
 その懸念が草間たちを絡めとリ、動けない状況を作り出していた。
 二人の間に沈黙が流れる。
「今日はどんな依頼が入ってるんです?」
 二人はその声にぎょっとして声がした入口へ目をやると、青いチャイナドレスを洋風にアレンジしたような服を着て、襞のついたキャップをかぶった金髪の女性が佇んでいた。
「見たところ随分深刻なご様子…私で宜しければご協力しましょう」
 彼女の名はラッテ・リ・ソッチラ。存在しない筈の73柱目の悪魔である。 

■Search Eyes

   三人は一路吾妻邸へと向かうが、まだこれといった安全策など当然考えついてるわけもなかった。
「…しかし、いくらアンティークとはいえこんなちっぽけな指輪一つで何が出来るってんだ?」
 日の光にすかしてみても、ただの古ぼけた二連の指輪。
 これと言って禍々しい感じはしない。
 むしろもっと別の、想いが詰まっているような印象しか受けない。
「亡き奥方へ贈られた物でしたよね。きっと奥方の大切な物だったんでしょう」
 大事にしていればその想いが物にも宿る、なんてことはよくある事。
「…だが、奥さんとの大事な思い出で尚且つ形見でもあるから探してるってなぁわかるがなぁ…」
 監視されている、それも人の力によるものではない。
 『何か』が自分たちを見張っている。
「………」
「?どうした」
 ラッテが上空を見上げ、何かを見て立ち止まっている。
「幾つも同じものが…あれは…」
 彼女が視認している距離がどのぐらい先にあるのか草間にはわからないが、彼女が何を見ているのかはわかっていた。
「ああ、心配しなくていい。そりゃ味方だ」
 興信所を出る前にそれぞれに身につけているよう渡した小型の情報収集機器霊的感知機器。
 それとは別の半自動式監視用諜報機器だと草間はそれぞれに小声で言った。
 勿論、彼自身そんなハイテク機器を扱えるほど学がある訳でも金がある訳ない。
「大丈夫、アイツならちゃんとサポートしてくれるさ」
 ニッと笑い、草間はいつもの煙草に火をつけた。

■Open the gate

 「ようやっと到着か」
 書斎の窓から外を見下ろし、草間一行が到着したのを確認した。
 すぐ来るかと思いきや、あちらもなかなかどうして用心深いものだと、吾妻は笑った。
 傍に控える御厨は何も言えない。
 主と主を取り巻く『何か』に恐怖しつつも、震えることすら出来ないでいる。
 ただ静かに、命令があるまでにジッと動かず人形のように立ち尽くしていた。
「出迎えてやれ」
「はい」
 彼は浅く頭を下げ、書斎を後にした。


 草間たちが来てしまった。
 自分のせいで彼らが危険な目に…否、死んでしまう。それも確実に。
 そう思っても人間、わが身が可愛い。
 自らを犠牲になど到底出来るものではない。
 それに、自分が犠牲になったからといって彼らが無事に帰れる保障はどこにもないのだ。
 早く彼らの元へ行くべきか、それとも少しでも遅く行くべきか、そう悩んでいても足は進む。
「!御厨さん」
「っ…!?……く、草間様……」
 悩んでいる間に玄関ホールへ到着していた事に気づかず、草間に声をかけられ、驚き身が竦む。
「どうなされました?御厨さん」
 十ヶ崎の言葉に、思わず逃げろと言いかけた。
 だが声にならない。
 寒いわけでもないのに歯の根が合わない。
「…御約束の指輪をお持ちしました……写真の物と同一のものですか?」
 写真と現物を御厨に渡し、確認させると、御厨は言葉にせず浅く頷いた。
 御厨の様子に苦笑しつつも、草間は彼の肩を軽く叩き、大丈夫だと囁く。
「どうせ入ったら出られないようになってるんだろ?さ、ご主人様のところへ案内してもらおうか」

 三人のやり取りを見つつ、状況を把握する為、周囲を見回している。
「―――屋敷中に充満した魔素…どこか懐かしさを覚えますね」
 手伝うと名乗りを挙げたが、だからと言って前線に立って何をするという訳ではない。
 ラッテの領分は様々な事柄における隠蔽だ。
 この依頼自体の隠蔽もやろうと思えば可能だろう。
 だがそこまでしなくてはならないような依頼ではないと、ラッテは推測する。
 この屋敷の主が悪魔を呼び出そうとしても、屋敷を包む魔素の濃度を感じる限り、さほど高位の悪魔が手を貸してる様子は窺えない。
「…主の実力は2=9 ジェレーター(信仰者)程度…人間には脅威でもこの程度なら能力者だけで対処可能?」
 しかし現状即戦力といえそうな者はいない。
 どちらも戦闘において有利に働く霊力は持ち合わせていないとラッテは見る。
「見えざる三人目の協力者に期待、というところかしら」


  御厨の後について書斎へ向かう三人。
「…何故、わかっていて屋敷にやってきたのですか」
 長い廊下の途中で足を止め、御厨は三人を振り返る。
「依頼完了の為だろ」
「でも、あなた方は…ッ」
「確かに…状況から察するに僕たちが生きて帰れないようなことが待ち受けているのはわかります。でも、どうしても貴方のご主人にお伝えしたい事があるんですよ」
「伝えたいこと…?」
 それは文句でも何でもない。
 ただそこにある事実。
 そして、指輪の意味。
「ご主人が現状を受け入れられるかわかりませんが…やれるだけの事はやってみるつもりです」


■Collaborator

  草間たちが邸内に入る頃、半自動式監視用諜報機器によって屋敷の構造を調査し終え、光学迷彩霊波隠蔽技術により自らを不可視化し、待機していると、書斎の中から草間たちの声が聞こえてきた。
「…来たか…」
 草間たちと行動する者の中に戦闘能力を持った者が居ないとわかり、こちらが不利な立場にいると判明すると、僅かに溜息がもれる。
 しかしだからと言ってこの依頼を放棄する訳ではない。
 自分に出来る事をするまでだ。
 そう心で呟きつつ、気配を絶ち、息を殺して機が熟すのを待った。
 


■Truth

  書斎に通され、窓際に佇む人影がゆっくりとこちらに向き直る。
「やあ、君たちが指輪を見つけてくれたのだね。心から礼を言う」
 仕事だからな、と浅く溜息をつく草間。
「思い違いであれば大変な失礼だとは存じていますが…どうしても尋ねさせてください」
「何かね?」
 十ヶ崎の言葉に吾妻は軽く首をかしげる。
「ここはまるで何か良くない儀式でもするかのようです。まるで死者を生き返らせるかのような…」
 すると吾妻の目つきが変わった。それと同時に周囲を取り巻く気配も変わる。
 全身に感じる重圧が、ひどく倦怠感をもたらす。
「…これまでの推測と状況から判断して、吾妻さん。貴方は黒魔術をお使いになられているんですよね?」
「よくわかったね」
 十ヶ崎の言葉に動揺する気配は全くない。
「では、頭のよい青年にこちらからも質問しよう。解っていて何故ここへ?」
「死は死です。それは変えることの出来ない事実だ。この理を変えようとしただけで、とても大きな犠牲を払い、それでも成功しない事に手を出そうとするんですか?」
 質問を質問で返すなど無作法極まりないが、十ヶ崎にとって、これが吾妻の問いに対する答えでもあったのだ。
「――要するに、君は私にお説教をする為にわざわざここへ来たということかね?」
 重圧が増す。
 草間も十ヶ崎も立っているのがやっとだ。
「では――君たちが帰れないことも?」
 吾妻の手がゆっくりとこちらに差し向けられると、彼の背後に蠢いていた黒い靄が一気にあふれ出した。
 反射的に体が防御しようと身構える。
 その時だ。
 後方で先ほどからあまり堪えている様子もなく周囲を見渡し首をかしげていたラッテがポツリと呟いた。
「…この程度ならば能力を使うまでもなく交渉で済ませられそうね」
「何?」
 草間が後方に視線を流したその時、書斎の窓ガラスを破り、何者かが侵入してきた。
「!?何だ!」
「ササキビか!?」
 手の内に長剣が召喚され、発生させた障気がそれを黒い靄にぶち込む。
「…浅いかッ」
 チッと舌打ちする音が僅かに聞こえ、吾妻の傍からその見えない何者かが離脱する。
「小ざかしい!誰だ!」
 吾妻が剣が飛んできた方向を睨みつけると、赤い長いリボンで髪を結った少女の姿が一瞬、視界の中に現れまた消えた。
「無駄な事を!誰にも私の邪魔はさせん!!御厨ぁ!指輪をよこせ!!」
「ひっ…!」
 何かが手の中にある指輪だけを引っ張っている。
 その力に引きずられるように御厨の足が絨毯をすべった。
「何をしている!離せッ」
「御厨さん!」
 十ヶ崎は見えない力に引きずられる御厨の身体を支え、今にも開いてしまいそうな手に自分の手を重ねる。
 それでも僅かに勢いが衰えたに過ぎない。
 身体は二人まとめて引っ張られている。
「貴様ッ!!サッサと離せ!」
「―――貴方がやろうとしていることは無駄なこと。人の生死は神々の領分。悪魔が本当にどうにかできることではないわ」
「何!?」
「ラッテ!?」
 彼女の言葉に周囲の誰もが動揺する。
 ラッテは吾妻の背後に渦巻く黒い靄を見ながら言った。
「…真実の名も持たぬ、ゲヘナの階級に遠く及ばぬ形なき者。死者蘇生どころか都合のいい幻影か、できて魔力で動く仮初の屍鬼が関の山…貴方は騙されているのよ」
「…何だと?」
「英霊にだって無理なこと。その指輪を核に貴方の記憶を引き出して、ただの土くれに貴方の記憶の中の女と同じように動く術をかければいい。要は貴方の願望さえ充たせたら契約は成立してしまう」
 吾妻はふいに黒い靄を振り返った。
 それだけで揺らいでいるのが見てとれる。
 今だとばかりに、十ヶ崎は指輪の意味を吾妻に告げた。
「吾妻さん…この指輪…このギメルリングが如何いう類の意味を持つものだがご存知ですか?」
「…意味…だと?」
 指輪を購入する時にエンゲージリングとして使われてであろう由来は聞いている筈。
 しかし『この指輪』に込められた意味は他にもあるのだ。
 きっと彼はそれを知らない。
「この形状のギメルリングの事をメメント・モリ・ギメルリングといい、メメント・モリは『死を想え』という意味をもつんです」
 「死を想う」それは今という時を貴重なものに思い、その時をこよなく愛し、自分の命を大切に生きようと思う事につながっていく為の言葉。
 互いに死への想いを呼び覚ますことによって、今を厳しく、そして豊かに生きること…前回十ヶ崎が知った「memento mori」の意味だ。
「死は死です。それを覆す事なんてできません…」
「旦那様…」
 まだ恐れの消えない声。
 どれほど恐ろしい事をやろうとしていても、根底にあるのは死者への愛。
 亡くなってしまった妻への愛からの凶行だと解っている。
 だからこそ。
 だからこそこんな神をも恐れぬ恐ろしいことなど、他人を犠牲にしてまで取り戻そうとする事などやめてほしい。
 今までずっと世話になってきた大恩ある主だからこそ。
 戻れない道へ進んでほしくないのだ。
「―――悪魔に縋るより、残りの余生を全うして、待っているであろう奥方と共に昇華する方が…一番の解決策だと思うが?」
 状況から判断し、光学迷彩霊波隠蔽を解除し現れた少女、ササキビ・クミノが言葉を添える。
「貴方自身が固執しなければ、その黒い靄…悪魔との繋がりもすぐ絶てるだろう。どうするんだ?」
 この場で彼の命を散らしてしまえば、自殺ではないのだから同じ所へ向かえる筈だ。
 だが、自分は殺し屋ではない。
 できることならもう、殺さずに済むのならそれが一番いい。
「…そんな……私は……」
「悪魔が言うのだから間違いはないわ」
 上位であろうとも下位であろうとも。
 一度消えた命に再び灯りを灯すなど不可能なこと。
 億万長者や極上の女を望まれた方がすぐにでも叶えられることだ。
 それだけ、生死はけして立ち入れぬ不可侵の領域。
 73柱目の悪魔であるラッテにも不可能な事。
「そんな……」
 吾妻は力なくその場に崩れ落ち、まるで抜け殻のように虚空を見つめている。
「ササキビ!」
 草間の声にハッとし、吾妻の背後に視線を向ける。
「!」
 吾妻の背後に蠢いていた黒い靄が吾妻を包み込もうと大きく広がっていく。
「旦那様!!」
 気が付けば指輪を引く力も失せており、御厨は靄に取り込まれようとしている吾妻の腕を掴み引き剥がそうとする。
 しかし吾妻の身体は少しも動く気配がない。
「旦那様!御気を確かに!そっちへ行ってはダメです!!奥様にも永劫会えなくなってしまう!」
「下がっていろ!」
 銃を召喚したクミノは吾妻の背後にある、悪魔召喚の要となりそうなものを手当たり次第撃ち抜いた。
 室内に書籍や調度品の残骸が次々に散らばっていく。
 ガシャンッと香炉か何かが割れたようで、周囲に何かの匂いが広がっていく。
「!やったか!?」
 吾妻を取り込もうとしていた靄は急に大きく四方に広がったかと思うと、おぞましい叫び声と共に霧散した。
 靄が消え、吾妻がその場に倒れこむと、あれほど身体にのしかかっていた重圧も、立っているのがやっとの倦怠感も何事もなかったかのようになくなっている。
「旦那様!」
 駆け寄り吾妻の上体を起こし、揺さぶる。
「ぅ…」
「大丈夫か?生きてるな??」
 草間が眼前で手を振り、意識があるか確認すると、虚ろな表情を変えぬまま吾妻は涙した。
 うずくまり、まるで叫んでいるかのような声で。
「…何故先に逝ってしまった……どうして待っていてくれなかった……ッどうして……」
 吾妻の様子に、一同はただ静かにその場に立ち尽くした。
 愛しい者の死を受け止められず凶行に走り、死者が甦ると信じた愚かな男を。
 声をかけることもなく、ただ黙って見ているより他なかった。
 かける言葉もない。
 何を言ってもおこがましい気がして。
「――――草間様……皆様…有難う御座いました……」
 

 依頼人である御厨が一言そう告げた。
 

■Epilogue
 
  「―――一件落着…と、言っていいのかな。これは」
 帰り際、ぽつりと呟いた草間。
「哀しい結末でしたが道を踏み誤るよりよかったと思います…」
 草間の呟きに十ヶ崎はそう言葉を沿え、微苦笑する。
「生き残る為に思索を練っていたけれど…それも取り越し苦労だった――…私のとってはそれだけ」
 悪魔召喚の腕の未熟さも幸いしたと言えようが、依頼遂行の為ならば誰かを見捨てねばならないと思っていた為、誰の犠牲もでなかったことは大いに喜ばしいことだと。
 ラッテは微笑し、後を歩く。
「…神だろうが悪魔だろうが…縋ろうとしてもあの男の願いは、けして叶わぬ願い…もう間違いは起こしようもないだろう」
 後は。
 依頼人がする仕事だ。
 クミノはそう言い、一人自宅方面へ足を進める。
「今日はサンキューな。依頼料は後日、モナスの方へ持っていくよ」
「ああ…じゃあな、草間」



「さて、戻ったら熱〜い珈琲の一杯でも飲むとするか」
 ぐぅっと背伸びした後、草間は胸ポケットに入れてあった煙草を取り出し、いつものように火をつけた。



― 後編 了 ―

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【1166 / ササキビ・クミノ / 女性 / 13歳 / 殺し屋じゃない、殺し屋では断じてない。】
【3419 / 十ヶ崎・正 / 男性 / 27歳 / 美術館オーナー兼仲介業】
【5980 / ラッテ・リ・ソッチラ / 女性 / 999歳 / 存在しない73柱目の悪魔】


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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、鴉です。
失われたギメル【後編】に参加下さいましてまことに有難う御座います。

え〜今回は…何と言いますか些かマニアック過ぎたようで(汗
前後編という事を考えても前編参加者が参加しやすいようにOPを作るべきだったと
配慮にかけていた感が否めないので、前回から引き続き参加して下さった方には
本当に申し訳ありませんです。

今回初参加の方々も当方のマニアックな嗜好に御付き合い下さいまして有難う御座いました。
それぞれご希望の活躍が演出できたかどうかドキドキですが…

ともあれ、このノベルに際し何かご意見等ありましたら遠慮なくお報せいただけますと幸いです。
この度は当方に発注して頂きました事、重ねてお礼申し上げます。